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東アジアの中の日本ねじ産業を見る
日本ねじ工業協会
専務理事 大磯義和
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五地域ねじ協会の交流
2007 年から、日本、台湾、韓国、中国及び香港の東アジアの 5 地域のねじ協会による交
流大会を開催している。2011 年は韓国、2012 年は日本、2013 年は中国、2014 年は台湾、2015
年は香港での開催という具合で、各地域が持ち回りで毎年開催してきている。2016 年は韓
国、そして 2017 年には三度目となる日本開催が予定されている。10 年にわたるこの交流会
も変貌を遂げてきているのが現状であり、改めて交流会の意義を問い直す時期に来ている
と思っている。
写真
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2015 年香港の講演での記念品授受(左側が筆者)
東アジアでのねじの生産・輸出・輸入
世界のねじ生産量の 2/3 を、日本、韓国、台湾、中国の 4 地域によってシェアし、その内
の 40%近くを中国が占めていると筆者はみている。日本は 20%程度の占有率しかなさそう
である。これは、
(一社)日本ねじ工業協会が参加する“五地域ねじ協会交流大会”で配布
された統計資料を元に、香港を除く 4 地域の 7 年分の統計推移を集計して分かったことで
ある。4 地域を対比した図 1 が生産数量、図 2 が輸出数量、図 3 が輸入数量となる。これら
の統計から、日本・韓国の停滞、台湾・中国の伸長が分かる。ただし、生産金額は、為替
レートの変動に左右されるので示していない。これら東アジアの 4 地域の特徴をおおまか
に見てみる。日本は内需が横這いで、輸出もあまり振るわない状況が続いている。韓国は
自動車向けに大きく依存しており、横ばい状態が続くと見る。台湾は輸出で成り立つ経済
なので、米国の景気回復に助けられて輸出が伸びている。中国は力強さが欠け、経済の下
降局面が現れてきているけれども、依然として世界一のねじ生産国の位置を保っている。
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図1
生産量の対比
図2
輸出量の対比
図3
輸入量の対比
東アジアの中の日本の地位
東アジアの 4 地域に限って見るかぎり、ねじ生産の順位は中国、日本、台湾、韓国と続
き、大きな変化は暫くないと思える。今後の趨勢は、東南アジア地域のインド、インドネ
シア、ベトナムなどの新興国の動向により、現地生産・現地消費への影響が景気を左右す
ることになろう。また、世界経済の中で米国及び欧州の景気動向、中国の成長率の鈍化も
見逃せない。日本政府はロボット革命、I o T、インダストリー4.0 などの新産業革命への戦
略の加速を謳っており、これらがねじ産業へどれだけの影響を与えるか十分な検討も必要
となる。
ねじ産業に限ったことではないが、インターネットに依拠する新産業革命の成否が、東
アジアにとどまらず世界の中での日本の地位を決定づけることになり、不確実な競争環境
が今後も続くことに異論はないと思われる。いずれにしても、日本ねじ産業が現在の地位
を確保し続けるには、技術力の向上を怠らないことである。
(参考)日本ねじ工業協会は、ねじの重要性を知ってもらうためのビデオ(図 4)を製作して、
ねじ産業の地位向上の広報に役立てている。
図4
一般向けの広報ビデオ「この世はねじでできている」の DVD(日本語のみ)