2016 年 USTR 外国貿易障壁報告書(日本関連部分概要) 平 成 28 年 5 月 外 務 省 3月31日(米国時間)に米通商代表部(USTR)が公表した「2016年外国貿易障壁報告書」の 概要(日本関連部分)は以下のとおり。 1 概観 日本は環太平洋パートナーシップ(TPP)協定において他の 10 か国と並ぶ米国のパー トナーであり,12 の TPP パートナー国は,世界経済の 40%を代表する。2015 年 10 月に妥 結し,2016 年 2 月に署名された TPP 協定は,世界で最も急速に成長する国々における米 国の利益を著しく増進させ,米国の物品及びサービスの輸出を促進し,並びに米国の労 働者,農家,ビジネス及び消費者を資するものである。TPP 協定の下,TPP パートナー国 は 18,000 もの米国産品に課される輸入税を削減するほか,米国のサービス供給者への新 たな市場を開放し,不当に米国輸出品を阻止する非関税障壁に対処し,国際的に競争力 があって知的財産が集約される米国産業のためにデジタル貿易及び強力でバランスのと れた知的財産ルールを推進し,公平な競争とグッド・ガバナンスを醸成することにより 米国企業にとって公平な競争の場を作り,執行可能かつ高い水準の労働及び環境基準を 定め,消費者の安全及びプライバシーを確保しつつ米国のイノベーターと輸出業者によ る貿易を促進する公平で透明性のある規制政策を確保し,並びに米国の中小企業への支 援を含め包摂的な成長を促進するものである。TPP 参加国は,自国の労働者,農家,ビジ ネス及び消費者が可能な限り早く協定からの利益を得られるようにするため,現在はそ れぞれの国内承認プロセスを完了させることに集中している。 TPP に加え,米国は,通商に関連した日本との諸問題について,二国間及び他の場で 取り組んでいく。 日本は,また,新サービス貿易協定(TiSA)の交渉にも参加している。 2 牛肉及び牛肉製品 2013 年 2 月及び 2015 年 1 月に日本がとった措置により,米国は,30 か月齢以下の牛 に由来する牛肉及び牛肉製品の輸出が可能となった。米国は引き続き,日本が OIE にお ける米国の評価と整合させるべく,全ての月齢の牛及び牛製品を受け入れ,市場を完全 に開放するよう働きかけていく。 3 収穫前後で使用される防かび剤 日本は,収穫前は農薬として,収穫後は食品添加物として使用される防かび剤を含む 化学物質についての審査プロセスを合理化する。 4 コメ輸入制度 一般輸入分のほとんどが加工用,飼料用又は食料援助用に仕向けられ,消費者に提供 されない。2015 年の米国から日本へのコメ輸出は,約 278 百万ドル・36 万トンである。 業界の調査によれば,日本の消費者は米国産の高品質米を買うと見込まれるにもかかわ らず,米国産のコメが日本の消費者に届く量はわずかである。TPP の下,新たな国別枠 (CSQ)の導入及び国別枠に関する運用方法の変更により,米国のコメ輸出にとって市場 アクセスが改善する。米国は,引き続き,WTO 上のコメ輸入制度に関する日本のコミット 1 メントの観点から日本の輸入を注視し続けていく。 5 小麦輸入制度 TPP の下,日本は現行の WTO 関税割当制度の枠外で,食糧用小麦について数年間にわ たって増加する新たな国別枠を導入するとともに飼料用小麦について新たな非課税のア クセスを提供する。また,TPP によって小麦粉調製品や高付加価値製品を含む小麦製品に ついての市場アクセスが改善される。 6 豚肉輸入制度 TPP の下,従価税の関税撤廃及び低価格帯の豚肉部位への特別な関税の大幅削減(こ れにより,より制限的でない差別関税制度がもたらされる。)が生鮮・冷蔵・冷凍の豚肉 部位の輸出に貢献し,また,幅広い豚肉製品に対する関税が経時的に撤廃される。 7 牛肉セーフガード 2015 年も日本は米国にとって最大の牛肉輸出先国であった。2013 年から米国からの輸 出が増加したがセーフガードは発動されなかった。TPP の下,現行の 38.5%の従価税の大 幅削減(協定発効時の大幅削減を含む。)が生鮮・冷蔵・冷凍の牛肉部位の輸出に貢献し, 幅広い牛肉加工製品の関税が経時的に撤廃され,及び TPP のセーフガードが日本の既存 の WTO セーフガードと置き換えられて段階的に廃止される。 8 かんきつ,乳製品,加工食品,他の農産品への高関税 日本は国内生産者保護のため高関税及びその他の国境措置を課している(穀物,砂糖, かんきつ,ワイン,乳製品,加工品等を例示)。TPP の下,幅広い農産品(りんご,ぶど う,ぶどうジュース,くるみ,卵,ワイン等を例示)の関税撤廃について日本はコミッ トした。 これら品目の関税に対処し,市場アクセスを改善することが米国の優先事項である。 9 皮革製品・履物 日本は,皮革履物の日本市場への輸入を実質的に制限する関税割当枠を設定し続ける。 TPP の下,皮革製品に対する関税及び割当枠が撤廃される。 10 サービス障壁(日本郵政,保険) 日本政府による改革及び銀行,保険,急送便市場で日本郵政と他の民間会社との間の 対等な競争条件が達成されるようあらゆる必要な措置をとるための取組を注意深く注視 し続ける。 急送便の分野について,米国政府は日本に対し,通関手続及び義務を含めた対等な競 争状況の確保や,日本郵便の非競争的(独占的)事業からの収入で同社の国際急送便サ ービスを補助することを禁止することによる公正競争の向上のための措置をとることを 求めていく。TPP の下,日本は小包,物品等の送付について無差別待遇を与えることを含 む新たな義務を履行することとなる。 保険一般について,TPP の下,日本及び全ての TPP 参加国は保険商品を提供する郵便事 業体が公平な競争の場で運営を行うことを合意するとともに,日本政府は米国政府に対 し,米国保険会社による日本郵政の販売網へのアクセス及び日本郵政と競争上対等な条 件の下での運営についてコミットした。 かんぽ生命について,日本郵政グループ各社と他の民間会社との間の対等な競争条件 2 を確立することが必要であり,日本政府に対して,①日本郵政金融二社と他の民間会社 に対する監督上の取扱いの相違,②(取り扱う商品の選択のプロセスを含む)他の民間 会社による郵便局ネットワークへのアクセス,③日本郵政のビジネス及び関連事業体の 間の内部相互補助を含む,対等な競争条件に関する一連の懸念に対処するための措置を 講じることを引き続き求める。 郵便局ネットワークへのアクセスに関し,アフラック社のがん保険商品を取り扱う郵 便局数が 2015 年 7 月までに,1000 局から 2 万局以上に増えたこと等,大きな進展があっ た。 対等な競争条件が確保されるまで日本郵政金融二社の業務範囲の拡大を認めないよう, 日本に求め続ける。 11 知的財産保護 知的財産権の保護及び執行に関する強力かつバランスのとれた基準を設定する TPP 協 定の下,日本は自国の知的財産権制度を強化していくことにコミットした。米国は TPP の実施や二国間のやり取りによって知的財産権に関する事項に対処するために日本と協 働する。 12 政府調達 米国政府は 2020 年の東京オリンピックを始めとした建設事業に関連する政府調達に 特別の注意を払っている。TPP 協定において日本は WTO 政府調達協定(GPA)上のコミッ トメントと同様の政府調達に係るコミットメントをしている。TPP と同時に行われた非関 税措置に関する日米並行交渉の下,日本は入札談合を防止し,入札過程の透明性を高め るための政府調達に関する取組を行うことに合意した。 13 公正取引委員会の手続的公正と透明性の向上 内閣府に設置された独占禁止法審査手続についての懇談会は,手続の透明性を高める よう審査手続に関する指針を公正取引委員会が公表するよう 2015 年 4 月に勧告し,2015 年 12 月に同委員会が「独占禁止法審査手続に関する指針」を発表した。 14 透明性(諮問機関,パブリックコメント) 諮問機関については,政府が設立する審議会はより高い透明性が要求されることとな る。 パブリックコメントについて,TPP により,全ての提案される措置について意見を提出 する合理的な機会が与えられること及び意見提出の 60 日前に規制案を公表することが締 約国に義務付けられている。 15 自動車 伝統的に様々な非関税障壁が日本の自動車市場へのアクセスを妨げており,米国産自 動車の日本での総売上は低く,それは重大な懸念である(具体的に,基準認証の問題, 規制の制定過程で利害関係者からの意見表明のための十分な機会及び透明性の欠如,流 通・サービスのネットワーク形成を阻害する障害,PHP 制度により輸入される米国車が財 政上の奨励プログラムから利益を得る機会の欠如などを列挙。)。 前向きな動きとして,TPP 及び自動車貿易に関する日米間の二国間合意は,規制の透 明性,基準,認証,財政上の奨励及び流通を含む幅広い非関税措置について扱っている。 また,同二国間合意には長期間に及ぶ米国関税の撤廃,強力な原産地規則及び強固な紛 3 争解決要求が含まれる。さらに,2014 年 7 月に行われた特定のエアコン冷媒を使用する 車両のメンテナンス手続規制の緩和によりこの冷媒を使用する新たなモデルの輸入が可 能になった。また,簡素化された PHP 手続による輸入数量の上限が 2,000 台から 5,000 台に大幅に増加された。 16 航空宇宙 2016 年 2 月,米国航空会社による羽田空港へのアクセス増について日米間で合意に至 った。 (了) 4
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