参考図書: 発生生物学I/発生生物学II

参考図書: 発生生物学I/発生生物学II
以下の教科書は、現在入手できる発生生物学の代表的な教科書である。これらのうちの一部を発生生物学I と
発生生物学II の授業内容を編成するのに参考にしたが、必ずしも受講者に購入を求めるものではない。ただし、
膨大な情報から帰納された発生生物学の基礎的概念を、講義のみから十分(あるいは最低限)理解するためには、
受講者の自習は必須であって、そのための参考書として推薦するものである。
1.Gilberrt, S. F. (監訳)阿形清和、高橋淑子 『ギルバート発生生物学 10版』2015. メディカル・サイエ
ンス・インターナショナル、¥10,800.
生物系学部学生向けの発生生物学のスタンダードな教科書であり、世界で広く利用されている。発生生物
学の全般にわたって、分子、細胞、組織などの各レベルからていねいに記述されている。今回の改訂で、「幹
細胞」、「システムズバイオロジー」などの新しい用語が4つのパートの見出しに取入れられ、内容もかな
り改められた。フルカラーの多数の図版や各セクションの内容と関連した最新のトピックスなど、理解を助
け興味を引付けるよう工夫されている。この本を購入すると専用ホームページにアクセスでき、多くの関連
情報を入手することができる。私が担当する発生生物学I と発生生物学IIの参考図書として、第一に推薦する。
【英語版】Gilbert, S. F. Developmental Biology, 10th Ed. 2011. Sinauer Associates, Inc., Sunderland,
Ma. ∼¥7,000.
2.Wolpert, L., Tickle, C., Laurence, P., Myerovitz, E., Robertson, E. and Jessel, T.(訳)武田洋幸、田
村宏治「ウォルパート発生生物学 4 版」2012.メディカル・サイエンス・インターナショナル、10,260
円
1998 年に出た初版は、出版早々発生学の最も優れた教科書の一つと評価された。L. Wolpert は形態形
成に関する先駆的数理モデルを提唱した理論生物学者でもあり、この本の中にもその特徴が反映されている。
第3版と比較して大きな変更はないが、部分的に新しい情報が図版とともに付け加わった。これまで版と同
様に、動植物の発生全般に渡ってバランス良く、また読みやすく記述されている。適切で美しいフルカラー
の図は、出版社のWeb サイトからすべてがJPEG ファイルとして入手できる。授業内容の解説のために、
図版の多くをこの教科書から得た。上記「ウォルパート発生生物学」に次いで推薦する。
【英語版】Wolpert, L., Tickle, C., Laurence, P., Myerovitz, E., Robertson, E. and Jessel, T. Principles of
Development, 4th Ed. 2011. Oxford Univ. Press, Oxford-New York-Tokyo. ∼¥5,000.
3.東中川徹、西駕英俊、八杉貞雄(編集)「ベーシックマスター発生生物学」オーム社、2008年、¥3,990
名前の通り発生生物学の入門的教科書。生物発生の基本的パターンと原理について発生の進行に沿って解
説されていて理解しやすい。進化、生態、クローン生物や人の病気などについても、発生生物学の視点から
解説されていて興味深く学ぶことができる。自習用の教科書として推薦する。
4.村井耕二「発生生物学」化学同人、2008年、¥3,150
基礎生物学テキストシリーズの1冊。前半のかなりのページを使って、生物発生の基礎となる分子生物学
や細胞学の知識を解説している。反面、発生の基本的パターンやその調節などの記載がやや不十分。植物の
発生の比重が他の教科書より大きいのが特徴。図は殆ど模式図で写真はほとんどなく、本文の横に用語解説
があるのは親切だが、文章は全般に平易とは言いがたい。
5. Slack. J. (訳)大隅典子「エッセンシャル発生生物学、第2版」羊土社、2007年、¥5,985.
2005 年出版の英語版の翻訳。動物発生の全体にわたって重要なイベントや概念がカバーされているが、植物
発生は含まない。全般に丁寧な叙述であるが、訳者が「なるべくわかりやすい日本語で書き表すことを一番
念頭において」いるにもかかわらず、必ずしも平易とは言い難い。図版は殆ど模式図で、写真がごく一部な
のは残念。
6. Wilt FH and Hake SHC. (訳)赤坂甲治、大隅典子、八杉貞雄 「ウィルト発生生物学」東京化学同人、2006.
¥5,460.
2003年度出版の「Principles of Developmental Biology」の訳本。動植物の発生を、幅広く分子や細胞
のレベルで解説しているが、進歩の速いこの分野の教科書としてはやや古い。
7.Lewis Wolpert (訳)大内葦淑代、野地澄晴 「発生生物学̶生物はどのように形作られるか」 丸善出版、
2011、¥1,080
生物の発生のエッセンスを短く、興味深くまとめた新書判の読み物。教科書としては物足りないが、発生
の重要なポイントを知ることができる。