みずほ総研の9分野での経済対策提言

【 緊急リポート 】
みずほ総研の9分野での経済対策提言
~好循環への軌道回復とG7議長国の指導力発揮へ
2016.4.27
9分野の提言 (詳細は6ページ以降)
①女性活躍
②将来人材育成
③働き方改革
④観光
⑤環境
⑥インフラ
⑦生産性革命
⑧ファイナンス
⑨農林水産業
~父親の育児を推進する「パタニティ・リーブ奨励金」
~就学前教育を強化するための基金設立
~前向きな企業を支援する「ワークスタイル・イノベーション奨励金」
~平日有効の定額航空券「ジャパン・ウィークデイ・エアパス」
~LED等を対象とする「照明エコポイント」
~東京の国際競争力強化、地方でのコンパクトシティ化
~即時償却を可能とする設備投資減税の時限的拡充
~政府の外債発行等によるドル資金調達支援
~官民ファンドの支援にかかわる出資規制の緩和
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《 ポイント 》
○ 世界経済が変調を来し、日本経済も停滞する中、経済対策が必要に。
わが国は今年、G7議長国としてのリーダーシップを発揮できるかも問われている
○ 今般の経済対策に盛り込むべき視点や政策として、以下9項目を提言
①女性活躍
~父親の育児を推進する「パタニティ・リーブ奨励金」
②将来人材育成
~就学前教育を強化するための基金設立
③働き方改革
~前向きな企業を支援する「ワークスタイル・イノベーション奨励金」
④観光
~平日有効の定額航空券「ジャパン・ウィークデイ・エアパス」
⑤環境
~LED等を対象とする「照明エコポイント」
⑥インフラ
~東京の国際競争力強化、地方でのコンパクトシティ化
⑦生産性革命
~即時償却を可能とする設備投資減税の時限的拡充
⑧ファイナンス
~政府の外債発行等によるドル資金調達支援
⑨農林水産業
~官民ファンドの支援にかかわる出資規制の緩和
○ 今回の経済対策を含め、経済政策の力点を金融政策から財政政策・成長戦略へとシフト
させることで、景気停滞を乗り越え、需要・供給両面での好循環が再加速することを期待
1
1.経済対策の必要性: くすぶる世界経済の先行き不安
◯
‧
‧
◯
‧
‧
金融市場の動揺は一服するも、世界経済に対する懸念くすぶる
世界の生産活動に底入れの兆し。原油価格の上昇や米利上げ観測の後退も相まって金融市場の動揺はひとまず収束
一方で先行き不透明感は残存。IMFは世界経済見通しを下方修正。金融・財政を通じた景気下支えの必要性を指摘
足踏みする日本経済に円高の逆風
消費税増税から2年が経過したにもかかわらず、日本経済は力強さに欠ける状況が継続
年初来の円高進行を受けて、大企業・製造業を中心に業況判断が悪化。円高が日本経済回復の足かせとなる可能性も
【 IMF世界経済見通しの修正状況 】
(%)
2.6
2.4
2.2
2.0
1.8
1.6
先進国
5.0
15年10月
見通し
予想外の
伸び悩み
(円/ドル)
為替10%円高の影響(総研マクロモデル)
⇒ 企業収益:▲1.36%
⇒ GDP:▲0.31%
130
120
16年4月
見通し
2014
(%)
【 ドル円相場と企業の想定為替レート 】
15
16
(年)
100
15年10月
見通し
90
16年4月
見通し
80
17
新興国
4.8
4.6
4.4
70
06/1
回復後ずれ
4.2
4.0
2014
15
(資料) IMFより、みずほ総合研究所作成
16
17
110
(年)
想定為替レート
より円高水準に
ドル円相場
想定為替レート
08/1
10/1
12/1
14/1
16/1
(年/月)
(注)1.想定為替レートは日銀短観の全産業、全企業ベース。
(注)2.円高影響試算は、いずれも初年度影響。企業収益は、法人企業統計ベース。
(資料) 日本銀行、Bloombergなどより、みずほ総合研究所作成
2
1.サミット議長国の指導力発揮と国内経済の落ち込み回避のために必要な経済対策
◯ 中国経済の減速等から、新興国を中心に世界経済が変調。国際情勢のリスク増大もあり、各国でマーケットが不安定化
◯ 日本経済も回復に向けた動きが滞りがち。海外市場の影響も受けて円高・株安が進行。景気の下振れ懸念が高まる
◯ わが国は5月のG7サミット議長国。国際的責任とともに、国内経済の落ち込みを回避するため、経済対策が重要に
【 内外経済の不透明感の増大と経済対策の必要性 】
世界経済
日本経済
新興国の変調
中国
資源国
国際政治のリスク
紛争
テロ
難民
海外市場の不安定化
資源価格
国内市場の急変
株価
円高
G7サミット
議長国としての
責任
株安
国内経済の
落ち込みを防ぐ
必要性
景気の下振れ
消費不振
投資停滞
基調的制約要件
デフレ心理
人手不足
緊急の経済対策
パリ協定
地球温暖化対策
エコ推進
需要の
下支え
消費の
喚起
生産性の
向上
就業の
拡大
(公共投資)
(給付等)
(投資促進)
(女性等)
人口減少
少子高齢化
(資料) みずほ総合研究所作成
3
1.G7議長国の日本とG20議長国の中国が指導力を発揮できるか
◯ 今年は日本がG7の議長国を務める一方、中国がG20の議長国となっている
◯ 両議長国が、不安定化するグローバル経済への対応で、いかに指導力を発揮できるかが問われている
【 G7・G20の議長国と世界経済への対応 】
G7
イタリア
フランス
日本
ドイツ
世界経済の
変調・不安定化
英国
カナダ
米国
G7伊勢志摩サミット
(5月26~27日)
G7議長国
対応への指導力を発揮できるか
G20議長国
新興国
中国
インド
ロシア
G20杭州サミット
(9月4~5日)
トルコ
メキシコ
ブラジル
韓国
・・・
・・・
G20
(資料) みずほ総合研究所作成
4
1.経済対策は少なくとも5兆円を上回る規模に
◯
‧
‧
◯
‧
経済対策(2016年度補正予算)の財源としては、国債の追加発行なしでも5兆円程度が確保可能
2011年度(東日本大震災の影響)を除き、税収上振れや経費削減で毎年4~6兆円の財源を確保
今回は、外国為替資金特別会計の積立金も財源候補に
政府は公共事業等予算(12.1兆円)の執行前倒しを表明。年度上期執行率を例年対比で1割程度引き上げる方針
執行前倒しによる下期の落ち込みは補正で緩和。災害復旧も合わせ、公共事業等の積み増しは2兆円程度と予想
――― 中越地震の際は、災害対策として約1.2兆円の公共事業を補正予算で計上(災害対策費合計は約1.4兆円)
【 過去の決算剰余金・既定経費の減額などの推移 】
(兆円)
前年度の決算剰余金
既定経費の減額
税収の上振れ等
9
8
7
・国債発行
・外国為替資金特別会計
の積立金の活用
【 公共事業等予算の執行率 】
執行率を1割程度前倒し
(%)
(金額にして1.2兆円相当)
80
6
5
4
75
3
70
2
1
65
0
2010
11
12
13
14
15
16
(年度)
(注)1.決算剰余金は、財政法第6条の規定(純剰余金の2分の1以上を国債償還財源に充当)
の適用を外す特例法を制定して、全額補正予算に充当する場合の金額。
2.2011年度は、東日本大震災の影響を考慮する必要がある。
3.2016年度の試算は2010・2012~2015年度の平均値。
(資料)財務省より、みずほ総合研究所作成
60
過去5年平均
16年度当初予算
(資料)財務省より、みずほ総合研究所作成
5
2.みずほ総研の9分野の提言
◯ 政府・与党は現在、消費喚起策(給付金・バウチャー等)や公共事業等を中心とする経済対策を検討中
◯ みずほ総合研究所は、経済対策で追加的・補足的に盛り込むべき視点や具体的仕組みとして、以下の9項目を提言
一億総活躍
①女性活躍
②将来人材育成
③働き方改革
~父親の育児の推進
~保育の量・質充実、就学前教育の強化
~ワークスタイル・イノベーションの推進
・2週間以上の父親の育児休業を奨励
する「パタニティ・リーブ奨励金」を導入
・「保育拡充パッケージ」を実施
・基金設立により就学前教育を充実
・「働き方改革国民会議」を設置
・「ワークスタイル・イノベーション奨励金」を導入
需要下支え・消費喚起
④観 光
~平日旅行の促進
・利用者が少ない空港を利用する場合、何度でも搭乗できる
「ジャパン・ウィークデイ・エアパス」を創設
・有給休暇取得基準を満たした企業の従業員に平日有効の
旅行券「ハッピー・ペイド・バケーション・ポイント」を配布
⑤環 境
~新国民運動 COOL CHOICEの推進
・LED等を対象とした「照明エコポイント」を導入
⑥インフラ
~投資効果の高い公共事業の強化
・東京の国際競争力強化、地方でのコンパクトシティ化を推進
供給サイドの改革
⑦生産性革命
~設備投資の促進
・「生産性向上設備投資促進税制」を時限的に拡充
⑧ファイナンス
~外貨調達への公的支援
・日銀の「成長基盤融資」の米ドル特則を拡充
・外貨準備を積極活用
⑨農林水産業
~官民ファンドの活性化
・農林漁業成長産業化ファンドの支援先に求められる
出資規制(農業者出資>パートナー企業出資)を緩和
(資料) みずほ総合研究所作成
6
2.提言 ①: 女性活躍 ~ 父親の育児を推進する「パタニティ・リーブ奨励金」
◯
‧
‧
◯
「父親の育児推進」は、女性活躍や出生率回復等に寄与しうるという点で日本再生に関わる重要課題
父親の育児は女性による「より負荷の高い働き方の選択」を促進(経済産業研究所の2016年の研究)
父親による2週間以上の育児休業取得はその後の父親の育児を促進(OECDの2013年の研究)
そこで、2週間以上の育児休業を取得した父親がいる中小企業を対象とする「パタニティ・ リーブ奨励金」の創設を提言
【 父親の育児の経済・社会的メリット 】
出生率の回復
女性活躍
夫婦の
人間関係
(+)
妻による
より負荷の
高い働き方
の選択
(+)
妻の追加の子に
対する希望
父親の生活
(+)
満足度
(+)
父親の育児
への関与
子どもの
発達
(+)
将来人材
の育成
(注)中央青の矢印は、先行研究で統計的に有意な影響が確認されている、あるいは、アンケート調等査から影響があると推測されることを指す。
(資料) みずほ総合研究所作成
7
2.提言 ②: 将来人材育成 ~ 就学前教育を強化するための「全国子育て基金」
◯ 保育は、女性活躍を支えるインフラであると同時に、日本の将来を担う人材育成基盤の一つ。保育の量・質両面の向上を
目的に、小規模保育の充実と保育士の待遇改善を柱とする「保育充実パッケージ」を実施
◯ 諸外国は将来人材育成の観点から就学前教育を強化。わが国でも、「全国子育て基金」(企業拠出金、税)の創設と、
これに基づく就学前教育の充実、全ての3~5歳児への教育保障(幼児教育無償化)についても検討を開始すべき
【 保育充実パッケージのイメージ 】
■小規模保育の集中整備
・小規模保育所の施設整備費(賃借料、改修費等)を国が直接
補助する制度を創設
・小規模保育所と連携し3歳以降の受け皿を提供する幼稚園へ
の支援強化
【 諸外国の就学前教育強化策 】
韓 国
■幼稚園全課程・保育所の就学前3年間の課程を無償化
■質保障:共通教育課程、幼稚園評価制度
■財源:国・地方(国が定める標準教育費を分担)
■保育士賃金引上げ
・10年で保育士平均賃金(22万円)を看護師と同程度(33万円)へ
引き上げるロードマップを国が提示
・第一歩として2016年、2017年にそれぞれ保育士賃金を1.1万円
引き上げる助成措置を実施
■市場メカニズムを活用した保育士の待遇改善推進
・保育士求人時の情報公表義務(運営費に占める人件費比率、
教育訓練、定着率、残業時間等)
(注)平均賃金は定期給与(所定内賃金と所定外賃金の合計)。
(資料)みずほ総合研究所作成
英 国
■全3~5歳児の就学前教育を無償化
■幼稚園・保育所等(形態にかかわらず、認証された機関に
運営費を配分)
■質保障:①認証、②監査実施、③全国共通教育課程
■財源:国(地方自治体を通じて各機関に配分)
(資料) 国立教育政策研究所「初等中等教育の学校体系に関する研究 報告書1 諸外国に
おける就学前教育の無償化に関する調査研究」(2015年)より、みずほ総合研究所作成
8
2.提言 ③: 働き方改革 ~ 前向きな企業を支援する「ワークスタイル・イノベーション奨励金」
◯
◯
‧
‧
長時間労働は時間生産性向上や多様な労働力の活躍を阻む日本経済の大きな問題
企業は個社での長時間労働是正にビジネスリスクを認識。国による労働時間抑制等の旗振りを期待する声も存在
「働き方改革国民会議」設置による「短く効率的・柔軟な働き方」の奨励と働き方改革の機運醸成
働き方改革に取り組む企業への「ワークスタイル・イノベーション奨励金」導入(「職場意識改善助成金」の大幅拡充)
【 長時間労働是正に関する企業の見解
【 ワークスタイル・イノベーション助成金の
(イクボス企業同盟参加企業) 】
支給条件となる取り組みのイメージ 】
0
①長時間労働是正には
取引先・競合他社等の
長時間労働が障害になる
20
40
60
80
100 (%)
長時間労働是正
83
はい
休暇取得推進
■業務効率改善計画を
策定し、残業
削減を実現
した企業
17
■取得推進計画を
策定し、取得率
向上を実現した
企業
短く効率的
な働き方
いいえ
ワークスタイル
②国に労働時間抑制等の
旗振りを期待する
92
8
(注)1.イクボス企業同盟とは、部下のワークライフバランスと業績向上を同時に実現する管理職
育成を目指す企業ネットワーク。2016年4月20日現在、68社が加盟。アンケートには調査
実施時点での加盟企業54社中52社が回答。
2.図表中①は「貴社が長時間労働是正に取り組む場合、貴社以外(取引先・競合他社・消費
者等)の長時間労働が障害になると感じますか」、②は「国(政府)に全体的な労働時間
抑制、働き方の見直しの旗振りを期待しますか」との質問を簡略化している。
(資料)NPO法人ファザーリングジャパン「長時間労働アンケート2016」より、みずほ総合研究所作成
■フレックス
タイム制度等を
新規導入、利用
実績がある企業
働き方の柔軟化
柔軟な勤務制度導入
■在宅勤務制を
新規導入、
利用実績の
ある企業
在宅勤務導入
(資料) みずほ総合研究所作成
9
2.提言 ④: 観光 ~ 平日有効の定額航空券「ジャパン・ウィークデイ・エアパス」等
◯ 日本の旅行消費額の9割は日本人の国内旅行。潜在的ニーズの大きい平日国内宿泊旅行の振興策を2つ提案
‧ ジャパン・ウィークデイ・エアパス : 利用者が集中する路線(新千歳、羽田、成田、関空、伊丹、福岡間)を除いて、航空
会社を問わず、平日に何度でも利用できる航空券を販売(例:2日有効券2万円、5日有効券3万円)
‧ ハッピー・ペイド・バケーション・ポイント : 企業単位で有給休暇取得率が四半期ごとに一定水準(例:20%、年換算80%)
を達成した中堅中小企業の全従業員に対し、平日旅行に利用可能な旅行券を配布(例:有給休暇取得日数×1,000円)
‧ 両制度ともに、先行順で配布し、予算がなくなれば終了。財源は国が負担(関連自治体が一部負担する方向も一案)
【 国内宿泊旅行に行かない大きな理由は
「行く時間がないから」 】
【 働き盛りの年齢層で目立つ
国内宿泊旅行回数の少なさ 】
(年齢層)
22.8
特になし/なんとなく
35.3
20代
13.7
21.6
37.5
30代
30.6
43.8
40代
13.7
家でなにもしないで
のんびり過ごしたいから
22.6
45.4
29.1
21.8
19.6
29.4
旅行に回すお金がないから
19.6
0回(1度もない)
36.2
60代
0
20
1回以上国内または
海外宿泊旅行に行った
10.8
3.9
費用が高いから
50代
1回も国内または海外
宿泊旅行に行っていない
1.1
海外旅行の方が魅力に感じるから
16.7
40
1回
60
80
29.5
行く時間がないから
100
(%)
23.5
0
10
20
30
40
(%)
(注)2012年10月から2013年9月の旅行に関する調査。国内または海外宿泊旅行を1回以上行った者と1回も行っていない者で差が目立つ回答を掲載。
(資料) 観光庁「将来的な商品化に向けた観光資源磨きのモデル調査業務報告書」(2014年)より、みずほ総合研究所作成
10
2.提言 ⑤: 環境 ~ LED等を対象とする「照明エコポイント」
◯ 温暖化対策と消費喚起の“一石二鳥”を狙って、LED照明等を対象とする「照明エコポイント」を導入
‧ 日本の照明をすべてLEDに置き換えると、国内電力消費の9%が削減可能(日本エネルギー経済研究所の試算)
‧ 低炭素化社会の実現に向けた新国民運動「COOL CHOICE」の起爆剤に
――― ポイント申請にあたっては、環境問題のアンケートへの回答を条件化(アンケート結果は政府の施策展開に活用)
【 照明エコポイント制度のイメージ 】
販売店
窓口機関
COOL CHOICE
アンケート回答
購入
<交換可能なメニュー>
・地域商品券
消費者
ポイント申請
・省エネ、環境配慮に優れた
商品・サービス
・・・
景品交換
5万円分
国
LED照明等
制度設計の例
(資料) みずほ総合研究所作成
財源
2.5万円分
・購入額の50%相当のポイントを受領
・ポイントの上限は3万円
11
2.提言 ⑥: インフラ ~ 東京の国際競争力強化や地方でのコンパクトシティ化
◯ 成長戦略をサポートするインフラ投資を強化(東京の国際競争力強化に向けたインフラ整備やコンパクトシティの推進等)
◯ 公共事業は近年、地方に対する所得分配の役割が強まっている
‧ 一人当たりの所得が低い都道府県ほど社会資本ストックが多い(公共事業の所得分配機能を示唆)
――― 2009年度は2000年度に比べて社会資本と所得の逆相関が強まっており、所得分配の役割が増した可能性
‧ 一方、社会資本ストックと一人当たり所得の伸びとの間に有意な関係は確認できず(社会資本が必ずしも所得の伸び
すなわち生産性の向上に結びついていないことを示唆)
【 一人当たり県民所得と社会資本ストックの関係 】
60%
40%
y = -1.27x + 12.10
R² = 0.47
20%
00年度
0%
-60%
-40%
所得の伸びと無相関
⇒生産性改善に結びつかず
60%
40%
20%
0%
-20%
-20%
-40%
社会資本ストック水準の全国平均からのかい離
社会資本ストック水準の全国平均からのかい離
傾斜が拡大
⇒所得分配の役割強まる
【 一人当たり県民所得の伸びと社会資本ストックの関係 】
-40%
y = -1.65x + 12.69
R² = 0.56
09年度
-20%
0%
20%
一人当たり県民所得の全国平均からのかい離
(資料)みずほ総合研究所作成
40%
-60%
-20%
y = -62.89x + 7.29
R² = 0.009
-15%
-10%
-5%
0%
一人当たり県民所得の伸び率:2000年度⇒09年度
(資料)みずほ総合研究所作成
12
(参考)公共投資の配分見直しは道半ば
◯
‧
‧
‧
公共事業費を用途別・地域別にみると、配分に変化はみられるものの、その程度は小さい
用途別では、道路や国土保全の割合が低下する一方、文教施設や環境・福祉など生活関連の割合が上昇
なお、道路や国土保全の割合低下は、災害復興予算増額の余波という側面も
地域別では、小幅ながらも関東、北陸・中部の割合が高まる
【 公共事業費の用途別割合 】
【 公共事業費の地域別割合 】
100%
100%
12.6%
13.4%
16.3%
その他
90%
80%
13.5%
14.3%
11.7%
上下水道
80%
70%
9.1%
8.4%
7.2%
農林漁業
70%
国土保全
都市計画
60%
19.5%
18.9%
7.8%
6.9%
7.0%
7.4%
7.9%
環境・福祉
40%
10.3%
文教施設
30%
30.9%
30.0%
27.8%
道路・港湾
90%
60%
19.3%
50%
40%
30%
20%
10%
11.5%
10.6%
10.8%
九州
9.8%
9.3%
8.7%
中国・四国
14.2%
14.0%
13.4%
近畿
18.3%
18.5%
19.1%
北陸・中部
31.3%
34.2%
34.8%
関東
14.9%
13.5%
13.1%
北海道・東北
2000
05
09
50%
20%
10%
0%
0%
2000
05
09
(年度)
(資料)総務省「平成25年度行政投資実績」より、みずほ総合研究所作成
(年度)
(資料)国土交通省「建設総合統計」より、みずほ総合研究所作成
13
2.提言 ⑦: 生産性革命 ~ 即時償却を可能とする設備投資減税の時限的拡充
◯ 法人税率引き下げの代替財源として廃止される「生産性向上設備投資促進税制」(即時償却可)を時限的に拡充・継続へ
‧ 設備投資減税は、法人税率引き下げと比べても、より高い投資促進効果を期待できる
‧ 単年度の減収規模は2,000~3,000億円程度
【 現行の生産性向上設備投資促進税制の概要等 】
先端設備
旧モデルと比べて年平均1%以上
生産性を向上させる最新モデル
機械装置等
2013~15年度
2016年度
即時償却
または
5%税額控除
50%特別償却
または
4%税額控除
2017年度
廃止
生産ラインや
オペレーションの刷新・改善
投資計画上の投資収益率が15%以上
(中小企業は5%)
建物・構築物
即時償却
または
3%税額控除
25%特別償却
または
2%税額控除
拡充・継続へ
(資料) 経済産業省資料、財務省資料より、みずほ総合研究所作成
14
2.提言 ⑧: ファイナンス ~ 政府の外債発行等によるドル資金調達支援
◯ 日本企業の外貨調達コストが高止まりする中、外貨調達に対する2つの公的支援策を提言
‧ 日本銀行(日銀)の「成長基盤融資」の米ドル特則(金融機関に対し米ドルを6カ月LIBORで融資)を拡充
‧ 外国為替資金特別会計の外貨準備をより積極的に活用(JBIC(国際協力銀行)によるドル調達支援策拡充等)
――― JBICは海外展開支援融資ファシリティにより日本企業の海外展開支援を実施。外貨準備からJBICに対する
貸付残高は580億ドル(2016年3月末)
・ 公的支援策拡充に必要なドル資金は日本政府の外債発行等により調達
【 日本銀行の成長基盤融資等 】
【 外貨準備の資産内訳 】
(10億ドル)
成長基盤強化を支援する
ための資金供給
貸出増加を支援する
ための資金供給
・内容:我が国経済の成長に資する
投融資を行う金融機関に対
し、投融資の内容を個別に
確認したうえで、日銀が低利
かつ長期の資金を供給
・内容:金融機関の貸出増加額の2倍
相当額について、日銀が低
利かつ長期の資金を総額無
制限で供給
・貸出枠
本則
ABL特則
小口特則
米ドル特則
・貸出枠:
A.外貨準備
1.外貨
(a)証券
10兆円
0.5兆円
0.5兆円
120億米ドル
・貸出条件:期間4年。0.0%(円資金)
6カ月LIBOR(ドル資金)
(資料)日本銀行より、みずほ総合研究所作成
無制限
・貸出条件: 期間4年。0.0%
(b)預金
ⅰ外国中央銀行及びBISへの預金
ⅱ本邦金融機関への預金
ⅲ外国金融機関への預金
2.IMFリザーブポジション
3.SDR
4.金
5.その他外貨準備
B.その他外貨準備資産
うち国際協力銀行向け貸付
1,262
1,201
1,076
125
124
1
0
12
17
30
1
58
58
(注)2016年3月末。
(資料)財務省より、みずほ総合研究所作成
15
(参考)高止まりするドル調達コスト
◯ 日米金融政策の方向性の乖離によるドル需要の高まりなどから、ドル調達コストは高止まり
‧ 対外中長期債買い越し額は日銀のマイナス金利導入を受け大幅に増加
【 ドル調達コストの推移 】
【 対外証券投資(中長期債) の推移 】
(単位:兆円)
6
(%)
1.4
1.2
買い越し
4
1.0
2
0.8
その他
0
0.6
▲2
0.4
▲4
0.2
日米の市場金利差
▲6
0.0
1月 2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 1
2015年
(資料)Bloomberg、財務省より、みずほ総合研究所作成
2
2016年
3
4
1月 4
2013年
7
10
1
4
2014年
7
10
1
2015年
4
7
10
1
売り越し
2016年
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
16
2.提言 ⑨: 攻めの農林水産業 ~ 官民ファンドの支援にかかわる出資規制の緩和
◯ 農林漁業者の6次産業化を支援する「農林漁業成長産業化ファンド」をより活用するべく、出資規制の見直しを提案
‧ 同ファンドの支援先は、農林漁業者を主たる経営者とする事業体に限定(農林漁業者の出資>パートナー企業の出資)
‧ この規制を撤廃すれば、同ファンドの出資件数の増加や農林漁業と関連産業の一体的な発展が実現しやすくなる
【 農林漁業成長産業化ファンドによる出資の枠組み 】
合弁会社
国
出資
金融機関など
(株)農林漁業
成長産業化
支援機構
出資
(A)
出資
6次産業化
事業体
サブファンド
(地域やテーマ別)
20年間の
時限組織
企業
出資
・出資期間は15年
・機構の出資比率は
50%以下
出資
出資
原則50%
以下
【条件】
A>Bの
出資比率
出資
(B)
農林
漁業者
主たる
経営者
この条件を
見直しては
どうか
パートナー
企業
(資料) 農林水産省「農林漁業成長産業化ファンドの概要」(2014年)等より、みずほ総合研究所作成
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3.おわりに: 金融政策偏重から財政政策・成長戦略へのシフトが必要な局面
◯ アベノミクスは、今年度より第二ステージに本格的に移行。「一億総活躍社会」への施策を経済対策にも反映
◯ 現状はデフレからの脱却に向けて金融政策に大きく依存しているが、当面の経済の不振を乗り切るため、当初の「三本の
矢」における財政政策の機動的対応と成長戦略の強化が有効
◯ マイナス金利に踏み込んだ金融政策も、経済・市場動向を踏まえつつ、さらなる対応の余地を模索
【 アベノミクス新旧三本の矢と経済対策を軸とする政策展開 】
財政政策
緊急経済対策
成長戦略
日本再興戦略
マイナス金利導入
金融政策偏重から
財政政策活用、
“GDP600兆円”
子育て支援
“出生率1.8”
社会保障
“介護離職ゼロ”
「出口戦略」
経済安定化
後の課題
成長力の強化
=供給対策
(2016年5月)
新三本の矢
アベノミクス
強い経済
当面の需要下支え
=需要対策
ニッポン一億総活躍プラン
成長戦略強化へ
長期のデフレ
少子高齢化
人口減少
さらなる金融
緩和の方策
新
た
な
経
現
役済
世対
代策
「財政再建」
支
援
]
量的・質的金融緩和
[
「
三本の矢」
アベノミクス
金融政策
(資料) みずほ総合研究所作成
18
3.経済対策により好循環を維持・加速して再び成長軌道へ
◯ デフレ脱却のためには、アベノミクスで形成され始めた需要サイド、供給サイドの好循環を維持・加速していくことが重要
◯ 経済対策で需要と供給の二つの循環を支えつつ、景気停滞を乗り越えて再び成長軌道へ
【 日本経済再生への好循環の維持・加速 】
生産性の
向上
経済対策
子育て支援
働き方改革
所得の
増加
投資の
拡大
観光振興
インフラ投資
エコ促進
賃上げ
雇用増
投資環境
の改善
投資減税
競争力の
向上
消費の
拡大
企業業績
の改善
外貨調達支援
グローバル
事業の好転
(資料) みずほ総合研究所作成
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(※) 本資料は、みずほ総合研究所調査本部が作成した。
〔本資料に関する問い合わせ先〕
みずほ総合研究所 調査本部 政策調査部
TEL :03-3591-1309
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