トランスグルタミナーゼ Transglutaminase;TGase,JIS K 3611 12033 その利用が進んでいるのは,かまぼこなどの水産 1.物 性 練製品分野である。製造工程で添加し加水量を増 トランスグルタミナーゼは牛,豚,魚肉のほか, やせば,程よい弾力性としなやかな食感が実現で 植物など自然界に幅広く存在し,ヒトを含めた動 きる。従来は同様の効果を引き出すためにカルシ 物の臓器中に分布する。分子量は 3 万から 10 万 ウム製剤などが使われていたが,同酵素を用いれ 程度である。現在,食品用・工業用に生産されて ば味覚や風味に影響を与えずにすむ。 いるトランスグルタミナーゼは放線菌由来のもの また,麺製品分野においてもトランスグルタミ であり,分子量は 4 万で反応にカルシウムを要し ナーゼが活用されている。これを使えば,小麦粉 ない。タンパクをゼリー状に固める。 のタンパク質のつながりがしっかりし,粘弾力性 主な作用は皮膚最外層に存在する遊離のグルタ を高め,麺のコシを強くすることができる。タン ミン酸残基とリシン残基との反応を触媒し,ε- パク質同士をつなげるので,時間が経過してもコ リシン(γ-グルタミル)結合からなる架橋を形 シを保つことができ,冷蔵製品に応用すれば賞味 成することにより,表面構造を緻密化することで 期限を延長することも可能である。 ある。反応系の組成によって 3 つの反応様式があ る。いずれの場合もペプチド鎖中のグルタミン酸 3.メーカー動向 残基のγ-カルボキシアミド基がアシル供与体と 現在,トランスグルタミナーゼを生産している なるが,アミン化合物が存在する場合にはそのア メーカーは味の素 1 社だけである。天野エンザイ ミノ基がアシル受容体となり,アミン化合物のペ ム-味の素が開発したトランスグルタミナーゼは, プチドへの付加反応が起こる。ペプチド中のリジ 食材開発の可能性を広げる新酵素としてすでに ン残基のε-アミノ基がアシル受容体として反応 様々な食品分野への応用展開が始まっている。 すると,ε-リシン-イソププチド結合によるペプ チド鎖間の架橋が形成される。 一方,医薬用では,味の素のトランスグルタミ ナーゼ製剤「アクティバ」が 1998 年夏から米国 向けに出荷されている。 2.市場動向 トランスグルタミナーゼの売上げ規模は約 30 億円と推定される。水産練製品だけでなく各食品 4.価 格 1 万 3,000 円/kg(食品用) 加工分野において需要は伸びている。現在,最も ☆ ☆ ☆ Vol.26 No.9 2009 85
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