立命館大学食科学部の構想(案) 1994 年理工学部の拡充移転により開設された立命館大学びわこ・くさつキャンパス(以下、 「BKC」) は、1998 年の経済学部、経営学部の移転を機に、経済学部、経営学部、理工学部の共同運営による 文理総合インスティテュートを開設し、主にファイナンス、環境・デザイン、サービスマネジメン トの 3 つの分野を中心として、3 学部(経済・経営・理工)が協働する形で、革新的な文理総合の 教学プログラムを展開してきました。 立命館大学食科学部は、この BKC において文理総合の教育・研究を展開してきた実績を踏まえ、 「食」全体を俯瞰した、社会と食を関連付けて理解・実践する体系的な教育研究システムの構築に 挑戦し、現代の「食」に関わる高度人材への強い社会的要請に積極的に応え、本学の高等教育機関 としての新たな発展を図ります。 「食」は人間存在の根本に関わり、国境、信条、歴史、言語、時間軸などのボーダーを越えて存 在する根本的で普遍的な課題です。それゆえ、政治、経済、文化、芸術、自然科学など、すべての 学問領域に渡る学術的研究の対象となります。さらに「食」を巡る社会的な問題は、環境問題とと もに人類の将来の帰趨を決する最も大きな課題であり、その解決のために高度人材の育成が現代社 会の喫緊の課題となっています。 「食」の教育研究では、人々が「よりよく生き(Ethical & Fair)」、「豊かなくらし(Affluence & Wellbeing)」を送り、「確かな未来(Sustainable & Secure)」を持つことのできる社会作りに資 することが求められます。そのため、①「食」の多様性と歴史を知り人間にとっての「食」の持つ 根源的な意味を考え、 「食」と人の織り成す多様な文化を理解することができる、②人間が「食」を 確保する社会的システムを理解し、継続的で効率的な「食」の供給システムを構築・運営すること ができる、③「食」の機能を理解し、人間が安全で美味しいと感じるメカニズムを理解して、新た な「食」の可能性を切り拓くことができる、の3つの力を兼ね備え、 「食」に直接関連する分野はも とより、「食」に対する深い理解と洞察を通じてより良い社会を構築するための中心的な役割を担 うことのできる能力を獲得するための教育を展開する予定です。 これら3つの学びの体系は、人文科学系・社会科学系・自然科学系を横断し、「食」に関わる社 会システムや人間の行動を科学的に理解・分析する「食科学」を体系化し構築することを意味しま す。すなわち、食材や調理、物理的・化学的変化などのモノとしての「食」の生産・変形・消費を 中心的に捉えてきた従来の食物の科学から、人間や社会を分析の中心に据え、社会や人間の感性や 行動と「食」との関わりを重視し、社会科学、特に「食」に関わる経済学・経営学などの視点を中 心としながらも、人文科学・自然科学の成果を視野に捉えながら、統合的に「食」の科学を構築し ます。これによって、本学部は「食」を切り口にして社会問題を俯瞰的に理解し、問題解決に向け て、文化や歴史、自然科学的知識などを含めた深い学識と倫理観を備えた、よりよい社会作りに貢 献しうる人材を養成します。 フードカルチャー領域 「食」の多様性と奥深さを知るために、日本や世界の食行動を文化的、地理的、歴史的背景の 視点から学ぶとともに、異文化理解とコミュニケーションについて学ぶ。 フードマネジメント領域 グローバル化した「食」の供給・消費の仕組みや地域の役割を体系的に理解し、社会的な最適性 を目指す政策や、「食」に関わる組織や企業のあるべき姿とその先端的な経営技法を学ぶ。 フードテクノロジー領域 食材から体内への取り込みまでの一連の流れと、人が安全に美味しく食べるということはどう いうことかを科学的に理解し、安全性や美味しさを感じる科学的なメカニズムを学ぶ。 人材育成目的・養成する人材像 「食」を俯瞰的に捉え、 「食」に関する人文科学、社会科学、自然科学を統合的に関 連付けて理解することで、食科学および社会に関する深い知見と教養と倫理的な態度 を備え、社会において実践的な行動力を発揮できる人材を育成することを目的とする。 食科学部では、この人材育成目的を実現するための教育課程として、基礎を築き、学びを展開す る1年次から 3 年次までの全ての年次に、演習科目、講義科目、プロジェクト科目の各科目群を設 置し、年次ごとの教育段階に基づいて各科目群での学びを連関させます。このような学びのサイク ルが、各年次内で体系的に実施されるように科目設計し、段階的に知識と実践のレベルを向上させ、 必修である「卒業研究」で学びを完成させます。 <教育課程の特色> (1)経済学・経営学を主分野に、食に関連する人文科学、社会科学、自然科学を統合的に関連付け て学ぶカリキュラム (2)段階的に知識を深めるカリキュラム編成 (3)初年次教育の重視 (4)食分野における高度人材を育成する国際教育 (5)地域や企業などと連携した実践的カリキュラム (6)4 年間を通じた演習と集大成としての卒業研究 <教育目標> (1) 「食」に関する国内外の諸事象に対する広い関心から、それらを相互に関連付けようとする意 欲と態度を持つ(関心・意欲・態度) (2)経済学・経営学、人文科学、自然科学の視点から 「食」に関する国内外の諸事象を関連付け て理解できる(知識・理解) (3) 「食」に関する国内外の課題を発見・設定し、その課題に向けて社会での実践的な行動に移す ことができる(技能・表現) (4) 「食」に関する国内外の課題解決のために、倫理的な態度と責任感を持って、他者とコミュニ ケーションを取りながら協働できる(技能・表現) (5) 「食」に関する多様な考え方を関連付けて理解・分析した上で、自分の考えを明確にして発信 することができる(思考・判断) <学部構想概要> ●学部名称 食科学部 ●学科名称 食科学科 ●学位名称 学士(食科学) ●入学定員 320 名 ●開設年度 2018 年度(平成 30 年度) ●開設場所 びわこ・くさつキャンパス(滋賀県草津市) 以 上
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