山形県医師会会報 平成28年4月 第776号 9 山形大学医学部在宅医療・在宅看護教育センター 山形大学医師会 佐 藤 慎 哉 (医学部総合医学教育センター) 山形大学医学部が在宅医療・在宅看護(介護) このような状況下で、各施設のニーズに沿いなが 推進のために設立した「在宅医療・在宅看護教育 ら研修の機会を提供することで、在宅医療・在宅 センター」を紹介いたします。県医師会の皆様方 看護技術の均てん化と質の向上を目的として、山 も含め、県内の医療従事者の方々の積極的活用を 形大学、県医師会、県歯科医師会、県看護協会、 願っております。 県薬剤師会、山形県が協力して2013年4月に設立 したのが、在宅医療・在宅看護教育センターです。 【設立趣旨】 本センターでは、山形県民の未来の幸福を考慮 我が国は、75歳以上の人口が、戦争直後と比較 し、一度の教育のみならず、不断の検証を行う組 し2010年で約16倍となりました。さらに今後40年 織となることを目指して、地域医療を支える皆さ に亘り約25倍の高齢者が医療の対象者になります。 んとともに取り組みを進め、国民に信頼される医 従って、急性期病院から診療所も含めた全ての医 療の実現を図りたいと考えております。 療機関・医療従事者が連携してこの医療ディマン ドに対応しなければなりません。今後も在宅医療・ 【これまでの取り組み】 在宅看護の重要性が質量ともに増していくわけで 在宅医療に関しては、山形大学医師会として県 す。現在でも、地域の医師会や在宅看護(介護) 医師会の「在宅医療推進委員会」に参加し、当セ センター等が頑張って在宅医療・在宅看護を支え ンターの事業についての紹介を行っておりますが、 ていますが、疾病構造の変化、特に今や二人に一 残念ながら支援の実績は、現在までございません。 人が罹患する「がん」に関する在宅医療・在宅看 その他の職種に対する支援として、在宅看護に関 護の重要性が増してきます。一方で、例えば化学 する支援が進んでおります。また県歯科医師会の 療法や緩和治療は日進月歩で、在宅がん医療・在 研修事業への支援を計画中ですので、今回はこの 宅看護に必要な知識・技能の進歩に合わせた教育 二つをご紹介いたします。 の場が待たれています。 山形県においては、現在でも各の在宅支援セン <在宅看護支援事業> ターなどで独自の研修会が行われていますが、 「な プログラム名:がん看護の最前線 かなか準備に時間がとれない」 、「聞きたいテーマ 1)目的 があっても講師のツテが無い」といった問題や、 高齢化社会やがん患者の増加により在宅医療 それぞれの施設間に質のばらつきがあることは否 や在宅看護へのニーズが高まっているが、在宅 めません。また、在宅医療・在宅看護といっても、 医療に特化した教育の機会は少ない。このよう 医師、看護師だけでなく薬剤師(薬局)や歯科医 な状況をふまえ、本コースでは在宅看護とがん 師も含めて様々な職種が関わる必要があります。 に関する幅広い知識を習得すると共に、在宅看 10 山形県医師会会報 平成28年4月 第776号 護が実践可能となるトレーニングを行い、 「在宅 における退院支援の実際と退院直後の環境調 医療・在宅看護」を支える力となる看護職を養 整方法について学ぶ。 成する。 2)コース概要 がん患者とその家族が在宅にスムーズに移行 できるようにするために、退院支援や社会復帰、 在宅がん療養者の看護を講義と実習を組み合わ せて行う。 講義は、認定看護師や訪問看護師の講義を多 く取り入れ、最新の退院支援や在宅看護、がん 緩和看護について学ぶことができるようカリ (平成27年度実績) 【講 義】 ・開講特別講演(7月4日) 村上正泰先生(130 名参加) ・特別講演(9月26日) 川越博美先生(126名 参加) ・教育講演 秋山正子先生(10月17日)(100名 参加) ・講義(全11コマ) 52名(延207名)参加 キュラムを組んだ。 内容 がん患者の退院支援 実習は、山形大学附属病院でのキャンサート がん化学療法患者の看護 リートメントボード参加によるチーム医療実習 エ ン ト ゙ ・ オ フ ゙ ・ ラ イ フ ・ ケ ア における看護 や疼痛緩和医療部実習、外来化学療法室実習、 在宅がん療養者と家族を支える社会資源 がん認定看護師らによる勉強会参加、がん患者 在宅がん療養者の口腔ケア 相談と退院支援実習を行い、入院から在宅療養 在宅がん療養者のアセスメント・症状別看護 に移行する仕組みと他職種合同カンファランス 在宅がん療養者の褥瘡看護 を経験する。 緩和ケアとリハビリテーション 3)授業・実習内容 【実 習】 ○講義 ・受講者総数(延べ数) 13名 ・がん医療における継続したがん看護の充実 ・実習内訳(複数選択) ・がん化学療法患者の看護 がん患者相談と退院支援実習(必修) ・放射線療法患者の看護 チーム医療実習(選択) ・疼痛緩和の看護 外来化学療法室実習(選択) ・がん在宅療養者・家族に対する退院支援 疼痛緩和医療部実習(選択) ・在宅がん療養患者の訪問看護 褥瘡ケア実習(選択) ・在宅がん療養者へのケアの実際 NST・口腔ケア実習(選択) 【その他】 ○実習(受講者の希望に沿って医学部附属病院 で行う) *県内200ヶ所の看護管理者に教育内容のニー ズ調査実施。 ・疼痛緩和医療部実習:緩和ケアチームの回診 に参加し、緩和チームケアの実際を学ぶ。 ・外来化学療法室実習:外来化学療法室にて外 来化学療法の実際を学ぶ。 ・チーム医療実習:キャンサートリートメント ボードに参加し、チーム医療ならびに集学的 治療の進め方を学ぶ。 ・がん患者相談と退院支援実習:退院支援部署 <県歯科医師会への支援事業> 山形県から県歯科医師会に委託されている「在 宅歯科医師養成のための講習会」への講師派遣を 現在計画中である。 山形県医師会会報 平成28年4月 第776号 11 *在宅歯科医師等養成講習会: ・栄養に関する検査と評価 1 目的: ・口腔機能と低栄養について 主に高齢期・寝たきり者等の口腔ケアの推進を ・脳血管障害患者又はがん患者の全身管理に 図るため、歯科保健医療に関する知識の習得や地 ついて 域における先進的な医科歯科連携等についての講 ・在宅医療における多職種連携の先進事例に 習会を実施し、在宅歯科医療について専門性をも ついて つ歯科医師及び歯科衛生士をより多く養成し、在 宅歯科医療の発展に貢献することを目的とする。 【おわりに】 山形大学医学部在宅医療・在宅看護教育セン 2 講習会の対象者 ターでは、県内の在宅医療・在宅看護の推進に向 歯科医師等で、高齢期や在宅療養者に在宅歯科 けて、医師会等の皆様と密接に連携しながら積極 医療等を積極的に実施する予定にある者。 的な支援を行いたいと考えています。是非、皆様 方の地区でのセミナー等の開催の際には、山形大 3 講習会内容 学医学部のリソースを積極的に活用していただけ 敢 開催場所及び開催回数:県内一地区で一回 れば幸いです。 開催。 (連絡先メールアドレス: 柑 定員:100名程度 me dedu@mws . i d. yamagat au. ac. j p) 桓 講習会の内容: 内容はおおむね次のとおりとし、合わせて 10時間程度の講習。
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