(様式4) 別紙2 論文審査の結果の要旨 学位申請者 仲宗根一樹 本論文は「Study on regenerated cellulose hydrogel films derived from waste sugarcane bagasse and evaluation of their biocompatibility(サトウキビ廃棄物由来の再生セルロースを用いたハイドロゲルフィルムの創成と その生体適合性評価に関する研究) 」と題し、全 6 章で構成される。第 1 章「General introduction」では、 特にバガスを含む農業系廃棄物バイオマスを解説し、バイオマス由来天然高分子との生体適合性材料へ の応用とそれらハイドロゲルの医療材料応用について、実際の研究例を挙げて述べた。第 2 章「Effect of pre-treatment of sugarcane bagasse on the cellulose solution and application for the cellulose hydrogel films」では、 サトウキビバガスから、酸・アルカリ、次亜塩素酸ナトリウムよる化学処理で再生セルロースとした後、 塩化リチウム(LiCl)/N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、セルロースハイドロゲルフィルムを作 製する相転換技術を確立した。化学処理条件を変えることで、リグニン含有量や分子量の異なるセルロ ースが得られ、そのハイドロゲルの含水率は約 1000−2000%の範囲で変動し、貯蔵弾性率 G’は 1.7×105 から 6×104 Pa とゲル物性がリグニン含有率により変化することを明らかにした。第 3 章「Cytocompatible cellulose hydrogels containing trace lignin」では、微量リグニンを含むハイドロゲルの細胞親和性を評価し た。処理条件を変えリグニン含有量が 1.68−0.68%の範囲のハイドロゲルを調整し、比較に用いた細胞 培養ポリスチレン皿を上回る細胞増殖性が、リグニン含有量の高い場合に観測された。また、リグニン を多く含むゲルは引張強度が高く、破断時の伸びも大きい良好な機械物性を示した。第 4 章 「Biocompatibility evaluation of cellulose hydrogel film regenerated from sugarcane bagasse waste and its in vivo behavior」では、セルロースハイドロゲルについてマウスを用いた in vivo 実験で、生体適合性の評価を 行った。4 週にわたるゲルの留置でのマウス腹部の炎症反応は観察されず、高い生体適合性を示した。 また、生体内でセルロース分子量が 5.7×105−3.9×105 と僅かに減少したが、弾性率の極端な低下などは 見られず、約 4 週間の実験期間では生体内で安定であることを明らかにした。第 5 章「FT-IR analysis of sugarcane cellulose hydrogels in wet condition at different temperature and effect of lithium chloride concentration」では、FT-IR スペクトル測定により含水セルロースハイドロゲル中の水素結合の温度依存 性について述べた。その結果、温度上昇に伴い、セルロースの分子間と分子内水素結合が切断され、ま た、セルロース溶液中の LiCl 濃度が高いほどセルロースと水との相互作用が強いことを示した。第 6 章では、本研究で得られた知見を総括し、サトウキビバガス廃棄物から作製したセルロースハイドロゲ ルの医療材料応用への可能性について述べた。 よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な 価値を有するものと認める。 審査委員主査 小林 高臣 印
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