3-280 土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月) 粘着力に及ぼす飽和度の影響について (株)複合技術研究所 正会員 ○石塚真記子 (財)鉄道総合技術研究所 正会員 大木 基裕 (財)鉄道総合技術研究所 正会員 小島 謙一 (財)鉄道総合技術研究所 正会員 舘山 勝 1.目的 鉄道構造物等設計標準(土構造)1)を現在の仕様設計から限界状態設計法を基本とした性能照査型設計法に 移行するのに伴い,現在各限界状態(地震時,降雨時)に対して盛土材の設計用値の検討を行っている.飽和 度の異なる土の強度特性を比較した場合,内部摩擦角に対する飽和度の影響は少ないが,粘着力に対する影響 は少なくないこと,これはサクションなどによる粘着力の発現であること,がわかっている.適切な設計を行 うためには,このような特性を考慮することが重要である.本稿は,新たに構築した不飽和三軸圧縮試験機の 概要,稲城砂を試料とした不飽和三軸圧縮試験の結果を,残留強度に着目して評価した粘着力とせん断直前の 飽和度の関係について,飽和試験の結果とあわせて報告するものである. 2.試験の概要 供試体は,直径 50mm,高さ 100mm,所定の乾燥密度(D=90 %),飽和度となるように,含水比調整した稲 城砂をタンパーで充填して作製した.稲城 レギュレーター 変位計 載荷 砂は細粒分を含んだ砂の中から手に入りや すいものを採用した.供試体の初期飽和度 大気圧 変位計(ギャップセン サー) セル圧供給源 は 70,80,90,100 %程度としたが,この 値は降雨時における盛土中の浸透流解析よ り,砂質盛土のり面付近の飽和度が 70∼ 100%程度となることに基づいている. 不飽和三軸圧縮試験の装置の概要を図 1 内セル 外セル に示す.試験手順は,供試体の初期サクシ 差圧計 2 ョンと同等の間隙空気圧を与え,セル圧と 間隙空気圧の差(σnet)が所定の値になる 間隙水圧計 まで等方圧密し,単調載荷でせん断試験を 実施した.尚,圧密時の拘束圧はσnet=25, 差圧計 1 セル圧計 間隙空気圧計 49,98 kPa,せん断過程は排気・排水状態, ひ ずみ速度 0.05 %/min,ひずみ量 15%までせ 図1 レギュレーター 空気圧供給源 不飽和三軸圧縮試験装置の概要図 ん断した. 3.結果と検討方法,考察 図2に粘着力の評価方法の概念図を示す.ここで用いる内部摩擦角φres は,Sr=100 %におけるせん断試験 から得た残留強度に基づいてモール円を描き,C=0 法により決定した.このφres を破壊包絡線の傾きとし, Sr=100 %未満のせん断試験から得られたモール円に接したときの切片を粘着力と評価した.ここで,飽和試 験から得たφres は,①飽和三軸圧縮試験のピーク強度と比較して,残留強度は締固め度にあまり依存しない 3), ②「不飽和三軸圧縮試験のφnet に関しては,飽和状態の三軸圧縮試験より得られるφ´とほぼ等しい」2)ため, 採用した. キーワード 内部摩擦角,締固め度,土質区分,ピーク強度,残留強度 連絡先 〒185-8540 東京都国分寺市光町 2-8-38 (財)鉄道総合技術研究所 -559- 構造物技術研究部 TEL042-573-7261 3-280 土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月) φres φres cφres cSr=100 c=0 残留強度 飽和試験 ピーク強度 不飽和試験 飽和試験 不飽和試験 c≠0 法:(φres,cSr=100) φres 法 :(φres,cφres,Sr = x%) 図2 粘着力の評価方法の概念図 300 飽和試験φres=38.1 Sr=87%,σnet=25kPa cφres=0kPa 300 τ (kPa) τ (kPa) Sr=88%,σnet=51kPa cφres=8kPa 200 100 Sr=88%,σnet=100kPa cφres=2kPa 200 100 Sr=100%,cφres=5kPa 0 0 100 200 300 400 500 0 600 0 100 200 σnet (KPa) 飽和試験φres=38.1 600 飽和試験φres=38.1 Sr=76%,σnet=30kPa cφres=6kPa Sr=68%,σnet=48kPa,cφres=21kPa 300 Sr=70%,σnet=98kPa,cφres=5kPa Sr=77%,σnet=50kPa cφres=22kPa Sr=83%,σnet=98kPa cφres=16kPa 200 200 τ (kPa) τ (kPa) 500 (2) Sr=90% (1) Sr=100% 300 300 400 σnet (kPa) 100 100 0 0 0 100 200 300 400 σnet (kPa) 500 (3) Sr=80% 0 600 図3 100 200 300 400 σnet (kPa) 500 600 (4) Sr=70% 不飽和試験結果 図3に 10 ケースの試験結果を示す.飽和度が低下するに従いモール円が大きくなり,粘着力が発現してい る.また,図2(1)∼(4)のモール円を比較すると,ほぼ同じ内部 摩擦角の破壊包絡線を引けることがわかる. 壊基準線を各飽和度ごとに求めて粘着力を評価した.Sr=100 % の 粘 着 力 は Sr = 90 % と ほ ぼ 等 し く , Sr=80 % の 粘 着 力 は Sr=100%のおよそ3倍,Sr=70%の粘着力は Sr=80 %とほぼ等し い.これらの結果から,Sr=80 %以下になると粘着力が飽和度の 影響を受けるものと考えられた. 今後,この結果を基にして実盛土の条件(拘束圧や締固め度 粘着力 c (kPa) 15 図4に粘着力と飽和度の関係を示す.図3より,平均的な破 稲城砂 D=90 % φres=38.1 ° 10 5 70 など)を考慮し,試計算を行うなど適切な設定用値を定めてい く予定である. 図4 80 90 飽和度 Sr (%) 粘着力と飽和度の関係 【参考文献】 1) 鉄道総合技術研究所:鉄道構造物等設計標準・同解説−土構造物,2000. 2) (社)地盤工学会:土質試験の方法と解説,p.536,2000. 3) 大木ら:土質の異なる盛土材料の強度特性に及ぼす締固め度の影響について,第 59 回土木学会年次講演会,2004. -560- 100
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