インド:改革は進んでいるのか・・・

 ご参考資料
2016 年 4 月 19 日
44 インド:改革は進んでいるのか・・・
チーフ・ストラテジスト
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神山 直樹 政策の方向性の変化に注目:農業・地方振興へ
金融改革も大胆に、利下げも続く?
石油下げ止まりなど、新興国へのリスク・オンもプラス
政策の方向性の変化に注目:農業・地方振興へ
これまでモディ政権(インド人民党=BJP)はビジネスに優しい政権と考えられ、ビジネスのしやすい国になるという目
標を持って改革が進められてきた。ところが、最近はインフラや工業向けの土地収用を容易にする政令の制定を断念
し、物品サービス税(GST)改正案も先送りしたことなどから、改革の行方に疑念を持つ投資家も増えている。しかし、2
月末に政府が示した 2016 年度(2016 年 4 月~2017 年 3 月)予算案では、地方への配分が増えている。しかも、地方
開発ではなく直接的に農業への予算を確保しており、新しい政策の方向性は明確といえる。農業への支出は、農家の
消費増大となって経済に波及するだろう。
次に、この政策は元気を失っていた与党の支持率を高めることも期待できる。新しい予算執行で道路や電気供給など
の目に見える成果も出やすいため、2019 年の総選挙に向けて、BJP の地方人気を強めることになりそうだ。ただし、
野党(国民会議派)も支持を失っているので、結果として地方政党が力を強めたともいえる。政府・与党の強い地方と
そうでない地方とでは、土地収容や水道、電力など地方の役割が大きい政策について考え方の違いが大きくなり、地
方政府と中央政府の政策協調は複雑で難しくなる恐れがある。引き続き、地方選挙の結果を見ながら、政府・与党が
議会を動かして改革を進めることができるかに注目することになろう。
なかなか改革の成果が出てこないと投資家が残念に思っていたところに、いくつか注目すべき改革の兆しが見えてき
たことに加え、相対的に高い成長率予想(16 年 4 月時点の IMF(国際通貨基金)予想は 2016 年度 GDP 成長率
+7.5%)も相まって、インドへの注目が続くとみている。
金融改革も大胆に、利下げも続く?
4 月 1 日の新年度から、小口貯蓄(銀行預金ではない政府による制度で、銀行預金全体の 7%程度の残高)の金利を、
四半期ごとに国債利回りの水準に合わせて変更できるようになった。これにより、政治的に受け入れにくいとみられて
きた金利の大きな変更は、市中金利に合わせて機動的な変更が可能になったことで、政策金利の引き下げが全体に
行き渡りやすくなり、レバレッジの高い企業(借入金が多く財務安定性が低い企業)や金融業にメリットがある。15 年に
累計 1.25%ポイントの利下げ局面で、民間金利は 0.7%ポイント程度の低下にとどまっていたが、政府は 16 年 3 月に
小口貯蓄の金利を 0.4~1.3%ポイント引き下げたことから、今後は、銀行融資の金利にまで低金利が波及しやすくな
ると期待できる。
4 月 5 日、インド準備銀行(以下、中央銀行)は半年ぶりに利下げを決定し、政策金利(レポレート)を 6.75%から 6.5%
に引き下げた。利下げは予想通りであったが、今回の政策変更には中央銀行の態度に大きな変化がみられた。
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産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがありま
す。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
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KAMIYAMA REPORTS
VOL. 44
政策金利などの推移
(%)
(2011年4月初~2016年4月13日)
11
ラジャン
インド準備銀行総裁就任
2013年9月5日
10
政策金利上限(限界貸出金利)
政策金利(レポレート)
政策金利下限(リパースレポレート)
9
8
7
6
5
11/4
12/4
13/4
14/4
15/4
16/4
(年/月)
(信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
政策金利の上限に当たる限界貸出金利を引き下げ
(7.75%⇒7.00%)、下限に当たるリバースレポレート
(市中銀行が中央銀行に資金を預け入れる金利)を
引き上げており(5.75%⇒6.00%)、銀行の資金調達
(実質的に調達金利上限を引き下げ)をしやすくした
ことだ。さらに、公開市場操作のスタンスを資金吸収
から資金ニュートラルに変更したようだ。これらの施
策は、銀行融資の金利低下と残高の伸びを促すこと
になる。
このところ不足していたモンスーン期の降雨量(農業
生産ひいては消費者態度の悪化)が、エルニーニョ
の影響低下で改善するか否かなどにより、今後の景
気見通しや政策金利水準も変わるとされているが、イ
ンドにおいて、金融緩和傾向は全体として金融業に
ポジティブである。また、自動車販売に占める販売金
融の使用率が高いことから、農機や自動車販売など
にとってもポジティブと期待できる。
石油下げ止まりなど、新興国へのリスク・オンもプラス
中央銀行が発表した企業収益動向(法人企業統計)をみると、2015 年第 4 四半期でサービス・セクターに収益性の改
善がみられる。このことは、企業収益の今後のさらなる回復の兆候と考えることができる。全体的に売り上げの回復が
遅れているものの、原油など資源の価格下落に支援されてコストが下がり、収益が回復し始めている。今後、地方へ
の財政出動拡大で農業関連業種の収益機会も増すと
株価指数と為替の推移
みられる。
(ポイント)
近年モンスーン期の雨不足や、利下げの遅れ、政府
の改革の遅れなどを背景に期待を裏切ってきた企業
収益の回復は、9 月ごろまでに確認されることになる
だろう。また、金利低下局面を背景として、企業業績
の成長期待が再び高まり、原油価格の下げ止まりが
幅広く新興国への懸念を後退させ、投資家がリスクを
取る行動につながることになれば、資金が流入し為替
水準は安定すると思われる。
30,000
(2014年4月初~2016年4月13日)
モディ首相就任
2014年5月26日
(円)
2.5
27,500
2.3
25,000
2.0
ルピー高
22,500
1.8
株価指数(インドSENSEX)(左軸)
米国の利上げが早まることは資金流入を減少させる
為替(対円のインド・ルピー)(右軸)
ルピー安
リスクとなり得るが、米国を中心とした世界需要の回
1.5
20,000
復は、最終的にインドの回復にも資すると考えられる。
14/4
14/10
15/4
15/10
16/4
(年/月)
市場が動くタイミングが変わる可能性はあるが、トレン
(信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
ドへの影響は小さいとみている。
上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
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