2015年1月-3月期

アルゼンチン治安情勢(2015年1月-3月期)
1 治安情勢及び一般犯罪の傾向
(1)一般治安情勢
ア 当国では,未成年者犯罪と麻薬関連犯罪の増加,ビジャ(スラム街)が増大し
ていること等によりブエノスアイレス(以下「ブ」)州及び「ブ」市を中心に治安
が悪化したと見られている。当地の治安当局の犯罪統計は「2008年版犯罪統計
資料」が最新であり,その後の統計は発表されていないが,世論調査等によれば治
安の悪化は国民の最大関心事となっている。最近では,従来治安が良いとされてき
た地区でも武装強盗事件が頻発しており,地域住民による治安改善を要求する独自
の抗議行動も時に行われている。
イ 最近,当地において,強盗やひったくり等を目撃した一般市民が,その場で犯
人を捕まえて,警察などの到来を待たずに,直接,集団で犯人に対して暴行(リン
チ)を加える事件も時として発生している。
(2)緊急事態発生の可能性
ア 政府の政策や治安などの社会問題に対する大規模な抗議行動や,2013年12月に
全国各地で発生したスーパーマーケットや小売店への略奪行為などのように,国内
において一時的な混乱が生じる可能性は否定できない。しかし,フォークランド(マ
ルビナス)紛争後,軍が力を失っていること及び民主主義体制が定着してきている
ことから,このような一時的な混乱が,戦争,内乱及びクーデター等へつながる可
能性はほとんどないと考えられる。
イ 北部,西部などのアンデス山脈に近い地域では,比較的規模の大きな地震が発
生することがあるが,人口希薄なこともあり,多くの被害者を生む大災害となるこ
とは稀である。同地域では,時として火山の噴火もあるが,航空交通に支障が出る
ことはあっても,緊急事態に至ったことはない。一方で,豪雨に伴う洪水はしばし
ば発生しており,注意を要する。
(3)一般犯罪の傾向
報道等によると,最近多発している犯罪形態は以下のとおりである。なお,これ
らの事件には未成年者や麻薬中毒者がかかわることも多い。殆どの場合,犯人は拳
銃等の武器を所持している。最近では拳銃や猟銃のほか,自動小銃(アサルトライ
フル)等を使用した犯罪も報道されているため注意を要する。
ア 「モトチョロス」と呼ばれるバイクを使用したひったくり強盗
イ 路上強盗(銀行から現金を引き出した直後の人物に対する強盗事件が頻発)
ウ 家主の外出時や帰宅時に隙を突いて行う待ち伏せ強盗
エ 武装した複数犯による侵入強盗
オ 車両強盗(武装した犯人が走行中の車両を強引に停止させて行う強盗)
カ 車両窃盗
キ 誘拐(短時間誘拐が頻繁に発生)
ク 強姦(夜間,早朝時間帯)
ケ
コ
サ
シ
ス
マリファナ,コカイン等の大量密輸及び不法所持
いわゆる「ひったくり」
置き引き
「マスタード」強盗
「ピラニア」強盗(路上強盗の一種で,集団で襲い金品を強奪する。)
2 殺人・強盗等凶悪犯罪の事例(今期,当地にて報道された凶悪犯罪の一部を抜
粋)
(1)強盗
ア 1月10日16時半頃,「ブ」市パナメリカーナ高速道路にある料金所の事務
所に,従業員の制服を着た3人組の男が押し入り,現金約50万ペソを奪って車両
で逃走した。
イ 2月4日15時頃,「ブ」市パレルモ地区のマンションに,武装した2人組の
男が侵入し,入り口付近にいた同マンションの管理人を襲って金品を要求した。同
管理人は,強盗犯の腕を噛むなどの抵抗をしたため,強盗犯は閉まっていたドアの
横のガラスを割って外へ逃げた。強盗犯はタクシーに乗ってさらに逃走しようとし
ていたところ,騒ぎを聞いた近隣住民の通報により駆けつけた警察官によって逮捕
された。事件後の取り調べで,逃走のために乗ろうとしていたタクシーの運転手は,
同マンションの住人であり,強盗犯が同マンション入り口の鍵を所持していたこと
から共犯者であることが判明した。
ウ 2月10日14時半頃,「ブ」市サンニコラス地区にある両替所に3人組の武
装強盗が押し入り,中にいた社長夫妻を襲って金品を要求した。強盗犯が物色中に,
偶然戻ってきた社長の息子とそのボディーガードと鉢合わせになり,銃撃戦に発展
した。これにより,強盗犯2名が負傷して逮捕され,1名が逃走した。
エ 2月22日1時半頃,「ブ」市ベルグラーノ地区のレストランに武装した4人
組の強盗が押し入り,店員に暴行を加えレジから現金を奪って逃走した。しかし,
通報を受けて駆けつけた警察官が追跡し,銃撃戦の末に4人を逮捕した。
オ 3月10日23時頃,カンパーナ市からブエノスアイレス方面へと向かう国道
9号線を,男性が職場から車両で帰宅途中,突然車両のタイヤがパンクした。パン
ク修理のため車両を路肩に停車させると,3人組の強盗が車両に駆け寄り運転手に
暴行した。男性は後部座席に座っていたが,強盗は後部ドアを開けて男性をいきな
り殴打して拳銃を突きつけ,車外に引きずり出した。さらに暴行を加えて近くの草
むらに連れて行かれた後,頭を押さえつけられたまま所持品を全て強奪された。
(2)殺人
ア 1月30日16時半頃,「ブ」州アベジャネダ市において,武装した強盗が八
百屋に押し入り,店番をしていた14歳の少女に金品を要求した。少女は現金と携
帯電話を渡した後に恐ろしくなって叫びだしたため,強盗は発砲して少女を殺害し
た。強盗は,店の外で待機していた仲間とバイクに乗って逃走した。
イ 2月15日朝,「ブ」市バルバネラ地区の中国系スーパーにおいて,店主が死
亡しているのが隣人により発見された。この店のシャッターは下りており,何者か
が店内に侵入し,被害者に2発の銃弾を発砲して殺害したものとみられている。警
察は,中国系マフィアによる犯行とみて捜査を進めている。
ウ 3月17日4時半頃,「ブ」州フローレンシオバレイラ市において,自宅で寝
ていた24歳の男性が,窓から侵入した2人組の男に襲われ,抵抗したため刃物で
首を刺されて死亡した。その後強盗犯は,叫び声を聞いて駆けつけた男性の父親を
脅し,寝室にあった液晶テレビを奪って逃走した。事件から数時間後,警察は17
歳の少年を容疑者として逮捕した。
3
テロ・爆弾事件発生状況
手製爆弾等による小規模な爆破事件及びその未遂事件の発生はなく,近年アルゼ
ンチンの治安当局が「テロ」と認定する爆弾事件は発生していない。(大規模爆弾
テロは,1992年3月,94年7月にイスラエル関連施設(在亜イスラエル大使
館及びAMIA:イスラエル共済組合会館)に対し発生。)
4 誘拐・脅迫事件発生状況
(1)誘拐事件は,一時期(2003~2004年頃)に比し件数は減少している
ものの,依然として身代金目的の誘拐や短時間誘拐(連れ回し強盗)が毎月数件発
生しており,被害者になるのは富裕層とは限らないのが実態である。近年において
は,車両強盗から短時間誘拐又は誘拐事件に発展するケースがしばしば報道されて
いる。なお,今四半期,邦人誘拐事件に関して,警察当局,被害者及びその親族等
からの通報は当館には寄せられていない。
(2)誘拐事件の事例(今期,当地で報道された誘拐事件を抜粋)
ア 2月2日20時半頃,「ブ」州ラマタンサ市のカステラル地区において,70
歳男性が自宅の車庫に私有車を入れていたところを,車で現れた4人組の男に車ご
と誘拐された。その後犯人は,男性の家族と連絡をとり身代金を要求し,21時半
頃,2万ペソの身代金を支払った後に解放された。この際,被害者は暴行を受けて
いた。
イ 2月19日20時頃,「ブ」州ビンセンテロペス市のビジャマルテジ地区にお
いて,60歳の女性が自宅付近を車で走行していたところ,2台の車に分乗した武
装グループに襲われ,車ごと誘拐された。その後,犯人グループは女性が乗ってい
た車を放置した後,家族と連絡をとり身代金50万ペソを要求した。3時間後,被
害者の家族は25万ペソの身代金を支払い,女性はモレノ市で解放された。
5
対日感情
日系移住者の永年にわたる当国社会への貢献もあり,対日感情は良く,親日的な
アルゼンチン人が多い。但し,近時,一般の強盗が日系人を襲う例はしばしば見ら
れるようになっている。特に,「ブ」州西部のモレノ市近郊においては,日系人が
経営する花卉農家を狙ったとみられる押し入り強盗事件が多発傾向にある。
しかしながら,中国人や韓国人は,日本人ほど良いイメージを持たれていないと
言われており,アルゼンチン人から見れば,日本人は外見上ではそれらの国民と容
易には区別がつかないことが多いことから注意を要する。依然として中国人経営の
商店では殺人や暴力事案が発生しているが,報道によると中国系マフィアと被害者
の間の金銭トラブルが主たる原因とされている。現在までのところ,日本人が間違
われて危害を加えられたケースは確認されていない。
6
日本企業の安全に関わる諸問題
日系進出企業が脅迫やバッシング等の嫌がらせ行為の対象となったり,現地で活
動展開する上で明らかな阻害要因となりうる事項は確認されていない。