第7章 フィルタ回路の部屋

第 7 章 フィルタ回路の部屋
バーチャル・スタジオ 31
ただし,G 0:電力ゲインの最大値,G(f ):電力
ゲインの周波数特性
カットオフ周波数は使わない!
1 次 LPF の出力雑音の計算
これは,電力ゲインを無限大周波数まで積分した面
積を四角形の一辺であるG 0で除算するという意味です.
付録 CD−ROM 関連記事 No.1−014
● 1 次 LPF の雑音帯域幅はカットオフ周波数 ×π/2
図 1 に示すのは,抵抗とコンデンサで構成した 1 次
LPF
(Low Pass Filter)で す. カ ッ ト オ フ 周 波 数 は,
3.18 kHz です.1 次 LPF のカットオフ周波数(f C )は,
次式で求まります.
電力ゲインは電圧ゲイン T(f )の 2 乗です.Δf は電
圧ゲインT(f )
を使って次のように表すことができます.
1
Δf =
|T 0|2
∞
|2 df
|T(f )
(2)
0
図1の1次LPFの伝達関数T( j ω)は次のとおりです.
T( j ω)= 1/(1 +j ωCR )
(3)
式(2)
と式(3)
から,無限大周波数まで積分した面積
と四角形の一辺になる|T 0|2 で除算すると雑音帯域幅
fC = 1/(2πCR )
雑音帯域幅とカットオフ周波数は違います.1 次
LPFの雑音帯域幅f BW[Hz]とカットオフ周波数f C[Hz]
Δf が求まり,次式が導かれます.
Δf =
の間には次の関係があります.
fBW =fC × π/2
カットオフ周波数 3.183 kHz の 1 次 LPF の雑音帯域
幅は,5 kHz です.
図 2 は,図 1 の 1 次 LPF の雑音帯域幅(Δf )の意味を
説明する図です.雑音帯域幅とは,電力ゲインの周波
数特性を積分して,その電力ゲインの最大値で割った
値です.つまり,電力ゲインを周波数無限大まで積分
して得られる面積と「電力ゲインの最大値 × 雑音帯
域幅」の長方形の面積が等しくなる周波数です.
1 次 LPF の全出力雑音は次のとおりです.
π
1
π
×
= fC
2
2 πCR
2
(4)
式
(4)から,雑音帯域幅は 1 次 LPF のカットオフ周
波数(f C = 1/
(2πCR ))
より高いことがわかります.
● 手計算! 1 次 LPF の全出力雑音
1 次 LPF
(図 1)のコンデンサ
(リアクタンス分)は,
雑音を発しません.雑音源は R 1 で,その種類は熱雑
音です.
図 3 に示すように,雑音のまったくない抵抗とコン
デンサで構成した 1 次 LPF と抵抗の熱雑音源を分けて
考えます.次式のように,抵抗の熱雑音V N 2 は,周波
数特性をもたない雑音と 1 次 LPF の雑音帯域幅
(Δf )
抵抗の熱雑音 × 雑音帯域幅
雑音帯域幅Δf
● 1 次 LPF の雑音帯域幅とカットオフ周波数の関係
雑音帯域幅Δf は次式で表されます.
G0
2
1.0
1
1+ j ωCR
C =1μF, R =50Ω,
fC =3.183kHz
T ( jω) =
0.9
(1)
0
2
∞
G(f )
df
1
最大値 T 0
電力ゲイン T ( jω)
Δf =
1.1
0.8
0.7
T ( jω)
2
0.6
0.5
と の面積が
同じになる
0.4
0.3
0.2
0.1
.noise V(OUT1)V1 dec 100 1 1000meg
.MEAS NOISE out_totn INTEG V(onoise)
.MEAS NOISE Noise_1Hz FIND V(onoise)at 1
.MEAS NOISE Noise_BW PARAM(out_totn**2/
Noise_1Hz**2)
図 1 1 次 LPF から発生する雑音量を計算できる?
102
0
0
fC
5
10
15
周波数[kHz]
20
電力ゲイン T ( jω) 2 を0∼∞間で積分した面積と
「最大値 T 0 2×雑音帯域幅 Δf 」の面積が等しくな
るΔf が雑音帯域幅である
図 2 混同しやすい雑音帯域幅
(f BW )とカットオフ周波数
(f C )の
関係(f BW =f C × π/2)
2016 年 4 月号