水稲有機栽培の継続が長い水田は 慣行栽培より土壌の可給態リン酸

成果の速報
水稲有機栽培の継続が長い水田は
慣行栽培より土壌の可給態リン酸含量が多かった
県内の水稲有機栽培において有機質肥料の施用
量を減らし、水稲の作付期間外に雑草を繁茂させ、
春先にすき込むことで有機物を供給している事例
があり、全国的に注目されています。これまでの調
査で、本水稲有機栽培を長年継続した水田では水稲
生育期間中の雑草の発生量が少ない、慣行水田より
も土壌窒素の無機化量が多い、水稲の窒素の利用率
が高い、水稲の不稔が軽減された等のことが明らか
となっています。
現在、東京大学などと協力し、本有機栽培の継続
が土壌、水稲、雑草、水稲共生微生物、動物等に及
ぼす影響を評価しています。当場は土壌の可給態リ
ン酸、水稲の生育及び収量の調査を担当し、水稲有
機栽培におけるリン酸の供給能の解明に取り組ん
でいます。その結果、水稲有機栽培の継続年数が
16 年目以上になると慣行栽培に比べて土壌の可給
態リン酸含量が高まる傾向が見られました(図 1)。
また、穂数は水稲有機栽培の継続が 10 年の圃場で
は低かったものの、慣行栽培と同等でした(図 2)。
今後は土壌のリン酸の形態や可給態窒素などの分
析も進め、水稲有機栽培のメカニズムを解明してい
く予定です。
(土壌環境研究室)
350
120
300
100
穂数(本/m2)
可給態リン酸(mg/100g)
140
80
60
40
250
200
150
100
50
20
0
0
1年
1年 2年 4年 5年 8年 9年 10年13年15年16年17年20年22年 慣行
図1
水稲有機栽培継続年数と土壌中可給態リン酸
(トルオーグ法)の関係
図2
4年
10年
16年
17年
慣行
水稲有機栽培継続年数と穂数の関係
※各グラフの年数は水稲有機栽培の継続年数を、慣行は隣接する慣行栽培を示す。
成果の速報
関西のバイヤーにも好評を博したフリーズドライ「にっこり」
平成 8 年に本県で品種登録した「にっこり」は、
大きく多汁で甘く、既存の晩生なしに比べ食味良
好であることを強みに、県オリジナル梨としてブ
ランド化を図ってきました。これまで、貯蔵性が
良い特徴を活かして年末の贈答向けまで青果によ
る販売延長が行われてきましたが、優れた特性を
活かして加工利用を図れば業務用や土産物など多
くの需要にも対応できると考え、昨年度、中央果
実協会の「果実加工需要対応産地育成事業」に取
写真
り組みました。試作した加工品は、これまで梨で
事例のないフリーズドライ技術とし、外観や風味
が損なわれない、サクサクとした新食感を感じら
れるものとなり、パッケージデザインにも工夫を
こらしました。各種展示会で試食アンケートを実
施したところ、「食感が良い」「甘さにビックリ」
「発想がおもしろい」など、好評価を受けました。
(果樹研究室)
フリーズドライ果実(左)と 試作したパッケージ(右)
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