【 緊急リポート 】 国際的な金融規制改革の動向(10訂版) 2016.3.30 金融調査部 主任研究員 佐原 雄次郎 Copyright Mizuho Research Institute Ltd. All Rights Reserved. 《構 成》 1.金融危機後の金融規制改革の全体像 P2 2.バーゼル規制 P6 3.Too-Big-To-Fail問題対策 P 20 4.店頭デリバティブ市場改革 P 28 5.シャドーバンキング規制 P 32 6.その他の国際的な改革 P 37 7.欧米における独自の改革 P 40 付録 銀行ビジネス・金融市場への影響 P 50 1 1.金融危機後の金融規制改革の全体像 2 (1) 危機で明らかになった問題と改革の主な分野 ◯ 米国サブプライム問題を契機とした金融市場の混乱は、2008年9月のリーマンショックを経て、世界的な金融危機に発展 ◯ 金融危機で明らかになった問題へ対処するため、再発防止に向け幅広い分野で金融規制の改革が進展 【 危機で明らかになった問題と改革の主な分野 】 再発防止に向けた改革 銀行の健全性規制(バーゼル規制)の強化 危機で明らかになった問題 銀行の過大なリスクテイク 銀行の自己資本と流動性の不十分さ Too-Big-To-Fail(大き過ぎて潰せない)問題 規制・監督のアービトラージ(規制・監督の一貫性・リ スク感応度の欠如による銀行行動・市場のゆがみ) 金融商品の複雑化と金融市場の国際化によるリスク の見えにくさとリスクの広がり 自己資本比率の強化 レバレッジ比率 流動性規制 Too-Big-To-Fail問題対策 実効的な破綻処理 G-SIBsバッファー TLAC 店頭デリバティブ市場改革 CCPへの清算集中義務 非中央清算取引の証拠金規制 シャドーバンキング規制 MMF規制改革 証券化リスクリテンション 銀行からの高リスク業務の隔離 米国ボルカールール 英国リテールリングフェンス (資料) みずほ総合研究所作成 3 (2) 国際的な検討の枠組み ◯ ◯ ◯ ◯ G20諸国の合意(首脳会合、財務大臣・中央銀行総裁会議等)により、改革の大きな方向性を提示 FSB(金融安定理事会)、バーゼル委(バーゼル銀行監督委員会)等が改革に係る具体的な国際基準を策定 各国当局は、国際的に合意された基準に基づき、国内法制を整備し、規制・監督を実施 欧米においては、国際合意よりも厳しい規制を導入する動きや、独自の規制を導入する動きあり 【 金融規制改革の国際的な検討の枠組み 】 G20 声明等 報告・提言 メンバー: G20諸国等の財務省・中央銀行・監 督当局および国際機関等 FSB(金融安定理事会) 証券 銀行 IOSCO (証券監督者国際機構) 保険 バーゼル委 (バーゼル銀行監督委員会) 国際基準 意見等 各国当局 意見等 IAIS (保険監督者国際機構) メンバー: 各国・地域の銀行監督当局や中央 銀行等 規制・監督 金融機関 (資料) みずほ総合研究所作成 4 (3) 改革の主な項目の検討・実施状況 ◯ 先般の金融危機で明らかになった問題に対処するための改革は最終段階 ◯ 今後は、改革の意図せざる影響や副作用(市場流動性の低下、シャドーバンキングの拡大、金融市場の分断等)、新たに 生じつつあるリスク・脆弱性への対処に軸足が移行 【 国際的な金融規制改革の主な項目の検討・実施状況 】 分野 項目 自己資本比率の分子(自己資本)の質・量の強化 ー バーゼル規制 Too-Big-To-Fail問題対策 店頭デリバティブ市場改革 シャドーバンキング規制 米国ドッド・フランク法 検討・実施状況 2013年から段階実施中 バ 自己資本比率の分母(リスクアセット)の計算方法の見直し 検討中(2016年末までに作業完了) ゼ レバレッジ比率の水準調整の最終化 ル 流動性カバレッジ比率(LCR) Ⅲ 安定調達比率(NSFR) 検討中(2016年末までに作業完了、2018年から実施予定) 2015年から段階実施中 2018年から実施予定 大口エクスポージャー規制の強化 2019年から実施予定 ソブリンリスクの規制上の取り扱いの見直し 検討中 G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)バッファー 2016年から段階実施中 TLAC(破綻時に備えた損失吸収力の確保) 2019年から段階実施予定 清算集中義務 2012年から段階実施中 中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制 2016年9月から段階実施予定 MMF規制改革、証券化リスクリテンション 一部の国で実施中 資産運用業に対する規制 検討中 ボルカールール 2015年7月から実施中 FBO(外国銀行)規制 2016年7月から実施予定 (資料) みずほ総合研究所作成 5 2.バーゼル規制 6 (1) バーゼルⅢ ◯ ‧ ‧ ‧ バーゼル委は、 2010年12月にバーゼルⅢテキストを公表。国際的に活動する銀行に対する健全性規制を強化 自己資本比率の強化 レバレッジ比率の導入(自己資本比率を補完) 流動性規制(流動性カバレッジ比率、安定調達比率)の導入(資金繰り破綻を防止) 【 バーゼルⅢと銀行バランスシート(イメージ) 】 流動性規制の導入 資産 負債 流動 流動 自己資本比率の強化 所要水準の引き上げ 自己資本の質の向上 流動性カバレッジ比率(LCR) 30日間のストレス下での資金流出に 対応できるだけの流動資産の確保 固定 自己資本 安定調達比率(NSFR) 長期運用資産に対して十分な中長期 的に安定的な調達の確保 補完 レバレッジ比率の導入 固定 リスクウェイトによる調整を行 わない簡素な指標 (資料) みずほ総合研究所作成 7 (2) バーゼルⅢ自己資本比率 ① 自己資本比率とは ◯ 自己資本比率とはリスクアセットに対する自己資本の割合のこと ◯ 最低水準は、普通株式等Tier 1(CET 1)で4.5%、Tier 1で6%、総自己資本(Tier 1+Tier 2)で8% ‧ 下回った場合、当局による業務改善命令等の早期是正措置の対象 【 自己資本比率の概要 】 ≧4.5% CET 1 ≧6% Tier 1 Tier 2 ≧ 8% リスクアセット(信用リスク+マーケットリスク+オペレーショナルリスク) CET 1 ○ 普通株および内部留保 (その他包括利益(その他有価証券評価差額金等)を含む) その他Tier 1 ○ 優先株 ○ その他高い損失吸収力を有する資本性商品 ※会計上負債に分類されるものは、元本削減や普通株転換 の仕組みが必要、金利ステップアップ条項不可 等 Tier 1 Tier 2 ○ 一部の優先出資証券、劣後債、劣後ローン ※実質破綻時に元本削減や普通株転換が必要、金利ステッ プアップ条項不可 等 ○ 一般貸倒引当金 等 信用リスク 各エクスポージャー(信用供与額) にリスクウェイト(リスクの大きさに応 じた掛目)を乗じた額の合計額 マーケット リスク 資産の市場変動リスクの相当額 オペレーショ ナルリスク 事務事故・システム障害・不正行為 等で損失が生じるリスクの相当額 (資料)みずほ総合研究所作成 8 (2) バーゼルⅢ自己資本比率 ② 自己資本から控除する項目 ◯ 銀行、証券会社、保険会社を含む国内外の金融機関への出資や繰延税金資産等、金融システムの安定性を損なう項目 や経営悪化時に価値が見込めない項目は、自己資本から控除 【 主な控除項目 】 項目 連結外の金融機関※向け出資 ※銀行、証券会社、保険会社を 含む国内外の金融機関 相互保有(ダブルギアリング)により自己 資本を押し上げている場合 概要 • 全額をコレスポンディングルール※に基づきそれぞれの資本区分(CET 1、その他Tier 1、Tier 2)から控除 ※出資分について、調達手段として該当する資本区分(ごとの割合)に対応させる方法で、 自己の自己資本の各資本区分から控除する方法 他の金融機関の普通株資本について 10%超を出資している場合 • 普通株による出資部分:自己のCET 1の10%を超える部分をCET 1から控除(注) • その他Tier 1、Tier 2に相当する出資部分:全額をコレスポンディングルールに基づきそ の他Tier 1、Tier 2から控除 他の金融機関の普通株資本について 10%以下を出資している場合 • 出資合計額のうち自己のCET 1の10%を超える部分をコレスポンディングルールに基 づきそれぞれの資本区分から控除 のれんおよびその他の無形資産 • 繰延税金負債を相殺した金額の全額をCET 1から控除 繰延税金資産(一時差異に関するものを除く) • 繰延税金負債と相殺した後の繰延税金資産(純額)につき全額をCET 1から控除 一時差異に関する繰延税金資産 • 純額のうちCET 1の10%を超える部分をCET 1から控除(注) 前払年金費用 • 全額をCET 1から控除 (注) 10%超出資先の普通株出資相当額と一時差異に係る繰延税金資産相当額は、本邦に該当のないモーゲージ・サービシング・ライツと併せて、自己のCET 1の最大15%までが控除 対象外。 (資料) 金融庁資料より、みずほ総合研究所作成 9 (2) バーゼルⅢ自己資本比率 ③ 各種バッファーと所要自己資本 ◯ 各種資本バッファーを新たに導入。基本的にCET 1で満たすことが求められる(カウンターシクリカルバッファーについては CET 1またはその他損失吸収力の高い資本で満たすことが求められる) ‧ 資本バッファーを充足できなかった場合、配当等の社外流出を制限 【 各種資本バッファー 】 資本保全バッファー G-SIBs システム上の 重要度に応じた バッファー バッファー 【 所要自己資本 】 • 将来のストレスに備えて一律2.5%を積 み立て 11.5% Tier 2 • G-SIBs(グローバルなシステム上重要 な銀行)に対する追加的な資本賦課 (後述P.25) • システム上の重要度に応じて1.0%~ 3.5%を上乗せ D-SIBs • D-SIBs(国内のシステム上重要な銀 行)に対する追加的な資本賦課 9.5% その他Tier 1 総自己資本 8% Tier 2 バッファー • 対象行・水準は各国が設定 Tier 1 6% その他Tier 1 カウンターシクリカル バッファー • 各行に適用される水準は、信用リスク の地理的構成に応じた各国設定水準 の加重平均 8% 7% 資本バッファー (注) 資本保全バッファー 2.5% 4.5% 4.5% • プロシクリカリティ(景気循環増幅効果) の抑制が目的 • 国内の信用供与の状況に応じて、各国 が0.0%~2.5%の範囲で設定(景気過 熱時に引き上げ) G-SIBsバッファー 1%~3.5% CET1 CET 1 最低水準 最低水準+資本バッファー (注) G-SIBsバッファー1%、カウンターシクリカルバッファー0%の場合。 (資料) 金融庁資料より、みずほ総合研究所作成 (資料) みずほ総合研究所作成 10 (3) バーゼルⅢレバレッジ比率 ◯ リスクベースの自己資本比率を補完するものとして導入。リスクウェイトによる調整等を行わない簡素な指標とすることで、 リスクウェイトの低いエクスポージャーの過度な積み上げを抑制 ‧ 2017年1月までは試行期間。2018年1月から第1の柱(所要自己資本に係る一律の規制)として実施するため、2016年末ま でに水準調整を最終化する予定 ‧ 2016年1月、バーゼル委の上位機関である中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループ(GHOS)は、Tier 1資本による自 己資本の定義に基づき、最低水準を3%とすべきことについて合意。G-SIBsに対する追加的な要件についても議論 【 レバレッジ比率の概要 】 Tier 1資本 2013年 ≧ 3% 2014年 エクスポージャー額 以下4つのエクスポージャーの合計 ①オンバランス項目 ②デリバティブ取引 ③レポ取引等の証券金融取引 ④オフバランス項目 (資料) みずほ総合研究所作成 【 レバレッジ比率のスケジュール 】 G-SIBsに対する追加的 な要件(バッファー等)が 設けられる可能性 2015年 開示開始 2016年 水準調整の最終化 試 行 期 間 2017年 2018年 第1の柱として実施 (資料) みずほ総合研究所作成 11 (4) バーゼルⅢ流動性カバレッジ比率(LCR) ◯ 先般の金融危機における資金繰り悪化の教訓を踏まえ、 30日間のストレス下での資金流出に対応できるよう、 良質な流 動資産の確保を求める規制 ‧ 2015年から段階的に実施され、2019年に完全実施予定 【 LCRの概要 】 算入率 項目例 レベル1 資産 現金、中銀預金、国債(リスクウェイト 0%、リスクウェイト0%でない母国国債) 100% 国債(リスクウェイト20%)、高品質(AA 適格流動資産 ≧100% 30日間のストレス期間の純資金流出額 (30日間の資金流出 - 30日間の資金流入) レベル2A -以上)な非金融社債・カバードボンド・ 資産 事業会社CP RMBS(AA以上) レベル2B 一部の非金融社債(A+~BBB-)・上 資産 場株式 85% 算入制限: 全体の40% 75% 50% 項目例 項目例 金融機関からの無担保調達 金融機関・中銀向け健全債権 算入率 リテール、事業法人、政府・公共部門向け 健全債権 100% 事業法人等からの無担保調達 40%・20% ホールセール レベル2B資産を担保とした調達 50%・25% 調達 レベル2A資産を担保とした調達 15% レベル1資産を担保とした調達 0% 準安定預金 10% リテール預金 安定預金 5%・3% 基準日から30日を経過 する日までに弁済期限 が到来する(可能性の ある)もの 適格流動資産以外を担保とするレポ 運用 リバース・ レポと 証券借入 レベル2B資産を担保とするレポ運用 レベル2A資産を担保とするレポ運用 レベル1資産を担保とするレポ運用 算入制限: 15% 算入率 100% 50% 100% 50%・ 25% 15% 0% (資料) 金融庁資料より、みずほ総合研究所作成 12 (5) バーゼルⅢ安定調達比率(NSFR) ◯ 先般の金融危機における資金繰り悪化の教訓を踏まえ、売却が困難な資産の保有に対して、中長期的に安定的な調達 (負債・資本)を求める規制 ‧ 2018年から実施予定 【 NSFRの概要 】 利用可能な安定調達額(資本+預金・市場性調達の一部) ≧100% 所要安定調達額(資産) 項目例 長期貸付(1年以上) デリバティブ資産-デリバティブ負債≧0の場合のデリバティブ・ネット資産額 デリバティブに関連して差し入れている当初証拠金 短期貸付 1年未満のリテール・法人向け、6カ月以上1年未満の金融機関向け 6カ月未満の金融機関向け レベル2B資産 適格流動資産 レベル2A資産 レベル1資産 項目例 長期負債(残存1年以上) リテール預金(残存1年未満または満期なし) 法人預金(残存1年未満または満期なし)、オ ペレーショナル預金、金融機関からの借入 (残存6カ月以上1年未満) 金融機関からの借入(残存6カ月未満) 算入率 100% 95%・90% 50% 0% 算入率 100%・85%・65% 100% 85% 50% 10%・15% 50% 15% 5% (資料) 金融庁資料より、みずほ総合研究所作成 13 (6) バーゼルⅢの段階的導入 ◯ 自己資本比率、流動性カバレッジ比率(LCR)は、段階的導入が開始しており、2019年から完全実施となる予定 ◯ レバレッジ比率、安定調達比率(NSFR)は、2018年から実施予定 【 バーゼルⅢの段階的導入 】 2015年 2016年 2017年 CET 1最低水準 自己資本比率 2019年 1.875% 2.5% 4.5% 資本保全バッファー 0.625% G-SIBsバッファー 1.250% 段階的に導入 CET 1からの控除項目に係る経過措置 40% 60% Tier 1資本またはTier 2資本に算入でき なくなる調達手段 レバレッジ比率 2018年 1.0%~3.5% 80% 100% 2013年から10年かけて段階的に廃止 第1の柱に移行 2015年1月~:開示、 ~2017年1月:試行期間 流動性カバレッジ比率(LCR) 安定調達比率(NSFR) 60% 70% 80% 90% 100% 最低基準導入 (注) 全ての日付は1月1日時点。白抜き部分は移行期間。 (資料) バーゼル委資料より、みずほ総合研究所作成 14 (7) バーゼルⅢの見直し ① 全体像 ◯ バーゼルⅢテキスト公表(2010年12月)後も自己資本比率のリスクアセット計測の部分を中心に見直しが継続中 【 バーゼルⅢの見直し 】 項目 概要 検討状況 実施時期 銀行のファンド向けエクイティ出資に係 る資本賦課 各種リスクアセット計測方法の適用に係る不明確さ等を踏まえ、原則的に用いるルックスルー 2013年12月、 方式(ファンドの個々の資産の信用リスクアセットを合計。レバレッジも勘案)と、資産把握が 最終規則公表 難しい場合に用いるマンデート方式(資産構成を保守的に仮定)を策定 2017年 1月 カウンターパーティ信用リスクエクス ポージャーの計測に係る標準的手法 デリバティブ取引等におけるカウンターパーティ信用リスクエクスポージャー計測の枠組みに おいて、カレントエクスポージャー方式(CEM)、標準方式(SM)、内部モデルに基づく期待エク 2014年3月、 スポージャー方式(IMM)のいずれかを用いることができるところ、CEMとSMに代わる新たな標 最終規則公表 準的手法(SA-CCR)を開発 2017年 1月 2012年7月の暫定規則により、それまで資本賦課されていなかった中央清算機関(CCP)向け 2014年4月、 エクスポージャーに対する計測と管理の枠組みを導入。2014年4月の最終規則では、適格 最終規則公表 CCP向けエクスポージャーのうちデフォルト・ファンドに関する部分を見直し 2017年 1月 証券化商品の資本賦課枠組みの見直 し 2009年7月の「バーゼルⅡの枠組みの強化」での応急的な修正に続く抜本的な見直し。①資 2014年12月、 本賦課水準の保守化、②外部格付への機械的な依存の回避、③資本賦課方式のリスク感応 最終規則公表 度の向上、等を図ったもの 2018年 1月 トレーディング勘定の抜本的見直し (FRTB) ①銀行勘定とトレーディング勘定の境界の見直しによる規制裁定の余地の縮小、②内部モデ 2016年1月、 ル方式の見直しによるより整合的かつ包括的なリスクの捕捉、等を図ったもの 最終規則公表 2019年 簡素で、透明性が高く、比較可能な証 券化商品の自己資本規制上の取扱い 「証券化商品の資本賦課枠組みの見直し」に、2015年7月に公表された文書「簡素で、透明性 2015年11月、 が高く、比較可能な証券化商品を特定する要件」の内容を組み入れるもの 市中協議文書公表 ― 金利上昇への備えとトレーディング勘定への規制との平仄確保を目的として、銀行勘定の金 利リスク(IRRBB)に対する規制の強化を図るもの 後述P.16 ― 自己資本規制枠組みの複雑化に伴う銀行間の比較可能性の低下等を踏まえ、リスクアセット 後述P.17 計測の簡素さ・比較可能性の向上を図るもの ― ①CVA(Credit Valuation Adjustment)リスクのすべての重要な変動要因とCVAヘッジの反映、 2015年7月、 ②様々な会計基準の下で採用されているCVA の公正価値測定との一致、等を図るもの 市中協議文書公表 ― 検 討 完 銀行の清算機関向けエクスポージャー 了 に対する資本賦課 検 銀行勘定の金利リスク(IRRBB) 討 中 リスクアセット計測の過度なばらつきへ の対処 CVAリスクの枠組みの見直し (資料) みずほ総合研究所作成 15 (7) バーゼルⅢの見直し ② 銀行勘定の金利リスク(IRRBB) ◯ 2015年6月、バーゼル委は、銀行勘定の金利リスク(IRRBB: Interest Rate Risk in the Banking Book)に係る市中協議文 書を公表。金利上昇への備えとトレーディング勘定への規制との平仄確保を目的として、IRRBBに対する規制強化を提案 ‧ 現行では第2の柱(銀行の自己管理と監督上の検証)の対象であるIRRBBについて、第1の柱(最低所要自己資本)に組 み込む案と、現行の第2の柱を強化する案の2つの選択肢を提示 ―――現行の枠組みでは、アウトライヤー基準に該当した銀行は、監督当局による早期警戒の対象となる ‧ 2016年中に最終化される予定 【 バーゼル規制の3本の柱 】 第1の柱 最低所要自己資本 ⇒銀行が抱えるリスクに応じ、銀行に一律に自己資本を備 えさせる(自己資本比率を用いた規制等) 第2の柱 銀行の自己管理と監督上の検証 ⇒各銀行が抱えるリスクを銀行自ら把握し、自己資本戦略 を策定 ⇒監督上、個々の銀行の状況に応じて対応 第3の柱 情報開示を通じた市場規律の活用 ⇒自己資本比率や、銀行が抱えるリスク及びその管理状 況等を開示 (資料) 金融庁「バーゼル銀行監督委員会による市中協議文書『銀行勘定の金利 リスク』について」(2015年6月)より、みずほ総合研究所作成 【 現行のアウトライヤー基準 】 銀行勘定の金利リスク量(経済価値低下額)※が総自己資本(Tier 1資本とTier 2資本の合計額)の20%を超える場合、アウトライヤー 基準に該当 ※ 銀行勘定の金利リスク量:以下のいずれか ① 金利がイールド・カーブに沿って2%上下に平行移動した場合の リスク量 ② 保有期間1年、観測期間最低5年で測定される99パーセンタイル と1パーセンタイルの金利変動のリスク量 (資料) 金融庁資料より、みずほ総合研究所作成 16 (7) バーゼルⅢの見直し ③ リスクアセット計測の過度なばらつきへの対処 ◯ バーゼル委は、自己資本規制の枠組みの複雑化に伴う銀行間の比較可能性の低下等の問題指摘を受けて、自己資本 比率のリスクアセット計測における過度なばらつきの問題の解消に取り組んでいる ‧ 具体的には、自己資本比率の比較可能性を高めるため、内部モデル利用に係る各国・各銀行の裁量を小さくするととも に、標準的手法をリスク感応度を高める方向で見直し、新たな標準的手法に基づく資本フロア(所要自己資本の額の下 限)を導入する方向 ‧ 2016年末までに検討作業を完了させる予定 【 リスクアセット計測の過度なばらつきへの対処に係る検討状況 】 項目 概要 検討状況 標準的手法の 見直し ①外部格付への依存の低減、②粒度(granularity)及びリスク感応度の向上、③リスク ウェイト水準の更新、④類似のエクスポージャーの定義や取り扱いに関する内部格付 手法との比較可能性の向上、等を図るもの 2015年12月、 第二次市中協議文書公表 内部格付手法の 見直し ①金融機関向け債権等、特定のエクスポージャーについて、内部格付手法の利用を 廃止すること、②内部格付手法の利用を認めるポートフォリオについて、エクスポー ジャー単位でモデルによるパラメータ推計値に対するフロアを導入すること、等を提案 2016年3月、 市中協議文書公表 市場リスク 「トレーディング勘定の抜本的見直し」において内部モデル方式・標準的手法を見直し 2016年1月、最終規則公表。 2019年から実施 オペレーショナルリスク 現行の3つの標準的手法に代わる新たな標準的手法(SMA)の導入、内部モデルを ベースとした先進的計測手法(AMA)の廃止、等を提案 2016年1月、 第二次市中協議文書公表 資本フロアの導入 各リスクカテゴリーの新たな標準的手法に基づく資本フロアの導入により、内部モデル 手法に起因するモデルリスク・測定誤差の軽減や、銀行間の資本の比較可能性の向 上等を図るもの 2014年12月、 市中協議文書公表 信用リスク (資料) みずほ総合研究所作成 17 (8) 大口エクスポージャー規制 ◯ 2014年4月、バーゼル委は、「大口エクスポージャーの計測と管理のための監督上の枠組み」の最終規則を公表 ‧ バーゼル委ガイダンス「大口エクスポージャーの測定と管理」(1991年)に代わるもの ‧ ①自己資本比率では考慮されていない集中リスクへの対処、②G-SIBs間のリスク伝播の軽減、等を目的として、特定の 債務者グループに対する信用供与に限度額を設けるもの ‧ 2019年1月から適用開始(経過措置なし) 【 大口エクスポージャー規制の概要 】 「実質的支配関係」(議決権の保有等)および「経済的相 互依存関係」(資金繰り面の依存等)の有無に基づき債 務者グループの特定(受信者合算)を実施 特定の債務者グループに対するエクスポージャー ≦ 25% Tier 1資本 G-SIBs間は15% (資料) みずほ総合研究所作成 18 (9) ソブリンリスクの規制上の取り扱いの見直し ◯ 2015年1月、バーゼル委は、①ソブリンリスクの現行規制における取り扱いについて見直しを開始したこと、②考えられる 政策の選択肢を検討すること、③この見直しを慎重に、包括的に、漸進的に行うこと、を公表 ‧ 先行して議論が行われているユーロ圏では、2015年3月、ESRB(欧州システミックリスク理事会。理事長は欧州中央銀行 ドラギ総裁)がソブリンエクスポージャーに対する規制強化案を提示 【 現行規制における取り扱い 】 自己資本比率 • 信用リスクは各エクスポージャー(信用供与額)にリ スクウェイト(リスクの大きさに応じた掛け目)を乗じ た額の合計額 信用リスクに係る 標準的手法 • ソブリンエクスポージャーには外部格付けに応じた リスクウェイトが設定されている(AAA~AA-⇒0%、 A+~A-⇒20%等) • ただし、自国通貨建ての自国国債に対しては各国 裁量でより軽いリスクウェイトの適用を認める例外 規定が存在 信用リスクに係る 内部格付手法 • ソブリンエクスポージャーは、①「デフォルト確率」に ついて0.03%の下限の対象外であること、②ヒストリ カルデータを用いて計算すること、等により、リスク ウェイトが非常に小さくなることが多い 大口エクスポー ジャー規制 • ソブリンエクスポージャーは適用対象外 LCR(流動性カバレッ ジ比率) • 自国国債やリスクウェイトが0%の国債は、現金や 中央銀行預け金とともに最も高品質な流動資産の 区分に分類される (資料) みずほ総合研究所作成 【 ESRBが示した規制強化案 】 1. ソブリンエクスポージャーに対するより厳しい第1の柱の自己資本要件 a. 標準的手法における自国通貨建てソブリンエクスポージャーに対し て各国裁量でより軽いリスクウェイトの適用を認める例外規定の除 去 b. 標準的手法への0より大きいリスクウェイトの下限の導入 c. 標準的手法における機械的な外部格付けへの依存の低減 d. 内部格付手法における「デフォルト確率」や「デフォルト時損失率」等 の下限の見直し 2. 分散要件(大口エクスポージャー規制の適用除外の撤廃等) 3. マクロプルーデンス規制の対象への追加(景気循環に合わせた規制水 準の変動等) 4. 強化された第2の柱の要件(ストレステストの勧告、分散に係る定量的ガ イダンス等) 5. 強化された第3の柱の開示要件 6. 流動性リスクに対する規制(流動性規制における国債の取り扱いの変 更等) (資料) 欧州システミックリスク理事会「ESRB report on the regulatory treatment of sovereign exposures」(2015年3月)より、みずほ総合研究所作成 19 3.Too-Big-To-Fail問題対策 20 (1) Too-Big-To-Fail(大き過ぎて潰せない)問題対策 ◯ 先般の金融危機において、一部の大手金融機関を公的資金で救済せざるを得なかったことにより表面化したToo-BigTo-Fail(大き過ぎて潰せない)問題に対処するため、SIFIs(システム上重要な金融機関)について、破綻処理局面におけ る金融システムの不安定化や納税者負担を回避するための取り組みや、破綻予防のための規制枠組みを検討し、順次 実施 【 Too-Big-To-Fail問題対策 】 Too-Big-To-Fail問題 Too-Big-To-Fail問題対策 Too-Big-To-Fail(大き過ぎて潰せない)とは、 SIFIs(システム上重要な金融機関)の指定 金融システムの安定性が損なわれるため、大 規模・複雑な金融機関を破綻させらない状態 のこと そのような金融機関を公的資金によって救済 した場合、納税者負担が発生する可能性が ある また、救済されることへの期待が、大規模・複 破綻した場合に金融システムの安定性に与える影響が大きい大規模・複 雑な金融機関をSIFIsとして指定 実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性 金融システムの不安定化や納税者負担を回避しつつ、SIFIsの秩序ある破 綻処理を可能とするための取り組み G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)バッファー G-SIBsが資本不足に陥る可能性や銀行の巨大化へのインセンティブを低 減するため、G-SIBsに対して追加的にCET 1資本を備えるよう求める規制 雑な金融機関による過大なリスクテイクや不 TLAC 当に低利での資金調達を助長している可能 G-SIBsの破綻時の損失吸収力を高めるため、破綻時に元本削減・株式転 換等が可能な負債等を十分に確保するよう求める規制 性がある(金融機関のモラルハザード) (資料) みずほ総合研究所作成 (資料) みずほ総合研究所作成 21 (2) SIFIs(システム上重要な金融機関)の指定 ◯ FSBは、バーゼル委やIAIS(保険監督者国際機構)とともに、破綻した場合に金融システムの安定性に与える影響が大き い金融機関を特定するため、業態ごとにSIFIs(Systemically Important Financial Institutions、システム上重要な金融機 関)の選定を進めている 【 SIFIsの選定手法に係る作業の状況 】 グローバルな システム上重要な金融機関 国内の システム上重要な金融機関 • 2011年11月、G20カンヌサミットで合意 銀行 保険 その他 • 年に1回G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行) の暫定リストを公表 • 2013年よりG-SIIs(グローバルなシステム上重要な保険 会社)のリストを年次公表 • 2015年11月からG-SIIs選定手法見直しに係る市中協議 を実施 • 市場インフラや銀行・保険会社以外の金融機関(※)に ついて検討中 • 2012年10月に枠組みを公表 未定 未定 ※ 選定手法に係る作業が中断中(後述P.36) (資料) 金融庁資料より、みずほ総合研究所作成 22 (3) 実効的な破綻処理のための主要な特性 ① FSBの取り組み ◯ 2011年10月、FSBは、「実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」を策定(2014年10月アップデート)。各国における取り 組みを促進中 ‧ 金融システムの不安定化や納税者負担を回避しつつ、秩序ある破綻処理を可能とするための取り組み ◯ このほか、クロスボーダー破綻処理の障害を取り除くため、ISDA(国際スワップ・デリバティブ協会)とともに、クロスボー ダー破綻処理における、デリバティブ契約やレポ・証券貸借取引の早期解約条項の発動停止措置の対外的効力を確保 するための取組み(G-SIBsによるISDAのプロトコルの採用等)を進めている 【 FSB「実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」(2011年10月)の概要 】 各国の破綻処理制度の改善(各国当局が有すべき破綻処理の権限を整理) G‐SIFIごとに再建・破綻処理計画(RRP:recovery and resolution plan)を策定 G‐SIFIごとに破綻処理のしやすさを評価(resolvability assessments) G‐SIFIごとに危機管理グループ(CMG:crisis management group、母国当局及び主要なホスト 当局が参加)を設置 破綻処理コストの負担方式としてベイルイン(債権者に負担を負わせる方式)を提唱 (資料) みずほ総合研究所作成 23 (3) 実効的な破綻処理のための主要な特性 ② 各国の取り組み ◯ 各国は、FSB「実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」(2011年10月)を受けて、破綻処理制度の整備やG-SIFIsの再 建・破綻処理計画の策定を進めている 【 各国における破綻処理制度の整備、G-SIFIsの再建・破綻処理計画の策定に向けた取り組み 】 米国 EU 日本 • 2010年7月に成立したドッド・フランク法により、「秩序立った清算権限(OLA)」を導入 預金保険対象外の金融システムに影響を与え得る金融会社が対象(資産500億ドル以上の銀行持株会社、ノンバンク SIFIs、その他の金融会社) FDIC(米連邦預金保険公社)は管財人として、ブリッジ金融会社設立等ほぼ銀行破綻処理と同等の権限を行使 • 同じくドッド・フランク法により、大規模金融機関に対し、破綻時を想定した対応計画(いわゆるリビング・ウィル)の当局宛提出 と定期的な更新を義務付け • 2014年9月にFRB(連邦準備制度理事会)が米国大手銀行持株会社8社に対して再建計画(Recovery Plan)の作成を要請し たほか、OCC(通貨監督庁)が2015年9月に一定の大規模な銀行向けに再建計画作成に係るルール案を公表 • 2014年5月、銀行再建・破綻処理指令(BRRD:Bank Recovery and Resolution Directive)を最終採択。2015年1月適用開始 ブリッジバンク・他銀行への事業移転等の破綻処理権限を各国当局に付与 システム上重要な金融機関について再建・破綻処理計画の策定を規定 • 2013年金商法等改正において、「金融機関の秩序ある処理の枠組み」を導入 対象は、預金金融機関・保険会社・証券会社・金融持株会社およびその子会社 債務超過の場合、重要な市場取引等を承継金融機関に引き継ぎ、履行を確保しつつ、破産法制に基づき金融機関を処 理 • また、金融庁は、金融行政方針において、G-SIBsに対して再建計画の策定・改訂を求めることや当局において処理計画の策 定に向けた取り組みを進めることを明記 (資料) みずほ総合研究所作成 24 (4) G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)の指定、G-SIBsバッファー ◯ 2011年11月、FSBは、G-SIBs(Global Systemically Important Banks、グローバルなシステム上重要な銀行)に該当する銀 行グループのリストを公表(以後毎年更新しており、2015年11月時点では30グループが指定されている) ‧ G-SIBsの選定は、規模、相互連関性、代替可能性、国際的活動、複雑性の5つの基準に対応した12の指標をスコア化し て判断 ◯ 2011年11月、バーゼル委は、G-SIBsに対して1.0%~3.5%のCET 1の上乗せ(G-SIBsバッファー)を求める規制を公表 ‧ 2016年から段階適用、2019年に完全実施の予定 【 G-SIBsのリスト(2015年11月時点) 】 上乗せ水準 グループ数 銀行グループ名 3.5% 2.5% 2 【米国】JPモルガン・チェース 【英国】HSBC 2.0% 4 【米国】シティグループ 1.5% 5 【米国】バンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー 【大陸欧州】クレディ・スイス(スイス) 【日本】三菱UFJ 1.0% 19 【米国】ウェルズ・ファーゴ、BNYメロン、ステート・ストリート 【英国】RBS、スタンダード・チャータード 【大陸欧州】クレディ・アグリコル(仏)、ソシエテ・ジェネラル(仏)、BPCE(仏)、UBS(スイス)、 サンタンデール(西)、ウニクレディト(伊)、ING(蘭)、ノルデア(スウェーデン) 【日本】みずほ、三井住友 【中国】中国工商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行、中国銀行 計 30 【英国】バークレイズ 【大陸欧州】ドイツ銀行(独)、BNPパリバ(仏) (資料) みずほ総合研究所作成 25 (5) TLAC(G-SIBsによる破綻時に備えた損失吸収力の確保) ① TLACとは ◯ 2015年11月、FSBはTLAC(Total Loss-Absorbing Capacity、総損失吸収力)の最終基準を公表 ‧ G-SIBsに対して、バーゼルⅢ適格自己資本とTLAC適格負債(破綻時に元本削減・株式転換等により損失吸収・資本再 構築が可能な普通社債等)の合計額について、十分な水準を確保するよう求めるもの ‧ 金融システムの安定を損なわず公的資金を用いない秩序ある破綻処理を可能とすることが目的 【 TLAC適格負債の必要条件 】 【 TLACを用いた破綻処理のイメージ 】 破綻処理前のバランスシート TLAC非適格 負債 資産 (預金、デリバティブ等) 破綻処理後のバランスシート TLAC非適格 負債 損失の 発生なし 資産 (預金、デリバティブ等) 除外債務(※1)以外の負債(普通社債等) 破綻処理エンティティ(※2)が発行・維持 グループ内部から調達していない 債権の優先順位が除外債務よりも劣後(※3) 無担保 満期までの期間が1年以上 他 ※1 除外債務・・・預金保険対象預金、デリバティブから生じる負債、仕組債等 資本再構築 損失 T TLAC適格負債 L A C 自己資本 (資料) みずほ総合研究所作成 ( 債券の株式転換) 損失吸収 ( 債権者・株主が 損失を負担) 自己資本 ※2 破綻処理エンティティ・・・各G-SIBの破綻処理戦略に沿って当局による破綻処 理手段(資産移転、債務の元本削減等)が適用されるエンティティ ※3 劣後要件・・・以下のいずれかの方法によって充足する必要 ①契約によって劣後させる方法 ②各国の法令に基づき劣後させる方法 ③除外債務の少ない持株会社等の破綻処理エンティティが発行・維持する ことによって劣後させる方法 (資料) みずほ総合研究所作成 26 (5) TLAC(G-SIBsによる破綻時に備えた損失吸収力の確保) ② TLACの所要水準 ◯ TLACは、2段階で実施される予定(第1段階:2019年1月~、第2段階:2022年1月~) ‧ 中国をはじめとする新興国のG-SIBsについては、第1段階・第2段階の開始がそれぞれ遅くとも2025年1月・2028年1月 ◯ TLACの所要水準は、バーゼルⅢの自己資本比率の分母であるリスクアセット対比で18%(第1段階は16%。資本バッ ファー分は算入不可)、バーゼルⅢのレバレッジ比率の分母対比で6.75%(第1段階は6%) ‧ G-SIBsの秩序立った破綻処理について、破綻処理費用を拠出する当局からの信頼できるコミットメントがある場合、リスク アセットの3.5%相当額(第1段階は2.5%相当額)をTLACに加算することができる(日本のG-SIBsを念頭に置いた特例) 【 リスクアセットに対する所要水準 】 18%(2022年1月~) TLAC適格の負債 (バーゼルⅢ適格の自己資本に 含まれるもの以外) 16%(2019年1月~) TLAC所要水準 【 レバレッジ比率の分母に対する所要水準 】 6.75%(2022年1月~) TLAC適格の負債 (バーゼルⅢ適格の自己資本に 含まれるもの以外) 6%(2019年1月~) TLAC所要水準 バーゼルⅢ適格の自己資本 (Tier 1+Tier 2) (除く資本バッファー分) うちTier 1 うち普通株式等Tier 1 資本保全バッファー:2.5% カウンターシクリカルバッファー:0.0~2.5% 8% バーゼルⅢ適格の自己資本 6% 4.5% 0% 資本 バッファー バーゼルⅢ 自己資本比率 うちTier 1 3% バーゼルⅢレバレッジ比率 (試行期間中の最低水準) 0% (資料) みずほ総合研究所作成 G-SIBsバッファー:1.0~3.5% (資料) みずほ総合研究所作成 27 4.店頭デリバティブ市場改革 28 (1) 店頭デリバティブ市場改革 ◯ リーマン・ショック時に、CDS等の店頭デリバティブ市場においてカウンターパーティリスクの高まりにより急速な金融危機 の伝播が見られた反省を踏まえ、市場の透明性・安定性を改善 ‧ 店頭デリバティブ取引について、中央清算機関(CCP)への清算集中義務や非中央清算取引に係る証拠金規制を導入 【 店頭デリバティブ市場改革のイメージ 】 先般の金融危機時のデリ バティブ市場の問題点 ① 清算集中義務(標準化された取引) A B 取引情報 中央清算 機関 A B C D 当 中央清算機関の利用が促進され影響の波及を遮断 ② 証拠金規制(清算集中されない場合) C D A B 証拠金 市場の誰かが破綻した場合、取引 相手を通じてその影響が伝播する 可能性( ) 証拠金 (資料) 金融庁資料より、みずほ総合研究所作成 C 取引情報 蓄積機関 (TR) 取引 情報 局 D 市場の誰かが破綻しても、取引相手は証拠金を受領してい るため、取引相手を通じた影響の伝播は回避 29 (2) 店頭デリバティブ市場改革の経緯 ◯ 2009年9月のG20ピッツバーグサミットにおいて、①清算集中義務、②電子取引基盤の使用義務、③取引情報蓄積機関へ の報告義務、について合意。いずれの規制も各国において実施中 ◯ 2011年11月のG20カンヌサミットにおいて、中央清算されない店頭デリバティブ取引に関する証拠金規制の導入に合意。 2016年9月から各国において段階的に導入される予定 ◯ 2012年4月、BIS支払・決済システム委員会(CPSS)と証券監督者国際機構(IOSCO)は、中央清算機関(CCP)や取引情 報蓄積機関を含む金融市場インフラをより強固なものとすべく、「金融市場インフラのための原則」を策定 【 G20ピッツバーグサミット首脳宣言(2009年9月)抜粋 】 遅くとも2012年末までに、標準化されたすべての店頭デリバティブ契約は、適当な場合には、取引所又は電子取引基盤を 通じて取引され、中央清算機関を通じて決済されるべきである。店頭デリバティブ契約は、取引情報蓄積機関に報告され るべきである。 (注) 下線はみずほ総合研究所。 (資料) 外務省 【 G20カンヌサミット首脳宣言(2011年11月)抜粋 】 2012年6月までに,中央清算されない店頭デリバティブに対する証拠金に係る基準を市中協議用に策定するよう求める (注) 下線はみずほ総合研究所。 (資料) 外務省 30 (3) 中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制 ◯ ◯ ‧ ‧ 2013年9月、バーゼル委とIOSCOが「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制の最終枠組み」を公表 2015年3月、バーゼル委とIOSCOは枠組みを改訂 実施時期を9カ月延期。2016年9月1日からの段階的導入に変更(改訂前は2015年12月1日からの段階的導入) 各国規制の調和に向けて当局・業界間の調整を続けていく方針を表明 【バーゼル委・IOSCO「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制の最終枠組み」(2013年9月)の概要 】 適用対象となる取引 • 中央清算されない全てのデリバティブ取引 (現物決済型為替スワップ・フォワード取引は本枠組みの対象外) 適用対象となる業者 • 中央清算されないデリバティブ取引を扱う全ての金融機関及びシステム上重要な非金融機関(政府系機関・中央銀行等を除 く)間の取引について、当初証拠金と変動証拠金を、相互に授受 当初証拠金 • 取引相手がデフォルトした場合にデリバティブ取引を再構築するまでに想定される将来の時価変動をカバー(保有期間10日、 信頼区間99%) • 証拠金率は、当局により承認された内部または第三者のモデル、あるいは、標準化された表を用いて算出 変動証拠金 • 既に発生している時価変動額をカバー • 十分に高い頻度(例えば日次)で計算され、支払われるべき 実施時期(注) • 変動証拠金:2016年9月1日から2017年3月1日にかけて段階的に導入※ • 当初証拠金:2016年9月1日から2020年9月1日にかけて段階的に導入※ ※中央清算されないデリバティブ取引の想定元本が3兆ユーロ以上の適用主体同士の取引から順次導入 (注) 実施時期については2015年3月のバーゼル委・IOSCOによる枠組みの改訂を踏まえた内容。 (資料) 金融庁資料より、みずほ総合研究所作成 31 5.シャドーバンキング規制 32 (1) シャドーバンキング問題 ◯ 銀行および銀行グループへの規制強化に伴う規制回避の動きに対処するため、非銀行金融セクター(シャドーバンキング セクター)への規制・監督も強化 ‧ シャドーバンキングとは、ヘッジファンド、MMF(マネーマーケットファンド)など、実質的に銀行に類似した信用仲介活動を 行っている銀行以外の主体・活動のこと 【 シャドーバンキング問題のイメージ 】 銀行システム 貸出/運用 預金 規制の緩い方へ資金の 流れがシフトする可能性 預金者・投資家 企業・金融機関 銀行 シャドーバンキングシステム ヘッジファンド等 債券投資等 持分保有 (資料) 金融庁資料より、みずほ総合研究所作成 33 (2) シャドーバンキング規制の5つの検討分野と提言内容 ◯ G20の要請を受け、FSBは2011年10月、「シャドーバンキングの監督および規制の強化に関する勧告」を公表、G20カンヌ サミットでその内容を承認 ‧ 合意された5つの検討分野について、FSB・バーゼル委・IOSCOから最終報告書等が公表済み 【 G20カンヌサミットにおいて合意された5つの検討分野と提言内容 】 検討分野 銀行のシャドーバン キングへの関与 マネー・マーケット・ ファンド(MMF) MMF以外のシャドー バンキング主体 証券化商品 レポ・証券貸借取引 主な提言内容等 検討状況 ファンド向け出資の自己資本規制上の取扱いの見直し 2013年12月、バーゼル 委が最終規則を公表 大口エクスポージャー規制の強化 2014年4月、バーゼル 委が最終規則を公表 バーゼル規制の適用範囲の見直し(規制上の連結の範囲の拡大等) 後述P.35 安定的基準価額方式から変動的基準価額方式(組入証券を市場価格など公正な価格で評価 し基準価額を算定する方式)への移行 安定的基準価額方式を維持する場合、損失吸収措置およびMMFからの資金流出防止措置 MMF以外のシャドーバンキング主体についてリスクを査定し、必要な場合に政策措置を実施 証券化商品の発行者等への適切なインセンティブの付与(証券化リスクリテンション) 投資家の投資判断に資する十分な情報開示 レポ・証券貸借取引の担保について、一定水準以上の掛け目(ヘアカット)の設定を義務付け レポ・証券貸借取引市場に関する国際的なデータ収集と集計 2012年10月、IOSCOが 最終報告書を公表 2013年8月、FSBが最 終報告書を公表 2012年11月、IOSCOが 最終報告書を公表 2013年8月、FSBが報 告書を公表 (資料) 金融庁資料より、みずほ総合研究所作成 34 (3)ステップインリスクの特定・評価 ◯ 2015年12月、バーゼル委は、「銀行のシャドーバンクへの関与」の検討分野に関して、ステップインリスクを特定・評価する 枠組みに係る市中協議文書を公表 ‧ ステップインリスクとは、銀行が、契約上の義務を超えて、ストレス時にシャドーバンク等の事業体を支援せざるを得なくな るリスク。先般の金融危機時に、銀行が事業体を救済した事例あり ‧ 本枠組みの目的は、ステップインリスクの特定による、 現行の会計や規制において連結されていない事業体の捕捉 ‧ 本枠組みを第1の柱、第2の柱 どちらとして扱うかも含め、バーゼル規制への反映方法は未定 【 ステップインリスクを特定する指標 】 銀行とシャドーバンク 等の関係に着目した ステップインリスクを 特定する指標 • スポンサー関係(流動性枠等の信用供与、意 思決定権限) • 重要な影響力 • 外部格付への支援の織り込み • 独占的に重要な機能を提供 ⇒ リスク指標に該当する場合、重要なステップイ ンリスクが存在すると想定 ⇒ 本枠組みの適用範囲は当該指標に該当する 非連結の事業体(一般事業会社は対象外) • ブランドの使用 事業体毎の固有の状 • 投資家と銀行の顧客の重複 況を勘案し、ステップ • 銀行への経済的依存 (ストレス時に銀行以外 インリスクの有無を評 からのサポートが想定されるか) 価する為の補助的な • 過半のリスクリワードの有無 指標 • 資金調達の依存度 等 (資料) 日本銀行/金融庁資料より、みずほ総合研究所作成 【 リスクを評価するアプローチ 】 連結 • 銀行グループのバランスシートに当該事業体を取り 込む。銀行が将来的に当該事業体を支援し、会計上 連結する蓋然性を念頭に、支援の発生前からこれを 規制上捕捉することを企図 • 但し、当該事業体が既に他の銀行の連結先である場 合、バーゼル規制の枠組みでは適切にリスクが捕捉 されない場合(非金融事業等)、 タイムリーに連結に 必要な情報を入手できない場合には、連結は不適当 としている コンバージョン アプローチ • 当該事業体の「オン+オフバランス項目-グループ内 取引(消去)」を想定元本とし、これに掛け目 (Conversion rate)を適用し、信用リスクのエクスポー ジャーを算出。掛け目の具体的な水準は未定 • ステップインリスクの評価に当たっては、 標準的手法 のリスクウェイト(RW)を参照することを想定 (資料) 日本銀行/金融庁資料より、みずほ総合研究所作成 35 (4) 資産運用業に関する構造的な脆弱性への対処 ◯ FSBは、2016年9月のG20杭州サミットまでに、資産運用業に関する構造的な脆弱性(オープンエンド型投資ファンドの投 げ売りリスク等)に対処するための政策提言を提案する予定 ‧ 当初は、世界的な資産運用会社をNBNI G-SIFIs(Non-Bank Non-Insurer Global Systemically Important Financial Institutions、銀行・保険会社以外のグローバルなシステム上重要な金融機関)に指定することよって対処する方針であっ たが、特定の資産運用会社ではなく、市場全体における資産運用業の商品・業務の特性に着目した政策提言によって対 処する方針に転換 【 NBNI G-SIFIsの選定手法に係る作業の経緯 】 【 政策提言に向けて分析している主な分野 】 2011年11月 G20カンヌサミットにおいて銀行・保険会社以外のシステ ム上重要な金融機関の選定手法の策定に合意 ファンドにおける流動性のミスマッチ 2014年1月 NBNI G-SIFIsの選定手法に係る第一次市中協議文書 ファンドにおけるレバレッジ 2015年3月 NBNI G-SIFIsの選定手法に係る第二次市中協議文書 投資に関して与えられた権限の移転に係るオペ レーショナルリスク 2015年7月 NBNI G-SIFIsの選定手法に係る作業の中断を発表。資 産運用業の商品・業務の特性に着目した政策提言に係る 作業が完了した後、政策提言では解消されないリスクへ の対処を目的として再開する予定 (資料) みずほ総合研究所作成 資産運用会社およびファンドによる証券貸借取引 (資料) FSBプレスリリース「Meeting of the Financial Stability Board in London on 25 September」(2015年9月)より、みずほ総合研究所 作成 36 6.その他の国際的な改革 37 (1) データ収集関連 ◯ FSBは、金融システム全体のモニタリングの高度化、システミックリスクの特定・評価のため、データ収集の強化に取り組 んでおり、前述の店頭デリバティブ取引(P.30)やレポ・証券貸借取引(P.34)の分野の他にも以下のような取り組みを実施 【 データ収集関連の主な取り組み 】 項目 データギャップ問題への 対処 LEI(Legal Entity Identifier) 経緯 内容 • 2009年11月、FSB・IMFが報告書「金融危機と 情報ギャップ」を公表 • FSB・IMFは、①金融セクターにおけるリスクの積み上がりの捕捉や、② 国際的な金融ネットワークに関する統計の拡充、等を提言 • 2011年10月、FSBが市中協議文書「金融上の 連関性の把握:グローバルにシステム上重要 な銀行に対する共通のデータテンプレート」を 公表 • FSBは、①G-SIFIs間の相互連関性や、②G-SIFIsの他のセクターや市 場へのエクスポージャー、③グローバルな金融ネットワークの構造と変 化、についての情報の収集に役立てるため、G-SIBs向けの共通データ テンプレートを策定しており、2016年8月からの報告開始を予定 • 2010年11月、米国OFR(金融調査局)がLEIの 導入を提唱 • 金融商品の取引を行う当事者(legal entity)に対して統一された識別番 号を割り当てる仕組みをグローバルに導入する取り組み • 2011年11月、G20カンヌサミットにおいて、金 融取引参加者を一意に特定するグローバル なLEIの構築を支持する声明を採択 • 金融取引の当事者を効率的に把握することにより、金融機関間の相互 連関性やシステミックリスクのモニタリングに役立てるもの • 2012年6月、G20ロスカボスサミットにおいて、 LEIの枠組みに関するFSBの提言を承認 • 欧米では店頭デリバティブの取引情報報告においてLEIの使用が義務 付けられており、今後、LEIの使用が求められる金融商品・地域・業者 の範囲が拡大する可能性 (資料) みずほ総合研究所作成 38 (2) 銀行ガバナンス関連 ◯ 先般の金融危機において明らかになった銀行のコーポレートガバナンス関連の問題に対処するため、以下のような取り 組みを実施 【 銀行ガバナンス関連の主な取り組み 】 項目 健全な報酬慣行 に関する原則 経緯・予定 2009年4月、FSBが「健全な報酬慣行に関す る原則」を公表(同年9月、実施基準を公表) 内容 ①報酬についての実効的なガバナンスや、②健全なリスクテイクとの整合性確保、等を求 めるもの 2010年10月、バーゼル委が「コーポレート・ガ ①取締役会が果たす監督面の役割に係るガイダンス、②ビジネス部門、リスク管理部署、 コーポレート・ガ バナンスを強化するための諸原則」を公表 内部監査・統制機能が果たすリスク管理上の役割を含むリスクガバナンスに係るガイダン バナンスを強化す (2015年7月改訂) ス、③銀行監督当局が銀行の取締役及び上級経営陣の選任プロセスを評価するためのガ るための諸原則 イダンス、等を提供 2013年1月、バーゼル委が「実効的なリスク 実効的なリスク データ集計とリス データ集計とリスク報告に関する諸原則」の 最終版を公表 ク報告に関する 諸原則 先般の金融危機の際、多くの銀行がリスクエクスポージャーを迅速・正確に集計できなかっ たことを踏まえ、銀行のリスク管理実務と意思決定プロセスを向上させるため、銀行のリス クデータ集計とリスク報告実務を強化することを企図したもの(G-SIBsは2016年までに諸原 則を完全な形で実施する必要) 取締役会によるリスクアペタイトフレームワーク※の承認やリスクアペタイトの文書化(リス リスクアペタイトフ 2013年11月、FSBが「実効的なリスクアペタイ クアペタイトステートメント)等を要求 レームワーク ※グループの経営戦略等を踏まえて進んで受け入れるリスクの水準(リスクアペタイト)を ト枠組みに係る原則(最終報告書)」を公表 (RAF) グループ内で設定・共有化・監視するための枠組みのこと ミスコンダクト(不 2016年9月のG20杭州サミットまでに、FSBが 米国におけるモーゲージ商品の不適切な販売やLIBOR等の金融指標の不正操作問題等 適切な行為)リス ミスコンダクトの回避に向けた報告書を策定 を背景として、FSBは、ミスコンダクト(不適切行為)の削減に向けた作業を行っており、監督 ク 予定 手段・ガイダンスを策定する可能性 (資料) みずほ総合研究所作成 39 7.欧米における独自の改革 40 (1) 米国 ① ドッド・フランク法 ◯ 米国は、先般の金融危機後、規制改革を積極的に推進。2010年7月には、包括的な金融規制改革法(ドッド・フランク法) が成立 ‧ システム上重要な金融機関に対する金融監督体制整備、リスクの高い業務に対する規制(ボルカールール等)、金融機 関の破綻に伴う納税者負担の回避、消費者・投資家保護等が改革の中心的課題 ‧ 全15章からなる大規模な法律。規制緩和により金融ビジネスの活性化を図ろうとしてきた従来の方針を大きく転換し、多く の点で規制を強化する内容 【 ドッド・フランク法の構成(一部) 】 章 主な内容 第1編 金融の安定 FSOC(金融安定監督評議会)の新設、FSOCによるノンバンクSIFIsの指定 第2編 秩序だった清算の権限(Orderly Liquidity Authority) FDIC(連邦預金保険公社)主導の破綻処理 第3編 OCC(通貨監督庁)、FDIC、FRB(連邦準備制度理 事会)への権限移管 OTS(貯蓄金融機関監督庁)の解体と機能の移管 第5編 保険 第6編 銀行等の規制の改善 ボルカールール 第7編 ウォール街の透明性・説明責任 デリバティブ規制 第9編 投資者保護と証券規制の改善 証券化リスクリテンション、報酬規制、コーポレートガバナンス、信用格付会社 第10編 CFPB(金融消費者保護局) CFPBの新設 (資料) みずほ総合研究所作成 41 (1) 米国 ② ボルカールール ◯ ボルカールールとは、ドッド・フランク法第619条に基づき、銀行によるリスクの高いトレーディングやファンド投資の原則禁 止を規定するルール。最終ルールは2013年12月に確定、2015年7月から全面実施 ‧ 対象には米国に拠点を有する米国外の銀行グループも含まれる ‧ 完全に米国外で行われる取引、国債等の取引、顧客のために行う取引、ヘッジ目的取引、ファンドへの少額の出資等に 対する適用除外あり 【 ボルカールールの主な内容 】 対象金融機関 ・預金保険対象預金を取り扱う金融機関及び当該金融機関を支配する会社 ・1978年国際銀行法上、銀行持株会社として扱われる会社 ・上記の子会社・関連会社 ※米国に拠点を有する米国外の銀行グループも対象 自己勘定トレーディングの原則禁止 規制内容 例外取引の一部は 一定の要件を満た す必要あり ・引受業務やマーケットメイク業務に関する取引 例外 ・リスク削減のためのヘッジ目的の取引 取引 ・①米国、②(米国外の銀行が米国拠点で取引を行う場合)銀行の母国、③(米国銀行が外国拠点で取引を行う場合) 外国拠点の所在国、の国債など政府関連債務の取引 ほか ヘッジファンド、プライベート・エクイティ・ファンドへの出資等の原則禁止 例外 ・ファンドの受入出資金全体の3%以下かつ当該銀行のTier1資本の3%以下となる金額で行われる出資 取引 ・リスク削減のためのヘッジ目的の取引 ほか 法令遵守のための ・コンプライアンス・プログラム(最終ルールの遵守状況をチェックする内部計画)の作成 ・トレーディング業務に関する定量的データの報告 ほか 実施事項 スケジュール 2014年4月 最終ルール施行 2014年6月 定量的データの報告開始(連結トレーディング資産・負債が500億ドル以上の銀行の場合。その他の銀行も順次実施) 2015年7月 全面実施 (資料) みずほ総合研究所作成 42 (1) 米国 ③ FBO(外国銀行)規制 ◯ 2014年2月、 FRBは、ドッド・フランク法第165条に基づき、米国内外の大手銀行に対する監督・規制を強化するための最 終ルールを公表 ‧ 一定規模以上の外国銀行に対しては、米国での中間持株会社(IHC)の設立を義務付けるほか、米国での業務に基本的 に米国の銀行持株会社と同等の健全性要件等を適用 ‧ 外国銀行への適用開始は2016年7月(一部規定を除く) 【ドッド・フランク法第165条・166条に基づく大規模銀行規制強化ルール(外国銀行部分)の概要 】 外国銀行の 規模 項目 連結総資産(グローバルベース) 50 0億ドル以上 合算米国資産5 00 億ドル以上 米国非支店資産50 0億ドル以上 米国非支店資産50 0億ドル未満 合算米国資産5 00 億ドル未満 連結総資産(グローバルベース) 1 00億ドル以上5 00 億ドル未満 米国中間持株会 米国中間持株会社(米国IHC)の設立 社の設立義務 自己資本要件 対象外 米国IHCによる、米国の銀行持株会社と同じ方法での、 ①自己資本要件の充足、②自己資本ストレステストの 実施、③資本計画の策定 ①バーゼル委の枠組みに準拠する本国の自己資本基準を満たしていることのFRBへの報告、 同左(但しストレステスト結果の 一定の要件を満たす本国の自己資本 ②一定の要件を満たす本国の自己資本ストレステストの枠組みの遵守、FRBへの報告 FRB宛報告に係る要件は無い) ストレステストの枠組みの遵守 流動性要件 ①流動性管理(包括的なキャッシュフローの予測、緊急時の資金調達計画の策定、 流動性リスクの限度の測定、流動性リスク監視のための手続きの制定、等)、 ②月次での流動性ストレステストの実施、③流動性バッファーの保持、 ④本国で義務付けられている流動性テストの結果および流動性バッファーのFRBへの報告 内部的な流動性ストレステスト の実施、年次でのFRBへの報告 リスク管理要件 米国リスク委員会、米国最高リスク責任者の設置 リスク管理に係る体制整備 負債比率制限 倍以下の維持、 FSOC(金融安定監督評議会)による決定を受けた場合、①米国IHCまたは米国子会社による負債比率15以下の維持、 ②米国支店による前四半期の総負債(日次の値の平均値)に対して108%以上の適格資産の維持 ※負債比率:総負債÷(総株主資本-のれん)、遵守期限:FSOC(またはFRB)から書面による通知を受けた後180日以内 与信集中制限 単一カウンターパーティーに対する与信上限(ルール未確定、検討中) 対象外 リスク管理に係る体制整備 ※対象:株式を公開している銀行 対象外 一部の銀行に対するドッド・フランク法第166条の早期是正措置の適用(ルール未確定、検討中) 早期是正措置 (資料) みずほ総合研究所作成 43 (2) EU ① EUの銀行監督体制 ◯ 先般の金融危機後、EUでは、米国同様、金融システム全体に関わるシステミックリスクへの対応(マクロプルーデンス)を 強化する方向で金融監督体制の改革を実施。2011年初めに、新しい金融監督体制であるESFS(欧州金融監督システム) が発足 ‧ 改革の柱は、①域内全体の金融システムのリスクを監視するESRB(欧州システミックリスク理事会)の新設、②ミクロプ ルーデンスの実効性向上を図るための欧州監督機構(ESAs)の新設、の2つ 【 EUの銀行監督体制 】 欧州委員会 メンバー:28人の欧州委員 うち、金融安定・金融サービス・資本市場同盟担当:ヒル委員(英国出身) 【マクロプルーデンス監督】 ESRB 【ミクロプルーデンス監督】 (欧州システミック リスク理事会) 理事長: ECBドラギ総裁 技術的基準 (RTS・ITS)案 作成 情報交換 承認 ESAs(欧州監督機構) EBA ESMA EIOPA (欧州銀行監督機構) (欧州証券市場監督機構) (欧州保険年金監督機構) 警告・勧告 規制の一貫した適用の確保 銀行同盟 参加国 (ユーロ圏) 非参加国 (英国など) SSM(単一監督メカニズム) ECB 加盟国監督当局 (欧州中央銀行) 直接監督 間接監督 重要な銀行(約130行) 監督 重要性の低い銀行 加盟国監督当局 監督 銀行 (資料) みずほ総合研究所作成 44 (2) EU ② ユーロ圏を中心とした銀行同盟 ◯ EUでは、先般の金融危機を踏まえ、強固な金融の枠組みを構築するため、ユーロ圏を中心とした取り組みとして、「銀行 同盟」が進められている ‧ 現在はユーロ圏を中心とした取り組みとなっているものの、ユーロ圏外のEU加盟国も銀行同盟に参加することが可能 ◯ 銀行同盟の大きな柱は、SSM(単一監督メカニズム)、SRM(単一破綻処理メカニズム)、共通預金保険制度、の3つ 【 銀行同盟のイメージ 】 銀行同盟 SSM(単一監督メカニズム) • 2014年11月より、ユーロ圏を中心とするSSM参加国の銀行監督の権限をECB(欧州中央銀行)に一元化 • ECBは一部の重要な銀行(130行前後)を直接監督するとともに、ユーロ圏の全銀行(約6,000行)に対する 監督責任を負う SRM(単一破綻処理メカニズム) • SSM参加国の銀行の破綻処理について「単一破綻処理委員会」が破綻処理方針の策定等を一元的に実施 • 2016年1月に本格運用開始 検 討 中 共通預金保険制度 • 2015年6月、欧州委員会のユンケル委員長らが、「欧州預金保険スキーム(EDIS)」の創設を提案 • 2015年11月、欧州委員会がEDISの導入を提案。段階的に導入し、2024年に完成させる計画 (資料) みずほ総合研究所作成 45 (2) EU ③ 英国の銀行監督体制 ◯ 先般の金融危機後、英国は、金融監督体制の抜本的な改革を行い、2013年4月に現行体制に移行 ‧ 一元的な監督当局であったFSA(金融サービス機構)を解体して、新たにFPC (金融安定政策委員会) 、PRA (健全性規 制機構) 、FCA (金融行為監督機構)を設立 ◯ 2015年7月、英国財務省は、現状よりもさらにBOEに権限を集約する計画を公表 ‧ PRAのBOEとの一体化、PRC(健全性規制委員会)の新設などを提案 【 英国の銀行監督体制 】 BOE FPC (金融安定政策委員会) 子会社 規制・監督 指示・勧告 PRA FCA (健全性規制機構) (金融行為監督機構) 健全性規制・監督 金融市場インフラ(CCP、 証券決済システムなど) 行為規制 健全性規制・行為規制 預金取扱金融機関、保険会社、 資産運用会社、ヘッジファンド、取引所、 保険ブローカー、金融アドバイザーなど 一部の投資会社 (資料) みずほ総合研究所作成 46 (2) EU ④ 英国リテールリングフェンス、EU銀行構造改革案 ◯ 預金取扱金融機関によるリスクの高いトレーディング業務等への関与の抑制を目的として、英国ではリテールリングフェン スが2019年1月までに実施される予定。EUレベルでも銀行構造改革案が検討されている 【 英国リテールリングフェンス、EU銀行構造改革案の概要 】 項目 経緯・予定 • 2011年9月、銀行業務に関する独立委員会(ヴィッ カーズ委員会)がリテールリングフェンス案を提示 英国リテールリングフェ ンス • 2013年12月、リテールリングフェンスに係る法案が成 立 • 2019年までの実施を予定 EU銀行構造改革案 (2014年1月の欧州委員 会案) • 2012年9月、欧州委員会の諮問を受けた専門家グ ループが報告書を公表(リーカネン報告) • 2014年1月、欧州委員会が銀行構造改革案を公表 規制内容 • 英国の大手銀行に対して、家計や中小企業に不可欠な預金を 中心とする銀行サービスを分離し、独立したエンティティとするこ とを義務付け • リングフェンスの対象となる銀行に対し、リスクの高い業務を禁 止するとともに、高い自己資本比率を義務付け、健全性を確保 • EUの大手銀行約30行を主な対象として、 ① 銀行自身の利益獲得のみを目的とする自己勘定トレーディ ングを原則禁止 ② トレーディング業務のリスクが一定の水準を超える銀行か ら一定のトレーディング業務を分離・別会社化 (資料) みずほ総合研究所作成 47 (2) EU ⑤ 英国銀行税(Bank Levy)、EU金融取引税(FTT) ◯ EUでは、各国において金融セクターに対する課税が行われており、英国では銀行税(Bank Levy)が導入されている ◯ また、EUレベルでは、金融セクターに対する課税として、金融取引税(FTT)が検討されているが、制度開始の目処は立っ ていない 【 英国銀行税、EU金融取引税(FTT)の概要 】 項目 • 2011年1月、銀行税を導入 英国銀行税 (Bank Levy) EU金融取引 税(FTT) 内容 経緯・予定 • 2015年7月、オズボーン財務相が①税率の段階的引き下げ、 ②英国銀行についてグローバルバランスシートから英国バラ ンスシートへの課税対象の変更、③銀行の利益に対する税率 の8%上乗せ、を提案 • 英国の銀行等のグローバル連結バランスシートや外国銀行の支 店等の英国内バランスシートを課税対象として、負債等の額に税 率を乗じた額を徴収 • 2011年9月、欧州委員会がFTTに係る指令案を提案したもの の、EU全域での導入には賛成が得られず • 株式・債券・デリバティブ等の広範な金融商品の取引に対して一 定税率の課税を行おうとするもの • 2013年2月、EU加盟11カ国による「強化された協力」手続きの もと、欧州委員会が改めて指令案を提案したものの、各国間 の調整が難航しており、制度開始の目途は立っていない • 当初の目的は以下の通り ※2015年12月、上記のEU加盟11カ国からエストニアを除いた 10カ国は、共同声明において、部分的に合意したこと(株式 やデリバティブへの課税内容等)、税率等の残る主な問題に ついては2016年6月までの合意を目指すこと、等を表明 ① 金融機関による金融危機コストの公平な負担 ② 金融市場の効率性に資することのない取引に対するインセ ンティブの抑制 ③ EUレベルで統一された制度の導入による域内での競争上の 歪みの除去 (資料) みずほ総合研究所作成 48 (2) EU ⑥ 英国・ユーロ圏における銀行の所要自己資本 ◯ EUでは、バーゼルⅢにおいて求められる所要自己資本(最低水準+資本バッファー)以外に、各行別に水準が決定され る追加的な資本賦課が存在 ‧ 英国では、銀行勘定の金利リスク等の自己資本比率におけるリスクアセット計測では捕捉されないリスクに対する上乗せ (第2の柱Aに基づく最低水準)や、ストレステストを踏まえた上乗せ(PRAバッファー)が課される ‧ ユーロ圏においても、同様の趣旨で各行別のSREP(監督上の検証・評価プロセス)上乗せが課される 【 ユーロ圏における銀行の所要自己資本 】 【 英国における銀行の所要自己資本 】 システミックバッファー 資本保全 バッファー PRAバッ ファー 資本保全バッファー システミック バッファー PRAバッファー評価 において決定 システミックバッファー カウンターシクリカルバッファー等 資本保全 バッファー SREP 上乗せ SREP 上乗せ SREP 上乗せ システミック バッファー 資本保全 バッファー SREP 上乗せ 第2の柱Aに基づく最低水準 第1の柱に基づく最低水準 (資料) PRA資料より、みずほ総合研究所作成 システミック バッファー 資本保全 バッファー SREP 上乗せ 第1の柱 に基づく 最低水準 第1の柱 に基づく 最低水準 第1の柱 に基づく 最低水準 第1の柱 に基づく 最低水準 第1の柱 に基づく 最低水準 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 ・SREPにおいて水準を 決定 ・状況が変わらなければ、 資本保全バッファーの 段階的導入の期間に わたって一定の水準を 維持することが見込まれる (資料) ECB資料より、みずほ総合研究所作成 49 付録 銀行ビジネス・金融市場への影響 50 (1) 金融規制改革の銀行ビジネス・金融市場への影響 ◯ 金融危機後の金融規制改革等を受けて、銀行の健全性は大きく向上した一方、収益性は低下、欧米大手銀行では事業 の「選択と集中」が進む ◯ 金融規制改革の市場への影響としては、シャドーバンキングの拡大、市場流動性の低下等が指摘されている 【 金融規制改革の考えられる影響のイメージ 】 規制の項目 規制が銀行に求める事項 自己資本比率の 強化 自己資本/TLACの増強 レバレッジ比率 保有資産の削減(資本不足の場合) TLAC 銀行ビジネスへの影響 健全性の向上 • 自己資本・流動性等の 大幅な改善 金融市場への影響 銀行発の金融危機 のリスク低下 例:リスクウェイト大の資産 レバレッジ比率へ影響大の資産 収益性の低下 ボルカールール 高リスク業務の縮小/廃止 店頭デリバティブ 市場改革 高品質流動資産の確保 (含む担保用資産) 流動性規制 (LCR・NSFR) 資金調達の安定化 (短期から長期へのシフト) シャドーバンキング の拡大 • 資金調達コスト増加 • レバレッジの縮小 • 規制対応コスト増加 • 資産運用業の拡大等 • 証券化市場は未回復 事業の「選択と集中」 市場流動性の低下 • トレーディング業務や 海外業務の縮小 • デリバティブ/レポ取引 等の削減 • レポ市場の縮小 • 銀行のマーケットメイク 能力の低下等 (資料) みずほ総合研究所作成 51 (2) バーゼルⅢの達成状況 ① G-SIBsの自己資本額の推移 ◯ G-SIBsは、バーゼルⅢ自己資本比率の強化を受けて、自己資本を順調に積み上げ ‧ 金融危機の直後を除き、基本的には収益により自己資本を積み増し。ただし、欧銀を中心に断続的に増資が継続 (10億ユーロ) 【 G-SIBsの自己資本額の推移 】 (10億ユーロ) 3,500 3,000 【 G-SIBsの自己資本不足額の推移 】 800 Tier 2 その他Tier 1 CET 1 2,500 700 Tier 2 その他Tier 1 CET 1 600 500 2,000 400 1,500 300 1,000 200 500 100 0 0 2011年 2011年 2012年 2012年 2013年 2013年 2014年 2014年 2015年 6月 12月 6月 12月 6月 12月 6月 12月 6月 2011年 2011年 2012年 2012年 2013年 2013年 2014年 2014年 2015年 6月 12月 6月 12月 6月 12月 6月 12月 6月 (注) (資料) バーゼル委「Basel Ⅲ Monitoring Report」(2016年3月)より、みずほ総合研究所作成 バーゼルⅢ自己資本比率の最低水準+資本保全バッファー+各行別G-SIBs バッファーに対する不足額 (資料) バーゼル委「Basel Ⅲ Monitoring Report」(2016年3月)より、みずほ総合研究所作成 52 (2) バーゼルⅢの達成状況 ② 各国大手銀行のCET1比率 ◯ CET1比率については、各行とも国際合意に基づく所要水準を達成済み 【 各行のCET1比率(完全実施ベース) 】 (%) CET1比率 18 国際合意に基づく所要水準 16 14 12 10 8 6 4 2 0 英銀 米銀 欧銀 邦銀 (注) 1. 2015年12月末時点。 2. 所要水準は最低水準(4.5%)+資本保全バッファー(2.5%)+G-SIBsバッファー。各国内ルールにより、より高い水準を求められる場合あり。 (資料) 各行決算資料より、みずほ総合研究所作成 53 (2) バーゼルⅢの達成状況 ③ G-SIBsのレバレッジ比率の推移 ◯ G-SIBsのレバレッジ比率は、自己資本(分子)の積み上げ、エクスポージャー額(分母)の抑制により、順調に上昇 (%) 6 【 G-SIBsのレバレッジ比率 】 【 G-SIBsにおけるTier 1資本、総資産等の推移(2011年6月=100)】 170 160 5 150 4 Tier1資本 リスクアセット レバレッジ比率の分母(エクスポージャー額) 総資産 140 130 3 120 2 110 100 1 90 0 2011年 2011年 2012年 2012年 2013年 2013年 2014年 2014年 2015年 6月 12月 6月 12月 6月 12月 6月 12月 6月 (資料) バーゼル委「Basel Ⅲ Monitoring Report」(2016年3月)より、みずほ総合研究所作成 80 2011年 2011年 2012年 2012年 2013年 2013年 2014年 2014年 2015年 6月 12月 6月 12月 6月 12月 6月 12月 6月 (資料) バーゼル委「Basel Ⅲ Monitoring Report」(2016年3月)より、みずほ総合研究所作成 54 (2) バーゼルⅢの達成状況 ④ 各国大手銀行のレバレッジ比率 ◯ 各行とも国際合意の3%(試行期間中の試験的な最低水準)については達成 ‧ 2016年末までに水準調整が最終化される予定。最低水準を3%とすべきことが合意されているものの、G-SIBsに対する追 加的な要件が議論されている 【 各行のレバレッジ比率の状況 】 (%) <米国内ルール> 最低水準3% +大手銀行向けバッファー2% 8 7 <国際合意> 3% (試行期間の試験 的な最低水準) 6 5 4 3 2 1 0 英銀 米銀 欧銀 邦銀 (注) ウェルズ・ファーゴは2014年3月末時点で7%以上と公表、他は2015年12月末時点の値 (資料) 各行決算資料より、みずほ総合研究所作成 55 (2) バーゼルⅢの達成状況 ⑤ 流動性規制(LCR、NSFR) ◯ 一部のG-SIBsが完全実施時に求められる水準(100%)を下回っている 【 G-SIBsのLCR・NSFRの水準 】 LCR 【 各国大手銀行の適格流動資産保有量の項目別割合 】 NSFR 最大値 163.8% 141.4% 第3四分位数 132.0% 115.2% 中央値 123.9% 108.6% 第1四分位数 117.0% 104.1% 97.6% 86.2% 123.4% 114.6% 最小値 加重平均 (資料) バーゼル委「Basel Ⅲ Monitoring Report」(2016年3月)より、みずほ総合研究所作成 レベル1 現金、引き出し可能な中銀預金, 38.0% レベル1 リスクウェイトが0%の国債等, 47.3% レベル1 リスクウェイトが0%でない母国国債等, 3.2% レベル2A リスクウェイトが20%の公債等, 6.3% レベル2A 非金融社債(AA-以上), 2.1% レベル2A カバードボンド(AA-以上), 1.4% レベル2B RMBS, 0.1% レベル2B 非金融社債(BBB-~A+), 0.4% レベル2B 非金融普通株式, 1.1% レベル2B 母国以外の国債等(BBB-~BBB+), 0.1% (資料) バーゼル委「Basel Ⅲ Monitoring Report」(2016年3月)より、みずほ総合研究所作成 56 (3) 銀行ビジネスの変化 ① 各国大手銀行の総資産の推移 ◯ バーゼルⅢテキスト公表(2010年12月)後、邦銀の総資産は拡大を継続している一方、欧米銀の総資産の伸びは鈍化 【 各国大手銀行の総資産の推移(2010年末=100) 】 (%) 140 米銀 欧銀 邦銀 130 120 110 100 90 80 70 60 50 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (年) (注) 米銀:大手6行の合計。 欧銀:大手14行の合計(ポンド、ドル、フラン建て決算の銀行については、各年末の為替相場にてユーロ変換)。 邦銀:大手3行の合計。 (資料) 各行決算資料より、みずほ総合研究所作成 57 (3) 銀行ビジネスの変化 ② FICC業務の縮小 ◯ 欧米大手銀行は、投資銀行部門のうち、特にFICC(Fixed Income, Currencies and Commodities、債券・為替・コモディ ティー)業務を縮小 【 欧米大手銀行の投資銀行部門の収入推移 】 < プライマリー業務 > < セカンダリー業務 > (10億ドル) (10億ドル) 40 14 M&A等 債券引受 株式トレーディング 債券・為替・コモディティトレーディング 株式引受 12 30 10 20 8 10 6 4 0 2 ▲ 10 0 ▲ 20 ▲2 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注) 1. JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、ドイツ銀行、クレディ・スイス、UBSの合計。 2. ユーロ及びフラン建ての銀行については、各期末の為替相場にてドル変換。 (資料) 各行決算資料より、みずほ総合研究所作成 58 (3) 銀行ビジネスの変化 ③ 高リスク業務の縮小 ◯ 欧米大手銀行は、先般の金融危機後、金融規制強化の影響が大きい業務を縮小 【 欧米大手銀行が金融危機後に縮小した主な業務 】 地域 銀行名 ボルカー・ルール対応 自己勘定取引 PE/HF投資 ランズドーン・パートナーズ(HF)の売却を 計画 その他 モルガン・スタンレー ■ 自己勘定取引部門のスピンオフ ■ JPモルガン・チェース ■ プロップトレーダーを資産運用部門に異動 ■ One Equity Partners(PE)資産の一部売却 ■ 現物コモディティの一部売却 ■ Gavea Investimentos(PE)株式の一部売却 ■ アジアのハイイールド債投資事業の撤退 バンク・オブ・アメリカ ■ プロップトレーダーを他部門へ異動 シティグループ ■ カスタマーデスクを含め、プロップトレーダー ■ ヘッジファンド部門のスピンオフ を他部門へ異動 ■ PE持分の売却(複数) バークレイズ ■ キャピタル・アービトラージ部門をスピンオフ RBS ■ 自己勘定取引部門の大幅縮小 米 ■ 現物コモディティの一部撤退 ■ 現物コモディティの縮小 ■ FICCの縮小(標準化された取引等、シンプルなト レーディング業務に集中) ■ 一部のエマージング市場商品から撤退 ■ RBSスペシャル・オポチュニティーズ・ファン ド(PE)の持分売却 ■ コモディティ事業の売却 ■ 株式トレーディング、プロジェクト・ファイナンス、ノ ンコンフォーミングABS、ECM、M&Aから撤退 欧 ■ コモディティ事業からの撤退 ■ レポ取引の縮小 ドイツ銀行 クレディ・スイス ■ プロップトレーダーを資産運用部門へ異動 UBS ■ プロップトレーダーを資産運用部門へ異動 ■ DLJマーチャント・バンキング・パートナーズ ■ FICCの縮小(金利、コモディティの一部、為替) (PE) をスピンオフ ■ 欧州プライマリー・ディーラー業務から撤退 ■ FICCの大幅縮小(実質撤退)(除く為替) (資料) 各行資料および各種報道より、みずほ総合研究所作成 59 (3) 銀行ビジネスの変化 ④ ビジネスモデルの変化 ◯ 多くの欧米大手銀行は、業務数を削減するか海外業務を縮小する一方、バーゼルⅢ等の影響の小さい資産運用業務や トランザクション業務を強化する傾向 【 欧米大手銀行のビジネスモデルの変化(イメージ) 】 世界10カ国から撤退を表明 投資銀行部門縮小 投資銀行部門縮小 ウェルス・マネジメントに注力 ウェルス・マネジメントに注力 海外業務縮小 英国・米国に集中 (資料) 各種資料より、みずほ総合研究所作成 60 (3) 銀行ビジネスの変化 ⑤ 規制・コンプライアンス対応コストの増大 ◯ 規制・コンプライアンス対応に向けた体制整備も大きな負担に 【 JPモルガン・チェースの規制・コンプライアンス対応コスト 】 項目 経営資源投入量 自己資本比率 CCAR(Comprehensive Capital Analysis and Review、米国のストレステスト) レバレッジ比率 自己資本比率 流動性規制 LCR NSFR 破綻処理制度 ストレス時の回復策や破綻処理策の策定 マネーロンダリング アンチ・マネー・ロンダリング(AML)システム レポーティング データの透明性及び捕捉可能性向上 個別の業務規制 住宅ローン デリバティブ その他ボルカー・ルールにより制限を受ける業務 500人 400人 1 ,0 0 0 人 8 ,0 0 0 人 1 ,0 0 0 人 研修: 最大8 万時間 システム構築等: 1 40 万時間 700人 300人 2012年~2014年において、規制・コンプライアンス対応のために、13,000人を増員、追加コストは20億ドルにも (資料) JPモルガン・チェース決算資料より、みずほ総合研究所作成 61 (3) 銀行ビジネスの変化 ⑥ 各国大手銀行のROE・ROAの推移 ◯ 金融規制改革への対応等を進める中で、欧米大手銀行のROE・ROAは危機前の水準には戻らず 【 各国大手銀行のROEの推移 】 (%) (%) 25 【 各国大手銀行のROAの推移 】 1.4 米銀 欧銀 邦銀 20 1.2 米銀 欧銀 邦銀 1.0 15 0.8 10 0.6 5 0.4 0 0.2 ▲5 0.0 ▲ 10 ▲ 15 (注) ▲ 0.2 ▲ 0.4 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (年) 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (年) 1. 米銀:大手6行の平均。 欧銀:大手14行の平均。 邦銀:大手3行の平均。 2. 2015年の値は各四半期の平均値を使用(邦銀は6月期~12月期の3四半期分)。 (資料) ECBより、みずほ総合研究所作成 (注) 1. 米銀:大手6行の平均。 欧銀:大手14行の平均。 邦銀:大手3行の平均。 2. 2015年の値は各四半期の平均値を使用(邦銀は6月期~12月期の3四半期分)。 (資料) ECBより、みずほ総合研究所作成 62 (3) 銀行ビジネスの変化 ⑦ 各国大手銀行の株価の推移 ◯ 業績の先行きの期待感低下から、各国大手銀行の株価は危機前の水準には届かず 【 株価の推移(2007年1月4日=100) 】 120 100 80 米銀 60 40 欧銀 邦銀 20 0 (年) (注) 米銀:大手6行の平均。 欧銀:大手14行の平均。 邦銀:大手3行の平均。 (資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成 63 (3) 銀行ビジネスの変化 ⑧ 各国における貸出残高の推移 ◯ 米国における貸出残高は拡大基調に戻った一方、ユーロ圏における貸出残高は金融危機以降ほぼ横ばい 【 各国における貸出残高の推移 】 < ユーロ圏 > < 米国 > < 日本 > その他 消費者信用 金融機関向け貸出残高 住宅向け貸出残高 (兆ドル) 10 (%) 15 商業向け貸出残高 (兆ユーロ) 家計向け貸出残高 18 企業(除く金融機関)向け貸出残高 伸び率(前年同月比、右軸) (%) (10兆円) 15 (%) 15 貸出残高 60 伸び率(前年同月比、右軸) 伸び率(前年同月比、右軸) 9 8 7 10 15 10 50 10 5 12 5 40 5 0 9 0 30 0 6 5 4 3 2 ▲5 6 ▲ 5 20 ▲5 ▲ 10 3 ▲ 1010 ▲ 10 1 0 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 ▲ 15 0 06 16 (年) 07 08 09 10 11 12 13 14 15 ▲ 15 0 16 (年) 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 ▲ 15 16(年) (資料) FRB、ECB、日本銀行より、みずほ総合研究所作成 64 (3) 銀行ビジネスの変化 ⑨ 各国における預貸率・有価証券保有額等の推移 ◯ 先般の金融危機後、米国における預貸ギャップ・有価証券保有額は拡大 ◯ ユーロ圏における預貸率は低下傾向にあるが、依然水準は高い 【 預貸率・預貸ギャップ・有価証券保有残高の推移 】 < 米国 > 預貸ギャップ 預貸率(右軸) (兆ドル) 3.5 < 日本 > < ユーロ圏 > 有価証券保有額 (%) (兆ユーロ) 預貸ギャップ 有価証券保有額 預貸率(右軸) 預貸ギャップ (%) (10兆円) 有価証券保有額 預貸率(右軸) (%) 170 35 6 160 30 160 150 5 150 25 150 2.0 140 4 140 20 140 1.5 130 3 130 15 130 1.0 120 2 120 10 120 0.5 110 1 110 5 110 0.0 100 0 100 0 100 170 7 3.0 160 2.5 170 ▲ 0.5 90 ▲ 1 90 ▲ 5 90 ▲ 1.0 80 ▲ 2 80 ▲ 10 80 ▲ 1.5 70 ▲ 3 70 ▲ 15 70 ▲ 2.0 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 60 ▲ 4 06 (年) 07 08 09 10 11 12 13 14 15 60 ▲ 20 (年) 60 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注) ユーロ圏の預貸率および預貸ギャップは、インターバンク貸出、預金を除く。 (資料) FRB、ECB、日本銀行より、みずほ総合研究所作成 65 (4) 金融市場の変化 ① 米国レポ市場の縮小 ◯ 米国におけるレポ市場を通じた資金調達規模はこの3年で10%以上縮小 ‧ レポ取引は、証券市場の仲介者や参加者の資金流動性を支える仕組みで、証券市場の市場流動性に大きな影響 【 米国レポ市場の残高の推移】 【 米国トライパーティー・レポ市場の残高の推移 】 (10億ドル) 1,900 (10億ドル) 3,000 レポ リバースレポ 1,800 2,500 1,700 1,600 2,000 1,500 1,500 2013/4 2014 2015 (資料) ニューヨーク連銀より、みずほ総合研究所作成 2016 (年) 1,400 2013 2014 2015 2016(年) (資料) ニューヨーク連銀より、みずほ総合研究所作成 66 (4) 金融市場の変化 ② 米国では銀行のマーケットメイク能力が低下 ◯ 米国では、債券のトレーディング在庫や売買高が減少 【 米国における債券(米国債以外)のトレーディング在庫 】 (10億ドル) 400 【 米国における債券の売買高 】 (10億ドル) (10億ドル) トレーディング在庫(左軸) 取引量(右軸) 350 1,200 1,200 1,000 1,000 300 250 トレーディング 在庫が減少 200 150 800 800 600 600 400 400 200 200 100 50 0 0 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 (年) (資料) IMF資料より、みずほ総合研究所作成 0 2002 04 06 08 10 12 14 (年) (注) 国債、地方債、政府機関証券、社債、MBS、ABSの合計。 (資料) SIFMAより、みずほ総合研究所作成 67 (4) 金融市場の変化 ③ 市場流動性低下の問題が指摘されるように ◯ 米国債市場やドイツ国債市場における市場の混乱を背景として金融規制改革による市場流動性低下の問題が議論され るように 【 2014年10月の米国債利回りの乱高下 】 (%) 2.35 【 2015年5月のドイツ国債利回りの急上昇 】 (%) 1.2 1.0 2.25 0.8 2.15 0.6 2.05 0.4 1.95 0.2 1.85 0.0 14 15 16 (年) (注) 2014年10月14日~16日の1分間隔(目盛は1時間)の10年債利回り推移。 (資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成 2015年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 (資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成 68 (4) 金融市場の変化 ④ シャドーバンキングセクターの金融資産の増加 ◯ シャドーバンキングセクター(証券会社、信託会社、金融会社、MMF、ヘッジファンド、不動産投資信託・ファンド、その他 の投資ファンドなど)の金融資産が引き続き増加 【 セクター別金融資産額の推移 】 < 米国 > (兆ドル) < 合計 > 銀行 シャドーバンキングセクター 保険会社 年金基金 中央銀行 公的金融機関 (兆ドル) 160 30 30 25 25 20 20 15 15 10 10 5 5 0 2002 140 04 120 100 80 60 40 20 0 2002 04 06 08 10 12 08 10 12 < ユーロ圏 > (兆ドル) 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 2002 (年) 14 06 < 中国 > (兆ドル) 14(年) 0 2003 05 07 09 11 13(年) < 日本 > (兆ドル) 25 20 15 10 5 04 06 08 10 12 14(年) 0 2002 04 06 08 10 12 14 (年) (資料) FSBより、みずほ総合研究所作成 69 (4) 金融市場の変化 ⑤ 資産運用会社のAUM(運用資産額)は増加 ◯ ブラック・ロック、ステート・ストリート、ピムコ(アリアンツ傘下の資産運用会社)等の大手資産運用会社のAUM(運用資産 額)は増加 【 ブラック・ロック、ステート・ストリート、アリアンツのAUMの推移 】 (兆ドル) 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 2007 08 09 10 11 12 13 14(年) (資料) 各社決算資料より、みずほ総合研究所作成 70 (4) 金融市場の変化 ⑥ 欧米の民間証券化市場はいまだ回復ならず ◯ 先般の金融危機やバーゼル2.5をはじめとする危機後の証券化商品に対する規制強化により、民間証券化市場は低迷 ・ 簡素で透明性が高く、比較可能な証券化商品については、資本賦課の軽減に向けた規制見直しの動きあり 【 欧米の民間証券化商品発行額 】 (兆ドル) 3.0 その他 CDO ABS 【 証券化商品に対する規制 】 MBS 2.5 バーゼル2.5 トレーディング勘定の証券化商 品につき原則銀行勘定と同様 の取扱いを適用 (2009年7月に公表) 証券化商品の 資本賦課枠組 みの見直し バーゼルⅢの一環として、銀行 勘定の証券化商品への資本賦 課を強化 (2014年12月に最終規則公表) リスクリテン ション規制 証券化商品発行者等に対する 安易な組成を防止するための 規制 (米国では2014年10月に最終 ルール公表) 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 00 02 04 06 08 (資料) SIFMA、AFMEより、みずほ総合研究所作成 10 12 14 (年) (資料) みずほ総合研究所作成 71 (4) 金融市場の変化 ◯ ⑦ 米国における機関投資家向けMMFの動向 米国では、SECによるMMF規制改革(2014年7月に最終ルール公表、2年間の移行期間あり)により、機関投資家向けプ ライムMMFからガバメントMMFに資金がシフトする動きもみられる 【 米国SECによるMMF規制改革の対象 】 【 米国における機関投資家向けMMFの種類別割合の推移 】 (%) 56 機関投資家 向け 個人投資家 向け MMF規制改革 最終ルール公表 54 ガバメント MMF 52 50 機関投資家向けプライムMMF 46 現金、国債、国債等を担保とするレポ 等に99.5%以上を投資するMMF 資金がシフト 48 MMF規制改革の対象外 機関投資家向けガバメントMMF 44 42 40 2013 プライム MMF 2014 2015 (注) 機関投資家向けの各MMFのTNA(Total Net Asset)に占めるシェア。 (資料) ICIより、みずほ総合研究所作成 2016(年) • 固定NAV (1口=1ドル) から変動NAV への変更 • 流動性手数料 (解約手数料) の導入 • ゲート条項(解 約の一時停止) の導入 (資料) みずほ総合研究所作成 72 (※) 本資料は、みずほ総合研究所調査本部が作成した。 〔本資料に関する問い合わせ先〕 みずほ総合研究所 調査本部 金融調査部 主任研究員 佐原 雄次郎 03-3591-1417 [email protected] 本資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、取引の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、弊社が 信頼に足り且つ正確であると判断した情報に基づき作成されておりますが、弊社はその正確性・確実性を保証するものではあ りません。本資料のご利用に際しては、ご自身の判断にてなされますようお願い申し上げます。 73
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