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四足ロボットの生物規範型不整地適応動歩行
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視覚による CPG 入力の調整による段差乗り越え (電気通信大学)
○中村浩之
木村浩
Biologically Inspired Adaptive Dynamic Walking on Irregular Terrain of the Quadruped Robot
-Walking over a step by the adjustment of the CPG input by the vision(University of Electro-Communications)
*Hiroyuki NAKAMURA :
Hiroshi KIMURA :
In order to realize a stable walking adaptive to an irregular terrain, visual information is indispensable. We introduced a vision for the biologically inspired walking control of a quadruped robot. In the
method, when irregularities are detected ahead by the vision, CPG input is adjusted to change the walking
pattern. Experiment of walking over a step has shown the eectiveness of the method.
Abstract|
Key Words:
1.
Biologically Inspired Walking, Quadruped Robot, Central Pattern Generator, Vision
はじめに
従来の脚式ロボットの多くは,ロボットと環境との厳
密なモデルを構築し,これを解析した結果を用いてロ
ボットの関節軌道を生成し,歩行を実現していた.しか
し,今後,ロボットが高速に,しかも様々な場所を移動
するには,モデル構築と解析を行って軌道を生成し制御
するような方法は,非効率かつ適応性に乏しいものと考
えられる.
これに対して,多くの動物の運動はその体内に張り巡
らされた神経系によって制御されていることは広く知ら
れた事実であり,さらに自然環境の中で観察するだけで
も実に柔軟に路面環境に適応していることがわかる.
そこで,生物における様々な知見に基づいて,自律
的・創発的な歩行を実現しようと研究を進めてきた結
果,神経振動子と伸張反射や屈曲反射などを組み合わせ
た,四足ロボットの不整地での安定な動歩行が実現され
令を送る運動皮質など,それらの間の密接な関係と情報
のやりとりで,視覚情報に基づく CPG への指令信号の
調節が行われていると考えられている. CPG から下降
する信号は,関節まわりの筋肉のリズミカルな活動を生
成する. ここで,より柔軟に段差を乗り越えるために,
簡単な膝関節の調節と, CPG へ発する指令信号を「い
つ」「どれくらい」変化させるかという情報が重要な問
題となってくる.
この視覚情報から CPG への指令信
号をいかにして生成するかという問題について,彦坂 ?)
は,脳と行動の重層性とその調節機構に関して,大脳基
底核が脱抑制と抑制強化により行動の選択を行い,大脳
皮質と大脳基底核間のループにより行動の学習が行われ
るという仮説を提示している.こうした生理学的な知見
を参考に,視覚によって事前に段差あるいは障害物を認
識させ,運動パターンを切り替えることで段差の乗り越
えを行わせる.
た ?) .さらに,前庭感覚や体性感覚に基づき,うねりが
あるような連続的な路面での適応的動歩行も実現された
?) .
visual and
association
cortices
しかし,段差などの不連続な路面での視覚に基づ
く適応的歩行制御などは課題として残されたままであっ
basal
ganglia
た.従って本稿では,生物規範型制御に基づく不連続な
motor
cortex
不整地の歩行を実現するために,視覚の導入と,指令信
vision
cerebellum
thalamus
spinal cord
CPG
号の変更の実験方針について述べる.
視覚による不整地への適応
Drew ?) らにより, Fig.??のように視覚から歩行運動
2.
までの情報の伝達経路を示す生理学的実験に基づいたモ
1 The leg control mechanism of an animal for
adaptive walking.
Fig.
デルが提案されている.すなわち,運動パターンの決定
を担う大脳基底核,筋骨格系からの感覚フィードバック
情報を受けとり運動の微調整を行う小脳,脊髄へ運動指
3.
視覚導入と実験について
311
高さに応じて, Drew 等のモデルに沿ったシステムを構
視覚の導入
視覚の導入の第一段階として東芝製小型 CCD カメラ
築する. 具体的には,各脚の一時的な運動パターン,
をロボットに搭載し (Fig.??), 2 眼によるステレオ計測
段差乗り越えパターン
を用いて前方の不整地認識を行う. ロボット制御の PC
溝を跨ぐパターン
には RT-Linux をインストールし,日立製 IP5000 画像
遊脚を制御し障害物にぶつからないようなパターン
処理ボードを用いて画像処理を行う. 視覚のシステム構
成図を Fig.??(a) に示す.
をあらかじめ複数個用 意しておき (大脳基底核 [basal
ganglia]),視覚から入ってきた情報から u0 の変更を「い
つ」「どれだけ」行えばよいかを判断し (視覚野連合
野 [visual and association cortices]),さらにどの運
動パターンが発生するのか (大脳基底核) というような
機構を構築する. これらは彦坂の仮説にも沿うものと
考えられる. さらに付け加えるなら,膝関節の調節は
小脳 [cerebellum] における運動の微調整と考えられる
Fig.??(b).
このように,視覚のような上位の運動指令系から下位
2 The Quadruped robot.
の筋骨格制御系までの各制御機構を生物規範とし,一様
Fig.
にその神経モデルや学習モデルを用いて制御系全体の整
合性をとる.
RT-Linux on PC
RIF
(Nm,rad)
3.5
Shoulder joint torque (LF)
(B)
IP5000
Shoulder joint torque (RH)
2.5
(C)
U0
CCD
camera
(A)
1.5
CPG
swinging
phase
(D)
Shoulder joint torque (RF)
0.5
supporting
phase
-0.5
Shoulder joint angle (LF)
-1
(a)
(b)
-1.5
3 (a):Conguration of the system. (b):Vision information system's stream.
Fig.
312
-2
0
1
2
3
4
5 (sec)
4 Experiment of getting over the rst step.
おわりに
Fig.
4.
段差歩行の実験について
今回は,視覚を導入し視覚を使ってどのように不連
不整地路面として高さ 20mm,長さ 600mm の段差を
続な不整地に適応させるべきかを述べた. これを実際に
ロボットの経路上に作成し歩行させた結果,パラメータ
ロボットに実装する. また,段差をうまく昇り降りした
の一つである単一駆動入力 u0 を変化させることで段差
の乗り越えに成功した ?) .
はかり,運動の切り換えを視覚情報を基にして学習させ
この実験結果から,段差を乗り越えさせるためには
u0 を変化させればよいということがわかり,これを基
本としてより高い段差では,膝関節角の調整を行うこ
とや,段差を昇るときに起こる一時的な運動パターン
の変化に対する歩行の安定化などを図る.
り,溝に落ちないようにするために着地のタイミングを
これにつ
いて Fig.??から, 7cm 程度の段差を昇るために u0 を
20 倍にし (A),左前脚 (LF) の遊脚のトルクを大きくす
ると (B),トロット歩様においてこれと同期する右後
脚 (RH) のトルク (C) も大きくなってしまうことがわ
かる. これを改善すれば段差の前での無駄な動きをなく
すことになり段差乗り越えがスムーズに行われると考
えられる.Fig.??のグラフの後半は,後脚が段差を昇ら
ずに前脚のみ昇った状態で止まってしまっている. また
Fig.??から,左前脚と位相が逆になる右前脚 (RF) には
トルク (D) の変化はほとんど見られない.
この安定化と同時に,視覚認識した段差までの距離,
る. 学習させるパラメータとしては,段差の高さに対し
てどれくらい u0 を大きくするか等が考えられる.
参考文献
1)
木村,秋山,桜間: 神経振動子を用いた四足ロボットの不
整地動歩行と整地走行,日本ロボット学会誌, Vol.
16,
No. 8, pp. 1138{1145, 1998.
2) 福岡,中村,木村: 生物規範型適応制御による四足ロボッ
トの不整地動歩行,第 26 回知能システムシンポジウム資
料, pp223-238, 1999
3) T.Drew, W.Jiang B.Kably and S.Lavoie: Role of the
motor cortex in the control of visually triggered gait
modications, Can. J. Physiol. Pharmacol. vol. 74,
pp. 426-442, 1996
4) 彦坂 興秀,脳と行動の重層性とその調節機構,計測と制
御, vol. 33, no. 4, pp. 263-267, 1994