江戸しぐさ 27年9月 「お天道さま」

 江 99月
今⽉月の江戸しぐさ「お天道さま」
⽇日本⼈人は、お天道(てんと)様、お⽉月様と呼ぶように、⾃自然物を畏怖
と敬愛の念をもって受け⽌止める感性をもつ民族でした。 「お天道さま」は古来からあった神道の天照⼤大神太陽信仰と、仏教の⼤大
⽇日如来が習合したもので、すべてを⾒見通す超⾃自然の存在と認識されました。
これと、江戸時代さかんであった陽明学(儒教の⼀一派)の⾃自分を律する考え
⽅方が加わり、「お天道さまがお⾒見通しだよ」の観念が強化されました。
現代より、はるかに⾼高い道徳観念に⽀支配されていた江戸時代では、世間
に顔向けできないことをすることを「お天道さまが⾒見ている」として⾃自分
を律する観念が強くありました。 その中で、現代⼈人にほぼ忘れ去られていることに「卑怯」を忌み嫌う観
念があります。 現代は、”⽴立場の強いものが弱いものを””集団が個
⼈人を些細なことでいじめる””それを⾒見て⾒見ぬふりをする”という卑怯があ
たりまえの世の中になってしまいました。
病院はモラルが⼤大切な職場です。モラルが低いと患者さんの⽣生命がおび
やかされるからです。 いじめはモラルが低下する⼤大きな誘因となります。 当院はいじめのない、それを忌み嫌う職場でなければなりません。
(⼈人をいじめる⼈人”意地悪をする⼈人”はお天道さまが⾒見ていて、それなりの⼈人⽣生し
か与えていないことをその⼈人は知りません。)
※江戸思草は、江戸時代の町民が良いとされるこ
と、悪いとされることなどの生活の規範としてい
たものです。
判断の基準は粋かどうかだったようです。
粋の概念は武士の武士道に対抗するものだったとい
う説があります。 他の国にない、一般庶民の高度
な精神性が、当時日本に来た外国人に驚きをあた
えていたことが多数記録されています。
ヘレン・ハイド
Helen Hyde(1868∼1919)
日本を愛したアメリカ人版画家。
江戸の風情が強く残っていた明治期に10年
以上滞在し、女性の視点から愛らしい子供
大根と幼児
の作品をたくさん残してくれました。
当時の外国の観察者の多くが、西洋諸国
と子供の様子や子育ての考え方が根本的に
異なっていることに驚いていました。