No.178

TSKgel TECHNICAL INFORMATION
No.178
イオン液体を移動相として用いたセルロースの SEC 測定
Size Exclusion Chromatography of Cellulose by using ionic liquid as eluent
木質系バイオマス(リグノセルロース系バイオマ
ス)は、主にセルロース、ヘミセルロース及びリグ
ニンの 3 種から構成されています。このうち、セル
ロースは、グルコースがβ-1,4-グリコシド結合し
た構造をもち、各種溶媒への溶解性が極めて低く、
SEC 測定により分子量や分子量分布等の物性値
の情報を得ることが難しい物質の 1 つです。従来、
カドキセン法や、溶媒置換法(脱水した後、ジメチ
ルアセトアミドに溶解させる)1)により分子量測定が
行われてきました。
イオン液体とは、常温付近の温度において液体
として存在する“塩”の総称で、図 1 に示すような
構造をもつ物質です。酸と塩基の組み合わせによ
りホスホネート系やスルホニルイミド系等の多くの
種類があります。一般の溶媒とは異なる溶質の溶
解性を示し、極性の高い一部のイオン液体は、セ
ルロースを溶解することが確認されています。
H3C
N
N
CH3
本報では、イオン液体を移動相として使用した
セルロースの SEC 測定例を紹介します。
移動相には、ホスホネート系イオン液体である
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム メチルホスホネ
ート(図 1、関東化学)を使用しました。カラムには、
TSKgel SuperAWM-H を用い、溶媒の粘度が高い
ため、流速を 0.05 mL/min としました。測定試料及
び標準物資には、セルロース(Scientific Polymer)
及びプルラン(Shodex)を用い、溶媒中に分散後、
室温下に 3 日間静置することで溶解させました。
各試料のクロマトグラムを図 2 及び図 3 に示しま
す。プルランによる良好な校正曲線が得られ、セ
ルロースも良好なクロマトグラムが得られていま
す。
本測定の基本技術を確立し 2-5)、適切な御助言を
頂きました東京農工大学大野教授及び金沢大学
黒田特任助教に感謝致します。
H3C
H
O
P
O
O
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム メチルホスホネート
図 1 イオン液体の構造式
表 1 分析条件
Column :
Eluent :
Flow rate :
Pressure :
Injection volume :
Column temp. :
Detector :
TSKgel SuperAWM-H (6.0 mmI.D. x 15 cm)
1-Ethyl-3-methylimidazolium methylphosphonate
0.05 mL/min
2.2 MPa
100 μL
70 ℃
RI
Concentration :
Cellulose ; 1.0 g/L
Pullulan ; 0.2~0.5 g/L
600
Peaks
1: Mp=853,000
2: Mp=380,000
3: Mp=186,000
4: Mp=47,100
5: Mp=23,700
6: Mp=12,200
7: Mp=5,800
8: Mp=342
500
1
400
6
Signal intensity, mV
2
300
7
3
8
200
4
100
5
0
(100)
35
40
45
50
55
60
Retention time, min
65
70
75
80
図 2 プルラン標準物質のクロマトグラム
140
120
7
Mw: 52,600
Mn: 10,800
Mw/Mn: 4.9
1
6
2
3
5
4
80
5
6
60
7
4
40
3
8
20
2
0
1
(20)
35
40
45
50
55
60
Retention time, min
65
70
75
図 3 セルロースのクロマトグラム
引用文献
1)柳澤正弘, 磯貝明,Cellulose Commun., 12, 1, 36-39 (2005).
2)K.Kuroda, Y.Fukaya, H.Ohno, Anal. Methods, 5, 3172-3176 (2013).
3)K.Kuroda, Y.Fukaya,T.Yamada,H.Ohno, Anal. Methods, 7, 1719-1726 (2015).
4)Y. Fukaya, K. Hayashi, M. Wada, H. Ohno, Green Chem., 10, 44-46 (2008).
5)Y. Fukaya, A. Tsukamoto, K. Kuroda, H. Ohno, Chem. Commun., 47, 1994-1996 (2011).
80
Log M
Signal intensity, mV
100