ピンチの時は、 「小さな魔法」をかける 相手の心をつかむ行動が、 その場の空気を変える 事態が起きてしまいました。 並んでいるゲストたちは、待つことに疲れ、殺伐とした雰囲気でした。そこで、順 番を巡るちょっとしたいざこざから、ゲスト同士が声を荒げて言い合いをするという ある時、ディズニーランドのカメラセンターに長い行列ができていました。 人は密集度が高くなるとストレスを感じます。ディズニーでも、待ち時間の長さが 引き金となり、ゲスト同士の雰囲気が悪くなることがまれにあります。 いる人は多いかもしれません。 ずいぶん解消されてはきましたが、それでもまだ﹁混んでいる﹂という印象を持って ﹁待ち時間﹂です。大型連休などには特に、パークはたくさんのゲストで それは、 あふれ、どうしても順番待ちの行列ができてしまいます。現在はファストパスなどで たくさんの人に愛されているディズニーですが、その人気ゆえに解決の難しい問題 があります。 Magic 38 そして近くにいた子どもが、その空気に飲まれて、泣き出してしまったのです。 するとひとりのキャストがさっと子どもに駆け寄って、自らの胸にあった、ミッキー 172 173 「いてくれて、よかった」と喜ばれる立ち振る舞い 《行動編》 CHAPTER 3 のフィギュアがついたボールペンを取り出し、子どもの前に持っていきました。 ﹁ごめんね、怖かったね。でも、泣かないで。僕と一緒に笑おう!﹂ ミッキーの声マネで、キャストはそう言いました。キャスト自身も、にっこりとし た笑顔です。つられて子どもも少し微笑み、小さくうなずいたのでした。 それを見ていた周囲の大人たちにもほっとした空気が流れ、声を荒げていた人も、 ばつが悪そうに黙り込みました。 「 思 い や り を 示 し て ほ し け れ ば、 ウ ォ ル ト の 兄 で あ る ロ イ・ デ ィ ズ ニ ー の 教 え に、 相手の心や気持ちをつかむことが大切」というものがあります。キャストがとっさの 機転により、怖がって泣いている子どもの心をつかみ、その気持ちを周囲に理解させ たことで、大人たちは普段の思いやりの心を取り戻したといえます。 どんな職場でも、空気が悪くなることはあります。重大なクレームが入った⋮⋮。 取引が上手くいかなかった⋮⋮。仕事である以上、シリアスな場面というのは必ず訪 れるものであり、職場のムードが張り詰めることもあるでしょう。 心くばりのできる人は、そんな時こそ、ユーモアを忘れません。機転を利かせて場 を和ませ、仲間たちの気持ちを落ち着かせて、笑顔すら引き出します。 とはいえ、 最初から機転を利かせて行動することは難しいかもしれません。まずは、 思いやりを示すことから始めてみましょう。 たとえば、外回りから戻った先輩に﹁寒い中、お疲れさまです﹂などと相手の立場 に立った一言を添えたり、疲れた様子の同僚にお茶やコーヒーを淹れたりなど、相手 の状況を察したうえで、思いやりを示すのです。 直接的な行動でなくとも、小さな思いやりで相手を和ませることはできます。付箋 で伝言を残す際に、仕事がらみのメッセージとは別に、イラストを描き添えたり、思 わず癒やされるユニークなイラストのハンコを押したりしてはどうでしょう。付箋そ のものも、かわいい柄のものがたくさん出ています。それを使うだけでも、相手の笑 顔を引き出せるかもしれません。 メモには感謝の一言やイラストを添えて。 Magic Lesson 174 175 「いてくれて、よかった」と喜ばれる立ち振る舞い 《行動編》 CHAPTER 3
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