イオン液体を用いたエポキシセルロースの製造

20151113 – JST関⻄3大学新技術説明会
イオン液体を用いたエポキシセルロースの製造
兵庫県⽴⼤学⼤学院⼯学研究科
化学工学専攻
助教
柿部 剛史
1
・Summary
「特徴・機能性の異なる2種類の混合イオン液体」
イオン液体の回収と再利⽤
セルロースの溶解
修飾置換反応
(エポキシ化反応)
エポキシセルロース
・生分解性の可能性
・低毒性
・無溶剤系での液化可能性
⇒ 機能性接着剤
セルロース誘導体の
単離・精製
硬化
(3次元架橋反応)
特願 2015-027403
2
・Summary
「特徴・機能性の異なる2種類の混合イオン液体」
セルロースの溶解
修飾置換反応
(エポキシ化反応)
セルロースイオノゲル
・セルロース:1〜10wt%
・イオン液体:90〜99wt%
・遊離なプロトン(H+)を含む
・イオン液体のにじみ出し無し
⇒ 固体ゲル電解質(プロトン伝導体)
硬化
(3次元架橋反応)
特願2015-108851
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・Ionic Liquids
イオン液体:100℃以下に融点を持つ(主に常温で)液体の有機塩
不揮発性 ⇒ 真空系での利⽤可
⾼⽐熱容量 ⇒ 熱伝媒体として利⽤可
難燃性・高耐熱性 ⇒ 400℃以上もOK
低粘性 ⇒ 高ハンドリング性
広い液体温度域 ⇒ -30〜ca.300℃
⽣体分⼦の良溶解性
多くの反応における触媒能
分子デザイン性 ⇒ 報告1200種以上、市販250種以上
・イオン液体を単独で用いるメリット・デメリット
・イオン液体/水(有機溶媒)混合系
・イオン液体/イオン液体混合系
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・Modification of Cellulose
修飾セルロース
エーテル(R-O-R)結合により、機能性置換基の修飾。
Ex.:カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アセチル等
・機能性の付与
・溶解性の向上
・ハンドリング性の向上
セルロース
多くの水酸基(-OH)により強固な水素結合性を有し、
⼀部の有機溶媒以外にはほとんど不溶。
・⻑時間の溶解過程
・高温の加熱処理
・劇物試薬による前処理
・分⼦量の低下
5
・Concept
イオン液体(混合系)
セルロース
×
木質バイオマスの機能性材料化
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・従来系との比較・問題点
セルロース誘導体の合成に関して
● 強酸、強アルカリによる⾼温・⾼圧下での前処理が必要
⇒ エネルギーコストの問題
⇒ 安全性・環境負荷
⇒ 触媒の回収不可
⇒ セルロースの重合度低下
●
ハロゲンの分離が困難
⇒ 腐食による基材へのダメージ
イオン液体の利⽤に関して
⇒ コスト面の問題
⇒ ハンドリング性の問題(粘性)
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・セルロースの溶解(第1のイオン液体)
セルロース
多くの水酸基(-OH)により強固な水素結合性を有し、
⼀部の有機溶媒以外にはほとんど不溶。
セルロースの誘導体化
(化学修飾)
・⻑時間の溶解過程
・機能性の付与
・高温の加熱処理
・溶解性の向上
・ハンドリング性の向上 ・劇物試薬による前処理
・分⼦量の低下
[EMI][MeP]
10 wt% cellulose
dissolved at 45 oC.
Ohno et al., Green Chem., 2008
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・アルコール性水酸基の脱水縮合反応(第2のイオン液体)
Brønsted acid - substances which dissociate in aqueous solution to give H+.
J.Davis et al., J.A.C.S., 2002.
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・混合イオン液体中でのセルロースエポキシ合成
Glycidol
・副生成物は水のみ
・低温(40℃~)で反応
Cellulose in
60 oC, 24h
Ethylenediamine
as cross linker
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・硬化反応前後の弾性率変化
・硫酸を触媒として⽤いる場合と⽐較しても、⾼い弾性率を⽰す。
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・イオン伝導特性
Ionic conductivity [log(σi / mS cm-1)]
-1.5
Cellulose in
-2.0
IL1
-2.5
IL2
-3.0
-3.5
Only IL1
IL1 : IL2
99 : 1
95 : 5
80 : 20
・固体高分子電解質として十分な
イオン伝導特性。
・フレキシブルな膜として得られる。
2.8 2.9 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5
1000/T [1/K]
12
・イオン液体混合系のメリット
1:機能性を損なわない調整
2:「性能の異なる」イオン液体の目的に合わせた
目的に合わせた調製
目的に合わせた
3:利⽤コスト対応
混合イオン液体
O
P
HO
N
O
OCH3
H
O
S
O
O
N
N
O
N
O
S
H
O
O
「構造デザインが可能で、
複数の機能性部位を修飾可能」
複数の機能性部位を持つイオン液体の設計
O
O
P
HO
O
・嵩高い構造→融点、粘度の上昇
⇒溶解性、ハンドリング性の低下
・それぞれの機能の微調整が困難
S
O
O
O
O
H3C
H
OCH3
N
N
O
S
O
S
O
O
H
O
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・イオン液体混合系のメリット
1:機能性を損なわない調整
2:「性能の異なる」イオン液体の目的に合わせた
目的に合わせた調製
目的に合わせた
3:利⽤コスト対応
IL2
IL1
100:0
90:10
80:20
0:100
セルロース
溶解性
非常に高い
高い
低い
×
触媒能
×
高い
高い
非常に高い
×
少ない
多い
非常に多い
(エネルギー効率)
H+濃度
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・イオン液体混合系のメリット
1:機能性を損なわない調整
2:「性能の異なる」イオン液体の目的に合わせた
目的に合わせた調製
目的に合わせた
3:利⽤コスト対応
溶媒IL
IL1:セルロース溶解性
IL2:キチン溶解性
IL3:リグニン溶解性
⼤量合成によりコストカット
触媒IL
ILa:〇〇反応触媒
ILb:××反応触媒
ILc:△△反応触媒
・
・
・
僅かな添加で済むことで
原料コストを抑える
「混合」することを前提としたパッケージ化により
コストを抑えることが可能
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・Conclusions
cellulose
Ionic liquids mixture
Epoxidation
Dissolution
Plastics
Adhesive
Electrolyte
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・Conclusions
● セルロースの溶解、セルロースの修飾触媒としての役割を分担したイオン
液体をそれぞれデザイン、合成、混合することで各イオンの機能を阻害し
ない「混合イオン液体」を調整した。
● 上記、「混合イオン液体」中でセルロースを溶解し、ハロゲンフリーな
反応系により、副生成物なく、目的のエポキシセルロースが得られる。
● 得られるエポキシセルロースは、セルロースの重合度低下がないため、
⾼い弾性率を⽰す。
● また、得られた「セルロースエポキシのイオン液体溶液」を…
◎
3次元架橋させることでゲル電解質が得られ、固体としては非常に
高いイオン伝導性を有したものが得られた。
◎
第2のイオン液体(遊離プロトン含有)により、プロトン伝導性材料
として有効である。
◎
架橋反応前にMg塩やLi塩を添加することで、⼆次電池⽤電解質材料
としても有効。
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・想定される用途
プロトン伝導性材料
(燃料電池用電解質)
燃料電池用電解質)
イオン伝導性材料
(二次電池用電解質)
二次電池用電解質)
機能性樹脂材料
イオン伝導アクチュエータ材料
機能性接着剤
(生分解性、生体適合性)
生分解性、生体適合性)
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・実用化に向けた課題、企業への期待
・セルロース誘導体
→ 生分解性、生体適合性などの環境適合性に関する
物性の評価
→ 電解質としての評価
・混合イオン液体
→ 溶解する難溶解性化合物の提案
→ 修飾する機能性官能基の提案
→ パッケージとしての共同研究
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・本技術に関する知的財産権
発明の名称:エポキシ化セルロースの製造方法、
エポキシ樹脂の製造方法、
及びセルロースのエポキシ化処理⽤混合イオン液体
出願番号 :特願2015-027403
出 願 人 :公⽴⼤学法⼈兵庫県⽴⼤学
発明者
:柿部 剛史、岸 肇、水田 和希
発明の名称:プロトン伝導性高分子ゲル電解質
出願番号 :特願2015-108851
出願人
:公⽴⼤学法⼈兵庫県⽴⼤学
発明者
:柿部剛史
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・お問い合わせ先
公⽴⼤学法⼈兵庫県⽴⼤学
産学連携・研究推進機構 知的財産本部
知的財産コーディネーター 久保幸雄
TEL 079-283-4560
FAX 079-283-4561
E-mail [email protected]
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