KAMIYAMA Reports

ご参考資料
2016 年 10 月 13 日
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2016 年版 海外投資家の関心事:
世界の経済や投資環境について議論
チーフ・ストラテジスト
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神山 直樹
海外投資家の興味は米国の金融政策
日米の金融政策決定会合直前で、政策の方向性に強い興味が示された
「金利が上昇する世界」を想定する必要性に関する議論が活発だった
日本を買う理由は「デフレからインフレへ」と「稼ぐ力」
海外投資家の興味は米国の金融政策
9 月にシンガポール、シドニー、メルボルン、オークランドで投資家・現地メディアに対して日本を含む世界経済・市
場環境を説明するカンファレンス「Foreword 2016」を当社が催し、筆者はシドニーとメルボルンに参加した。このイベン
トで、当社 CIO インターナショナルの Yu-Ming Wang をはじめマルチアセット運用担当の Al Clark、グローバル株式の
William Low、グローバル債券の James Alexander、さらに地政学リスク調査のため当社とパートナーシップを結んでい
るユーラシア・グループで欧州市場を専門とする Mujtaba Rahman などが登壇し、投資家を交えて世界の経済・投資環
境を議論することができた。
米国がリードする先進国経済については、短
期的に不透明感が残っており、米国の金融政
策で急速な利上げが行なわれるとは予想して
いない。したがって、新興国などを含むグロー
バルな金融市場は安定的に推移すると見込ま
れる、と結論付けた。
このような見方は、当地の投資家において
も、それほど違和感なく受け入れられているよう
に感じられた。
(左から 2 番目が筆者)
一方で、各国の国債市場は中央銀行の介入などにより低い利回りが維持され、金融緩和を背景に PER(株価収益
率)が高止まりする株式市場も見受けられていることから、現在の金融市場は、インフレへの回帰や金利上昇に対す
る備えがなされていない、といった指摘もあった。
日米の金融政策決定会合直前で、政策の方向性に強い興味が示された
イベントの開催日が、偶然にも日本と米国の金融政策決定会合の内容に注目が集まる日程であったため、議論の
中に FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ(結果としてコンセンサス通りに 9 月の追加利上げはなかった)や、日銀
の政策手段の変更(結果としておおむねコンセンサスに近い内容となった)の可能性が議論された。
■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境などについてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料で
はありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。■投資信託は、値動きのある資
産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがありま
す。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
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KAMIYAMA REPORTS
VOL. 61
もちろん、長期投資家の興味は、政策変更に反応する短期的な市場の
動きではなく、これを契機に大きな方向性が変化するかどうかにある。日銀
が長期金利の上昇を許すようになれば、世界的な長期金利上昇を促すの
ではないか、あるいは日本の機関投資家が外債購入を減らし、日本の長
期債に資金を振り向けるのではないか、といった点が議論された。
今のところ、日銀は量的緩和(マネタリーベース年間 80 兆円程度増)の
手を緩めそうにないため、現実的に 8 年程度の長期金利が急速かつ大幅
に上昇するとは想定しづらく、資金フローへの影響は限定的とみている。
(中央が筆者)
(その後、日銀は 10 年物国債金利を 0%程度で推移するよう操作することと、物価上昇率
2%の目標を安定的に超えるまでマネタリーベースの拡大を継続することを、決定した)
「金利が上昇する世界」を想定する必要性に関する議論が活発だった
米国の政策金利は今後引き上げ方向にあることは確実と思われ、そのスピードとマグニチュード(程度)を想定する
ことが重要だ。(結果として FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーが示したように)今後、世界が急激にインフレ期
待を上昇させて、金利も上昇するとは考えにくい。今のところ、2017 年も 2~3 回程度の緩やかな追加利上げが想定さ
れる。以前、当レポート(Vol.12 グローバル株式:正常化はこれから、2015 年 6 月)の中で述べたが、日本ならば長期
金利 3%、米国ならば同 5%程度までの上昇は、株式市場のデフレ懸念の払しょくを意味する(それ以上はインフレ懸
念に変わる)と推察されるため、ある程度の金利上昇は(金融緩和を背景に買われ過ぎた市場を別にすると)株式市場
にとってマイナス要因ではない、と考えられる。
米国は、主要国の中で政策金利の引き上げを開始した唯一の国であり、しかも景気を冷やすことが目的ではなく、
雇用や賃金の回復を背景とした経済の「正常化」に向かうプロセスにある。米国の景気回復が、日本や欧州、中国な
どの輸出や生産を活性化するならば、世界経済を押し上げることになろう。その時点で世界的な金利上昇が始まると
しても、「正常化」に向かうプロセスにある限り、より強い成長とともに起こりうることであり、それほど急速に起こると考
える理由はなさそうだ。
日本を買う理由は「デフレからインフレへ」と「稼ぐ力」
海外投資家が日本(特に株式)を買う理由を考えるに当たり、アベノミクスの勢いが失われ改革が進んでいないので
はないか、現状の金融政策でデフレは解決できないのではないか、日本企業の配当や自社株買いはさらに増えるの
か、といった点について、議論が交わされた。
アベノミクスの効果で、重要なことが二つある。一つは「デフレからインフレへ」の確率が増したこと(ただし中央銀行
が意図的にコントロールできるはずもない)であり、もう一つはガバナンス強化で企業の「稼ぐ力」と ROE(株主資本利
益率)改善の可能性が増したことだ(政府の言うままに企業が動くと言う意味ではない)。政策効果で日本の労働人口
が急増するとは考えにくく、原油価格の低位安定で確実にインフレになるとは言えないが、ひとたび世界の総需要が
増え始めれば、日本企業の生産増や在庫減が持続的な賃金上昇を通じてインフレ期待を高めるだろう。企業マインド
の「デフレからインフレへ」の変化があれば大きな構造変化となり、投資や雇用を増やすだろう。さらに、企業と投資家
の対話の成果が、短期的に配当水準の記録的増大や自社株買いの回復に現れているようだ。今後、企業がより利益
率の高い事業を選択し、世界の総需要回復を背景に余剰資金で投資を強化すれば、2~3 年の間に日本企業の ROE
はトレンドとして高まると考えられる。この二つの変化は、一度変われば元に戻らない構造変化であり、他の主要市場
では起こりそうにない。後は、投資家が世界経済の回復に確信を持つのはいつごろになるかが、ポイントとなりそうだ。
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