学長式辞 - 日本福祉大学

2016年度日本福祉大学入学式
式辞
新入生の皆さん、入学おめでとうございます。心より皆さんを歓迎します。ご両親、保護者の皆さま、
そしてお忙しい中をご臨席くださいました来賓の皆さま、ありがとうございます。
本日、私が皆さんにお話ししたいことは6つあります。少し長くなるので、パワーポイントも使います。
第1に、日本福祉大学の原点についてお話しします。本学の原点・前身は今から63年前の1953年
に創立された中部社会事業短期大学で、それが4年後の1957年に日本福祉大学に変わり、そのときに
日本で最初の社会福祉学部を開設しました。中部社会事業短期大学が創立された当時の日本はまだ非常に
貧しい国でした。皆さんは、昨年の紅白歌合戦で美輪明宏さんが歌った「ヨイトマケの唄」を聞かれまし
たか?♪父ちゃんのためなら、エンヤコーラー♪で始まるこの歌は、当時ヨイトマケとさげすまれていた
日雇い労働者の誇りと尊厳、母と子の絆の大事さを高らかに歌い上げた、心にしみる唄です。そして、こ
の歌の舞台は、日本福祉大学が創立された1950年代前半だったのです。
本学の創立者で初代学長の鈴木修学先生は、ハンセン病者や戦災孤児など、社会的に一番弱い立場にあ
る人びとの救済と幸せを願ってさまざまな福祉活動を行われる中で、大学教育で福祉の専門職を養成する
ことを決意され、本学を設立されました。鈴木先生の人となりとご業績は、日本福祉大学後援会から本日
皆さんにプレゼントされた本『日本の福祉を築いたお坊さん』(星野貞一郎著。中央法規)に詳しく書か
れているので、ぜひ読んで下さい。
第2にお話ししたいことは、福祉の単科大学として設立された日本福祉大学が、その後63年の間に、
名古屋市と知多半島で少しずつキャンパスと学部を増やし、現在では、4キャンパス7学部4大学院研究
科を持つ、「ふくしの総合大学」に成長してきたことです。来年2017年度には第8の学部として「ス
ポーツ科学部」(仮称・設置認可申請中)も開設する予定です。
ここで、福祉を漢字ではなく、平仮名で表していることに注意してください。実は漢字の福祉は、「福」
も「祉」も、もともとは「しあわせ」という意味を持っています。しかし、漢字で福祉と書くと、貧しい
人々や社会で弱い立場にある人々のみを対象にしていると誤解されがちです。これが福祉の原点・中核で
あることは現在も変わりませんが、本学が創立されてから63年の間に、福祉の意味・対象・範囲は大き
く拡大し、現在ではすべての人々のしあわせを目ざす活動を意味するようにもなっています。本学の教育
標語、「万人の福祉のために、真実と慈愛と献身を」も、同じことを意味しています。そこで、本学は、
このような広い意味での福祉、福祉の広がりを強調するために、平仮名で「ふくし」と表現しています。
皆さんには、どの学部、どの学科に入学したかにかかわりなく、この広い意味での「ふくし」の精神と知
識と技術を身につけていただきたいと思っています。
第3に、本学は、文部科学省が助成する「地(知)の拠点整備事業(COC:Center of Community)」に
採択され、昨年度から「ふくし・マイスター」の養成を始めていることについてお話しします。COCと
は大学が地域再生・活性化の拠点となることを目的とした事業です。その重要な柱として、入学者全員、
つまり皆さんを対象にして、各学部の演習(ゼミなど)で「ふくしコミュニティプログラム」を行うと共
に、1~3年次に各学部と全学教育センターの地域志向科目を開講します。これらの科目を10科目20
単位以上履修した学生に、卒業時に「ふくし・マイスター」の修了証を授与します。できるだけ多くの皆
さんがこの資格を取得されることを期待します。なお、この「ふくし・マイスター」については、入学後
のオリエンテーションで詳しい説明があります。
第4にお話ししたいことは、1985年1月28日、今から31
年前に、長野県犀川のダム湖で起き
たスキーバス事故のことです。学生22人、引率の教員1人、バス乗務員2人、合計25人もの尊い命を
奪ったこの事故は、現在に至るまで、日本国内の大学で起こった最大・最悪の事故です。皆さんと同じ年
代で、この世を去らなければならなかった無念は、いかばかりかであったと思います。残されたご遺族の
哀しみは、31年経った今も癒えることはありません。私たちはこの事故を決して忘れないために、毎年
事故のあった1月28日に慰霊祭を開くと共に、10月(今年は20日)に「安全の日」を設けて、さま
ざまな啓発活動を行っています。新入生の皆さんが、それらに積極的に参加することを期待します。
第5にお話したいことは、昨年、選挙権年齢が20歳から18歳に変わり、皆さんがそれを最初に行使
することです。具体的には7月に予定されている参議院議員選挙においてです。選挙権の行使は、憲法に
保障された国民の最も基本的な権利の1つであり、自分の頭でしっかり考えて、必ず投票して頂きたいと
思います。そのための助言が2つあります。1つは、毎日、新聞の政治・経済、社会面をシッカリ、最低
限30分はかけて読むことです。もう1つは、各学部で開講している、憲法、法、政治、社会等について
の「教養科目」を履修することです。講義科目名は、各学部で異なるので、入学後のオリエンテーション
で説明します。
第6、最後に、入学後は、講義・ゼミでしっかり学ぶと共に、サークル活動やさまざまなフィールド活
動、ボランティア活動にも積極的に参加し、豊かな学生生活を送っていただきたいと思います。新入生の
皆さんは、本日、大学に入学して環境が大きく変わります。新しい集団や地域に入っていくことには期待
だけでなく、不安もあると思います。これからの大学生活には、うれしいことだけでなく、大変なこと、
苦しいこともあるでしょう。そんな時には、迷うことなく、周りの人びとに相談してください。講義やゼ
ミ、サークル活動やボランティア活動で知り合った仲間は、皆さんの大きな支えになると思います。もち
ろん、教職員にも遠慮なく相談してください。
ボランティア活動で特にお薦めしたいのが、東日本大震災の被災者支援のボランティア活動です。日本
福祉大学は、5年前の大震災直後に「災害ボランティアセンター」を立ち上げ、教職員・学生が一体とな
って、支援活動を続けてきました。皆さんもご承知の通り、被災地の復興は遅れ、依然として18万人も
の人々が避難生活を続けています。そのため、私たちは今後も長期間支援活動を続けます。新入生の皆さ
んが積極的に参加されることを期待しています。
日本福祉大学の7学部がある知多半島は、自然も、産業も、そして人間関係・人情もゆたかな土地柄で
す。美浜キャンパスのある知多半島南部は農業・水産業が活発で、風光明媚な地域です。半田キャンパス
のある知多半島中部は、歴史・文化・観光資源の厚みのある地域です。東海キャンパスのある知多半島北
部は、工業等の分厚い産業集積に加えて、近年東海キャンパスのある太田川駅前を中心にして文化都市へ
と変貌しつつあります。さらに、知多半島全体は、社会福祉法人やNPO法人による活発な福祉活動で全
国的にも有名です。一説によると、知多半島は日本で一番「元気のある」半島とも言われています。この
知多半島を舞台にして、皆さんが今後4年間、平仮名の「ふくし」について総合的に学び、立派な社会人
になることを期待して、式辞といたします。
最後にもう一度、入学おめでとうございます。
2016年4月1日
日本福祉大学学長
二木
立