2-2.

2.2.6 河川景観・河道構造
(1) 資料の整理結果
既往資料における田原川の眺望景観を図 2.2.82 に示す。
(2) 現地調査の結果
現地調査による田原川の眺望景観を図 2.2.82 に示し、近景の河川景観を河川構造と
ともに図 2.2.14~2.2.16 に示す。
図 2.2.83 現地調査における田原川眺望景観 ティンダバナより撮影
図 2.2.9 既往資料における田原川眺望景観
出典:島仲・野底地区環境影響評価業務報告書
図 2.2.104 河川景観(田原川上流区間)
図 2.2.115 河川景観(田原川中流区間)
図 2.2.126 河川景観(田原川下流区間)
2.2.7 河川利用の現状
(1) 水利用
田原川の水利用状況を表 2.2.33 に示す。
田原川は主に祖納集落の上水道源として利用されており、月平均で 10 千m3(0.004m3/s)
が取水されている。
取水堰下流では農業用水取水用のポンプが設置され、農業用水と利用されているがその実
態が把握されていない。
表 2.2.29 田原川における上水取水状況
(2) その他の利用
取水堰付近は、田原水園として整備され、来訪者の憩の空間となっている。
写真 2.2.1 田原水園の景観
2.2.8 多自然川づくりの方向性の整理
(1) 多自然川づくりの課題の抽出
田原川における多自然川づくり上の課題は、区間ごとに下記のとおりである。
1) 上流区間
上流区間では、多くの水生昆虫、テナガエビ・ヌマエビ類、巻貝類やチョウチンミドロ、
タンスイベニマダラなどの清流、湧水に特化した水生植物で賑わうこと、田原水園として
地元や来訪者の憩の空間となっていることから、これを保全することが望まれる。
2) 湿地内水路区間
本区間は、山側からの湧水が豊富で、多くの水生昆虫、貝類の重要種が見られ、また植
物では近年減少傾向にあるマングローブ植物であるミミモチシダが生育し、特殊な環境を
形成している。
また、本水路と中流区間の間に広がる広大な湿地は、地元ワークッショプで乾燥化・陸
地化の過程にあるとされている。湿地環境は、上記の生物のみではなく渡り鳥の中継地と
しても貴重であることから、湿地環境の保全が望まれる。
湿地内水路が本川に合流する付近は人工植栽のマングローブが繁茂し、陸化が進捗して
いる可能性があることから、マングローブ林を管理して陸地化の進行を抑制する必要があ
る。
3) 中流区間
中流区間は、灌漑排水路として利用されており、塩水の遡上、濁り、シルト質の底質、
単調な河床条件によって、上流区間とは生物相が大きく変化し、テラピア類、スクミリン
ゴガイ(ジャンボタニシ)、ホテイアオイなどの外来生物が中心となっており、河川改修
に当たっての課題は少なく、自然性を向上させるような観点からの整備が望まれる。
4) 下流区間
本区間は、直立護岸で囲まれ、生活雑排水の流入、シルト等の堆積によって著しく河川
環境は劣化している。塩分濃度は高く、魚類では周縁性のものが多い。
本区間は、狭窄化しており洪水氾濫が発生しやすくなっているものと考えられる。また、
集落に近く人の利用も多いことが予測されるため、人の生活等に配慮した整備が望まれる。
(2) 多自然川づくり上の方向性
表 2.2.34 に田原川における多自然川づくり上の課題を示す。
表 2.2.30 田原川において想定される多自然川づくりの方向性
区 間
上流
区間
課
生物
環境
水
環境
利用
湿地内
水路
区間
中流
区間
下流
区間
生物
環境
生物
環境
生物
環境
題
重要種(絶滅危惧 II 類)チョウチンミドロの繁
殖地.
アオナガイトトンボの分布北限地:日本国内
では与那国島のみで見られる.
本区間の水質は,「水の汚れ」や「水の濁り」
が少ない清冽な印象を受ける.ただし,上流
農地の影響と考えられるアンモニウム態窒素
が検出されている.
田原水園として憩いの場.
祖納集落の上水道源.
左岸山付き区間に湧水等を水源とする水
路・湿地が分布し,アオナガイトトンボ,ヨシカ
ワニナ,ミミモチシダなどの注目すべき種が
生息している.
また、中流区間との間に挟まれた湿地は乾
燥化・陸化の傾向にある.
水路と中流区間の合流点付近には人為的
植栽のマングローブが繁茂し、陸化傾向に
ある.
人工的に整備された灌漑水路であり,水質
を受け,外来生物も多く生息し,自然環境保
全上の課題は少ない.
重要種はほとんど見られない.
方向性
現状の環境を保全する。
洪水流を利用して水路・湿地の保全
を図る.
マングローブによる陸化を抑制する
ためのマングローブ内の水路整備な
どを行う.
土砂堆積を抑制する、水質浄化能
力を向上させるなど、自然性を向上
させるような整備を行う.
配慮すべき生物環境はほとんど確
認されない.掘り込み河道となって
おり,人が触れ合うことが困難な構造
水
環境
水質汚濁が著しい.
なので,親水性に配慮する.