大丈夫

じ
う
と
う
じ
ゅ
ん
慈雨等潤
城東小学校
校長だより
第6号
平成 28 年 5 月 9 日
【大丈夫】
5月5日「こどもの日」の北海道新聞のコラム「卓上四季」には、「大丈夫」と題する
次の文章がありました。
花見でにぎわう札幌・円山公園を歩いた。2~3歳ぐらいの男の子が転んだのか、膝を
押さえて泣いている。母親らしき女性が「大丈夫だから」と諭している。
日常のごくありふれた光景。この子は本当に痛いのかもしれないが、親の優しい一言が
欲しいばかりに泣き続ける。そんな経験をお持ちの方もいるだろう。
絵本作家いとうひろしさんの作品に「だいじょうぶ だいじょうぶ」がある。祖父と孫
の心の交流を描いた。孫は成長するにつれ、新たな発見や楽しい出来事に出合う。でも困
ったり、怖かったりすることも増える。学校の勉強や友達付き合い、交通事故の心配も。
そんなとき祖父は手を握り、「だいじょうぶ だいじょうぶ」とつぶやく。孫はおまじ
ないのような言葉の意味に気がつく。〈それは、このよのなか、そんなにわるいことばか
りじゃないってことでした〉。
世の中、見渡せば不安だらけ。作家の橋本治さんは「子どもは常に自分の無力さに打ち
のめされている」とエッセーに記しているが、今の大人たちも同じだろう。仕事も老後の
安心も先行きが見通せない。
童話は、病に伏した祖父に今度は孫が「だいじょうぶだよ」と励ます場面で終わる。自
らの明日も不安なのに、他人を思いやる言葉は胸に染みる。たとえやせ我慢だとしても。
きょうは「こどもの日」。子どもと交わす言葉のキャッチボールにはちょうどいい。
いよいよ明日、学校再開です。子どもたちは元気に登校してくるでしょう。明るい笑顔
を見せてくれるでしょう。わたしたちは、そんな子どもたちを精一杯の笑顔で温かく迎え
たい。そして、子どもたちに楽しい一日を過ごしてほしい。そう願っています。
これからの生活に不安を抱えている子がいる。繰り返される余震に怯えている子がいる。
ふとした瞬間に怖かったあの日の揺れを思い出す子がいる。わたしたち大人は、そんな子
どもたちに、大丈夫、大丈夫、と声をかけたいと思います。大好きなお父さんやお母さん、
信頼する先生、いつも見守ってくれる大人の「大丈夫」という言葉には、子どもたちを安
心させる力がきっとあるのだから。大丈夫。大丈夫。大丈夫。