発生工学の歴史

発生工学とは
•
発生工学とは、胚培養および胚移植の技術を基礎とし
て生まれたバイオテクノロジーの一分野で、動物、特に
哺乳動物の生殖の過程を人工的に制御して、生殖の仕
組みを解明するとともに、動物資源のより効率的な活用
や新しい有用動物の作出を目指す応用動物科学である。
• 動物生殖の知識を基礎とするが、技術面での応用を図
ることが主要な目的となる。
• 哺乳動物の初期胚に対して操作を行うことが多く、遺伝
子工学、細胞工学などの用語と対応させて発生工学とい
う造語が作られたようである。
発生工学の歴史
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発生工学
1984年、「発生工学」という言葉を使った書籍が
初めて刊行された。
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【新語】
• 発生工学 (日本で作られた造語)
Developmental Biotechnology
Developmental Biology (発生生物学)
Animal Biotechnology
Embryo-Biotechnology(欧米での例)
• 関連用語
Reproductive Engineering(生殖工学)
Stem cell technology(幹細胞工学)
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発生生物学の始まり
発生生物学の始まり
ヒポクラテス (BC460-377)
古代ギリシャの医者
「医学の父」
ウィリアム・ハーヴィー (1578-1657)
卵原説 『動物発生論叢』(1651)
「すべての生命は卵子から (Ex ovo omnia)」
アントニ・ファン・レーウェンフック (1632-1723)
顕微鏡ではじめて精子を観察
精原説 (1677)
「精子こそが生命の根源である」
アリストテレス (BC384-322)
古代ギリシャの哲学者
「動物誌」 「動物部分論」
「動物発生論」
頭足類の観察・鶏の孵化実験
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発生生物学の始まり
前成説
生命の形はあらかじめ完全な形で形成されている。
マルピーギ(卵原説)
ハルトゼーガー(精原説・ホムンクルス)
後成説
各器官は発生の初めから存在するのではない。
アリストテレス(概念を提示)
ハーベー(後成説を提唱する 1651)
ウォルフ(ニワトリの発生で証明 1759)
17世紀ごろは、精子の中には、小人(ホムン
クルス)が入っており、それが大きくなって子
供になるという考え方(前成説)があった。
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発生生物学の始まり
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発生工学の歴史
1951 受精能獲得現象を発見 (Chan・Austin)
ウィルヘルム・ルー Wilhelm Roux
(1850-1924) ドイツの発生学者。
実験発生学的な手法を初めて使用。
ハンス・シュペーマン Hans Spemann
(1869-1941) ドイツの発生学者
ハイドル・マンゴールドと共に分化誘導
因子(形成体)を発見
1952 ヒョウガエルの核移植に成功
(Briggs・King)
1954 ウサギで体外受精がはじめて成功(Thibault)
1971 マウスの体外受精に成功(国内初)
(1970~1990 体外受精の研究が進展)
1978 英で体外受精児誕生(Edwards)
1981 マウス胚から多能性幹細胞(ES細胞)樹立
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発生工学の歴史
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発生工学の歴史
1983 日本初の体外受精児誕生(東北大)
米のMcGrathとSolterがマウス初期胚を
使った核移植法を確立
1986 英のWilladesenが初期胚の核を未受精卵
に移植し子羊が誕生
顕微授精でウサギの出産に成功。世界初(京大)
1990 農水省畜産試験場などで日本初の受精卵
クローンウシが誕生
顕微授精によるウシの産子
(Kaufman・Evans)
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1991 始原生殖細胞由来の多能性幹細胞(EG細
胞)が樹立される (東北大・松居)
1997 英ロスリン研究所で体細胞の核移植により
ドリーが誕生 (Wilmut)
1998 全農が培養胚細胞からのクローンウシ作製
英ロスリン研究所が遺伝子導入羊ポリーを
作製
米国でクローンマウスの作出に成功
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発生工学の歴史
発生工学の歴史
2000 英国の企業と農水省畜試がクローンブタの作出
に成功
再生医療への取り組みが本格化
2003 ES細胞からの精子・卵子分化が初めて報告
2004 ヒトクローン胚からのES細胞作成(韓国)
単為発生マウス「かぐや」の誕生
(東京農大)
2005 韓国のヒトES細胞の論文捏造問題
2007 人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立
(京都大 他)
2010
2011
2012
2014
体外受精の成功でEdwards氏がノーベル賞受賞
iPS細胞に由来する精子を体内で分化誘導に成功
iPS細胞の発見で山中氏がノーベル賞受賞
iPS細胞の臨床応用が始まる。
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分野
発生生物学
実験発生学
発生工学
解明された発生の
自然状態での
仕組みやその手段を
細胞の分化を中心
動物の発生過
利用して、研究や他
とした発生過程にお
目的 程の観察と、そ
の科学領域および産
ける遺伝子発現と
の仕組みの解
業などが必要とする
調節機構の解明
個体や系統を作り出
明
す。
組織化学
遺伝学
方法
生理学
生化学
実験発生学的手法
動物生殖学
生理学・生化学
分子遺伝学
組織培養工学 16
畜産学
(家畜の改良増殖の促進)
実験動物学
発生工学
野生動物学
(絶滅危惧種の救済)
(新しい実験
動物の作出)
幹細胞工学
生殖医学
(生殖補助技術への貢献)
動物発生学
(細胞の分化
過程の解明)
再生医学
(臓器再生への応用)
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