繰り返し一面せん断試験による残留強度の測定 −大規模地すべり地の安定解析− (生産環境整備学講座 Ⅰ.目的 農業水利施設工学分野) 新潟県は全国一の地すべり多発県であり、棚田のほとんどが地すべり地に 分布している。これは、地すべりが災害をもたらす一方で、山地を耕しているからで ある。しかし、第三紀層から成る地層は軟弱で、過去から現在に至るまで大規模な地 すべりが発生している。その中の板倉地区にある釜塚・段子地すべりは、現在も活動 している大規模地すべり地帯であり、農林水産省による防止対策工事が進められてい る。本研究では、釜塚・段子差地すべり地におけるすべり面の泥岩を試料とし、繰り 返し一面せん断試験により残留強度を求め、排水工の有無による斜面の安全性を検討 することを目的とした。 Ⅱ.方法 成形した試料を懸垂型一面せん 断試験機(図1)にセットし、圧密排水条 件下で繰り返しせん断試験を行う。せん断 ロードセル 加圧盤 水平変位計 垂直 変位計 速度は、0.005mm/min を選択し、垂直応力は 100kPa、 200kPa、 300kPa、 400kPa、 500kPa で それぞれ試験を行った。各試験において繰 水浸箱 り返しせん断を行い、ピーク時のせん断応 試料 ギア モーター 力が一定になったことを確認することがで きたら試験を終了し、それらの値を残留強 レバー載荷 システム 度とし、安全性の検討を行った。 Ⅲ.結果及び考察 垂直応力σv′と残留 図1 レベル調整ハンドル 懸垂型一面せん断試験機 強度τr の実測値から、図2に示されるよう 120.0 に回帰分析を行い、内部摩擦角φr、粘着力 cr 100.0 を求めた。そして、回帰分析によって求め 正標準スライス法、Bishop 法、Janbu 法の安 τr(kPa) られたφr、cr を用いて標準スライス法、修 80.0 60.0 40.0 定解析法から、各々地下水が地表面まで達 20.0 している場合と地下水が無い場合とで安全 0.0 0 100 200 率 Fs を算定した(表1)。その結果、どの方 法とも地下水がある場合 Fs<1 であり、 図2 地下水が無い場合は Fs>1となり、排 表1 300 σv´(kPa) 400 500 600 回帰直線 安全率 Fs 水工の効果が確認された。また、安 地下水地表 地下水無し 定解析法による差異は 約 1.34 倍 に及 標準スライス法 0.771 1.724 ぶ た め 、 す べ り 面 の 形 状 に よ っ て 方 修正標準スライス法 法を選択する必要があると思われる。 Bishop法 0.980 1.724 0.811 1.798 0.677 1.515 Janbu法
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