第2章 姿勢保持具について

第2章 姿勢保持具について
本校の児童生徒は,多くの時間を仰臥位や座位で過ごしています。長時間同
じ姿勢になると身体に負担がかかるため,一日の中で様々な姿勢を取ること
に配慮することが大切です。また,学習等の目的に合わせて,適切な姿勢を
取ることも必要になります。
えきか
本校には校内で作成した姿勢保持装置(腋窩支持型座位保持装置,三角マ
ット)も含め,立位台,クッションチェア,ニーリングアクション等,様々
な姿勢保持具を保有しています。児童生徒の実態に合わせて姿勢保持具を使
い分けることで,臥位,座位,立位等の様々な姿勢保持が可能となります。
本章では,様々な姿勢保持具について紹介しています。
1 立位台類について
2 その他の姿勢保持具について
え き か
(クッションチェア,三角マット,腋窩支持型座位保持装置,ニーリングアクション)
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1
立位台類について
傾斜起立台(ゆるやかな臥位から起こす),プローンボード(腹臥位から立位へ起こ
す),スタンディングテーブル(立位台,角度はほぼ直角)等があります。適切な体幹の
サポートにより,自立困難な状況でも立位姿勢を保持することが可能となります。身体状
況や頭部,体幹のコントロール性から,必要に応じた立位台の種類を選択します。
これらを活用することで,体重をある程度体幹で支えることによる各部の筋力増強や,
ストレッチ効果,心機能の向上(起立性低血圧症の改善),垂直方向の重力刺激により,
姿勢反射や身体感覚の獲得,さらに頭部のコントロール性の向上,脊柱の伸展等,
様々な効果を狙うことができます。
既存の立位台にキャスターを取り付け移動可能とし,本校
PT と連携しテーブルや握り棒を取り付けた立位台。
名
称
概
立位台
要
写真の例は,頭部,体幹のコントロールに困難をかかえている子供が,実態に
応じた適切な立位台のサポートによって,立位姿勢を安全に保持することができ
ている例です。本例ではさらに足首に補装具を装着しています。
このように,立位の姿勢を保持させることで,その結果,頭部が正中に保たれて
視界が広くなります。また,視界が活用しやすくなったことで周囲を見回すような頭
部のコントロールが生まれ,上肢の支持性,操作性も向上し,全般的に姿勢保持
能力が向上するといわれています。
また,足裏や下肢に体
重で負荷をかけることにな
り,下肢の支持筋力の増
強, 姿 勢反 射の 向 上, ま
た,下肢の支持性を高め,
立位感覚を養うということも
目指すことができます。
ウォーカー類と同様に
使用にあたっては,安全
に留意して医療関係者の
指示に従うことが必要で
す。
保管場所
数(台)
小学部
3
中学部
2
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高等部
0
計
5
4
その他の姿勢保持装置,用具について
名
称
概
クッションチェア
要
クッションチェアは,全体が柔らかめのスポンジ素材で作られており,体全体
を包み込み,下半身の関節を深く曲げて座ることができます。体幹が不安定な
子供や,筋緊張のコントロールが難しい子供でも,ボールポジションに近い姿勢
となるため,比較的緊張が抑えられ,リラックスした姿勢で座位を保持することが
できます。
実際の使用では,クッションやタオル
類を補助的に使用して,子供の姿勢保
持能力に 応じ た 支援が 必 要とな りま
す。また,下に三角マットを敷き,座面
の角度を調整することで,後傾(または
前傾)させることができ,リラックスした
座位姿勢を保持することができます。
安定した姿勢ではありますが,長時間の同じ姿勢は避け,適宜姿勢変換を行
うことが必要です。
保管場所
保有数(個)
名
小学部
10
中学部
9
称
高等部
4
概
三角マット
計
23
要
柔らかいスポンジでできた三角マットは,姿勢保持によく活用される用具の一つ
です。子供の体に合わせて,刺激が少なく柔ら
かい素材で作られており,体の下に直接敷いて
使用することができます。
使用例としては,仰臥位の際に少し体幹を起
こした姿勢を取らせる,あるいは,腹臥位の際
に,写真例のように胸の下に三角マットを入れる
ことで,体幹を斜めに起こした肘這い位(パピーポジション)に近い姿勢を保つな
どが挙げられます。また,2枚の三角マットを使用し,肘の高さに合わせて調節す
ることで,上半身の安定を図ることも可能です。腹臥位でリラックスすることで余分
な力が抜け,手を無理なく前面に伸ばしやすくなります。また,視界を遮られない
ため頭が動かしやすくなり,子供の周囲に対する興味・関心は高まりやすくなりま
す。また,教材を提示する際や作業的な内容の際は,子供の目と手に近い距離
で安定した姿勢を保持できるため,目と手の協応を引き出しやすくなります。
三角マットを使用した腹臥位は比較的安楽な姿勢ですが,やはり長時間の同じ
姿勢は望ましくありません。15~30 分を目安に姿勢を変えるように,細やかな配慮
が必要です。
作
り
方
三角マットの形にカットしたスポンジを,ウレタンスポンジの製造業者から発注し
ました。カットしたスポンジにカバーを被せました。
費用は,幅 60 奥行 60 高さ 20(cm)のもので,2,000 円程度,高さ 25(cm)のもの
でも,2,500 円程度に抑えることができます。
保管場所
保有数(個)
小学部
18
中学部
11
高等部
10
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その他
4
計
43
名
称
概
要
腋下支持型座位保持装置は,前にもたれかかって座位を保持するための姿勢
えきか
腋窩支持型座位保持装置
保持具です。もたれる部分の高さは子供の体格に合わせ,両端に付いているネジ
を外して調整できます。
座面を土台として,腋と胸で体幹の前面を支えて支持面とすることで,安定した
長時間の注視が可能となります。それによって,認知力の向上と上肢の機能向上,
それによる目と手の協応を図るこができます。
使用の実際としては,写真のように割座で座ったり,クッションに座った上で使用
したりする等,子供の実態に合わせて変えることが望ましいです。
作
り
方
材料は安価なコンクリートパネル合板(12mm 厚)をフレームとして,胸と腋を預け
る箇所は肌触りの良いシナベニヤ合板(9mm)を使用しました。
安価に大量に製作できるように,構造を簡素化し,材料も無駄の出ないように配
慮した設計となっています。実費 2,500 円程度で製作可能です。
左右のフレームは同じ形状の部材を
対称に張り合わせ,中心に高さ調節
用に等間隔の穴を開けています。
2 台を向き合わせて,間に
板をセットすることで,向か
い合って学習する環境が簡
単に提供できます。
保管場所
保有数(個)
小学部
2
中学部
高等部
2
名称
その他
概
ニーリングアクション
計
4
要
ニーリングアクションは,クッションチェアと同様のソフトで低刺激な素材ででき
ており,不随意運動がある子供でも比較的安全に使用することができます。複数
のモジュールから成っており,組み合わせを変えることによって,簡単に膝立ち,
もしくは四つ這い位に近い姿勢をとることができ,ベルトやサポートで支えることで
身体を対照的に整えることができます。また,両手を前に出しやすく頭部の支持も
できるため,この姿勢での遊びを通じて主体的に目と手の協応を促すことができま
す。安全に前傾姿勢が保持できるため,一人で遊べるチャンスが広がり,また,子
供と正面で向き合うことができるため,コミュニケーションがとりやすくなります。障
害が重く仰向けの姿勢ばかりで過ごしがちの子供にとって,姿勢のバリエーション
を増やすことのできる,画期的な姿勢保持用具です。
保管場所
保有数(個)
小学部
1
中学部
1
高等部
1
- 34 -
その他
計
3