「走・跳の運動」 「ハードル走」

走・跳の運動(3年)
子どもの心と体を見つめ,誰でも確かな学力を保障できる
陸上運動系の学習指導(三観ドゥ)の在り方
三豊・観音寺ブロック
1
本実践のねらい「小がたハードル走(3年)」
(1) 子どもの実態と目指す姿
小型ハードル走は,障害物を走り越えてピッチを速くしたりストライドを伸ばしたりして調子よ
く走る楽しさや気持ちよさを感じさせ,走力を高められるものである。第2学年の「とびっこあそ
び」の活動では,一定の間隔で置いたいくつかのゴムを跳び越すときに,ゴムの手前で一度動きを
止めて跳び越す児童がいた。これは,走りながら障害物を跳び越えることに抵抗があると考えられ
る。
本実践のめあては,「一人ひとりが楽しんで,自分に合ったリズムで気持ちよく小型ハードルを
走り越すことができる」と設定する。さらに,子どもたち同士がアドバイスをし合うことで,動き
方や運動のポイントが分かり,個々の課題を解決していくことを目指す。
(2)
教材設定の理由と学習内容
児童の実態から,本実践では,障害物に対する恐怖心や抵抗感が少なくなるように小型ハードル
ではなく,ペットボトルにゴムを張ったものや段ボール,ケンステップを使用する。そして,40
mの間に4つの障害物を置き,走り越えていく中で自分に合ったインターバルを見つけさせる。
単元の前半では,40m走のタイムと40mハードル走のタイム差が縮まる走り方を考える。友
だちと自分のタイムを比べるのではなく,自分のタイムを縮めていくことにポイントを置くことで,
一人ひとりが意欲的に取り組めるようにしたい。そのタイム差の少ない児童の走りから,速く走る
ポイントを見つけ共有する。見つけた速く走るポイントの図と写真を板書し,いつでも振り返るこ
とができるようにする。さらに,自分に合ったインターバルを見つけたり,児童が自分の課題を見
つけて練習に取り組んだりすることで,自分の力に合った練習の場を選んでいく。
単元の後半では,意図的な「かかわり」の中で,自分の課題を解決することを目指し,チーム内
で友だちの課題解決のためにアドバイスをする。この活動を通して,ハードル走のポイントが分か
ったり,技能が高まったりすることで,もっとみんなと一緒にやってみたいという意欲も高まる。
平成26年度は,様々な願いや思いをもっている教師,誰でも使える「授業に活きる指導計画案」
を作りたいと考え,身に付けさせたい力を明確にして教材を分析・開発し,計画を立てた指導計画
案(三観プラン)の在り方を考えた。体育を専門としない教師が三観プランをもとに授業を行うと
きには,本時のねらいをしっかりとおさえ,単元全体の指導内容と方法を理解して授業を行うこと
が大切である。
そこで,今年度は,①子どもたちに視覚的に示す板書や掲示物の活用。②学習のねらいにせまる
主要な発問,子どもと直接かかわる場面での教師の助言。の2点をもとにした「授業者の手引き」
を作成した。
三豊・観音寺 1
2
実践の主張点
意図的な「かかわり」を生み出す授業づくり
(1) 教材・教具,場の工夫
①
ペットボトルを使った小型ハードル
系統性を意識して,第2学年の「とびっこあそび」の学
習で使った2L ペットボトルに水を入れてゴムを張ったも
のを教具として活用する。さらに,既習を生かした教具を
使うことで,児童の課題の一つである「恐怖心の軽減」を
図ることにも有効である。
このペットボトルの準備の段階では,身近にあるペット
ボトルを持ち寄り,教師が子どもと共に作成することで,
「2年のときに跳んだことがあるよ。」
「早く跳んでみたい
な
。」など,児童の関心・意欲も高められる。
②
インターバルの距離を色分けしているロープ
ハードル間のインターバルは,4m・4.5m・5m・
5.5mと設定する。これまでは,このインターバルをコ
ースごとに固定し,自分に合ったインターバルを選び活動
していた。
本実践では,あらかじめそれぞれのインターバルで色分け
の印を入れたロープを準備しておき,色でインターバルの
位置にハードルを移動しやすいようにしておいた。このこ
とで,チーム内で分担してハードルを並べ,チームを解体
せずに同じ場所で友だちの走りを見てアドバイスし合うこ
とができるなど,
「かかわり」をもつことができる。
また,ロープに印をしていることで,雨の日でも体育館
で小型ハードル走の授業をすることができる。
スタート
①
②
③
④
ゴール
(☆…4m赤色,○…4.5m青色,△…5m黄色,□…5.5mピンク)
③
ゲーム化の工夫
陸上運動は,走力の高い児童は楽しんで活動できるが,そ
うでない児童は意欲的に取り組めないことが多く見られる。
そこで,チーム対抗の競争を入れて小型ハードル走を楽しま
せながら,単元の目標にせまる。得点は,タイムの伸びによ
って加点していくルールとし,相手と比べて評価するのでは
なく,自分自身のがんばりや伸びを感じられるようにする。
チーム内での学び合いや励まし合いがより活発になり,個人
の課題の解決方法が分かったり,体育の苦手な児童も小型ハ
ードル走の楽しさを実感したりできる。
三豊・観音寺 2
授業者の手引きを作る
(1) 板書
① 学習の見通しをもたせる
活動計画を板書に位置づける。児童が今どの段階の学習をしていて,次時以降はどのように
学習していくのか,一目で分かるようにする。
② 動きのポイントを共有させる
児童が見つけたポイントを板書に残し,正しい動きにつながる視点を共有する。
(2) 教師の言葉かけ
事前に「学習のねらいにせまる主要な発問,子どもと直接かかわる場面での教師の助言」を
準備することで,教師のねらいが明確になる。さらに,子どものつまづきを予想することがで
きる。
3
単元計画(全6時間)
次
時間
1
1
小がたハードル走(走・跳の運動)
主 な 学 習 活 動
「予想される子どもの姿」と「教師の支援」
○ 学習のねらいと進め方を知る。
学習の流れが分からず,見通しをもてない。
○ ワープ走やリズム走などを行
→低学年時に学習したとびっこ遊びを振り返ら
う。
せて学習を進めることで,小がたハードル走に
○ 40m走のタイムをとり,チー
興味をもち,意欲的に学習に取り組ませるよう
ム分けをする。
にする。
○ 学習のまとめの仕方を知る。
→学習の見通しを確認させ,活動計画を板書に
位置づける。
○
2
2
3
4
本時
5
3
6
小がたハードル走を行い,自分に
合ったインターバルを見つける。
(ポイントを考える)
○ 40m走と40mハードルのタ
イム差の少ない児童の走りを見て,
上手にできているポイントを見つ
ける。
○ 動きのポイント(リズムよく)
を確認して,学び合いにつなげる。
○ 前時に見つけたポイントを確認
する。
○ 自分の課題を見つけ,練習をす
る。
○ 動きのポイント(スピードを落と
さないために遠くで踏み切る)を確
認して,学び合いにつなげる。
○ チームで走りを見合ってアドバ
イスをする。
○ 自分に合ったインターバルを確
認する。
○ 小がたハードル走を行い,自分に
合ったインターバルを確認する。
○ 決められた順番で小がたハード
ル走の競走をする。
○ 小がたハードル走を行い,自分に
合ったインターバルを確認する。
○ タイムの遅い順番で小がたハー
ドル走の競走をする。
○ 小がたハードル走を行い,自分に
合ったインターバルを確認する。
○ 走る順番をチームで決めて,小が
たハードル走の競走をする。
○ 40m走と40mハードルのタ
イム差のランキングをつける。
○ 単元の振り返りをする。
小がたハードル走のポイントを知りたい。
→上手にできている児童の動きから,ハードル
走のポイントを見つけさせる。
チームの人たち全員がもっと速く走れる
ようになりたい。
→チームでお互いの走りを見合って,アドバイ
スをするなどの学び合いをさせる。その際には,
動きのポイントを板書することで,正しい動き
につながる視点を児童間で共有しておく。子ど
もたち同士で,個々の能力に応じたインターバ
ルや動きのポイントを確認させることで,チー
ム内でよりよい走りを目指して学習を進めさせ
る。
→予想される子どものつまづきを考えて,発問
や言葉かけなどを考えておく。
(「授業者の手引
き」を活用)
競走で勝ちたい。
→タイムの近い相手と競走させることで,友だ
ち同士で仲よくハードル走を楽しませる。
→速く走ることが目的ではなく,調子よく走る
ことが大切だということを確認させて,自分に
合ったインターバルで走らせて競走させる。
三豊・観音寺 3
4
授業の詳細(本時4/6)
子 ど も の 姿
教 師 の 支 援
ケンステップやラダーを使って準備運動を → 障害物に対する恐怖心や抵抗感を軽減する場
を設定する。
する。
→ 基本的な動きをドリル化することにより,個々
の課題を解決するために必要な技能を習得しや
すくする。
※①ラダー上に障害物をおいて越す練習
②ケンステップをおいたリズム走
③ケンステップを使った川とび
④段ボールとび
1
2
めあてを確認する。
3
自分に合ったインターバルを確認する。
自分に合ったインターバルで友だちと競争しよう。
リズムよく走れるようになり
たいな。
リズムを言葉で言って友だち
にアドバイスしよう。
イチ・ニ・サン・シーイ
→
場は,あらかじめそれぞれのインターバルで色
分けした印を入れたロープを準備しておき,色で
インターバルの位置が分かり,ハードルを移動し
やすいようにしておく。
※ 児童がかかわりながら学習するために,印を入
れたロープを準備する。【教具の工夫】
→ 技能を身に付けさせるため,前時までに見つけ
たハードル走のポイントを確認する。
※ 児童と共に見つけたポイントを共有できるよ
うに掲示する。【板書】
→ 同じチームの友だちに自分が気を付けたいポ
イントを伝え,お互いにアドバイスするように助
言する。
※ 練習の前に自分が気を付けるポイントをチー
ム内の友だちに知らせ,それぞれの場所で確認す
る
。【教師の言葉かけ】【場の設定】
イチ・ニ・サーン
4
競争する。
5
本時をふり返る。
→
※
ルールを説明する。
タイムの伸びによって点数が変わるルールで
あることを伝え,競争を楽しみながら,自分のタ
イムを伸ばそうとする意欲を高める。【教師の言
葉かけ】
※ 走る順番を名前磁石で得点表に示す。【板書】
→
スピードを落とさずに走りき
れたからタイムが上がったよ。
横に速い人がいて,負けたくな
いと思ったよ。
記録が伸びたのは,動きのポ
イントができるようになっ
たからだね。
優勝したチームやリズムよく走り越した児童,
タイムが伸びた児童を紹介し,称賛する。
【教師
の言葉かけ】
◎ 友だちと話し合ったり,アドバイスし合ったり
することで,自分がチームの一員だという意識が
高まった。その「かかわり」を通して,動きのポ
イントが分かり,個々の課題を解決でき,タイム
が伸びた児童が多かった。自分の記録だけでな
く,友だちの記録にも興味をもち,記録の伸びを
一緒に喜ぶことができた。
三豊・観音寺 4
(板書)
5
成果と課題
(1) 子どもの変容
子どもの実態(単元前)
できる
・運動経験が豊富な子は少なく,
走力も高くない。
・走り方がぎこちない子も多い。
・ミニハードルなどの経験はな
い。
子どもの変容(単元後)
できる
・40m走り切る力が付いた。
・走る姿,フォームが力強くな
り,走力も高まった。
・リズミカルに走ることができ
るようになってきた。
わかる
・
「速い⇔遅い」,
「うまい⇔うま
くない」ということは分かるが,
動きのポイントなどを見つける
習慣は身に付いていない。
かかわる
・おだやかにかかわることがで
きる子は多いが,アドバイスに
はいたらない。
・相手によって,かかわりにく
い関係もある。
・チーム内での会話がスムーズ
ではない。
わかる
・上手な動きのポイントを見つ
けることができる子が増えた。
・自分はできなくてもポイント
やコツを理解することができる
子が増えた。
かかわる
・同じチームの中では,男女に
関係なく,ほとんどの子がアド
バイスをできるようになった。
・ほめることやアドバイスが上
手な子を参考にして,大きな声
で声をかけられるようになって
きた子が増えた。
● 子ども同士でアドバイスをする機会を設けたが,言葉では十分理解できない場合があった。そ
のため,板書のイラストをもっと有効的に活用し,友だちにかける言葉を「宝」として掲示で残
す。
(2) 本実践において
○ チームで意図的にかかわる場を設けたので,友だちの動きのよさに気付き,自分の動きに取り
入れて,課題解決につなげることができた。
○ 「授業者の手引き」の中に,「学習のねらいにせまる主要な発問や子どもと直接かかわる場面
での教師の助言」をまとめていたことで,つまづきや問題を抱えている子どもを事前に把握し,
手立てを考えることができた。
● より意欲的で主体的な学習を展開するために,板書に掲示する活動計画の中に,活動内容だけ
でなく,単元終末での児童の姿を明確に示す。
● 第2学年との系統性を重視して学習を行ったが,第4学年との系統性を十分意識して指導でき
なかった。単元終末で子どもに「今のハードルより高いものに挑戦したい。」
「本物のハードルを
使ってみたい。
」など,次学年につながるように意識をもたせる。
三豊・観音寺 5