ニュースレター No.8 [PDFファイル/3.53MB]

浪江町の新しい水産業デザイン実現化事業
ニュースレター No.8
平成 27 年 7 月
(1)請戸漁港復旧状況
2015 年 6 月 11 日、請戸漁港に行った際の復旧工事の進捗をご報告します。荷捌
き場前の岸壁は矢板が打ち込まれ、岸壁エプロンの修復が進んでいました。また岸
壁の嵩上げも着々と進んでいました。早期の復旧を心待ちにしています。
荷捌き場前の矢板:岸壁は約 1 メートル前に出るようです。
岸壁の嵩上げ状況:約 60 センチほど
(2)築地荷受け調査結果
6 月 18 日請戸の柴栄水産の鮮魚・活魚を扱っていた築地の荷受け(大卸し)である東
都水産(株)、シラス・コウナゴを扱っていた千代田水産(株)へ聞き取り調査を行いまし
た。今後築地での取り扱い見通し及び本格操業へ向けてのアドバイスを伺いました。
(以
下の聞き取り結果は業者の意見の一部です。
)
鮮魚・活魚について聞き取結果
【プラス】
スズキやマコガレイは、日本一の品
質、と言っても過言ではなかった。
スズキでは釣りもの、マコガレイは
2.0 ㎏の物の評価が高かった。
品物さえ良ければ、それなりの相場
で買い求める。宮城県の同格のもの
と同じ価格で値付けするお客もい
る。
国や公の機関の検査(お墨付き)が
あれば購入するという客もいる。
【マイナス】
築地に回ってくる量は震災前の
1/100 以下。
本格操業が始まってもなかなか扱い
量は増えていかないだろう。また、
値段も福島県産のものは通常の 6~7
掛けくらいになってしまうだろう。
大手量販店をはじめとする小売店は
福島県産の魚介類を避ける。同じ品
質・値段で、福島産と他府県産のも
のがあれば、他府県産のものを買う
人が多い。
【アドバイス】
一般に漁業者は、全国の相場等に興味を持っていない人が多い。漁業者と柴栄
さんのような仲買業者が一緒になって会社を作って魚を全国 40 ヶ所ある市場
の相場の高いところへ販売すれば、効率的なのではないか。
一般消費者の理解が進み、福島県産魚介類でも問題なく買ってくれるようにな
る方策を考えるべき。このため、まずは一般消費者の理解を得ることが大切。
コウナゴ・シラスについての聞き取り結果
【プラス】
【マイナス】
請戸をはじめとする福島県産のコウ コウナゴの漁期は西日本から始まる
ナゴは、静岡以西のコウナゴと比較
ため、西日本が豊漁だと、業者はそ
して品質評価は高い。大阪湾、瀬戸
こからコウナゴを購入してしまうこ
内、三河などのシラスに比べると、
とが多く、相対的に福島県産のコウ
魚体が細く脂質が少ないため、酸化
ナゴの売り上げが伸びないことにな
しにくいためである。
ってしまう。
福島県産・茨城県産のシラスの取扱 震災後一番初めに高い放射線量のニ
はピーク時で 6 億~7 億円/年ほどで
ュースが出たためイメージが悪く、
全国の 5~6%程度だった。
茨城県や福島県だけでなく、全国的
に取扱量が落ち込んでおり、原発事
故以降 3 割程度取扱量が減った。こ
の傾向は現在まで続いており、福島
県産のコウナゴがどこか他の産地の
ものに切り替わったという印象はな
い。
2
浪江町の新しい水産業デザイン実現化事業
ニュースレター No.8
【アドバイス】
一般消費者に福島県産魚介類の安全性が理解されれば、売り上げは上がるだろ
う。しかし、そうなっても最初は他所と比べて 2~3 割程度値は安くなってし
まうのではないか。それに耐えて時間をかけて値を戻していくことが必要だろ
う。
小売業者の中には、福島県を応援して小規模に買い求めてくれる業者さんがい
るだろうが、将来を考えると細かいルートを捜し求めるよりも大道で販売して
いくことを第一に考えていくべきではないか。
今後も風評被害は続くと思われるので、業者同士でまとまって共同出荷して動
いたほうが良いのでないか。
(3)地元スーパーへの聞き取り
7月 3 日に試験操業の魚を扱う相双地区のスーパーへの聞き取り調査を行いました。
結果
中島ストア様
地元が地元の魚扱わなくてどうする。
市民の魚食を支えるのが地元スーパー
の役割である。今後も積極的に地元の
魚を売って行く。
試験操業の魚を売り始めて 1 年でいつ
も通り魚を買ってもらえるようになっ
た。今は検査結果など必要としないく
らい消費者は震災前同様に試験操業の
魚を買っている。
ヨークベニマル相馬店様
試験操業の魚種を扱っていたが、東電の
汚染水漏れ事故から扱わなくなった。
取り扱っていたころは一定数のお客様か
ら試験操業の魚について質問してきた方
はいる。スーパーは様々な品物を選んで
もらう立場であり、カレイ類でも福島産
や宮城産のものを置いていたが、福島産
魚は買い控えられる傾向があった。
スーパー宍戸様
地元消費者は試験操業の魚を問題なく買
ってくれている。むしろ新鮮で質がいい
ので積極的に買っている。
相馬の魚は震災前と同様に仕入れている。
しかし、試験操業中で水揚げ量が少ないためなのか買受人組合に発注しても魚が
揃わないことが多々ある。我々としてはもっと水揚げしてもらいたい。
フレスコキクチ様
数量は少ないが試験操業の魚は仕入れてい
る。
宮城県にも店舗が数店あり 1 回/月相馬フェ
アーとして試験操業の魚を丸売りしている。
最初は魚について質問する人がいたが、今は
質問も無く買っていただいている。
(4)沖タコ漁
7 月 21 日沖タコ漁最終日に乗船してきました。今年は去年以上に不漁だと聞いてい
たので心配でしたが、ふたを開けてみれば 57 尾と大漁で漁期終了となりました。ま
た、ツブも 200 ㎏の水揚げがありました。小松さんに今年の不漁の原因を聞くと
「こればかりは海のことだからわからない。毎年行ってみて漁期最初に大漁が続き、
最後に不漁が続いたりすることもある。今回は最終日に大漁だったが、続けていれば
大漁が続くかもしれない。もっと出たかったけどな.
.
.
。
」と、お話ししてくれました。
漁業はいい年もあるし、悪い年もある。自然と共存しながら生業が代々伝承されてい
る産業であることを改めて感じました。不漁があるから大漁の喜びもひとしおでしょ
うか。
ダコをネットに入れ、魚槽へ入れる
作業風景
4
浪江町の新しい水産業デザイン実現化事業
ニュースレター No.8
大漁で魚槽に入りきらないタコ
ドンコも時々かごに入っていた(放流)
ツブ約 200 ㎏水揚げ
マダラ(放流)
左から(通称:ケツブ、ツブ、マツブ) ケムシカジカ(通称:山の神)
(放流)
コラム「風評被害
コラム「風評被害って
被害って?
って?」
築地荷受けや水産バイヤーなど食品を扱う各分野で「風評被害」について良く耳にする。しかし、そもそも
風評被害の定義ってなに?ということで、文献を見てみると。
「根拠のないうわさ等から受ける被害」
、
「風評に
より経済的な被害を受けること」
、
「ある事件・事故・環境汚染・災害が大々的に報道されることによって、本
来『安全』とされる食品・商品・土地を人々が危険視し、消費や観光をやめることによって引き起こされる「経
済的被害」と解釈している。つまり、安全なのに売れない、生産者から消費までの業者が被る経済的被害であ
る。
みなさんはふだん魚を選ぶときどのように選んでいますか。
「値段」
、
「品質」
、
「産地」
、
「名前」
、
「成分」
、
「お
すすめ」
、
「旬」等様々な情報から総合的に判断していると思います。しかし、意外に多くの人は「なんとなく」
魚を選んでいると私は思う。私は日頃から周りの友人などがどのように魚を選んでいるかよく聞いているが、
選ぶ理由は「なんとなく安かったから」
「なんとなくおすすめだったから」
「なんとなく健康によさそうだから」
その「なんとなく」を刺激するのは「値段」なのか、
「産地」なのか、はたまた「噂」なのか?
私が一人の消費者として魚を選ぶときは「値段、品質、産地、旬等」様々な情報を読み取りお得で良い物を
選ぶ。そして、産地が福島であれば魚の安全性と美味しさを知ったからこそ買う。これは知っているからこそ
判断できる。しかし、魚を知らない人が買うときにはやはり「なんとなく安いから」
、
「なんとなく美味しそう
だから」
。そして買わないときは「なんとなく福島産は.
.
.
」つまり、
「知らない」=「買わない」
、これを「知
る」=「買う」この思考に消費者を変えていく必要がある。知ることにより安心感が高まるのではないだろう
か。消費者に知ってもらえるように今後も漁業を続け流通させて知ってもらう取り組みを地道に行うことが一
つの復興方法ではないか。そのためにも市場が出来てからが復興の本番である。浪江町の新しい水産業デザイ
ン実現化事業での取り組みが指針となるよう残り 6 ヶ月間精一杯尽力いたします。
以上
発行:一般社団法人マリノフォーラム21 阿高麦穂
〒104-0032 東京都中央区八丁堀 1-5-2 はごろもビル 5 階
TEL:03-6280-2793 E-mail:[email protected]
6