はさみ込みで考えることにつなげたかったが… ~第4学年 「差を使って考えよう」(日文4下 PP148-149) 泉大津市立条南小学校 下道 成人 1.はじめに 造』という本の「コミュニケーションとし 教科書巻末に「学びを深めよう」と題し て、活用やパズル的問題、思考力の問題な ての数学」第 5 学年から第 8 学年のところ に どがいくつか掲載されている。その中で 「差を使って考えよう」というページがあ る。 教科書では下のように展開されている。 (1)問題の提示 30 円のチョコレートと、70 円のスナッ クがしを合わせて 20 こ買いました。その ときの代金は 800 円でした。 チョコレートとスナックがしをそれぞれ 何こ買ったか求めましょう。 ↓ (2)表を使って考えましょう。 チョコレート 0 1 2 3 … スナック 20 19 18 17 … 代金 1400 1360 1320 1280 … ? ? 800 … … … 18 2 680 19 1 640 20 0 600 (と表が提示されていて) ↓ (3)□にあてはまる数をかいて、計算で求め ましょう。(考え方の言葉が書いてあり、 数を穴埋めさせる) この問題を見たとき、確かにこのように 変わり方を使って解決していくのが良いの だろうが、「きっとこのくらいだろう。」と いう見当から試行接近的に考える機会にで きないかと考えた。 2.関連 (1)NCTM のスタンダード(1989 版)の日 本語版である『21 世紀への学校数学の創 上記のような課題があり、この問題をかつ て 5 年生児童に取組ませた際、うまく試行 接近の考えを使えなかったことを思い出し た。 近づいてから、さらに調整していく際、 うまく近づけずに逆に遠ざかる方向で計算 してしまうような子が幾人もいたのであ る。うまくはさみ込んで考えることができ ず、接近すべきが錯誤となってしまったの である。 (2)平成 24 年の全国学力・学習状況調査の 算数 B2(とび箱)の設問2は、「中型の とび箱を、70 ㎝の高さにすることはできま すか。」と問い、できないことを説明させ るものであった。解説資料には、「3 段で 65 ㎝になることと、4 段で 80 ㎝になるこ との両方を示すことで 70 ㎝ができないと 判断することが求められる」とある。この ような、両側からはさみ込むような考え は、どこで指導できるのだろうか。 3.指導してみて 問題を提示すると、子どもたちは見当を ので、10 の次は 8 だったり 15 だったりと 行き当たりばったりで考えている子も数名 立て始めた。 C「だいたい 10 ずつ?」 いた。自ら変化させる、という態度はよい のだが、その結果を観察把握することが難 C「10 やったら、1000 円になる。」 C「もっと、スナックが多い。」 しいのだと感じた。 話し合いで、見当から考えるよさについ 言葉でのやりとりでは、ついていけない 子どもが出てしまうので、早々に切って自 て意見を求めたら、良い考えだと認めつつ も、次時の適用問題では、ほとんどの子が 力解決へと向かった。 2 月に変わり方の学習をしたからか、表 差に着目してどちらかが 0 の時を基準に考 えて問題を解決した。 を書き始める子が多かった。ただ、表の枠 を書いたものの、どんな数対を入れればよ 4.課題 いのかで、手が止まる児童も多数いた。 T「表を書いている人が多いけど、表はど 「もうちょっと大きいから、数を大きく しよう。」「もうちょっと小さくないといけ んな数をかいていくのかな。」 C「1 から」 C「わかっているから 10」 と何人かの声を広げて、再度自力で。 すると、表を 1 から 20 まで全て書く子が 何人も出てきた。 さて発表。 C「全部チョコだったら 600 円です。チョ コが 1 つへると、40 円増えるので、200 円 減らしたいから、…。」 C「10 個ずつなら 1000 円なので、チョコ を増やして 15 個で計算したら、ちょうど 800 円になりました。」 C「全部チョコだったら 600 円で、チョコ を 1 つ減らすと 30 円へって、70 円上がる ので、差は 40 円。これを何回も繰り返し て考えればいいので、200÷40=5 なので 5 回と考えればスナックは 5 個でチョコは 15 個。」 多くの子どもは、差に着目して順序良く 考える考え方に納得していた。見当から調 整した子はほとんどいなかった。ノートを 集めてみると、数人は 10 をスタートに考 えているが、その後の支援が不十分だった ないから、数を小さくしよう。」とはさみ 込んでいくような考え方は、ここではうま く指導できなかった。 算数科の内容を学習する中で、「どのよ うに考えればよいか。」をどのような学習 材で指導すればよいかということは思考力 を育成する上で、指導者が考えないといけ ないことである。 「ここからここの範囲のどこかに答えが ある。」 そんな問題の範囲を狭めていくような考 えを進めることが学べる機会を、何とか作 っていきたいと考えている。
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