9.溶液

9.溶液
NaClの溶解の様子
(分子動力学シミュレーションの動画)
結晶の角や辺に位置して水分子にさらされているイオンは,
内部のイオンよりもゆるく結合している.
(1)水分子の衝突により,結晶から切り離される.(エネルギーが必要)
(2)切り離されたイオンに水分子が取り囲まれる.(エネルギーを放出)
(水和により安定化されている)
(1)の過程に必要なエネルギーが(2)よりも大きいことが多いので,
結晶の溶解は,吸熱反応になることが多い。
MX(固)
M+(aq) + X−(aq) −Q
飽和溶液と溶解度
水にNaClを加えると,最初はすぐ溶解するが加え続けると
溶解に時間がかかるようになり,やがて溶解しなくなる.(飽和溶液)
溶質+ 溶媒
溶解
溶解と結晶化の速度が同じ
溶液
結晶化
平衡に達している
溶解度曲線
固体の溶解度は,温度の上昇とともに
増加するが,物質の構造や温度に
明確な関係性は無い.
NaClの溶解度は,ほとんど温度変化に
依らないが,Ce2(SO4)3は,
温度とともに減少する.グラフには無いが
Ca(OH)2も同じ。
MX(固)
M+(aq) + X−(aq) −Q
ル・シャトリエの原理により,溶解熱が
負の場合は,温度が高くなると反応は
右に進む。(塩が溶解する)
http://www.sciencegeek.net/Chemistry/taters/solubility.htm
浸透圧
溶液
純溶媒
液面を同じにするには
圧力(浸透圧)が必要.
液面に差が出る
海水の場合
24気圧
溶質
純溶媒から溶液側に
溶媒が移動する.
半透膜(溶媒分子は通すが,溶質分子は通さない膜)
(Traubeの人工細胞,セロファン,細胞膜,多孔質ポリマー,卵の半透膜など)
原理
浸透圧(π)は,気体の法則と
よく似た式で表せる.
(ファントホッフの法則)
πV=nRT
π=(n/V)RT
濃度(mol/L)
n=w/M
w:溶質の質量
M:分子量
未知の物質の分子量を
浸透圧から求めること
ができる.
浸透圧の応用
奈良漬け
塩漬けにより,野菜の余分な水分を
外へ排出させる.
生理食塩水
NaClを0.9 w/v%含む食塩水
(水100 mLに 0.9gのNaCl)
酒粕に漬け,塩抜きしながら,酒粕の
旨みとアルコールをしみ込ませていく.
酒粕を何度も替え,この作業を繰り返す.
細胞外液と浸透圧が等しい
梅酒
(い)梅の実の皮が半透膜になり,
浸透圧により,アルコールが実の中へ.
(ろ)アルコールが梅の成分を溶かす.
(は)氷砂糖が少しずつ溶け,濃度が高まる.
(に)梅の成分がアルコールと共に実の外へ
粉末の砂糖は,溶けるのが速すぎて
梅の外部の濃度が最初から高いので
アルコールが実に入らない.
逆浸透法
海水側に浸透圧(24 atm)以上の圧力を
かけると,海水中の水は半透膜を通して
真水側に移動する.
海水の淡水化
超純水の不純物
水道中のトリハロメタンの除去
注射用の無菌純水
工業用超純水
50mプールに溶解している量で比べてみると
水道水
500 ppm
1トンの砂糖
トマトジュースの濃縮
蒸留水
1 ppb
角砂糖
脱アルコールワイン
超純水
1 ppt
耳かき1杯の
砂糖
(水とアルコールを除去した後,
水を加えて濃度を整える)
沸点上昇・凝固点降下
水溶液
水蒸気になる水分子
を
=
「味噌汁は,お湯より熱くなる」
水になる水蒸気
水蒸気
>
蒸気圧が大気圧に等しくなるには
より高い温度が必要.(沸点上昇)
水蒸気になる水分子
水
>
気体  液体(ある体積当たりの分子数は変化なし)
液体  気体(分子の数は,溶液の場合,少なくなる)
=
不揮発性溶質の溶液の蒸気圧は,
溶媒の蒸気圧より常に低い.
水蒸気
100℃
水になる水蒸気
100℃以上にならねば。
0℃
不揮発性溶質の溶液の凝固点は,
溶媒の凝固点より常に低い.
融ける氷
>
凍る水
水溶液
融ける氷
を
=
「アイスクリームは,0℃以下でしか凍らない」
道路の凍結防止剤(塩化カルシウム)
コオリウオ
不凍タンパク質
(赤くない血液を持つ南極の魚)
水
>
温度が低くなると,液体から固体になる分子の数が減る.
(凝固点降下)
凍る水
=
液体  固体(ある体積当たりの分子数は変化なし)
固体  液体(分子の数は,溶液の場合,少なくなる)
にするには?
にするには?
0℃以下にならねば。
コロイドの分類
疎水コロイド
同種の電荷をもつコロイド粒子が
互いに反発し合って,水に分散している.
正に帯電
負に帯電
水酸化鉄(III)
粘土,硫黄,金,銀
粒子が溶液中に微量に
存在する陽イオン
または陰イオンを
吸着するために帯電する.
少量の電解質を加えると凝集して沈殿する(凝析)
濁り水+ミョウバン KAl(SO4)2・12H2O
澄んだ水
親水コロイド
コロイド粒子の周囲に水分子が水和して
互いにくっつき難くなるため,分散している.
デンプン水溶液,タンパク質水溶液,石鹸水
多量の電解質を加えると凝集して沈殿する(塩析)
豆乳+MgCl2(にがり)または CaSO4
保護コロイド
疎水コロイドに親水コロイドを十分加えると,
疎水コロイド粒子を覆い,凝析しにくくなる.
豆腐
物質
保護コロイド
墨汁
にかわ
牛乳
カゼイン
マヨネーズ
卵黄
インク
アラビアゴム
電気二重層
滑り面
金ナノ粒子の表面に吸着した HAuCl4 からH+が
解離してAuCl4−となり負に帯電している.
水酸化鉄(III)では,
OH−が解離するため正に帯電している.
(H+またはFe3+を吸着しているという説もある)
+ +
+
− +
+ − −
+ − − +
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+ +
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+ − −
+ − − +
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+ +
+
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+
− +
+ − −
分散
+ − − +
+
+
+
荷電の中和
荷電
電荷の反発のためvan der Waals力が
働く距離まで近づけない。
凝集