第6章 施策の実現に向けた主な取り組み

第6章
施策の実現に向けた主な取り組み
千年希望の丘
第6章
施策の実現に向けた主な取り組み
第1節 基本方針1:安心・安全で良質な水を供給する水道
水源から蛇口(給水栓)までの水質管理を徹底するため、浄水処理施設の設備更新を進め、
現在の水質管理体制を維持しつつも、給水水質の向上に努め、安心・安全で良質な水を供給
します。
【施策目標】
1.浄水施設の適切な更新
2.水質管理の維持
3.給水水質の向上
1)浄水施設の適切な更新
〈主要施策〉
① 浄水処理施設の適切な更新
①浄水処理施設の適切な更新
玉崎浄水場は、阿武隈川の表流水を取水して浄水処理を行っています。原水は阿武隈
川の最下流であるため水質が良好とは言えず、多少の浄水処理上の問題はありますが、
これまで大きな事故はなく維持されてきました。
しかしながら、浄水処理施設については昭和 44 年 12 月の創設から 40 年以上が経
過しているため老朽化が進行しています。特に創設から更新されていない機械設備・電
気設備・計装設備については、早急に更新が必要です。
このことから、浄水処理施設の補修・設備の更新を行い、安心・安全で良質な水の供
給に努めます。
長期的には、浄水場の全面更新が必要となりますので、浄水処理水量、浄水処理方式
等についても検討を行い、最適な浄水場計画を検討します。
6-1
2)水質管理の維持
〈主要施策〉
① 給水水質監視設備の維持
② 水質検査体制の維持
①給水水質監視設備の維持
水道事業所では、市内の給水栓 3 ヶ所に水質自動測定装置を設置し、色度・濁度・残
留塩素を測定し、テレメーターにより玉崎浄水場中央管理室において、常時監視制御し
ています。今後とも給水水質の監視を継続していきます。
②水質検査体制の維持
水道水の安全性の確保と信頼性の向上を図るため、玉崎浄水場内の水質検査センター
にて行う水質検査体制を維持し、常に水質の監視を行い、安心・安全で良質な水の供給
を継続していきます。
6-2
3)給水水質の向上
〈主要施策〉
① 鉛製給水管の解消
② 配水管洗管の継続
③ 貯水槽水道への関与
①鉛製給水管の解消
鉛製給水管については、漏水工事や布設替え工事等の際に更新を実施していますが、
今後は、管路の耐震化工事や、老朽管の布設替え工事の推進と併せて、早期の鉛製給水
管の解消についても努めていきます。
②配水管洗管の継続
年に 1 回、消火栓等を利用して、管内に沈澱した砂・錆等を取り除く洗管作業を実施
しています。管内の水質維持のため、洗管作業は継続して行っていきます。
③貯水槽水道への関与
貯水槽水道施設の安全確保のため、貯水槽水道施設の管理者に対して、水質の適正な
管理に関する指導・助言を行っていきます。また、ホームページや広報誌等によって管
理の必要性、方法に関する情報提供を行い、適正な管理について理解が深まるよう努め
ます。
市内の一部を除いて 3 階直結給水も可能となっていますので、可能な建物については
直結給水への切り替えを推奨していきます。
6-3
第2節 基本方針2:災害に強く安定して供給する水道
安定した水源を維持し、施設や管路の耐震化やバックアップ機能の強化、応急給水・復旧
に関する危機管理システムの強化を進め、災害に強い安定した水道を目指します。
【施策目標】
1.安定した水源の維持
2.施設の耐震化
3.バックアップ機能の強化
4.危機管理システムの強化
1)安定した水源の維持
〈主要施策〉
① 地震等の災害や水質事故等の非常時に対応した水源の維持
①地震等の災害や水質事故等の非常時に対応した水源の維持
平常時における安定給水の確保は当然として、地震等の災害や水質事故のような非常
時においても、安定した給水の確保に努めることが水道事業としての責務と言えます。
岩沼市では、阿武隈川を水源とする自己水と、仙南・仙塩広域水道からの受水の、2
つの水源を持っています。
仙南・仙塩広域水道からの受水については、2011 年3月に発生した東日本大震災に
より供給が停止となりましたが、岩沼市では自己水を有していたため、短期間で水の供
給を復旧することができました。
一方、自己水については、将来的に玉崎浄水場の全面更新が想定されており、工事の
間は自己水の供給が停止することになりますが、その際は仙南・仙塩広域水道からの受
水量を増量することで柔軟に対応することが可能です。
今後も非常時に備え、この 2 水源を維持する計画です。
6-4
2)施設の耐震化
〈主要施策〉
① 主要施設の耐震化
② 基幹管路の耐震化
①主要施設の耐震化
玉崎浄水場は、既に耐震化工事が完了しており、根方高区・低区配水池については、
東日本大震災の影響で実施が遅れていますが、優先して耐震化工事を進めていきます。
②基幹管路の耐震化
基幹管路の延長は約 43km、そのうち耐震管は約 27.5km となっています。基幹管路
に占める耐震化率は約 64%と、比較的高い状況となっています。
(表 6-1)
今後は、目標年度である平成 37 年度までの 10 年間に、基幹管路で口径がφ200mm
~φ300mm のうち、約 11.9km を優先して耐震化工事を進めていきます。併せて、
重要管路の約 1.7km についても耐震化工事を進めていきます。(表 6-2)
表 6-1 基幹管路集計表(現況)
単位:m
口径(mm)
計
耐震管
DCIP
457
DCIP(A) DCIP(K) DCIP(T) DCIP(S) DCIP(NS)
11,475
11,773
11,773
415
HPPE
PPLP
10,052
4,509
234
29
10,052
4,509
234
29
415
非耐震管
457 11,475
※ 平成26年度業務「水需要予測及び管網整備計画業務委託」より集計
SP
重要管路
合計
43,006
900
17
27,514
64.0%
15,492
36.0%
3,145
3.4
8.5
11.9
0.9
0.7
0.1
1.7
13.6
※ 平成26年度業務「水需要予測及び管網整備計画業務委託」より集計
6-5
耐震化率
17
口径(mm) 延長(km)
300
200
計
150
100
75
計
計
4,045
表 6-2 基幹管路更新一覧表
基幹管路
SUS
3)バックアップ機能の強化
〈主要施策〉
① 停電、落雷対策の強化
② 配水池容量の適正な運用
③ バックアップ(バイパス)管路の整備
①停電、落雷対策の強化
自家発電設備については、老朽化し容量も不足してきたことから、更新を行います。
更新の際には、制御技術の向上や情報電子化の促進に伴って IC、半導体等を実装した
コンピュータ・計測機器や遠隔監視装置等が導入されることとなりますので、危機管理
の面から雷被害を未然に防ぎ、浄水施設を継続的に稼働させるため、落雷対策も行って
いきます。
②配水池容量の適正な運用
日常の運用では、滞留時間が長いと水質の悪化が懸念されるため、配水池の水位を下
げて運用しています。一方、災害時の給水を考慮した場合は、水位を最大としていた方
が安心です。今後は水需要が減少していくことから、水需要の推移を見ながら緊急貯水
量と滞留時間のバランスを考慮して、配水池を運用していきます。
志賀地区については、送水ポンプ能力及び配水池容量の適正化を検討します。
③バックアップ(バイパス)管路の整備
市内の管路は、JR 東北本線、国道 4 号バイパス、五間堀川、東部道路で分断されて
います。
特に五間堀川を横断する管路は 1 ヶ所のみですので、事故が発生した場合、五間堀川
の東側地区は断水となってしまいます。東側地区には工業団地、仙台空港等があります
ので、断水被害を最小限に抑えるためバックアップ管路の整備を行っていきます。
6-6
4)危機管理システムの強化
〈主要施策〉
① 応急給水施設への関与
② 応急復旧・応急給水体制の強化
①応急給水施設への関与
応急給水拠点設備として、現在、市役所敷地内、岩沼市消防署、玉浦防災移転住宅の
3 ヶ所に耐震性貯水槽(図 6-1)が設置されています。管理・運用については、防災
課で行っておりますので、水道事業所としては非常時に備えて、運用方法の協議を行い、
断水等の情報提供に努め、有事における応急給水の確保を図ります。
②応急復旧・応急給水体制の強化
大規模地震などの災害が発生した場合、水道施設の破損、給水困難な状況に陥ったケ
ースを想定して、応急給水拠点の整備や資器材の備蓄、調達ルートの確保などに加えて、
マニュアルの整備などを行い、応急給水・復旧体制の充実に努めます。
災害時の行動指針となる「応急対応マニュアル(仮称)」を充実したものとするために、
市民の参加も含む定期的な防災訓練や緊急時対応の訓練を実施して非常時の対応に備え
ます。マニュアルについては、全職員への周知を徹底させ、より実効性のあるものとす
ることで、緊急時における迅速で確実な対応を目指します。
また、日本水道協会宮城県支部や応援協定を締結している各種団体との連携を強めて、
災害時における支援受け入れの計画の検討も行い、非常時における協力体制を確固たる
ものとしていくとともに、周辺市町との緊急時における連絡管の整備についても検討し
ます。
6-7
市役所敷地内の耐震性貯水槽
(容量
消防署敷地内の耐震性貯水槽
40m3)
玉浦西地区の耐震性貯水槽
3
(容量 40m )
(容量
図 6-1 耐震性貯水槽の例
6-8
40m3)
第3節 基本方針3:運営基盤を強化し、健全な財政と
利用者満足度の高い水道
水道事業運営に当たっては、利用者満足度の高いサービスが提供できるように、経営の効
率化・強化をさらに進め健全な財政を持続するとともに、効率的な施設の整備や利用者サー
ビスの充実に努めます。
【施策目標】
1.事業経営の効率化・強化
2.効率的な施設の整備
3.利用者サービスの充実
1)事業経営の効率化・強化
〈主要施策〉
① 健全財政の強化
② 組織の強化
③ 人材育成
④ 業務の効率化の推進
①健全財政の強化
水道を「持続」させるため、計画的に水道施設の更新、耐震化などの事業を推し進め
る必要があります。これらの事業を遂行するためには、現状のような経営努力を継続す
るほか、事業計画・財政計画との調和を図りながら料金の適正化についても検討するこ
とが重要です。
今後の人口減少社会の進行に伴う給水収益の減少が恒常化する情勢において、老朽化
に伴う膨大な施設や管路の更新需要が見込まれています。これらの膨大な更新事業を実
施し、水道事業を持続させていくためには、必要な財源を確保することが必須となりま
す。
水道事業の財政の基礎は水道料金であり、適切なタイミングでの料金改定が出来なか
った場合、収入と支出のバランスが欠如して、健全経営が維持できなくなる恐れもあり
ます。
現状、収支差引がプラスで推移していますが、今後も楽観視はできないことから、適
正な料金について、広くお客様の意見を聴取した上で検討を進めていきます。
6-9
②組織の強化
水道事業所は、平成 26 年度現在、一般職 10 名、嘱託職員 6 名、計 16 人体制で運
営しています。
技術職については、6 名で市内全ての施設を管理しています。管理する施設の規模は
変わっておりませんが、10 年前に比べて技術職の人員が減っています。
今後、老朽化に伴う膨大な施設や管路の更新が見込まれており、現在行っている施設
の維持管理業務の他に、更新事業の管理が必要となってきます。その際、現在の体制で
は管理が難しくなってくるため、職員の増員も視野に入れながら、有能な人材を確保、
育成する組織づくりを進めます。
③人材育成
技術職を中心として、これまでの知識・技術を継承するとともに、民間企業の知識・
技術を活用する視点から業務の委託化も勘案しつつ、技術継承に取り組んでいきます。
水道事業は、建設だけでなく、水質、法制度、設備管理、経営などの多面的な知識が
必要となるため、専門職員の確保も含めた職員研修等の充実による人材育成を図ります。
さらに、豊富な技術・知識を有する退職者(OB)の有効活用についても検討を行います。
④業務の効率化の推進
お客様サービスの向上と事業の効率化を図るため、さらなる業務の効率化・見直しに
取り組んで、コスト縮減を目指していきます。
「水道管路情報システム(GIS:Geographic Information System ※地理情報シス
テム)」のデータ内容の拡充を行い、各種統計処理や計画作成に活用できるものとし、維
持管理の向上と業務の効率化をさらに進めていきます。
検針と料金収納については、検針を個人委託、料金収納は直営で行っていますが、こ
れらについても外部委託する方向で検討を行います。
6-10
2)効率的な施設の整備
〈主要施策〉
① 老朽化施設及び管路の更新
② 漏水防止対策の推進
①老朽化施設及び管路の更新
浄水処理施設については、既に耐用年数を超過して老朽化している電気計装設備や機
械設備について設備の更新を進めます。
岩沼市では、昭和 55 年以前に布設された管路を老朽管路と定義しています。基幹管
路を除く老朽管路は、布設延長が約 29km に及び、これらを優先して更新します。特に、
創設管路は鋼管であり、
約 3.2km が残っています。これを最優先に管路整備を進めます。
(表 6-3)
更新管の管材については、耐震管を使用することで、管路の耐震化も進めていきます。
表 6-3 創設管路及び老朽管路更新一覧表
口径(mm) 延長(km)
150
100
計
150
100
75
50
計
創設管
老朽管
合計
0.2
3.0
3.2
4.7
19.9
0.1
0.7
25.4
29
※ 平成26年度業務「水需要予測及び管網整備計画業務委託」より集計
6-11
布設年度別延長 (km)
20.0
第1更新時期
18.0
16.0
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
S30
S40
S43
S44
S45
S46
S47
S48
S49
S50
S51
S52
S53
S54
S55
S56
S57
S58
S59
S60
S61
S62
S63
H1
H2
H3
H4
H5
H6
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
布設延長(km)
14.0
図 6-2 管路の布設年度別延長
②漏水防止対策の推進
漏水を防止することは、ライフラインとしての安定給水を確保し、水道水の効率的な
使用を推進するために重要です。また、漏水は道路陥没などの原因ともなり放置できな
いものです。
そのため、漏水の早期発見・補修はもとより、耐震性があり漏水しにくい管路への更
新が重要となります。
漏水対策の施策として、次の事項を継続して実施します。
A 計画的な漏水調査作業(委託作業)
計画的な漏水調査作業については、平成 27 年度より民間委託を行っており、大
幅な漏水事故の削減に効果を発揮しており、今後とも継続して進めていきます。
B 配水管の更新事業
配水管路の更新事業については、基幹管路の耐震化、老朽管路の耐震化等の中で
進めていきます。
C 迅速な修理体制(委託作業)
迅速な修理体制については、平成 27 年7月に地元業者による水道工事業組合が
設立されたことから素早い対応ができるようになっています。
また、根方高区配水池系は、山間部から平野部と広い範囲となっているため、標高の
低い平野部が水圧の高い地区となっています。
水圧が高いと漏水につながり易いため、減圧弁の見直しを行い、適正水圧を確保しま
す。
6-12
3)利用者サービスの充実
〈主要施策〉
① 広報の充実
② 利用者ニーズの把握
③ サービスの充実
①広報の充実
市民の理解と協力を得るため、さまざまな情報を広報誌でお知らせするとともに、ホ
ームページや各種メディアを活用し、水道水の安全確保の取り組み、水道水質の情報及
び水道料金などについての情報をわかりやすく提供するよう努めます。
②利用者ニーズの把握
お客様のご意見やご要望を実現していくために、アンケートやインターネットを利用
した広聴活動について取り組み、これらにより収集された顧客ニーズについては全職員
で情報共有化する仕組みづくりに努めます。
③サービスの充実
お客様である市民にとって、より利便性の高い水道サービスの提供を目指して、地元
の水道工事業協同組合と連携して迅速な修繕対応や市民からの依頼・問い合わせに対し
ても迅速な対応ができるように努めます。
水道料金の支払い方法についても多様化を検討するなど、お客様サービスの向上に努
めます。
また、インターネット等の活用によるお客様サービスのさらなる利便性の向上に努め
ます。
6-13