誤差楕円と標準誤差曲線 二変量の誤差の概要 はじめに,測量の観測値は基本的に,角度と距離からできています,実際は1~2回 観測(測定)を行いその平均値を1回のデータとして完了します,一般的な誤差の説明 ではある点間を数十回測ったデータとして説明されますので,これでは測量データでは 馴染まないことになります。 境界測量では同一点を複数回測る事はありませんので誤差論から説明される誤差と 境界測量成果に対する誤差とではニュアンスが異なります,ある一団の境界点を異なる 次元によって測量し得られた点毎の成果との差を誤差として扱うのが境界(筆界)の誤 差です。 例えば,10年前の成果をAデータとすれば,各点のデータは AXi(i=1~n 個),AYi で表示し,現在の成果をBデータとすれば各点のデータは BXi,BYi となり,各点の誤 差は Xi= BXi-AXi,Yi= BYi-AYi となります。 AXi,AYi と BXi,BYi は与点(基準の基とする点)が異なる場合,あるいは同じ与 点であっても精度が良くない場合は BXi,BYi を基準に AXi,AYi を変換してから誤差 を求める必要があります,変換には図形の回転,移動,伸縮がある場合,回転,移動, 伸縮+歪みがある場合とがあります,これについては座標変換で学習してください。 標準誤差曲線 次の表,変換後の A データは旧の成果を準拠点(基準にする点)にヘルマート変換 した値,現在の B データは実測した値です。 番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 16 17 18 19 21 点名 hK3 hK4 hK5 hK6 hK7 hK8 hK9 hK10 hK11 hK12 hK13 hK14 hK15 hK16 hK18 hK19 hK20 hK21 hK23 変換後のAデータ AX AY -424.169 189.853 -435.963 188.077 -446.674 187.542 -454.074 199.197 -455.496 205.678 -459.615 216.081 -460.533 219.118 -456.201 221.128 -449.475 224.182 -445.800 225.529 -444.819 225.836 -442.284 226.408 -440.345 226.612 -436.488 225.316 -430.272 213.171 -427.734 201.595 -423.927 193.789 -423.895 189.893 -458.731 219.954 点名 G3 G4 G5 G6 G7 G8 G9 G10 G11 G12 G13 G14 G15 G16 G18 G19 G20 G21 G23 現在のBデータ BX BY -424.172 189.861 -435.973 188.102 -446.672 187.553 -454.059 199.208 -455.497 205.662 -459.616 216.083 -460.540 219.119 -456.210 221.123 -449.476 224.200 -445.796 225.527 -444.816 225.838 -442.284 226.405 -440.338 226.601 -436.483 225.308 -430.285 213.178 -427.740 201.594 -423.918 193.772 -423.877 189.874 -458.742 219.952 平均 標準偏差 1 BX-AX X -0.003 -0.010 0.002 0.015 -0.001 -0.001 -0.007 -0.009 -0.001 0.004 0.003 0.000 0.007 0.005 -0.013 -0.006 0.009 0.018 -0.011 0.000 0.008 BY-AY Y 0.008 0.025 0.011 0.011 -0.016 0.002 0.001 -0.005 0.018 -0.002 0.002 -0.003 -0.011 -0.008 0.007 -0.001 -0.017 -0.019 -0.002 0.000 0.012 座 座標データ表 表 Xi,Yi を表の の右側の通り り求め,散布 布図に作成し したのが下の の図です。 X, ,Y 散布図 差を計算 X 軸の標準偏差 はじめにx軸 軸の標準偏差 差を計算し,この軸から10°毎に に180°ま まで標準偏差 差を計 算します。 次の表 表が10°毎の標準偏 偏差の計算結 結果です。 2 標準 準偏差 0 0.008462 0 0.007740 0 0.007312 0 0.007283 0 0.007663 0 0.008354 0 0.009215 0 0.010114 0 0.010946 0 0.011634 0 0.012127 0 0.012390 0 0.012406 0 0.012175 0 0.011712 0 0.011047 0 0.010231 0 0.009335 角度 度 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 この結果を散 散布図にプロットし結線 線したのが標 標準誤差曲線 線です。 標準誤差曲 曲線図 誤差 差楕円 こ の標準誤差 差曲線自体は はこれと言う う使い道はあ ありませんがこれが二 二変量の誤差 差を表 示した基本的なグラフだということで です。 3 誤差楕円 円 標準誤差曲線 線の内側に接 接する楕円を を作成します すと図の赤線 線の楕円にな なります。これが こ 誤差楕 楕円というもので,誤 誤差楕円が二 二変量の分布 布で重要な値 値になります す。 差楕円は楕 誤差 楕円の中心点 点,楕円長軸 軸長,楕円短 短軸長,楕円 円の傾きの4 4つの要素か からな ります。 次の図に示す す通り,この4つの要素 が二変量い いわゆる座標 標値データの の誤差に関す する重 要な指 指標になります。 標準偏差の計 計算結果の表 表の最大値の の角度が12 20°付近に に長軸があり ります。 4 それぞれの要素の計算式を次に示します。 楕円の中心点は「座標データ表」の Xi,Yi の平均値x,y です。 1 X Xi 1 Y Yi x軸標準偏差σ 1 σ ² Xi X ² Yi Y ² y軸標準偏差σ 1 σ ² 標準偏差σ σ ² 1 Xi σ X Yi Y σ ² 長軸標準偏差σ σ ² σ ² σ ² σ ² σ ² 4σ ² σ ² 4σ ² 2 短軸標準偏差σ σ ² σ ² σ ² σ ² 2 楕円角α tan α σ ² σ ² σ 5 式をエクセル ルで計算すると次の表に になります。 分布中心 σm m 0.012110 σxx 0.00882 σn 0.00705 σy 0.0113 Xav 0 .0000 0.0085 カウント 19 NO, N 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 点名 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 lam1 0.0001464 -0.449 a 0.9013382 slope 0.01166 標準偏差( 無相 σ 0 .010 -2.081054 0.0099 sx=sxx/n sy=sy/n 0.000 068 0.000128 ⊿Y ベクトル sx sy -0.008 0.008666 0.000 011 0.000064 -0.025 0.026744 0.000 102 0.000614 -0.011 0.010730 0.000 004 0.000111 -0.011 0.018563 0.000 231 0.000114 0.016 0.016125 0.000 002 0.000258 -0.002 0.002036 0.000 002 0.000002 -0.001 0.006702 0.000 044 0.000001 0.005 0.010721 0.000 085 0.000030 -0.018 0.018079 0.000 001 0.000326 0.002 0.004664 0.000 019 0.000003 -0.002 0.004063 0.000 011 0.000006 0.003 0.003304 0.000 000 0.000011 0.011 0.012993 0.000 046 0.000123 0.008 0.008811 0.000 021 0.000057 -0.007 0.014480 0.000 157 0.000053 0.001 0.006542 0.000 041 0.000002 0.017 0.019601 0.000 085 0.000299 0.019 0.025913 0.000 312 0.000360 0.002 0.010983 0.000 118 0.000003 Yav 0.0000 ⊿X 0.003 0.010 -0.002 -0.015 0.001 0.001 0.007 0.009 0.001 -0.004 -0.003 0.000 -0.007 -0.005 0.013 0.006 -0.009 -0.018 0.011 相関係数 lam2 44.97E-05 b 0 .4331161 回 回転角度 - 25.66548 sxxy=sxy/n -00.000038 sxy -00.000027 -00.000250 0 0.000020 0 0.000162 0 0.000023 -00.000002 -00.000008 0 0.000051 -00.000021 -00.000007 0 0.000008 0 0.000000 -00.000075 -00.000034 -00.000091 0 0.000009 -00.000159 -00.000335 0 0.000018 生角 図の角度 115.665 5 90.0000 ⊿⊿x 0.00 0 0.00 2 0.00 6 0.01 8 0.00 8 0.00 1 0.00 5 0.01 1 0.00 7 0.00 3 0.00 4 0.00 1 0.00 1 0.00 1 0.00 8 0.00 6 0.00 1 0.00 8 0.01 1 ⊿⊿y 0.009 0.027 0.009 0.003 0.014 0.002 0.004 0.001 0.017 0.003 0.001 0.003 0.013 0.009 0.012 0.001 0.020 0.025 0.003 角判 判定 σx σy σ OK 0.0071 0.0121 Δxh 生角++回転 Δyh -0.009 2666.786 0.000 -0.027 2666.465 -0.002 -0.009 2344.031 -0.006 -0.003 1899.426 -0.018 0.014 599.170 0.008 -0.002 2844.737 0.001 -0.004 3244.208 0.005 0.001 5 5.109 0.011 -0.017 2488.001 -0.007 0.003 1333.719 -0.003 -0.001 -0.004 191 .358 0.003 633.575 0.001 0.013 955.705 -0.001 0.009 955.664 -0.001 -0.012 3044.233 0.008 -0.001 3466.977 0.006 0.020 922.346 -0.001 0.025 1077.301 -0.008 -0.003 3433.143 0.011 表中の生角115.6655(11 5°39′56″)が が誤差楕円の の長軸の角度 度にな ります。 分布 布中心Y 0.000 分 分布中心X 0.000 楕円角 115.6655 115°39′556" 誤差 差楕円(内側 側から1σ,2σ,3σ σ)で4.2 25σ円にな なります。 ここまでは標準 準誤差曲線と と誤差楕円の の概略です。 6 二変 変量(二変数 数)の密度関 関数グラフは は上図のよう うになります す。楕円の潰 潰れ具合を相 相関係 数で表 表示します,これについ いては別の項 項で説明しま ます。 長軸 軸から見た時 時のヒストグ グラム(度数 数グラフ)で です,青線が が一変量(一 一変数)の正 正規分 布曲線 線で理想的に に近い分布に になっていま ます。 私的 的に座標の誤 誤差は本当に に正規分布の の形をしてい いるのです,不思議です すが。 7 たかが19個のデータでもこのように綺麗な分布になるんですね。 今日はここまで 2016/04/08作成 土地家屋調査士・測量士 8 小野孝治
© Copyright 2024 ExpyDoc