「建築構法」 1回目の授業 住宅構造の変遷 平成27年4月13日(月) 今岡 克也 住宅とは? • 「生活の器」:人が生活するための空間 快適(健康・省エネ),安心・安全,接客,外観‥ ‥ • 「住む人を表現するもの」: 住宅は住人の考え方・裕福さ・家族などを表現 • 「時代と文化を映す鏡」: ① 気候や風土,災害などの自然条件 ② 生活する場(ケ)と接客の場(晴れ) ③ 技術の進展(最新)や社会の規制(合理性) 3つの時代区分 (1)弥生時代から江戸時代まで 竪穴式→高床式→寝殿造 →書院造→農家造→町屋造 (2)明治から昭和にかけて 延焼の防止,水道・電気・ガスの普及 (3)平成から現在 耐震壁や接合金物,工法の合理化 環濠集落と竪穴式住宅 前3世紀~2世紀頃 住宅跡 環濠 約 120 m 横浜市 大塚遺跡 115棟の竪穴式住宅 環濠集落の立地条件 • 湿気を避けた乾燥した場所 • 日当りの良い高い丘の上 • 排水性が良い土の上 ・周囲に溝である濠を巡らせる およそ120m×170m 竪穴式住居の遺跡の例 地面から80cmほど掘り下げて 柱の根本を地中に埋める(掘立柱) 竪穴式住宅の軸組構造 けた 桁 むねぎ たるき 棟木 垂木 梁 柱に桁を取り付け 梁をかけて, 縄などで固定 垂木を放射状に架け 棟木を3本材で支える 竪穴式住宅の復元例 垂木の上に藁や茅を葺く 竪穴式住宅のゾーニング 家族4~5人、ネマには地面に板や藁を敷く 竪穴式住宅の生活(想像) 炉の周りにムシロを引いて座る 竪穴式住宅の特徴 ① 約 80cm 掘り下げて柱を地中に埋める ② 丸太で柱と桁や梁を組み縄で固定 ③ 垂木を放射状に掛け,藁や茅を葺く ④ 炉やカマドが中央やや奥にある ⑤ 床は土間で,寝間には板や藁を敷く 軸組の拡張 桁行方向 桁 梁間方向 桁行方向に拡張させて,大きくする 高床住宅の絵 身分の高い人は 高い床を持つ住宅 家屋文鏡 4世紀頃 (古墳時代) 高床式住宅の構造 梁に柱のほぞ を挿す頭貫 柱に梁のほぞ を挿す貫構造 4世紀頃 高床式住居の復元例 三内丸山遺跡(青森市) 奈良時代の貴族の住宅の例 長屋王(684~729)邸の復元模型 も や ひさし 母屋と庇 1.82 m 3.64 m 1.82 m 梁間 桁行 母屋の外周部に 1間(1.82 m)幅の 庇(広縁)を造る 母屋の梁間を2間 (3.64 m)にすれば 桁行は拡張が可能 寝殿造の例(京都御所) 蔀 母屋 庇 平安時代の藤原北家の邸 母屋 庇 (広縁) 「年中行事絵巻」より 寝殿造の復元例 南側 の庭 庇 (広縁) 平城京 左京 三条二坊 寝殿造の特徴 ① 礎石の上に掘立ての丸い柱 ② 板敷きの床で,人が座る場所に畳 ③ 屋根裏には天井を張らない ④ 開放的な大空間 →多目的に利用 ⑤ 南側に庭園を造り広縁と一体化 慈照寺(銀閣寺)内の東求堂 1490年頃 角柱 書院造の例 なげし 長押 ちがいだな 違棚 つけしょいん 付書院 畳 1500年頃 銀閣寺の東求堂の同仁斎 天井 東求堂の平面図 1500年頃 書院造の特徴 ① 柱は正方形(角柱),梁は長方形 ② 畳敷きの床(間取りの基準化) ③ 水平な板で天井を張る ④ 襖や引違戸で部屋を仕切る ⑤ 床の間に付書院と違棚 現在の書院造:座敷 なげし 長押 つけしょいん 付書院 床の間 ちがいだな 違棚 床柱 戸建住宅の技術史 26 江戸初期の農家造の住宅例 大黒柱 上層農家の住宅例(江戸中期) 書院造 農家造の構造と平面 住宅の中央に 大黒柱等を設ける 変形田の字型平面 小黒柱 田の字型平面 大黒柱 農家造の特徴 ① 屋根が茅葺や板葺が多い ② 東側に土間があり,厩(うまや)を兼ねる ③ 田の字型の平面で,西端には床がある ④ 南側には縁側があり,北側にはない ⑤ 土間の北側に流しやかまどがある 今も残る農家型住宅の例 屋根は茅葺き,台所は土間 江戸時代の大火防止対策 ・ 明暦の大火: 1657年3月2日~3日 江戸の大半を焼失,死者約10万人 江戸城天守閣も焼失 <大火防止対策> ①火除地や広小路の設置 ②火消組や木戸番制度の設置 ③土蔵造や瓦葺屋根の奨励 屋根を板葺きや茅葺きから(桟瓦1674年~) 本瓦 と桟瓦 明治初期の都市住宅の例 モースが紹介した住宅 34 明治中期の都会の賃貸住宅 1890年(明治23年)建築 約130㎡ 夏目漱石の借家 ・瓦葺きの寄棟屋根 ・土間がなくなる ・座敷が南で茶の間は北 35 ・台所は玄関に近い 明治の都市住宅の特徴 ① 屋根が瓦葺き ② 南側に縁側と客間がある ③ 2階は狭く,子供部屋などに利用 ④ 台所が玄関に近い ← 水道の未発達 ⑤ 便所が離れた場所にある ←汲取り式 明治末期のアメリカ式住宅 大正の洋風住宅 北米の2×4の 壁式住宅を輸入 大正の住宅改善運動 ① 洋間としてイス座とする ② 家族の生活を最優先とする ③ 実用的な設備を導入する ④ 実用的な家具とする ⑤ 田園都市や共同住宅を奨励する 電灯とガスの普及率 電灯の 普及 ガス炊飯釜 ガス焚き の特許 風呂釜の販売 薪から プロパンガスへ 関東大震災 上水道の普及率 井戸水から 水道水へ ガスや水道の普及で台所は変化 薪からプロパンガスへ 42 井戸から水道へ 汲取式から水洗式便所へ 臭気が入るため 屋外に設置 戸建住宅の技術史 43 S字トラップの発明 中廊下型住宅の例 昭和初期 西側に玄関,南面に縁側と座敷と茶の間 戸建住宅の技術史 44 中廊下型住宅の特徴 ① 南側に居間と広縁などを配置する ② 他の部屋を通らずに移動できる ③ 応接として洋間を設ける ④ 台所・風呂・便所などを北側にする 中廊下型住宅の例(昭和初期) ・2階建て,東側に玄関 ・南面に居間や客間 玄関ホール型の分譲住宅(昭和) 北側に玄関 平成からの木造軸組住宅(1) ① 床下の湿気防止:柱脚や土台の腐朽防止 ・べた基礎にして換気口を設ける ・布基礎にして防湿フィルムで覆う ② 屋根の軽量化 → 化粧スレート屋根等 ③ 木材の加工は,プレカット工場で機械化 ④ 接合部の金物補強 平成からの木造軸組住宅(2) ⑤ 耐震基準の強化 → 4分割法で確認 ・耐震壁をバランス良く配置させる ⑥ 施工性の向上 → 2階床の根太をなくす ・25mm以上の合板を釘打ちして床を作成 ⑦ 四隅通し柱から全て管柱へ → 耐震性と施工性を向上させ べた基礎 アンカーボルト 化粧スレート葺き屋根 プレカットによる接合部の加工 大入れ蟻掛け 柱のほぞ穴 羽子板ボルト 用の穴 柱頭のほぞ 管柱と梁 梁(集成材) 2階の根太レス床と梁の接合部 羽子板ボルト 筋交いの壁倍率 たすき掛け (倍率4) 片筋交い (倍率2) 内壁と天井 の石膏ボード (2階) 内壁:t=12mm 不燃材料 天井:t=9.5mm 準不燃材料
© Copyright 2025 ExpyDoc