平成23年度 新潟大学長 新潟大学プロジェクト推進経費研究成果報告書 殿 申 請 者 所 属 医歯学系肉眼解剖学 代表者氏名 柴田 昌宏 印 本年度の交付を受けたプロジェクト推進経費について,下記のとおり報告いたします。 プロジェクトの種目:発芽研究 プロジェクトの課題:脱分化の過程で細胞はどのようにリフォームされるか? プロジェクトの代表者:所属 医歯学系 職名 准教授 氏名 柴田昌宏 分担者 1 人 プロジェクトの成果: (別紙可) 「分化」した体細胞は 4 つの遺伝子 (Oct3/4・Sox2・Klf4・c-Myc )を導入されると「脱 分化」し、多分化能と自己複製能を獲得した induced pluripotent stem cells (iPS 細胞: 人工多能性幹細胞) となる(上図) 。体細胞から iPS 細胞へと変化する過程は生理的条件下 で見られる「分化」とは真逆の方向を辿るが、iPS 細胞作成の方法論・臨床応用への安全性 について多くの論文が発表されていることに比べ、その詳細は全く分かっていない。本研究 では、体細胞から iPS 細胞へ「脱分化」を開始した細胞内で起こるダイナミックな変化のう ち、オルガネラや細胞骨格などの構造物がどの様な機構で分解されているのかを明らかにす ることを目的とした。 この計画で問題となる点は、観察している細胞に遺伝子が導入され、結果的に iPS 細胞に なるかどうか分からないことである。この問題点を克服するため、一度 iPS 細胞を作製し、 同細胞を再び分化させ、さらにその分化した細胞を iPS 細胞へと再脱分化させ、効率良く脱 分化過程を観察することを試みた。下図(次項)参照。 -1- 遺伝子導入効率の向上 遺伝子導入効率を挙げることと、その後の全ての実験系で導入遺伝子が保持されることを 目的とし、メダカ由来のトランスポゾンである Tol2 システムに導入遺伝子を組み込んだコ ンストラクトを構築した。 iPS 細胞の作製 13.5 日胚から線維芽細胞(MEF:mouse embryonic fibroblast)を調整し、上記で作製した Tol2 システムを MEF に導入した。遺伝子導入後、LIF を含む未分化培地で培養を続けた。未 分化培地による培養後1 週間で明瞭な細胞塊が多数観察された。 同細胞塊を4%PFA で固定し、 未分化マーカーである Nanog の抗体で免疫染色した。作製した iPS 細胞の多分化能を確認す るため、脂肪細胞と神経細胞への分化を試みた。脂肪細胞はインスリンと T3(Triiodothyronine)を含む培地で分化誘導し、中性脂肪を Oil Red O で染色した。神経細 胞への分化は SHH agonist(purmorphamine)とレチノイン酸により行い、βIII tubulin 抗体 を用いて染色した。 iPS 細胞から線維芽細胞様細胞への再分化 樹立した iPS 細胞を FSM 培地で数日間培養し、線維芽細胞様の細胞を作成した。下図(次 項)左参照。この細胞をさらに上記の LIF を含む未分化培地で数日間培養すると、ほぼ全て の細胞が nanog 陽性の細胞塊になった(iPS-like cell) 。下図(次項)右参照。 (注)報告書は2枚以上とする。別紙による場合も同じ。 -2- 以上の様に、分化細胞から効率良く Nanog 陽性の未分化な細胞(iPS-like cell)を作 成することが出来た。この細胞株を用い、脱分化過程の解析を行いたい。 プロジェクト成果の発表(論文名,発表者,発表紙等,巻・号,発表年等) (別紙可) 第 117 回日本解剖学会全国学術集会(甲府市) 演題:細胞の脱分化過程を観察する試み 発表者:平林茂樹、伊藤健二朗、柴田昌宏、佐藤昇 発表日時:平成 24 年 3 月 26 日 -3- 収支決算書 単位:円 967,000 円 配分額: 費目別収支決算表 設備備品費 消耗品費 0 旅 843,380 費 謝金・賃金 123,620 そ の 他 0 合 0 計 967,000 設備備品費内訳 設備備品名 仕様・型式等 数 量 単 価 金 額 0 計 消耗品費内訳 品 目 数 量 単 価 金 額 分子生物学・生化学・細胞生物学用試薬類 一式 615,536 615,536 プラスチック・・ガラス・金属製器具類 一式 227,844 227,844 843,380 計 旅 費 内訳 事 項 ・ 出張先 回 数 第 117 回日本解剖学会参加発表・山梨県甲府市 単 価 金 1回 (2 名) 123,620 123,620 123,620 計 謝 金 ・ 賃 金 額 内訳 事 項 員 数 単 価 金 額 0 計 そ の 他 内訳 事 項 員 数 単 価 金 額 0 計 -4-
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