比較学の対象と方法の再検討 (PDF:145KB)

平成23年度
新潟大学長
新潟大学プロジェクト推進経費研究経過報告書(中間まとめ)
殿
申
請 者
所 属
代表者氏名
人文社会・教育科学系
松本英実
本年度、交付を受けたプロジェクト推進経費について、現時点までの研究の進行状況等を報告し
ます。
プロジェクトの種目: 助成研究 B
プロジェクトの課題:近世オランダ法学と南アフリカ―比較学の対象と方法の再検討
プロジェクトの代表者:所属人文社会・教育科学系
職名 教授 氏名 松本英実 分担者 2名
プロジェクトの成果:
本プロジェクトは、平成 22 年度新潟大学プロジェクト推進経費研究(助成研究 B)
「法継受論の盲点:
比較法の新たな方法論を求めて」によって得た成果を発展させ、特定の対象(近世オランダ法、南アフ
リカ)に対する学際的な実証研究を行うことを通じて、人文社会科学方法論の批判というより大きなテ
ーマを掲げる超域プロジェクト「19 世紀学の視点から見た「比較」-人文社会科学の方法再検討」を
具体的に推進するものである。その内容としては、比較を常にその方法として用いてきた日本の法学お
よび日本の歴史学において、比較の対象として顧慮されてこなかった南アフリカについて、同様に見逃
されてきた近世オランダ法の展開を分析することを通して接近し、一方では日本の法学の、他方では日
本の西洋史学の、比較方法論を根底から問い直すことを目的とする。近世オランダ法がオランダ植民地
の南アフリカに導入され、その後イギリスの植民地となっても英法と固有の接合・混合をしながら展開
する過程に注目し、基礎法学・実定法学・歴史学研究者の協働によって、これを法的かつ歴史的に検証
する。さらに、その方法論的関心は、従来の日本の比較法学と、日本の西洋史研究・植民地研究・南ア
フリカ研究に欠落した対象と視角を明らかにし、もって新たな比較論の視座と方法を獲得することにあ
る。
これまでに、以下の研究活動を行い、一定の成果を得た。
1. 国際シンポジウム『法典化の 19 世紀 ―(ポスト)コロニアル・パースペクティヴ』の準備
2012 年 2 月 4 日に新潟大学(旭町キャンパス)で南アフリカ大学から研究者を招聘して国際
シンポジウムを行うため、その準備を進めた。本シンポジウムは、南アフリカ大学とサンパウロ
大学から各一名の研究者を招いて、「法典化」をテーマとして、南アフリカ、ブラジル、日本の比
較を試みるもので、第一に「法典化をしないこと」を通じて「法典化の世紀」といわれる 19 世紀
とその学問を問い直し、第二に、日本の学問がよってたつ「比較」の方法を根本から問い直すこと
を企図する。これまでに、発表者の選定を行い、研究代表者・研究分担者・学外協力者の協力の下、
プログラムの詳細について議論を重ねてきた。招聘する南アフリカ大学の Rena van den Bergh 教授
とは密に連絡を取ってきた。予定されているプログラムは以下の通りである。
(注)報告書は2枚程度とする。別紙による場合も同じ。
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『法典化の 19 世紀 ―(ポスト)コロニアル・パースペクティヴ』
The Codification in the 19th Century – Comparative Perspectives
(Post-)Colonial Experiences –
from
日時 2012年2月4日(土)10時~16時半
会場 新潟大学総合脳機能研究センター6階セミナーホール
951-8585 新潟市中央区旭町通 1-757 新潟大学 脳研究所 統合脳機能研究センター
10:00-10:30
趣旨説明:松本英実(新潟大学教授)
I.南アフリカの場合
10:30-11:30
レーナ・ファン・デン・ベルク (南アフリカ大学 UNISA 教授)
コメント 堀内隆行 (新潟大学教育学部准教授)
II.ブラジルの場合
11:30-12:30
二宮正人(サン・パウロ大学教授・東京大学客員教授)
コメント 佐藤明夫名誉教授に依頼中
昼食
12:30-14:00
III.日本の場合
14:00-15:00
岡孝(学習院大学教授)
コメント 中村哲也 (新潟大学現代社会文化研究科教授)
ディスカッション
15:15-16:30
司会:葛西康徳(東京大学教授)
2. 南アフリカの信託法にかんする定期的な研究会の開催
南アフリカの混合法の特徴をよく表す信託法を取り上げ、学外協力者とともに共同研究の場
を設定し、具体的なテクストの検討を通じて、信託法の内容と、その研究方法論についての
議論を重ねた。南アフリカ信託法文献の整理を行い、その中心的研究者についてその学問的
系譜を検討した上で、特に Tony Honoré, South African Law of Trusts, Cape Town を第二
版(1976)と第五版(2002)とを対照しながら検討した。
3. 本研究の方法論について、研究代表者がカナダ・ケベック州で開催されたケベック比較法学
会 50 周年記念大会において英語で発表を行った(松本英実「ミクスト・リーガル・システム
論の可能性:混合法としての日本法」2011 年 10 月 28 日、シェルブルック大学)
。
プロジェクト成果の発表(論文名,発表者,発表紙等,巻・号,発表年等)
Emi Matsumoto, “Potential of the Mixed Legal System Approach: Japanese Law Seen as a
Mixed System”, 50th Anniversary Conference of the Québec Society of Comparative Law, 28
October 2011, Plenary Session “Comparative Law, Mixed Legal Systems and Hybrid Models” at
University of Sherbrooke
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