RC 造耐震壁の設計法に関する研究

新潟大学工学部建設学科建築学コース
卒業研究梗概
平成 21 年度
RC 造耐震壁の設計法に関する研究
T06K697C 中家健史
指導教員 加藤大介教授
層に分類した。なお、実験値は最大耐力後、その 80%に
強度が低下した時の層間変形角とする。
40
rad)
-3
30
層間変形角実験値(×10
rad)
30
層間変形角実験値(×10
35
-3
40
35
25
20
15
10
5
25
20
15
10
5
0
0
WA WB
WC WD
0.3 0.3 0.3 0. 4 0.4 0.4 0. 4 0.5 0.5
0.3 0.3 0.3 0.4 0.4 0.4 0.4 0.5 0.5
部材ランク
部材ランク
WA WB
WC
WD
(単層)
(連層)
図1 部材ランクと層間変形角実験値との比較
40
rad)
-3
30
層間変形角実験値(×10
rad)
30
層間変形角実験値(×10
35
-3
40
35
25
20
15
10
5
0
25
20
15
10
5
0
0
5
10
15
20
25
0
層間変形角計算値(×10 -3 rad)
5
10
15
20
25
層間変形角計算値(×10 -3 rad)
(単層)
(連層)
図2 靭性指標による層間変形角と層間変形角実験値との比較
6
6
5
5
4
4
νm/ν0
νm/ν0
1.研究背景
RC造建物における重要な耐震要素である耐震壁はせ
ん断強度や曲げ強度によって変形能を評価する事ができ
る。耐震壁の変形能評価において、変形能が高ければ靭
性があるとされ、その分必要とされるRC造建物の水平
耐力も小さくなる。よって耐震壁の強度を確保する事が
できる。
しかし現在の設計法における変形能評価法では、変形
能の評価が安全側過ぎる。
2.研究目的
本研究では、耐震壁の評価法の検討を行うことで現在
の設計法における問題点を把握し、その問題点に対して
新たな提案を行うことを目的とする。その中でも無開口
耐震壁に注目する。
対象試験体は各種研究機関で過去に行われた無開口の
試験体で、単層の試験体と連層の試験体によって構成さ
れている。
また、せん断強度計算値に広沢式を用いた場合、WA
と評価された試験体は少なかったため、せん断強度計算
値に終局強度を用いた。
3.変形能評価法
耐震壁における既往の変形能評価法として、建築基準
法の部材ランク、耐震診断基準の靭性指標による層間変
形角、靭性保証型耐震設計指針のコンクリート強度有効
係数(νm/ν0)という3つの評価法がある。この3つの
変形能評価法について検討する。これらの評価法は、曲
げ破壊の部材についてのみ変形能を評価しており、せん
断破壊になる部材に関しては、どの評価法でも脆性的な
破壊をするとされているため、変形能を評価することは
出来ない。終局強度型の建築基準法による部材ランクと
層間変形角実験値との比較を図1に、終局強度型の耐震
診断基準の靭性指標による層間変形角と層間変形角実験
値との比較を図2に、終局強度型の靭性保証型耐震設計
指針によるコンクリート強度有効係数の比と層間変形角
実験値との比較を図3に示す。さらにそれぞれ単層と連
3
3
2
2
1
1
0
0
0
10
20
30
40
-3
層間変形角実験値(×10 rad)
(単層)
0
10
20
30
40
-3
層間変形角実験値(×10 rad)
(連層)
図 3 コンクリート強度有効係数の比と層間変形角実験値との比較
※図1,2,3ともにせん断強度計算値に終局強度を採用
建築基準法による部材ランクに注目すると、単層にお
いてはいくつかの試験体では変形能を評価できそうであ
ータがいくつかあった。
3)新たな変形能評価法の提案において、みなしWA部
材の選定は条件を設定できそうである。
rad)
40
-3
30
層間変形角実験値 (10
層間変形角実験値 (10
-3
rad)
40
20
10
30
20
10
0
0
0
20
40
60
80
100
0
120
5
10
(a)コンクリート強度
rad)
-3
30
層間変形角実験値 (10
rad)
-3
層間変形角実験値 (10
25
30
40
20
10
0
30
20
10
0
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
0.00
0.05
M/QL
0.15
0.20
0.75
1.00
(d)軸力比
40
rad)
40
層間変形角実験値 (10
-3
30
20
10
0
0.000
0.10
軸力比
(c)シアスパン比
rad)
20
(b)横壁筋比
40
-3
15
横壁筋比[×10 -3 ]
コンクリート強度[N/mm2]
層間変形角実験値 (10
るが、変形能の低い試験体が多くWA・WBに評価され
ているので、変形能を評価できていない。しかし連層に
おいては若干変形能を評価できている傾向がある。
次に耐震診断基準の靭性指標による層間変形角に注目
すると、単層では全体としてやや安全側の評価となって
おり、精度の点でも良い傾向が見られ、変形能を評価で
きる傾向を見せている。連層でも全体として変形能を評
価できている傾向がある。
また靭性保証型耐震設計指針によるコンクリート強度
有効係数の比に注目すると、どちらもやや危険側の試験
体が見られるものの、全体的に安全側の評価となってい
て若干精度も良く、下限値は概ね評価できている。
既往の変形能評価法において、せん断破壊する試験体
の変形能は評価できないが、せん断破壊型とされた実験
データの中には変形能の良いデータがいくつかあった。
4.新たな変形能評価法の提案
現在の変形能評価法では変形能の評価が安全側過ぎる。
そこで新たな変形能評価法として、今の変形能評価法で
はWAにならないもので変形能のあるものを拾い出す方
法を提案する。
4.1 みなしWA部材の選定
終局強度型の建築基準法の部材ランクによる変形能評
価法をそのまま使うと、図1に示すように危険側の試験
体も含まれてしまう。そこで終局強度型の建築基準法の
部材ランクにおいてWAと評価された試験体の中で何ら
かの条件にあてはめればWAに相当すると考え、何らか
の条件とWAに相当するものを定める。
WAに相当する案
層間変形角実験値 0.013rad 以上
何らかの条件
様々な要因により分析し、区別する事の出来る要因を
探す。終局強度型におけるWAランクの様々な要因と層
間変形角実験値を比較したものを図4(a)~(f)に示す。
検討した結果、図4(e)に示されている通り、柱の
帯筋比が0.8%以上、また高強度鉄筋(図4(e)で円から
下に外れている1体)は除くという条件ならばみなしW
Aの候補とするという条件を設定できそうである。
5.まとめ
1) それぞれの変形能評価法を試験体全体で見てみると、
あまり良い評価は得られなかった。しかし連層の試
験体のみに注目してみると、それぞれの変形能評価
法において変形能を評価できている傾向があった。
2) 既往の変形能評価法では、せん断破壊する耐震壁に
おいてはどの評価法も評価できていないが、せん断
破壊型とされた実験データの中には変形能の良いデ
30
20
10
0
0.005
0.010
0.015
0.020
0.00
0.25
柱の帯筋比
(e)柱の帯筋比
0.50
柱面積比
(f)柱面積比
図4 終局強度型WAランクにおける様々な要因と
層間変形角実験値との比較
6.参考文献
1)日本建築学会・靭性設計小委員会:靭性設計小委員
会報告書(終局強度型耐震設計法に関連する最新の
研究成果)
,
1992.8
2)国土交通省住宅局建築指導課・他:2007年版 建
築物の構造関係技術基準解説書,全国官報販売協同
組合,2007.8
3)日本建築学会:鉄筋コンクリート構造計算用資料集,
2002.1
4)湯澤優登:有開口耐震壁の設計法における問題点の
把握と新たな提案,2009.2