両心室ペーシング植え込み後の心室中隔起源の 持続性心室頻拍症例に

Symposium:第 45 回埼玉不整脈ペーシング研究会
●一般演題
両心室ペーシング植え込み後の心室中隔起源の
持続性心室頻拍症例に対し,右室と左室それぞれで
ペーシングを行うことにより不整脈基質を同定しえた 2 例
堀
虎
酒
獨協医科大学越谷病院臨床工学部 加
春日部厚生病院 高
獨協医科大学越谷病院循環器内科
裕
渓則
井良
藤秀
柳
はじめに
一・中 原 志 朗・中 川 彩 子・塚 田 直 史
孝・岡野亜紀子・小 松 孝 昭・小林さゆき
彦・田 口
功
美・阿 部
瞳・渡 辺 哲 広
寛
1 症
中隔起源の心室頻拍は貫壁性の通電が困難
で,広範囲な scar が存在する症例が多いことか
例
1
70 歳,女性。
陳旧性下壁心筋梗塞,完全房室ブロックにて
らカテ―テル治療に難渋する 。今回両心室
当院通院加療中であった。両心室ペーシングへ
ペーシング植え込み後の中隔起源の心室頻拍に
の up grade にて臨床症状は著明に改善したが,
1)
対し右室,左室それぞれでペーシングを行った
薬物治療でコントロール困難な持続性心室頻拍
ことにより不整脈基質が確認できた症例を報告
(VT)を認めたためアブレーション目的にて入
する。
院となった。
図1
VT(CL 380msec,左脚ブロック,上方軸)と 通電部位の pace map
Yuichi Hori, et al.: VT ablation in patients with biventricular pacing: investigating the substrate in septum by
creating LV pace and RV pace map
Therapeutic Research vol. 36 no. 4 2015
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Symposium:第 45 回埼玉不整脈ペーシング研究会
図 2 Pace map にて特定した VT exit
(右室中隔の通電部位)
RV pace では voltage 3.24mV であったが,LV pace に変更したところ 0.67mV で local
abnormal ventricular activity(LAVA)を確認できた。
図 3 LV pace にて作成された LV の voltage map
誘発された VT1 は CL 480msec,左脚ブロック,下方軸で Pace map にて中隔に VT1 exit を認めた。
EPS + Ablation:右室(RV)からの心室早期 2
連刺激 にて VT(CL 380,左脚ブロック・上方軸)
が出現した(図 1)
。Ensite NavX system を用い
て左室(LV)
の voltage map を RV pace にて作成
したが,下壁心尖部領域に狭い範囲の低電位領
域(< 1.0mV)を認めたのみであった。pace map
は合致せず,late potential なども確認できな
かったため target を RV に変更した。RV マッピ
ングは RV pace では低電位領域を確認できず,
VT の起源が RV リード留置部近傍の可能性を考
慮し LV pace に変更した。右室心尖部のリード
留置部近傍に local abnormal ventricular activity
(LAVA)
(図 2)
と per fect pacemap を確認(図 1)
図4
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誘発された VT2(CL 440msec,左脚ブロッ
ク,上方軸)と ablation site の pace map
し,同部位に対し通電を行い VT 誘発不能となっ
た。通電部位は RV リード近傍であったが,通
Therapeutic Research vol. 36 no. 4 2015
Symposium:第 45 回埼玉不整脈ペーシング研究会
図 5 RV pace と LV pace で作成した RV の voltage map
中隔の scar の border zone に VT2 exit を認め,RV pace map では確認で
きなかった late potential を LV pace map では確認できた。
電後の閾値,波高値の変化は認めなかった。
なったため終了とした。
2 症
3 考
例
2
67 歳,女性。
拡張型心筋症,CR T – D 植え込み後にて通院
加 療 中 で あ っ た が,持 続 性 心 室 頻 拍 に 対 し
ショック作動したためアブレーション目的にて
入院となった。
EPS + Ablation:RV からの心室早期刺激に
て VT1(CL 480,左脚ブロック・下方軸,図 3)
および VT2
(CL 440,左脚ブロック・上方軸,図
4)が 誘 発 さ れ た。CR T – D か ら RV pace,LV
pace のそれぞれで voltage map を作成,左室と
右室の心室中隔の広範囲に低電位領域を認め
た。VT1 exit は心室中隔基部の LV 側,RV 側の
それぞれに良好な pace map を確認し,通電を
察
2 症例ともに両心室ペーシング植え込み後の
患者であったため容易に RV pace と LV pace を
切替えることが可能であった。ペーシングの位
置を変更し中隔への伝導の方向を変更させるこ
とにより中隔の不整脈基質で通電の target とな
る電位(late potential)を確認できた。
RV pace は心尖部より刺激が入るため中隔の
刺激伝導系を逆行する形で伝導するのに対し,
LV pace は lateral 側より刺激が入るため中隔へ
左室側より同時に伝わる。本症例では LV pace
を行った際に確認できたが,個々の症例によっ
て異なると考えられた。
文
行い誘発不能となった
(図 3)
。VT2 exit は右心
室中隔の低電位領域の border zone に good pace
map を 確 認 で き た。RV pace で は 低 電 位 で
duration の長い potential を確認できたが,LV
pace に変更したところ late potential を確認でき
献
1) Oloriz T, Silberbauer J, Della Bella P, et al. Catheter
ablation of ventricular arrhythmia in nonischemic
cardiomyopathy anteroseptal versus inferolateral
scar sub–types. Circ Arrhythm Electrophysiol 2014;
7:414 – 23.
た
(図 5)
。同部位に対し通電を行い誘発不能と
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