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抄録
醍上達吏採油 VO」.12
TBM用カッタの概要
宇津木 薫*
Kaoru Utsugi
1.はじめに
九州支店八幡出張所において使用されたトンネル
ボーリングマシン(以下TBMと称する.)のカッタ
に関して気付いた点,重要と思われた点について報
告するものである.工事内容は,管渠延長625mのう
チップインサート型
ち硬岩部340m,中硬岩部22m,軟岩部250m,マサ土
13mより構成される断面で,岩質は平尾花崗閃緑岩
と呼ばれる均質な花崗岩層を有する下水道工事であ
る.硬岩部の一軸圧縮強度は,2000kgf/畑に達する
ものがあった.使用されたTBMをFig.1に示す.
2.カッタ概要
2−1 センターカッタ
TBM中心附近に二取り付けられた2個のカッタを
指し,芯抜きの部分に相当する.今回は,Fig.2の
チップインサート型を使用したが,別途実験におい
て,その刃形を右の様に改造したものと掘削比較を
行った.その結果,その切削性は改造型の方が良か
った.しかし,その刃は鋭利なために超硬チップを
改 造 型
挿入できず,耐摩耗性が問題となるので硬岩には向
Fig.2 センターカッタ
岩患部カッターディスク
インナーカッタ
スライドスクレーパー
Fig.1TBM構造図
■機材部平塚製作所
1る1
抄毒手
西松建設妓謀∨OL12
かないと判断された.また,同実験において気付い
最小限にする目的でチップインサート型が重視され
た点は,刃のピッチが60mmでは渦状に削れ,岩破壊
たが,結果的には逆効果であった.チップを刃に埋
が起こりにく く刃の根附近まで岩が残る(Photo
め込むには,その周辺の肉厚をある程度厚くとり,
l).このことは,刃の摩耗促進及び切削速度低下へ
チップを支持する力がなければならず,このため刃
の要因となる.従って,この種のセンターカッタを
先の形状が必然的に鈍角となる(Fig.3左).この形
硬岩部へ使用する場合は,刃先をチップインサート
状が硬岩に全く適用しない結果となり,次に採用し
型とし,その先端形状は900程度にとり,刃のピッチ
たのが岩の庄壊を目的とした刃形で,摩耗しても刃
を小さく取る程刃先間の岩の削り残しをおさえ,一
自体が交換できる焼バメリング型のものである
定した切削速度が得られると予想される.但し,カ
(Fig.3右).また,刃自体の材質は,SNCM439と
ッタフェース中心部に取り付けるカッタには,この
SKD−11を使用した結果,SKD−11の方が耐摩耗性
他にも何種類かあるのでその選定には十分な検討が
に優れ,寿命が長いことがわかった.カッタ本体に
必要である.
関しては,スラスト荷重を受けるボールベアリング
の許容荷量が低く,その構造に疑問が持たれた.ベ
アリングの摩耗が本体ガタを生じさせ,オイルシー
ルの当たり面を劣化させる.次に泥水がベアリング
部に流入し,封入された極圧性グリスを洗い流す.
潤滑材が無くなるとベアリングの摩耗が急速に進行
し,本体ガタがより大きくなり,レース面を傷つけ
修理不能にする.以上のような難点はあったが,刃
については硬岩を圧壊し得る.規バメリング型でど
うにか掘進できたと評価している.
2−3 ゲージカッタ
最外周部掘削を目的としたカッタを,ゲージカッ
タと称し,当初Fig.4左のチップインサート型を4
Photolセンターカッタ切削実験
個取り付けたが,前述のインナーカッタと同じ理由
(改造型)
により硬岩掘削ができず,Fig.4右の焼バメリング
2−2 インナーカッタ
型に変更した結果,掘削できる様になった.F噛.4
前述したセンターカッタと外周のカッタ以外のカ
で両方を比較すると,一個の本体につく刃の数が違
ッタをインナーカッタと称し,今回8個を取り付け
うのと本体内部構造が違うのに気付く.刃の数につ
た.その選定には,硬岩部でのカッタの交換頻度を
いては,少ない程刃にかかる荷重が集中し,岩の庄
焼バメリング型
チップインサート型
Fig.3 インナーカッタ
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抄鎖
西転姪話按舐∨O」.12
チップインサート型
焼バメリング型
Fig.4 ゲージカッタ
壊には有利になる.内部構造については,ゲージカ
ッタが最も大きなスラスト荷重を受けるため,ボー
今後とも,これらひとつひとつの要素に対し,研究
を行っていかなければならない.
ルベアリングは適さず,ローラベアリングの方が寿
命が長く適している.この他にもディスクカッタに
は,メーカーによりテーパロ
ーラベアリングを相向
かいに使用するものもある.また、耐水構造に関し
ては,オイルシールによるものとフローティングシ
ールによるものとがあるが,オイルシールのものは
泥水の流人が速く,良くない結果となった.
ゲージカッタで最も注意すべきことは,刃の向き
(取付角度)で,今回は300とトンネル軸方向に向け過
ぎたために刃のみならず,本体の側面摩耗を引き起
こす結果となった.このため,トンネルの側面から
刃をなるべく立て,その内側になる刃とのピッチを
小さく取ることにより,刃の負荷荷重を小さくする
事が重要である.
3.まとめ
以上述べたように,TBMのカッタ構造は非常に
複雑な意味を持っており,硬岩掘削においてはどの
ひとつのカッタが不良であっても,掘削できなくな
る性質を持つ.従って,ディスクカッタの選択に当
たっては,本体のサイズ・構造・刃の材質・刃の形
状,またその取付けに当たっては,取付方法・刃の
ピッチ・刃の取付角度の全ての条件が満足するもの
でなければならず,十分な検討を要する.いずれに
してもTBMは,カッタが重要視されるべきであ
る.
日本におけるTBMの施工実績は非常に少なく,
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