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Web Vol.19
シャントの穿刺の基礎
~穿刺時の姿勢で成功率が決まる~
社会医療法人 美杉会
佐藤医院 透析室 主任
中 田 忠 雄
先生
当グループは大阪中心部から北東に位置する枚方市に昭和54年に開設しました。医療・保健・介護を包括的に行い、地域社会に貢献
することをモットーとして、高精度放射線治療センターを持つ二次救急病院から診療所、老人保健施設、介護施設、訪問看護ステーション
など25施設、63事業所に及ぶ施設で、地域の皆様の健康回復に尽力しています。当グループの透析治療は現在、グループ内施設に
おいて対応しており、勤務するスタッフは質の高い透析治療を安全に提供できるように日々研鑽しております。今回当院において患者に
安心して透析治療を受けていただくための取り組みで、特に穿刺までのポイントを紹介します。
はじめに
血液透析を受けるために行われる穿刺は患者にとって痛く、辛いことであり、痛くないように穿刺してもらいたい思いがあります。
そのためには患者の全身状態をよく知ったうえで
(問診)
、
シャントを十分に観察
(視診、触診、聴診)
します。患者のシャント血管を正しく
イメージし、穿刺部位の選択をすることにしっかりと時間をかけます。
問 診
全身状態を知るうえで事前の問診は欠かせません。身体的な異変の確認も大切ですが、問診時の会話から
患者がどのような精神状態にあるか観察します。いつもより不安定な状態であれば、
より多くコミュニケーションを
取りながら穿刺をします。
視診、触診、
聴診
すでに多くの発表がありますので、基本的な部分だけおさらい程度に触れておきます。視診は血管発達具合や
皮膚の変化などの状態を観察します。触診は、そのまま触った後に駆血して触ったり、
シャント肢を挙上して触る
などしながら血管の走行や張り具合、感染の徴候がないかを確認します。聴診は吻合部から中枢側に向かって
数ヶ所聴き、音はどの位置で変化しているか、いつもと違う音はないかを確認します。
穿刺する際のポイント
まず穿刺針を血管の真ん中に穿刺することが
確実で安定した透析をおこなう第一歩です。斜めに
穿刺してしまうことで血管を貫いてしまう恐れや
外筒が血管壁の近くに位置していたり、血管壁に
あたっている状況では脱血不良の頻度も高くなり、
透析中の操作が必要になります。
血管の真ん中を捉えるためには立ち位置をしっ
かりと決めましょう。穿刺方向とシャントの走行に
穿刺者の体の軸を合わせることで血管の真ん中を
真っ直ぐ穿刺しやすくなります
(写真1、写真2)
。
写真1:正 体の軸と穿刺方向を合わせる
写真2:誤 体の軸と穿刺方向がすれている
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患者との距離ですが、あまり近くに立つと窮屈になるため脇が開いてしまい、穿刺針をシャント走行に合わせて進めることが難しく
なります。血管に対してまっすぐに立ち、窮屈にならない程度に患者との距離をとり、血管の真上を穿刺する意識を持ちます。
写真3:正 穿刺しやすい距離に立つ
写真4:誤 窮屈になると脇が開いてしまう
立ち位置が決まったら皮膚を伸展させて血管を固定します。皮膚のしわがよらないように皮膚に張りを持たせながらシャント血管を固定
します。この時点でまだシャント血管が左右に動くようであれば介助者を呼び、皮膚を反対側に伸展してもらいましょう。穿刺の時間は
忙しく、人手が足らないことが多いですが、穿刺ミスの可能性を極力減らし、1回の穿刺で血管確保することが患者にとってもスタッフに
とっても良いことです。
穿刺部位について、
シャント血管を固定すると、血管がゆるいアーチ状になります。そのゆるいアーチ状の頂点を穿刺すると血管を突き
破ることが少なく穿刺針が血管内に留まりやすくなります。血管内にカニューラを進めテープで固定します。
図1:正 アーチの頂点から穿刺
図2:誤 アーチの手前からだと穿破しやすい
以上、当院で穿刺の際に意識している基本の一部をご紹介させていただきました。シャント血管の走行に合わせてスムーズに穿刺する
ことは思いのほか難しいです。真っ直ぐ穿刺しているつもりでも、想像以上に角度がついていたりします。自分の穿刺スタイルを知り、
今回お伝えしたポイントを意識して穿刺することで成功率は上がると考えています。
最後に自分の穿刺スタイルを知り、患者のシャント血管を理解することで穿刺の成功につながります。穿刺の成功は患者との信頼
関係を築く大切なポイントですので日々研鑽していきましょう。
日本コヴィディエン株式会社
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0120-998-971
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