Title ニトロフラン系化学療法剤の研究( Abstract_要旨 )

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ニトロフラン系化学療法剤の研究( Abstract_要旨 )
藤田, 昭夫
Kyoto University (京都大学)
1966-11-24
http://hdl.handle.net/2433/212045
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【2
21】
藤
田
昭
た
あき
夫)
ふじ
学 位 の 種 類
薬
学
博
士
学 位 記 番 号
論
学位授与の 日付
昭 和 41年 1
1 月 24 日
学位授与 の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当
学位論文題 目
ニ トロフラン系化 学療法剤 の研究
論文 調 査 委員
数(㌔ 私 見喜 一郎
氏)
薬
博
論
文
お
第 4
4号
内
教 授 上尾 庄 次郎
容
の
要
教 授 岡 田寿 太 郎
旨
近年抗生物質 , サル ファ剤等 の耐性菌 に対 し交叉耐性 のない新化学療法剤の開発が望 まれてい る。 著者
t
r
o
f
ur
a
n 誘導体 に着 冒 した。
は種 々考察 した結果 ni
在来の ni
t
r
o
f
ur
a
n 系薬剤は i
nvi
t
r
o でかな りの抗菌作用を示すが,i
nvi
vo では充分な治療効果が
な く, かつ胃腸障害等 もあ って治療域 も狭 く満足すべ き化学療法剤 とは言えない
。
著者 はこれ らの点 を改良 した新 ni
t
r
of
ur
a
n 系薬剤を得 る目的で本研究を行 な った。
まず従来抗菌作用発現 に重要な役割を示す といわれてい る a
z
o
me
t
hi
ne構造 を直鎖状 に有す る 5
ni
t
r
0
2
f
ur
f
ur
yl
i
de
ne (
o
r5
ni
t
r
0
2
f
ur
a
nac
r
yl
i
de
ne
)a
mi
no 誘導体 ( Ⅰ) を合成す るとともに これ らと抗
微生物作用を比較す る目的で 5
ni
t
r
02
f
ur
o
i
cac
i
d 誘導体 ( Ⅱ) を も合成 し, ついで 5ni
t
r
o
f
ur
a
n核
が異節環 と vi
nyl基 で結合 している一連 の 2
-(
5
ni
t
r
0
2
f
ur
yl
)vi
nyl
he
r
o
c
yc
l
e化合物 (Ⅱ) を合成 し
た。 これ ら合成せ る化合物 の一 般式を次表 に示す。
・NO2Ⅲ
a
(
CH
-
C
H
,
0
1CH-"・
"H -C O CF
"
'c H 2)0-i 'RZとその塩類
(
Ⅹ:H,CH。;RI
R2 :a
l
kyl
,ar
a
l
kyl
,ar
yl等)。
耳謹
b・NO2
cH-N・
NHCOCH2CONH 督
2
耳謹
・N。2租 CH-
C・
d
NO
Ⅹ(
,
x ‥H,CH3・ha
l
o
ge
n)
(
CH-CH)
。
∼
lCH- NR (R :thiadia
z
o
l
e
, th iazole 等 の he
t
e
r
o
c
yc
l
e
)
Omtic
N・
NHR (
R 二a
r a ,he
t
e
r
ocycle 等)
-5
4
5-
-
5
46 -
以上合成 した 3系列 1
9
0
種 の化合物 ( うち新規化合物 1
6
6
種 ) の うち Ⅰの合成 は一
5
ni
t
r
02
f
ur
a
l
de
hyde
mi
ne類 との縮合 によ り, 丑は 5
ni
t
r
o2
十
f
ur
o
yl
c
hl
or
i
deと
(
or5ni
t
r
02
f
ur
a
na
c
r
ol
e
i
n) と対応す る a
異 節環 a
i ne類 ,N-置換尿素類 との縮合 によ り得 た。 一 方Ⅱの合成 は 5
m
ni
t
r
02
f
ur
al
de
hyde と活性
met
hyl基 あ るいは c
a
r
ba
mo
yl
me
t
hyl,c
ya
no
me
t
hylhydr
o
xyc
a
r
bo
nyl
met
hyl 基等 の活性 met
hyl
e
ne
を有す る異節環化合物 との Cl
a
i
s
e
nSc
hmi
dt型縮合 によ ったが, その反 応条件 は種 々検討 の結果酸性条
件 が適 当で あ った。 また me
t
hyl
pyr
a
z
ol
e類 との縮合 の試 みは成功せず両者 の附加体 を得 た。
なお後者 の縮合体 につ いて脱炭酸 を も検討 した。
さ らに別途合成法 と して 2
f
ur
a
l
de
hyde と活性 met
hyl基 を有す る異節環化合物 との縮合で得 られ る
2
-(
2
Jur
yl
)vi
nyl
het
e
r
o
c
yc
l
e化合物 の ni
t
r
o化を も行 な った。
No
Xi
de体 は上記縮合体 の過酸化水素酸化 によ ったが ,5
ni
t
r
02
f
ur
al
de
hyde と異 節環化合物 の No
xi
de類 との直接 の縮合 によ って も得 られた。
また上記 Ⅱaの hy
dr
o
xyme
t
hyl 体 は met
hy12
-[
2
1(
5
ni
t
r
02
f
ur
yl)vi
nyl
]pyr
i
di
neNo
Xi
de類
の無水酢酸 中での転位反 応 によ って も得 られた。
しか して この間 ,5
ni
t
r
o
2
Jur
al
de
hyde と 2
,
4
di
met
hy1
6
s
ubs
t
,pyr
i
mi
di
ne類 との反応で は 6位
の官能基 , 縮合条件 の差 によ り置換位 置の異 な る ものを得 るが, それ らの構造 は縮合体 のオゾ ン酸化つづ
いて脱炭酸 を行 ない py
r
i
mi
di
ne類 に誘導す ることによ り決定 した。 さ らに各種条件下 で これ ら pyr
i
mi
-
di
ne類 の活性 met
hyl基 の重水素化反応 を検討 し 2位 , 4位 me
t
hyl基 の縮合配 向性 につ いて知見 を得 ,
縮合反応 と同一条件下 では重水素交換率 と縮合配 向性 とは密接 な並行関係 が成立す ることを認 めた。
さ らに無水酢酸 中 5
ni
t
r
oT
2
Jur
a
l
de
hyde と pi
c
ol
i
ne
,met
hyl
pyr
i
da
z
i
ne 等 との縮合 において一 様
に同一 の中性物質の副 生を認めた。 本品は p
yr
i
di
neを触媒 と して用いて も容易 に得 られ ることが判 り,
その構造研究 よ りの推定 , 別途合成 によ り 5
,
5′
di
ni
t
r
02
,
2
′
f
ur
o
i
ndi
ac
e
t
at
e と して同定 された。 かか
る条件 での be
nz
o
i
n 型縮合 を さ らに検討 し, be
nz
al
de
hyde,2
f
ur
al
de
hyde,2
t
he
nal
de
hyde等 で は縮
合体 は得 られなか ったが, 5
ni
t
r
0
2
t
he
na
l
dehydeで は縮合 し, 5
,
5
′
di
ni
t
r
o,2
,
2
ノ
ー
t
he
no
i
n di
a
c
e
t
at
e
が得 られた。
以上合成 した 3系列 1
9
0種 の化合物の抗微生物作用 につ いては Ⅰ, Ⅱの化合物 では在来 品 と同程度 かや
やす ぐれた程度 の数種 の化合物を得 たにす ぎず , これ らタイプの化合物では著者 の 目的 とす るところか ら
はほど遠 く有効な化合 物 は期待で きない ことが判 明 した。
一 方Ⅱ においては 4級 ア ンモニ ウム塩 を除 き多数 の化合 物がグ ラム陽性 , 陰性蘭 , 結核菌 , 真菌類原 虫
類 に対 して有効 で あ り, Ⅰ, Ⅱに比 し著 る しく強力でかつ広範 な スペ ク トラムを示す ことが判 明 した。
すなわ ち, Ⅱaにおいてはグ ラム陽性 , 陰性菌 のほか結核菌 , 真菌 な らび に原 虫類 に対 して もす ぐれた
作用 を示 し,py
r
i
di
ne核 におけ る 5
ni
t
r
02
f
ur
yl
vi
nyl 基 および al
kyl基等 の置換位 置による抗微生物
作用の著 る しい差異 は認 め られなか った。 しか るに Ⅱbにおいては,
2, 3の化合 物を除 き一 般 にその抗
微生物作用 が著 る しく低下す ることが判 明 した。 また ⅡC においては一 般 に Ⅱa と同様す ぐれた抗微生物
作用 を有す ることが判明 した。 また これ らの No
Xi
de 体 は対応す る母体 に比 して抗真菌作用 は多少低下
す る傾 向を示 したが, 一 般抗菌性 は不変 かやや増強 され る傾 向を示 した。 なお No
Xi
de体 は i
nvi
voで
の有効性が増加 し毒性 が低減 され ることが見 出された,
Ⅱd たおいては若干の化合物を除 きグラム陽性 , 陰性菌 , 結核菌 および原虫に対 しては Ⅱ a と同様のす
i
mi
di
ne核 における 5
ni
t
r
02
f
ur
yl
vi
nyl
ぐれた作用を示すが抗真菌作用 は劣 る傾 向を認めた。 また pyr
基 , 官能基の置換位置による抗微生物作用の著 る しい差異 は認め られなか ったが ,6位の官能基を a
c
e
t
a-
o
xy 基を a
l
ko
xy 基 に
mi
do,a
mi
no
,hydr
o
xy基 に順 に置換す るとその作用 は増強 され るのに反 し hydr
換 え ると著 る しく低下す ることが判明 した。
さ らに Ⅱ e, Ⅱf において も Ⅱd と同様抗真菌作用の若干 の低下を認めたが, 抗菌 , 抗原虫作用 は Ⅱ a
と同等の作用 を示 した。 また Ⅱg においては Ⅱb と同様抗微生物作用 は 1, 2を除 き著 る しい低下 が認
め られた。
なお ,2
-(
2
f
ur
yl
)vi
nyl
het
e
r
o
c
yc
l
e化合物 ではⅡに比べ その作用 は著 る しく微弱 であ った。
これ らの結果 か らさらに精査 した と こ ろ 主 と して尿路感染症 に有効で毒性少 く副作用のない 2
me
t
yl
01. 一般細菌感染 症 に有 望 な 6
hydr
o
xy (
Ora
c
et
o
xy)
4-[
2
-(
5
ni
t
r
o2
十
f
ur
yl
) vi
nyl
] pyr
i
mi
di
ne
6
-
・
o
Xi
de 体 , な らびに外用真菌症 に有効な
me
t
hy12
-[
2
-(
5
ni
t
r
02
f
ur
yl
)vi
nyl
]pyr
i
di
ne 類 とその N4me
t
hy1
2
-[
2
-(
5
ni
t
r
0
2
f
ur
yl
) vi
nyl
]t
hi
a
z
ol
e,5
me
t
hy12
[
2
-(
5ni
t
r
o
T
2
Jur
yl
)vi
nyl]o
xa
z
o
l
e
等 7梓の化合物を見出す ことがで きた。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本研究 は従来 のニ トロフラン系化合物に共通 した欠陥である, 内服 による効 力の減退を防止 し, 副作用
の発現を阻止 し,i
nvi
t
r
oに見 る強力な抗菌力を活か し, 体 内活性 を高 め, 耐性菌 に対 して交叉耐性 を示
さない新 しい化学療法剤を開拓す る目的で開始 した ものである。
- ニ トロ 2 フル フ リデ ンア
著者 はニ トロフラン誘導体 にアゾ メチ ン構造 を直鎖状 に附与 した化合物 ,5
ミノ誘導体 ( I),5
-ニ トロプロ リック酸誘導体
(Ⅱ),
および5
-ニ トロ∼
2
-フ リル 異 項 環誘導体 (Ⅱ) の
3系列の化合物 1
9
0種を合成 し, 化学構造を確定 したが, その うち 1
6
6種 は新化合物である。
ついで これ らの化合物について抗微生物作用 を詳細 に検討 した ところ, ⅠおよびⅡの系列に属す る化合
物 は, 既知のニ トロフラン誘導体 と抗菌力において大差な く, 第Ⅱ系列に属す る化合物中には, グ ラム陽
性菌 , グ ラム陰性菌 , 結核菌 , 真菌 , 原虫類 に対 して特異的に優秀な抗菌作用を 示 す もの が 多 数発見 さ
れ , 特 に 6位 の官能基をア ミノ基 , アセ トア ミ ド基 または ヒ ドロキ シ基 に置換 した ものは作用が著 る しく
増強す ることを発見 したO これ らの基礎研究か ら更 に精査 し, 内服 によ り尿路感染症 に極 めて有効で, 毒
性 , 副作用 のない もの, 一般細菌感染症 に有望 な もの, および外用 と して真菌症 に有効な 7種の新化合物
を発見 した。
本研究 はニ トロフラン誘導体 の化学療法剤 と して, 従来見 られなか った広範な用途を開拓 した もの と し
て注 目に価す る。
本論文 は薬学博士 の学位論文 と して価値 ある もの と認定す るo
- :-Ill.q