1. 中国経済のGDP成長率の低下

レポート「統計データで見る中国経済の減速」 第 1 章
1. 中国経済の GDP 成長率の低下
中国政府が発表する国内総生産(GDP)値には、疑念が持たれているよう
です。しかし、外に信頼できるデータがある訳ではありません。本項では、
中国国家統計局が発表している GDP 値により、中国経済成長の減速につい
て紹介します。年間の GDP 値は China Statistical Yearbook 2015、四半期
値は国家統計局のプレスリリースに依るものです。
1.1 名目 GDP と実質 GDP の推移
図 1-1 は、中国の名目 GDP の推移を、一次、二次、三次産業の内訳で示
しました。1990 年代の初め頃から増加傾向が大きくなり、2002 年頃から増
加が顕著になっていることが分かります。因みに、1990 年と比べて 2015 年
の名目 GDP 値の比率は 36 倍です。
図1-1 中国の名目GDPと産業内訳の推移
出所:China Statistical Yearbook 2015
700,000
600,000
400,000
三次産業
300,000
200,000
二次産業
100,000
2014
2006
2002
1998
1990
1986
1982
1994
1
2010
一次産業
0
1978
名目GDP 億人民元
500,000
図 1-2 は、中国国家統計局が発表している実質 GDP 値です。数年ごとの
グループについて、基準年の価格をもとに実質 GDP が示されています。
図1-2 中国の実質GDPの推移
出所:China Statistical Yearbook 2015
600,000
基準価格年
2010
実質GDP 億人民元
500,000
400,000
300,000
2005
200,000
2000
100,000
1970
1990
1980
2010
2012
2014
2005
2007
2009
1978
1980
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1990
1992
1994
1996
1998
2000
2000
2002
2004
0
名目 GDP を基準価格年の物価に換算することにより、実質 GDP が算出
されます。名目 GDP と実質 GDP の比率は、GDP デフレーターと呼ばれま
す。GDP デフレーターは、物価が上昇している場合のインフレ率に相当す
るものです。
GDP デフレーター = (名目 GDP/実質 GDP)× 100
日本の場合、各構成項目ごとのデフレーターを求め、それを用いて各構成
項目ごとの実質値を計算し、
その実質値の合計と名目GDP の比率から、
GDP
デフレーターが計算されています。中国国家統計局の場合には、GDP デフ
レーターを算定する関連情報が開示されていないことが、GDP 成長率に対
2
する疑念の要因の一つになっているようです。
1990 年と 2013 年の GDP を比較すると、図 1-1 に示した名目値では 31
倍になっていますが、図 1-2 の実質 GDP では 9 倍です。インフレ分はかな
り大きく、GDP 成長率について考える場合には、実質 GDP で評価すること
が必要です。GDP 成長率については事項で示します。
図 1-3 は、実質 GDP の産業内訳の推移です。一次産業の比率は、中国で
もかなり低い値です。
図1-3 中国の実質GDPの産業内訳の推移
250,000
出所:China Statistical Yearbook 2015
一次産業
二次産業
三次産業
200,000
実質GDP 億人民元
基準価格年
2010
150,000
2005
100,000
2000
50,000
1970
1990
1980
2010
2012
2014
2005
2007
2009
1978
1980
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1990
1992
1994
1996
1998
2000
2000
2002
2004
0
1.2 対前年比の GDP 成長率
本項では、GDP とその産業内訳の、対前年比成長率を示します。国家統
計局のデータで、2013 年までは China Statistical Yearbook 2015、2014 年
3
と 2015 年はプレスリリースの値です。
図 1-4 に中国実質 GDP の対前年比成
長率の推移を示しました。
図 1-4 中国 GDP の対前年比成長率
出所:China Statistical Yearbook 2015
2014
2012
2010
2008
2006
2004
2002
2000
1998
1996
1994
1992
1990
1988
1986
1984
1982
1980
1978
対前年比成長率 %
GDP
16
14
12
10
8
6
4
2
0
全般的には中国経済は、1980 年頃から平均で 10%前後の GDP 成長率を
遂げてきたことが分かります。1998 年前後に GDP 成長率が落ち込んでいる
のは、アジア通貨危機の影響を受けたものです。その後 2008 年まで、GDP
成長率は上昇を続けました。2008 年 8 月に開催された北京オリンピックま
では、好景気が維持されると言われたものです。しかし、北京五輪の閉会式
の 1 ヵ月後に、リーマン・ショックが起こり、GDP 成長率も急落しました。
中国政府は 2008 年の末に、総額 4 兆人民元と言われる景気刺激策を発表
しました。それにより、中国経済は V 字回復をとげ、GDP 成長率も一旦は
10%以上を回復しました。しかし、この景気刺激策は、多くの後遺症を残し
ました。後述するように、それは本書の主要テーマです。GDP 成長率は、
その後 2015 年現在まで、ずるずると低下を続けています。
図 1-5 には、GDP の産業内訳の対前年比増加率の推移を示しました。2000
年以降を見ると、第一次産業の対前年比増加率は 4%前後で横ばいを続けて
います。第二次産業の増加率は、リーマン・ショック前後での増減が見られ
ますが、この数年間は低下を続けています。第三次産業の増加率は、リーマ
4
1978
5
2008
2010
2012
2014
2010
2012
2014
1998
1996
1994
1992
1990
1988
1986
1984
1982
2008
0
2006
4
2006
8
2004
12
2002
16
2004
20
2002
三次産業
2000
24
2000
1998
1996
1994
1992
1990
1988
1986
1984
1982
1980
1978
対前年比増加率 %
対前年比増加率 %
2014
2012
2010
2008
2006
2004
2002
2000
1998
1996
1994
1992
1990
1988
1986
1984
1982
1980
1978
14
12
10
8
6
4
2
0
-2
1980
対前年比増加率 %
ン・ショック以降、10%、次に 8%前後で横ばい傾向を示しています。
図 1-5 中国 GDP の産業内訳の対前年比増加率
出所:China Statistical Yearbook 2015
一次産業
24
二次産業
20
16
12
8
4
0
1.3 近年の GDP 成長率
本項では、2013 年以降の GDP とその内訳の増加率の推移を、四半期ごと
のデータで示します。データは、国家統計局のプレスリリースの値です。最
初に、各内訳がどれだけの比率を占めているかを図 1-6~図 1-8 に示しまし
た。
図1-6 GDPの産業内訳比率
(2015年)
図1-7 二次産業の内訳比率
(2015年)
建設業
17%
一次産
業
9%
三次産
業
50%
二次産
業
41%
鉱工業
83%
図1-8 三次産業の内訳比率 (2015年)
輸送・保
管・郵便
9%
卸売・小
売業
20%
その他
38%
ホテル・
ケータリ
ング
4%
金融仲介
業
17%
不動産業
12%
2015 年の実績で、一次産業は 9%、二次産業は 41%、三次産業は 50%と
6
二次産業を上まわっています。二次産業の内訳では、鉱工業生産が 83%を示
してます。三次産業では、卸売・小売業の 20%、金融仲介業の 17%、不動
産業の 12%が上位を示してます。
<年初からの四半期累積値の増加率>
図 1-9 には、GDP 四半期値の増加率の推移を示しました。中国国家統計局
発表の増加率は、年初からの四半期累計値の対前年同期比の増加率であり、
以下にそのまま示しました。過去 3 年間、GDP 成長率が低下を続けている
図1-9 中国GDPの対前年同期比の増加率 (四半期累計値)
8.0
7.8
7.6
7.4
7.2
7.0
6.8
6.6
20
13
20
-1
13
Q
-1
2 0 Q2Q
13
-1
2 0 Q-3
13
Q
-1
Q
-4
20 Q
2 0 1 41
14
-1 Q
Q
20
-2
14
Q
-1
2 0 Q-3
14
Q
-1
Q
-4
20 Q
15
20
-1
15
Q
-1
Q
20
-2
15
Q
-1
2 0 Q3Q
15
-1
Q
-4
Q
対前年同期比の増加率 %
ことが明瞭に分かります。
図 1-10 には、GDP の内訳の一次、二次、三次産業の対前年同期比の増加
率を同様に四半期累計値で示しました。一次産業は、概ね横ばいの傾向を示
しています。二次産業は、2015 年に入ってからの増加率低下が顕著です。
三次産業の増加率は複雑な動きをしています。
2014 年に一旦低下したあと、
2015 年に再び増加しています。増加率の変化の原因を理解するには、更にそ
の内訳を見ることが必要です。また、年初からの累計値であることも、少し
分かり難くしているように思います。それらについては後述します。
図 1-11 には二次産業の内訳、図 1-12 には三次産業の内訳の増加率を示し
ました。
7
20
13
20
-1
13
Q
-1
Q
20
-2
13
Q
-1
Q
20
-3
13
Q
-1
Q
-4
20 Q
14
20
-1
14
Q
-1
2 0 Q2Q
14
-1
2 0 Q-3
14
Q
-1
Q
-4
20 Q
15
20
-1
15
Q
-1
2 0 Q-2
15
Q
-1
Q
20
-3
15
Q
-1
Q
-4
Q
対前年同期比の増加率 %
20
13
20
-1
13
Q
-1
2 0 Q2Q
13
-1
Q
20
-3
13
Q
-1
Q
-4
20 Q
1
4
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1 4 - 1Q
-1
2 0 Q-2
14
Q
-1
Q
20
-3
14
Q
-1
Q
-4
20 Q
15
20
-1
15
Q
-1
Q
20
-2
15
Q
-1
Q
20
-3
15
Q
-1
Q
-4
Q
対前年同期比の増加率 %
20
13
20
-1
13
Q
-1
2 0 Q-2
13
Q
-1
Q
20
-3
13
Q
-1
Q
-4
20 Q
14
20
-1
14
Q
-1
2 0 Q-2
14
Q
-1
Q
20
-3
14
Q
-1
Q
-4
20 Q
15
20
-1
15
Q
-1
2 0 Q-2
15
Q
-1
Q
20
-3
15
Q
-1
Q
-4
Q
対前年同期比の増加率 %
図 1-10 GDP 内訳の対前年同期比の増加率 (四半期累計値)
出所:中国国家統計局プレスリリース
5.0
8.5
8.0
7.5
一次産業
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
二次産業
7.0
6.5
6.0
5.5
8.8
8.6
8.4
8.2
8.0
7.8
7.6
7.4
三次産業
8
図 1-11 二次産業の内訳の対前年同期比の増加率 (四半期累計値)
鉱工業
8.0
7.5
7.0
6.5
6.0
5.5
対前年同期比の増加率 %
20
13
20
-1
13
Q
-1
Q
20
-2
13
Q
-1
Q
20
-3
13
Q
-1
Q
-4
20 Q
14
20
-1
14
Q
-1
2 0 Q2Q
14
-1
2 0 Q-3
14
Q
-1
Q
-4
20 Q
15
20
-1
15
Q
-1
2 0 Q-2
15
Q
-1
Q
20
-3
15
Q
-1
Q
-4
Q
対前年同期比の増加率 %
出所:中国国家統計局プレスリリース
11.0
建設業
10.0
9.0
8.0
7.0
6.0
1Q -2 Q -3 Q -4 Q - 1Q -2 Q -3 Q -4 Q - 1Q -2 Q -3 Q -4Q
3Q
Q
Q
Q
Q
Q 01 5
Q
Q
Q
1
14
-1 3- 1 3- 1
- 1 4- 1 4- 1
-1
-1
-1
20
20
2
3
4
1
1
1
1
1
1
1 5 01 5 015
0
0
0
0
0
0
0
2
2
2
2
2
2
2
2
2
二次産業の内訳の鉱工業と建設業は、共に 2015 年に入り増加率の低下が
顕著です。その原因を知るには、後述する主要産業の増加率を見る必要があ
ります。
三次産業(サービス産業)の内訳の増加率の変化は一律ではありません。
詳しくは、後述することにします。
9
20
13
20
-1
13
Q
-1
Q
20
-2
13
Q
-1
Q
20
-3
13
Q
-1
Q
-4
20 Q
14
20
-1
14
Q
-1
Q
20
-2
14
Q
-1
Q
20
-3
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Q
-1
Q
-4
20 Q
15
20
-1
15
Q
-1
Q
20
-2
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Q
-1
Q
20
-3
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Q
-1
Q
-4
Q
対前年同期比の増加率 %
20
13
20
-1
13
Q
-1
2 0 Q-2
13
Q
-1
Q
20
-3
13
Q
-1
Q
-4
20 Q
14
20
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Q
-1
Q
20
-2
14
Q
-1
Q
20
-3
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Q
-1
Q
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20 Q
15
20
-1
15
Q
-1
Q
20
-2
15
Q
-1
Q
20
-3
15
Q
-1
Q
-4
Q
対前年同期比の増加率 %
20
13
20
-1
13
Q
-1
2 0 Q-2
13
Q
-1
Q
20
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-1
Q
-4
20 Q
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-1
14
Q
-1
Q
20
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14
Q
-1
Q
20
-3
14
Q
-1
Q
-4
20 Q
15
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15
Q
-1
Q
20
-2
15
Q
-1
Q
20
-3
15
Q
-1
Q
-4
Q
対前年同期比の増加率 %
図 1-12 三次産業の内訳の対前年同期比の増加率 (四半期累計値)
(1/2)
6.5
6.0
5.5
5.0
4.5
4.0
3.5
3.0
出所:中国国家統計局プレスリリース
11.0
10.0
9.0
卸売・小売業
8.0
7.0
6.0
5.0
7.5
7.0
6.5
6.0
5.5
5.0
4.5
4.0
輸送・保管・郵便
ホテル・ケータリング
10
対前年同期比の増加率 %
20
13
20
-1
13
Q
-1
2 0 Q2Q
13
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2 0 Q-3
13
Q
-1
Q
-4
20 Q
14
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2 0 Q2Q
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-1
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2 0 Q-3
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-1
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-3
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-1
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Q
-1
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Q
-1
Q
20
-3
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Q
-1
Q
-4
Q
対前年同期比の増加率 %
対前年同期比の増加率 %
20
13
20
-1
13
Q
-1
Q
20
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Q
-1
Q
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-4
Q
20
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Q
-1
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-1
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Q
-1
Q
20
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15
Q
-1
Q
-3
20
Q
15
-1
Q
-4
Q
図 1-12 三次産業の内訳の対前年同期比の増加率 (四半期累計値)
(2/2)
出所:中国国家統計局プレスリリース
18
16
金融仲介業
14
12
10
8
6
10
不動産業
8
6
4
2
0
9.5
9.0
8.5
8.0
7.5
7.0
6.5
その他
11
<四半期値の増加率>
前記の増加率のグラフは、年初からの累積値に対するものです。四半期毎
の経済状態が、適切に示されていない面が少あるように思います。そのため
以下に、年初からの累積値の増加率を、四半期値の増加率に換算したグラフ
を示すことにします。四半期値の増加率は、累積期間のデフレータが同一で
あると仮定して求めたものです。
図 1-13 は、GDP 四半期値の対前年同期比の増加率です。2014 年半ばか
図1-13 中国GDPの対前年同期比の増加率 (四半期値)
2015-4Q
2015-3Q
2015-2Q
2015-1Q
2014-4Q
2014-3Q
2014-2Q
2014-1Q
2013-4Q
2013-3Q
2013-2Q
8.0
7.8
7.6
7.4
7.2
7.0
6.8
6.6
2013-1Q
対前年同期比の増加率 %
ら、低下を続けていることが分かります。
図 1-14 には、一次、二次、三次産業の四半期値の対前年同期比の増加率
を示しました。一次産業は 4%前後を変動していますが、概ね横ばいと言っ
ていいと思います。
二次産業は 2014 年以降低下を続けており、これが GDP 成長率の低下に
繋がっていると言えるでしょう。なお、2015 年の第 4 四半期は、僅かです
が上昇に転じており、その理由を知るには、二次産業の内訳を見ることが必
要です。
三次産業の増加率は 2013 年には横ばいでしたが、2014 年以降、複雑な動
きをしています。これもその内訳を見ることが必要です。
12
13
2015-4Q
2015-4Q
2015-4Q
2015-1Q
2014-4Q
2015-3Q
2014-3Q
2014-2Q
2014-1Q
2013-4Q
2013-3Q
2013-2Q
2013-1Q
対前年同期比の増加率 %
2015-3Q
三次産業
2015-3Q
8.8
8.6
8.4
8.2
8.0
7.8
7.6
7.4
2015-2Q
5.5
2015-2Q
6.0
2015-2Q
6.5
2015-1Q
7.0
2015-1Q
7.5
2014-4Q
8.0
2014-4Q
二次産業
2014-3Q
2014-2Q
8.5
2014-3Q
2014-2Q
2014-1Q
2013-4Q
2013-3Q
2013-2Q
2013-1Q
対前年同期比の増加率 %
5.0
2014-1Q
2013-4Q
2013-3Q
2013-2Q
2013-1Q
対前年同期比の増加率 %
図 1-14 GDP 内訳の対前年同期比の増加率 (四半期)
出所:中国国家統計局プレスリリース
一次産業
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
図 1-15 には、二次産業の内訳の四半期値の対前年同期比の増加率を示し
ました。建設業の増加率の低下は、2015 年半ばで下げ止まり、第 4 四半期
には上昇に転じています。これは、不動産市場がいくらか回復してきたこと
に依るものと思われます。
図 1-15 二次産業の内訳の対前年同期比の増加率 (四半期値)
出所:中国国家統計局プレスリリース
2014-3Q
2014-4Q
2015-1Q
2015-2Q
2015-3Q
2015-4Q
2014-3Q
2014-4Q
2015-1Q
2015-2Q
2015-3Q
2015-4Q
2014-2Q
2014-1Q
2013-4Q
2013-2Q
2013-3Q
2014-2Q
2014-1Q
2013-4Q
2013-3Q
2013-1Q
建設業
2013-2Q
11
10
9
8
7
6
5
4
2013-1Q
前年同期比の増加率 %
前年同期比の増加率 %
鉱工業
8.5
8.0
7.5
7.0
6.5
6.0
5.5
5.0
図 1-16 には、三次産業の内訳の四半期値の対前年同期比の増加率を示し
ました。内訳で最大の卸売・小売業の増加率は 10%前後だったものが、2015
年には 6%に低下しました。消費は拡大していません。不動産業の増加率も
8%程度であつたのが、2014 年には 2%台に低下しましたが、2015 年に入り
14
15
2015-3Q
2015-4Q
2015-4Q
2014-3Q
2014-2Q
2015-3Q
3
2015-2Q
4
2015-2Q
5
2015-1Q
6
2015-1Q
ホテル・ケータリング
2014-4Q
7
2014-4Q
2014-3Q
2014-2Q
8
2015-4Q
2015-3Q
2015-2Q
2015-1Q
2014-4Q
2014-3Q
2014-2Q
2014-1Q
2013-4Q
2013-3Q
2013-2Q
2013-1Q
前年同期比の増加率 %
12
11
10
9
8
7
6
5
4
2014-1Q
2013-4Q
2013-3Q
2013-2Q
2013-1Q
前年同期比の増加率 %
(1/2)
2014-1Q
2013-4Q
2013-3Q
2013-2Q
2013-1Q
前年同期比の増加率 %
図 1-16 三次産業の内訳の対前年同期比の増加率 (四半期値)
出所:中国国家統計局プレスリリース
卸売・小売業
輸送・保管・郵便
7
6
5
4
3
16
2015-4Q
2015-4Q
2014-3Q
2015-4Q
2014-2Q
2014-1Q
2015-3Q
6
2015-3Q
7
2015-3Q
8
2015-2Q
9
2015-2Q
10
2015-2Q
その他サービス業
2015-1Q
11
2015-1Q
0
2015-1Q
2
2014-4Q
4
2014-4Q
6
2014-4Q
8
2014-3Q
不動産業
2014-3Q
2014-2Q
10
2014-2Q
2014-1Q
2013-4Q
2013-3Q
2013-2Q
2013-1Q
前年同期比の増加率 %
24
2014-1Q
2013-4Q
2013-3Q
2013-2Q
2013-1Q
前年同期比の増加率 %
(2/2)
2013-4Q
2013-3Q
2013-2Q
2013-1Q
前年同期比の増加率 %
図 1-16 三次産業の内訳の対前年同期比の増加率 (四半期値)
出所:中国国家統計局プレスリリース
金融仲介業
20
16
12
8
4
回復してきたことが分かります。
一方、金融仲介業の増加率は、10%前後から 16%前後へと大きく上昇して
います。二次産業の増加率が低下する中で、GDP 成長率の低下をある程度
抑制したのは金融仲介業であることが分かります。
1.4 中国経済 2015 年の減速
筆者のウェブページ「中国経済の減速と電力消費量の推移」は、習近平主
席が登場した 2012 年 11 月に始めたものです。胡錦濤政権の最後の年は、経
済成長が低下しており、習近平政権では、更に経済成長が減速する可能性が
想定されました。
一方、中国経済の減速が広く世間で認識されたのは、図 1-17 に示すよう
に、2015 年 7 月に中国株式の上海総合指数が急落してからです。2014 年末
ころから上海総合指数は上昇を始めました。長期間 2,000 程度だった上海総
合指数が、中国経済の低迷下で高騰することは異常であり、その急落は筆者
には当然のことと思われました。
図1-17 中国株価上海総合指数の推移
上海総合指数
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
2015年10月
2015年7月
2015年4月
2015年1月
2014年10月
2014年7月
2014年4月
2014年1月
2013年10月
2013年7月
2013年4月
2013年1月
1,000
株価の高騰は、不動産市場が低迷するなかで、そこに投じらていた投資資
金が株式に向かったためと考えられています。加えて、人民日報などの政府
17
系報道機関が、更なる株価の上昇を示唆したことが、株価の高騰を招いたと
言われます。後から考えると、政府系報道機関によるそのような報道は、不
動産市場が低迷し GDP 成長率を押し下げていたため、株価を上昇させ証
券・金融取引を増大させることにより、GDP 成長率の目標を達成しようと
する意図でがあったように想像されます。
何れにしても、2015 年の中国経済の減速は顕著であり、主なデータを表
1-1 に整理して示しました。前記のグラフ類と同じデータを用いたものです。
表 1-1 中国 GDP と内訳の増加率の 2015 年の低下
出所:中国国家統計局プレスリリース
対前年比の増加率 %
GDP比 %
2015年 2014年 2015年 増加率差
GDP
100
7.3
6.9
-0.4
一次産業 農林水産業
9.3
4.1
4.0
-0.1
鉱工業
33.8
6.9
5.9
-1.0
二次産業
建設業
6.9
9.1
6.8
-2.3
卸売・小売業
9.8
9.5
6.1
-3.4
輸送・保管・郵便
4.5
7.0
4.6
-2.4
ホテル・ケータリング
1.8
6.2
6.2
0.0
三次産業
金融仲介業
8.5
9.7
15.9
6.2
不動産業
6.1
2.3
3.8
1.5
その他サービス産業
19.3
8.6
9.2
0.6
産業分類
GDP内訳
対前年比のGDP 成長率は、
2014 年の7.3%から、
2015 年は6.9%へと0.4%
だけ低下しました。一方、2014 年に比べて 2015 年には、鉱工業生産の増加
率は 1.0%、建設業は 2.3%ともっと大きく低下しています。また、三次産業
でも、卸売・小売業の増加率は 3.4%、輸送・保管・郵便は 2.4%低下しまし
た。2015 年に概して消費は拡大していないことが分かります。
2015 年の GDP 成長率を、政府目標にほぼ等しい 6.9%の低下に抑えたの
は、2014 年から 6.2%と大幅に上昇した金融仲介業と、少し回復してきた不
動産業です。2015 年の金融仲介業の増加率の上昇は、株価の高騰による証
券・金融取引の増加がもたらしたものと思います。
中国政府は、製造業の減速をサービス産業の拡大が支えいてると説明しま
18
すが、中国経済はかなり苦しい状況にあることが窺われます。
もう一点指摘しておきたいのは、GDP 内訳の各産業部門の増加率の変化
量です。
GDP が 0.1%程度増減したことがマスコミで報じられます。
しかし、
その内訳は図 1-15、図 1-16 に示したように、遥かに大きく変動しています。
GDP やその内訳の値の正確さや信頼性には疑念があるかもしれません。し
かし、その増減は、それなりに実態が反映していると思います。そのような
観点で、次に発表される GDP 四半期値内訳の増減を眺め、中国経済の現状
を考えてみてください。
19