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Shati/Nat8l のメチル化や薬物濃度測定による精神疾患
富山大学
UNIVERSITY
OF TOYAMA
大学院医学薬学研究部
新田淳美、宇野恭介
富山大学
背 景
実 験
精神疾患の患者数が急増し、治療方法の確立が急務である。発症前や初期に
診断がなされれば、治療が容易となり、患者、家族や周囲の人たちにとっても大変、
有益である。しかし、精神疾患の初期での診断は難しく、専門家である精神神経
科医への受診をしない患者も多い。かかりつけ医が精神科医へ受診勧奨可能と
するためには、測定可能なマーカーが必要である。また、いったん、精神疾患と診
断されても、処方された薬に効果があるかどうかを見極めるのにも月単位の時間
が必要である。
我々は、精神活動・精神疾患と関連があるタンパク質として、Shati/Nat8lを見出
し、うつ状態や統合失調症様の病態と関連していることを報告してきている。 本タ
ンパク質の発現調節メカニズムは、まだ分かっていないが、本分子遺伝子での転
写開始点近くでのDNAの修飾が関与している可能性が考えられる。精神病モデ
ルマウスの脳と血液、および、ヒト統合失調症患者血液におけるメチル化を検討し、
新たな、精神疾患病のマーカーとしての可能性を探った。
マウス精神病モデルとして、覚醒剤を6日間投与したマウ
スを使用した。マウス側坐核および血液からゲノムDNAを
単離した。統合失調症患者および健常者(精神疾患の診断
歴のない人)に対しては、富山大学遺伝子研究に関する倫
理委員会の審査・承認を受け(24-6)た上で、文書による同
意の上、血液を採取し、DNAの単離を行った。
DNAメチル化の検討には、バイサルファイトシークエンス
法を用いた(下図)。
従来の方法
我々は、Shati/Nat8lタンパク質の血中濃度が精神疾患
と関連していると考え、特許取得等を行ってきた。しかしな
がら、タンパク質の増減は日内変動、男女および加齢など
で変化することが予想され、実用化するのは難しいとの考
えに至った。遺伝子修飾は、タンパク質発現と比較すると
日内変動がないと考えられ、安定した結果が得られること
が期待される。
Shati/Nat8l
実験結果
統合失調症患者
精神病モデルマウス
コントロールマウス
モデルマウス
健常者
統合失調症患者
Shati/Nat8l遺伝子
SHATI/NAT8L遺伝子
まとめ・今後の展望
血液中のDNAのメチル化を検討することで、うつ病や統合失調症のマーカーとする方法が今までにも他の遺伝子で検討されてきた。しかし、血液か
ら単離したDNAでのメチル化が精神疾患患者での脳での変化を反映しているがどうかについては、明確でなかった。本研究では、精神病モデルマウ
スでの側坐核と血液中それぞれから単離したDNAでのShati/Nat8lの特定領域でのメチル化の変化が同様であることを見出し、血液DNAを用いての
メチル化の測定が精神疾患の診断方法となることを示唆した。統合失調症と健常者の血液DNAを用いて検討を行ったところShati/Nat8lのDNAの特
定領域でのメチル化が減少していた。
今後、さらに多くの精神疾患の患者を対象に研究を進め、精神疾患診断マーカーとしての有用性の証明の準備している。今までに実施しているバイ
サルファイトシークエンス法では、検査に1週間程度の時間を要するため、Pyrosequencing法での検討を行う。将来的には、精神疾患の診断及び治
療薬の選択へ応用を想定している。(精神障害の検査方法および検査キット PCT/JP2014/053710)
【地域社会や産業界での応用分野・活用方法 等】
うつ病の患者の3割しか最初に精神科を受診していないという調査報告があることから、本方法は精神科を専門としない医師が精神疾患の診断または受
診勧奨の支援技術になる。また、精神疾患の治療薬は、患者によって効果の有無が異なることから、それぞれの患者ごとにメチル化を検討することで、第1
選択薬を選ぶ助けとなり、テーラーメード医療に貢献する。
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