校長室から その4 2016(平成28).

「夏野菜の植え付けで思うこと」
播磨南中学校長
森 敏雄
皆さん、連休はどのように過ごしましたか? 部活動で試合や練習があった人も多い
ことでしょう。ご家庭でも、連休を利用して普段なかなか進まない片付けや、思い切っ
たリフレッシュをされたのではないでしょうか。
さて、私はかれこれ家庭菜園歴が 10 年ぐらいになるのですが、この連休で、これまで
やったことがない夏野菜の苗の植えつけ方を試してみました。
ちょうど、野菜の苗の定植には「お月さん」が新月に向かう5月3日からぐらいがよ
いとされているのですが、どうも天気予報では雨のようですから、ちょいと早めて4月
30 日に夏野菜を植え付けました。お天気もよく、気温も高くてちょうどよかったです。
定番の「トマト(中玉とミニ)
」
「なす(長なすがおいしいんです)
」
「ピーマン」
「枝豆」
「とうもろこし」
「きゅうり」
「網干メロン」
「ゴーヤ」
「ミニカボチャ」などを植え付け
ました。
毎年、ポリポットで育苗した苗をバケツに張った水に「ドプン」と漬けて、しっかり水
を含ませて、植え穴にも先にじょうろで水をやって・・というような植え方をしていま
した。
ところがところが・・。市販の本を読むと、
「これは、なんと、目からうろこじゃない
か」と思う記事が掲載されていました。それは、
① トマトやナスなどの果菜類の苗は、植えつける 2 日前から水を与えない。なぜなら
水も温度も整った環境で育てられてきた苗に一度危機感を与え、これからは自分の
力で水を吸って生きていくことを自覚させるため。苗はしおれますが給水させて植
えつければ、1 時間も経たないうちに元気になる。
② 給水時の2つのワザ。植えつける日の朝に、300 倍に薄めた酢水を苗のポットの底か
らたっぷり吸わせる。ポットを水にどっぷり漬けて植えつける方法よりポットの底
から吸わせる「底面給水」の方が、
「水は下から吸うもの」だと、植物の本能を刺激
できる。甘やかすだけではなかなか独り立ちできない人間社会の子育てと同じ。
③ 300 倍薄めた酢水を吸わせる理由は、野菜の根と共生する土壌微生物が、野菜の根が
出す有機酸と勘違いして活性化し、活着や初期生育がよくなるから。
④ 掘った植え穴に水を入れるのも NG。水は土の表面に膜をつくるので、そこに苗を植
えつけても活着がスムーズにいかない。苗の植えつけ後は水を与えない。土に染み
込んだ水は、根や微生物を酸欠状態にしてしまい、初期生育が悪くなってしまう。
と、いうことは、私が今までやっていた方法は、何なの?・・でした。
何事も、物は試し・・といいますか、この方法は理屈にかなっているなと思いました
から、早速4月 30 日に実践してみました。
「トマト」も「なす」も「ピーマン」も「ミ
ニカボチャ」も3%ぐらいの酢水で底面給水させ、植穴には水を注がず、定植しました。
植え付け後も水をやらず(お天気続きでちょっと心配でしたが・・)野菜の苗の様子を
見ました。すると、枯れてしまうこともなく、むしろ生き生きとしているのです。
これは、すごいな。
・・と、思いました。植物の持つ本能(遺伝子にすり込まれている
情報)を呼び起こし、本来持っている「その種」のたくましさを出させる・・とでも言
うのでしょうか。とにかく、枯れてしまわずに葉っぱも茎も元気と言うことは、
「根」が
元気で地中深く、広く根を張って水を吸っているということになります。
もちろん、このような植え付け方ができるのは、ビニールマルチをして植え付けまで
土中の水分を保持し、また、年月をかけて土も団粒構造の土にしているからかな・・と
思いました。いろいろな条件が合わさって(もっと厳しい条件下でもうまくいくようで
すが・・)元気に育ってくれていると思います。
このことで、私が思ったことは、その植物の原産地がどこで、どのような育ち方をし
ているのかを知り、そして、気候や自分の土地の条件(土の様子やこれまでに育てた野
菜)に照らし合わせて、植え方を工夫することがとても大切なのだ。ということです。
多くの種類の野菜を植えますが、野菜の「種」によって生まれも育ちも違うのですか
ら、一律、同じ条件で育てることは、野菜が本来持つ力を十分に引き出せずに終わって
しまうことになるのです。一緒に植える野菜にも相性があります。そのあたりを十分に
知ることで、野菜本来のおいしさを引き出し、病気に強く、健康な野菜を作ることがで
きるのですね。
畑や土が学校と教室、
個性を持ったたくさんの種類の野菜が生徒、
育てる人が保護者、
地域の人、教師と考えると、やっぱり「知ること」そして適した方法で「教えること」
が、いかに大切であるかということです。本来持っている力を引き出すこと。それを意
識した育て方で、健康で病気に強く、しかも味のある生徒に育てたいなと思いました。
酢水で底面給水や二日ほど水を絶って・・とか、生命力を引き出すための厳しさも時に
は必要ということなのですね。
(後のケアは忘れず、必ず。
)