喀痰 由来病原細菌 の β-lactamase活 性 と薬剤感受性 との相関 渡 辺

VOL.
37
NO.
喀痰 分離 株 の β-lactamaseと
5
喀 痰 由 来 病 原 細 菌 の β-lactamase活
― β-lacmmaso阻
渡
辺
563
感受性の相関
性 と薬 剤 感 受 性 と の 相 関
害剤配合の意義―
彰 ・大 泉 耕 太 郎
東北大学抗酸菌病研究所 内科学部門*
千
葉
潤
一 ・加
藤
美
和
仙台厚生病院臨床検 査部細菌検査科
(昭 和63年12月15日
1988年1∼6月
の6か
受 付)
月 間 に 仙 台 厚 生 病 院 で 分 離 さ れ た 喀 痰 由 来 病 原 細 菌538株
の う ち271株
に つ い て 一 濃 度 デ ィ ス ク 法 に よ る 薬 剤(ABPC,PIPC,CEZ,CTM,CMZ,CPZ,SBT/CPZ,
LMOX,CZON,IPM)感
β-lactamase活
受 性 の 測 定 お よ びbromocresoLpurpleを
性 の 測 定 を 同 時 に 行 な っ た 。538株
性 菌 は371株(69.0%),嫌
株(63.1%)が
β-lactamaseを
で は67.0%(122/182)で
て全 般 的 に 低 下 し て お り,ま
り一 部 に,あ
る い は広 範 囲 に低 下 が見 られ た。
来 由 来 株 の55.1%(49/89)に
対 し入院 由来 株
生 株 の デ ィ ス ク 感 受 性 は,ABPCとCEZに
しか し,IPMとSBT/CPZに
対 して は 全 般 的 に 高
生 菌 が 起 炎 菌 と な る 確 率 の 高 いimmuno
compromised
有 用 性 が 示唆 され た 。
Key
デ ィ ス ク 感 受 性,β-lactamase阻
喀 痰 由 来 病 原 細 菌,β-lactamase,
近年の抗 生物 質 の飛 躍 的 な発 展 に もか か わ ら ず,臨 床
の場ではimmunocompromised
hostの 増加 と薬 剤 の 使
用頻度の増 大 に伴 っ て薬 剤 耐 性 菌 の 増加 が 見 られ る。 特
に使用頻度 の高 い β-lactam系
抗 生 物 質 に 対 し て は,
β-lactamase産 生 の機 序 に よ る耐 性 菌 が 増加 し て い る
が,そ の対 策 の一 つ とし て β-lactamase阻
害 剤 を開 発
して既存の薬 剤 と配 合 ・結 合 す る方 法 が あ る。 本研 究 で
対 し
対 して は菌 種 に よ
に お け る 併 発 感 染 に 対 す るIPMとSBT/CPZの
words:
中171
の 頻 度 は グ ラ ム陰 性 菌 の61.3%(122/199)に
た,外
たPIPC,CTM,CMZ,CPZ,LMOX.CZONに
感 受 性 を 保 っ て お り,β-lactamase産
ラ ム陰
数 え た 。 同 時 測 定 を 行 な っ た271株
産 生 し て い た が,そ
あ っ た 。 β-lactamase産
ィ ス ク法 に よ る
中 グ ラ ム 陽 性 菌 は165株(30.7%),グ
気 性 菌 は2株(0.4%)を
対 し て グ ラ ム 陽 性 菌 で は68-1%(49/72),ま
用 い たpHデ
host
害剤
象 と した。
2薬
剤感受性測定
271株
の 薬 剤 感 受 性 を 一 濃 度 デ ィ ス ク(昭 和)法
(ABPC),piperacillin
(PIPC),cefazolin
(CEZ),cefotiam(CTM),cefmetazole
(CMZ),cefoperazone
は,呼 吸器感 染症 の 検体 と して 最 も多 数 を 占 め る喀 出喀
(CPZ),sulbactam/cefoperazone
(SBT/CPZ),latamoxef (LMOX=moxalactam),cefuzonam
(CZON),imi-
痰を取 り上 げ,そ
penem(IPM)の10剤
の 分 離 病 原 細 菌 の 薬 剤感 受 性 が β-
で あ る 。 培 地 に 菌 を 接 種 後,デ
lactamase阻 害 剤 を 配合 した と き に どの よ うに 変 化 ・改
ィ ス クを 置 き,37℃
善するかを,β-lactamase活
測 定 して 感 受 性 を 一,+,廾,卅
性 と の関 連 の 視 点 か ら 観 察
し,興 味あ る知 見 を 得 た の で以 下 に 報 告 す る。
I.材
I.対
料 と 方 法
3aβ-lactamase活
β-lactamase活
象菌 株
で24時
間 培 養 し,阻
の4段
ィ ス ク 法 に よ り測 定 した 。
使 用 し た デ ィ ス ク は ペ ー タ ・チ ェ ッ ク(台
あ り,1枚
細菌検査 科 に提 出 され た 検 体 か ら分 離 ・同 定 され た病 原
penicmin-Gあ
る い はcefazolinを
細菌 は580株
み,pH指
か ら6月
ま で に 仙 台 厚 生 病 院 臨床 検 査 部
を数 え た が,そ
538株 であ った。 この538株
*
止 円 の 直径 を
階 に判 定 した。
性 の測 定
性 をpHデ
ー 株 式 会 社)で
1988年1月
仙台市星陵町4番1号
の内 の喀痰 由来 病 原菌 は
の うち271株
を 検討 の対
に
よ り測 定 した 。 使 用 した 感 受 性 デ ィ ス ク はampicillin
糖 フ ァ イザ
の デ ィス クに は 基 質 と して
そ れ ぞ れ4.5mg含
示 薬 と し てbromocresol
ん で い る。 他 に 対 照 と し てbromocresol
purpleを3μg含
purpLeの
み を
Table
1.Bacteriology
of 538 strains
衝 液30μlを
isolated from the sputum of
patients
in Sendai Kosei Hospital
January
to June 1988
含 む デ ィ ス ク も 使 用 した 。pH7,5の0.01M焼
に,被
MAYl989
CHEMOTHERAPY
564
酸 塩緩
滴 下 し て 湿 潤 化 さ せ た 同 デ ィ ス クの 表 面
検 菌 株 の 一 白 金 耳 量 を 塗 抹 後,30分
以内にディス
を解 析 した 。 さ らに,β-lactamase活
性 の 型 別のSBTl
CPZに
の他 の 薬剤 に対 す
ase)陽
4.デ
性 お よ びcephalosporinase(CS
性 と した 。
IL成
1,菌
性 の 有無 お よび そ の型 別
績
株の分布
分 離 ・同 定 され た538株
ー タの解 析
各 菌 種 毎 に,β-lactamase活
対 す るデ ィス ク感 受 性 を,そ
るデ ィス ク感受 性 と比 較 ・観 察 した 。
ク の 色 調 が 青 色 か ら黄 色 に 変 化 した も の を そ れ ぞ れpe:
nicillinase(PCase)陽
during the period from
の菌 種 別 内訳 と,そ の 入院 ・
外 来 別 内訳 をTable1に
示 した。538株 中,グ ラム陽性
菌 は165株.30.7%.グ
ラ ム陰 性 菌 は371株,69.0%,
VOL.
37
NO.
嗜 痰 分 離 株 の β-1actamaseと
5
Table
*
: tested by pH disk method
嫌 気 性 菌 は2株,0.4%を
using PC-G,CEZ
そ れ ぞ れ 数 え た 。 ま た,外
患 者 由 来 株 は149株,27.7%,入
株,72.3%を
2.ƒÀ-lactamase
数 え た が,グ
activity*
来
ラム陰 性 菌 よ りも グ ラム陽 性
%),Acinetobacter
お よ びX.maltophfliaが
に32株(5.9%),H.influenzaEお
%),B.catarrha1is
す べ て20株
数 え,他
2.β-1actamase活
β-1actamase活
お よびTable3に
種 で は,入
院患 者 由来 株 で は182株
中49
中122株
あ り,後 者 で そ の比 率 が 高 か った が,グ ラ ム
外 来患 者 由来 株 の方 が 高か った 。 な お,外 来 患 者 由来 株
の グ ラム 陽性 菌 は18株
3.β-lactamase活
す ベ てがS.aureUsで
あ った 。
性 の型 別 に見 た 薬 剤 感 受性 とそ の
相関
院
Fig.1か
らFig,8に
は,主
な菌 種 毎 の β-1actamase
の有 無 とそ の型 別 に分 けて,SBT/CPZと
他 の β-ラクタ
ム剤 とに 対 す るデ ィス ク感 受 性 の 相 関 を示 した 。Fig.1
性の分布
性 を 測 定 した271株
の 成 績 をTable2
示 した 。Table2に
は菌 種 毎 の
中171株(63.1%)が
のS.auruesで
β-
型 を示 し
産 生 して い
た が,グ
ラ ム 陽 性 菌 で は68.1%,グ
61:3%の
頻 度 で あ っ た 。 型 別 で はPCaseの
み 産 生 の も の,お
は 入 院 ・外 来 別 の β-lactamase産 生 株 の頻
陽 性菌 の み に限 る と,そ の比 率 は77.8%対64.8%で
の菌 種 は
生 株 の 頻 度 お よ び β-1actamaseの
た 。 全 体 で は271株
生菌 の比 率 が 高 く,
生 菌 の 比 率が 高 か った 。
(67.0%)で
患 者 由 来 株 よ り外 来 患 者 由 来 株 の 方 が 多 か っ た 。
の,CSaseの
Table3に
未 満 で あ っ た 。 主 な 菌 種 の 内,H.influen-
zaE,B.catarrhalis.P.aeruginosaの3菌
8actamase産
グ ラム陰 性 菌 で はCSase産
共
sp.24株(4.5
20株(3.7%)を
を 共 に産 生 す る もの,の 比 率 はほ ぼ 同 等 で あ った が,総
34
よ びK-pmmoniae
が 共 に25株(4-6%),Pseudomonas
purple
株(55.1%),入
sp.39株(7.2
sp.36株(6:7%),E.cloacae
株(6.3%),S.pneumoniae
tested
度 を 示 した。 そ の頻 度 は外 来 患 者 由来 株 で は89株
94株(1乳5%).P.aEru-
59株(11.0%).Haemophilus
strains
565
じて,グ ラ ム陽 性 菌 で ほPCase:産
院 患 者 由 来 株 は389
離 株 数 は 多 い 順 にS.aureus
of 271
and bromocresol
菌におい て入 院患 者 由来 株 の比 率 が 高 か った。 菌 種 別 分
ginosa
感受性の相関
ラ ム陰 性菌 で は
み産 生 の も
よ びPCaseとCSase
はPCase産
生 株 が66.1%と
めた が,こ れ らの株 のABPC,PIPCお
多数を占
よびCPZに
対
す る感 受 性 は 低 下 して いた 。Fig.2のH.infliuemzaeで
は22株
中1株 のみ が β-lactamase産 生 株 で あ り,こ の
株 のABPCとCEZに
対 す る感 受性 は低 下 して いた 。
Fig.3のB.catarrhalisは92.9%が
株 であ った が,ABPCとCEZ以
β-1actamase産 生
外 の薬 剤 に対 しては 高
CHEMOTHERAPY
566
MAY198D
Table 3.Distribution of gi-lactamase activity*
(Comparison between outpatients and inpatients)
*
**
: tested by pH disk method
: percent
using PC-G,CEZ
い 感 受 性 が 見 ら れ た 。Fi猛4のK.pnEumoniaeで
23.5%の
株 が β-lactamaseを
and bromocresol
purple
of strains
は
産 生 し て い た が,こ
れ ら
薬 剤 耐 性 菌 に対 して は種 々の対 策 が あ るが,β-Lactamase阻 害 剤 の開 発 と応 用 が 代 表 的 で あ る。 現在 までに実
の 株 のABPCとPIPCに
対 す る 感受 性 は 低 下 して い
用 化 され て い る β-lactamase阻 害 剤 はclavulanic
た 。Fig.5のE.oloacuで
は 全 株 がCSaseを
(CVA)とSBTお
い た が,こ
産 生 して
れ ら の 株 のABPC,CEZ,CTM,CMZに
対
す る 感 受 性 は 低 下 して い た 。Fig.6のP.aeruginosaで
は88%の
株 が β-lactamaseを
の 株 で はPIPC,CPZ,IPMお
が,CVAが
主 にPCaseに
す1∼4)の
に対 し,SBTの
産 生 して い た が,こ
よ びSBT/CPZ以
れ ら
外 の
もち ろ ん の こ と,CSaseに
対 してそ の 阻害 作用 を示
阻 害 作 用 は,PCaseに
され る5∼8)。SBTは す で に本 邦 で もCPZと
お よびABPCと
toPhiliaで
ま た,カ ル パ ベ ネ ム系 のIPMは
は91.7%の
株 が β-lactamaseを
た 。Fig-8のAcinEtobacter
CSaseを
SBT/CPZ以
産 生 してい
ベ て の 薬 剤 に 対 して そ の感 受性 が 低 下 して い
sp.で
産 生 し て い た が,こ
は84%の
株 が
れ ら の 株 で はIPMと
外 の薬 剤 に対 す る感 受 性 は 低 下 して いた 。
総 じて,β-lactamaseを
産 生 して い る 株 のABPCと
CEZに
対 す る 感 受 性 は 低 下 して い た が,IPMとSBT/
CPZに
対 す る感 受 性 は高 か った。 そ の 他 の 薬 剤 に対 す
る 感受 性 は菌 種 に よ って 異 な る態 度 が 観 察 され た。
III.考
近 年 増 加 しつ つ あ る β-lactamase産
察
対 しては
対 して も 中等 度 に発 現す ると
薬 剤 に対 す る 感 受 性 は 低 下 し て い た 。Fig.7の)X.mal-
た が,す
add
よび カル パ ペ ネ ム系 の薬剤 等 であ る
の配 合剤,
の結 合 製 剤 と して実 用化 され てい る。
強 い抗 菌 力 を有 す る と
同 時 に,そ れ 自身 も強 い β-Lactamase阻 害 作 用 を有 して
お り9).IPM以
外 に も新 しい薬 剤 が 多数 開発 されつつ あ
る。
β-lactamase産
生菌 が 起 炎 菌 とな る確 率 の高 い例 は比
較 的 基 礎 疾患 の重 篤 なimmunocompromised
hostが 多
く10),し た が って炎 症病 巣 へ の 良好 な移 行 を期 待 して注
射 用 製 剤 を 投 与 す る必要 に 迫 られ る。CVAとamoxicillin(AMPC)の
配 合製 剤 やSBTとABPCの
結 合製 剤
は いず れ も経 口剤 で あ る た め,こ の よ うな適 応 に対 して
生 の 機 序 に よる
は 不 満 足 と考 え られ る が,注 射 用 製 剤 のIPMやSBTi
VOL.37
NO.
喋 痰 分 離 株 の β-lactam鯛Oと
5
fl-lactamaee
PC88e(+)
(-)
感 受性 の相 関
567
activity
CSase(+)
PCase & CSa5e(+)
<Sensitivity to SBT/CPZ)
Fig.1.Correlation
between sensitivity(determined by disk)to sulbactam/cefoperazone and that to
other 8-lactams in a total of 62 strains of S.aureus according to their 19-lactamase activity
()*
: Number
of strains
tested
CHEMOTHERAPY
568
β-lactamase
Fig.
2.
Correlation
other ƒÀ-lactams
(
)*:
Number
between
in
of
sensitivity
a
total
strains
of
tested
strains
of
1989
activity
(determined
62
MAY
by
H.
disk)
influenzae
to
sulbactam/cefoperazone
according
to
their ƒÀ-lactamase
and
that
activity
to
VOL.37
喀痰 分 離株 の β-lactamaseと
NO.5
β-lactamage
Fig.
3.
Correlation
other
(
13-lactams
)*:
Number
between
in
of
sensitivity
a total
strains
of
14
tested
(determined
strains
of
activity
by
B.
569
感 受 性 の相 関
catarrhalis
disk)
to
sulbactam/cefoperazone
according
to
their ƒÀ-lactamase
and
that
activity
to
β-lactamase
Fig.
MAY
CHEMOTHERAPY
570
4.
Correlation
between
sensitivity
other ƒÀ-lactams
in
a total
of
(
of
strains
tested
)*:
Number
17
(determined
strains
of
K.
1989
activity
by
pneumoniae
disk)
to
sulbactam/cefoperasone
according
to
their ƒÀ-lactamase
and
that
activity
to
VOL.37
喀 痰 分離 株 の β-lactamaseと
NO.5
β-lactamaae
Fig.
5.
Correlation
other
(
p-lactams
)*:
Number
between
in
of
sensitivity
a
total
strains
of
tested
activity
(determined
22
strains
of
571
感受性の相関
by
E.
cloacae
disk)
to
according
sulbactam/cefoperazone
to
their ƒÀ-lactamase
and
that
activity
to
CHEMOTHERAPY
572
Fig.
6.
Correlation
other
(
p-lactams
)*:
Number
between
in
of
sensitivity
a
total
strains
of
tested
25
β-lactamase activity
(determined
by
strains
of
P. aeruginosa
MAY disk)
to
sulbactam/cefoperazone
according
to
their ƒÀ-lactamase
and
1989
that
activity
to
VOL.37
喀 痰 分 離株 の β-lactamaseと
NO.5
β-lactamase
Fig.
7.
Correlation
between
sensitivity
other ƒÀ-lactams
in
a
()*:
of
strains
Number
total
of
12
tested
(determined
strains
of
X.
573
感受 性 の相 関
activity
by
maltophilia
disk)
to
sulbactam/cefopera
according
to
zone
their ƒÀ-lactamase
and
that
activity
to
MAY
CHEMOTHERAPY
574
β-lactamasea
Fig.8.
Correlation
other ƒÀ-lactams
between
in
sensitivity
a
total
25
activity
()*:
Number
of
strains
tested
(determined
of
strains
ctivity
by
of
1989
disk)
Acinetobacter
to
sulbactam/cefoperazone
sp.
according
and
to
their ƒÀ-lactamase
that
to
VOL.37
喀 痰 分 雌株 の β-lactamaseと
NO.5
CPZの 内,特
に後者 で は高 い血 中 濃 度 が 比較 的 長 時 間
575
感 受 性 の相 関
合 させ て復 活 させ 得 る方 策 は 理論 的 に正 し く,臨 床 の現
持続 し,病 巣 へ の移 行 性 に も優 れ てい る11)ので,こ の 適
状 に も正 し く適 合 す る もの で あ り,ま た,ま
応に合致す る と考 え られ る。 さ らに,β-lactamase産
生
い 薬 剤 を 開発 す る こ と よ りも1よ りcost effectiveで あ
の よ うな 症 例
り,今 後 さ らに検 討 され るべ き方 向 であ る,と 考 え る。
菌による不活 化 を免 が れ得 る5∼8)の
で,こ
群に対す る 有用 性 が 期 待 され る。 か か る 状 況 下 にあ っ
て,β-lactamase産 生 菌 に対す るSBT/CPZあ
る いは
った く新 し
肺 癌 二 次感 染 の よ うな重 鮒 な感 染症 に対 して は 私共 は
す で に,主
に β-ラ クタ ム系 抗 生物 質 と ア ミノ配糖 体 系
IPMと 他剤 の抗 菌 力 を 検討 ・比 較 す る こ とに は 大 き な
抗 生 物 質 の2剤 併 用,場 合 に よっ て は テ トヲサ イ ク リン
意義があ る,と 考 え られ る。
系 抗 生 物 質 を も含め た3剤 併 用 の有 効 性 が 高 い こ とを基
本研究 で は,当 施 設 の細 菌 検 査 の大 部 分 を 占 め て い る
礎 的.臨 床 的 に 種 々確 認 ・報 告 して い る12-14,19∼22)。IPM
喀痰由来 病原 細菌 を対 象 と した 。当 施 設 では,呼 吸器 疾 息
と他 剤 との 併用 に関 しては 私 共 は い まだ に検 討 して い な
患者が大多数 を 占め,し か も原 発 性 肺 癌 の 症例 が 最 も多
いが,SBT/CPZとamikacin(AMK)の
いため,日 常 診療 してい る 呼 吸器 感 染 症 の 多 くを肺 癌 二
は,こ の併 用 がCPZとAMKの
次感染が占 め る,と い う特 殊 性 が 見 られ る。肺 癌 二次 感
果 を示 し,し か もそ の併 用 効 果 の増 強 に はSBTの
染 において は癌腫 瘤 に よる血 流阻 害 のた め.投 与 され た
る β-lactamase阻 害 作 用 が 大 き く 寄 与 して い る こ とを
併 用 に 関 して
併 用 よ りも強 い 併 用効
抗生物質 の感 染病 巣 へ の 移行 は通 常 の呼 吸 器 感 染 症 の場
確 認 ・報 告 して い る21)。今 回 の 検 討 で もSBTの
合よ り低下す る12卿
田,と い う特 殊 な要 因 が 存 在 す る。 さ
lactamase阻
ちに,本 来,呼 吸器 感 染 症 に お け る抗 菌 性 薬 剤 の 病 巣 へ
菌 の増 加 して い る現 状 に対 す るSBTの
の移行は他 の部 位,特 に 尿路 と比 較 す れ ば 極 め て 低 率 で
され た,と 言 え よ う。
あ り,耐 性菌 の出現 頻 度 も低 い,と 考 え られ て い る。 し
有す
β-
害 作用 が 明確 に認 め られ て お り,薬 剤 耐性
以 上 よ り,β-lactamase産
臨床適応が確認
生 菌 が起 炎 菌 とな る確 率 の
たが って,私 共 の施 設 に お け る薬 剤 耐性 の 出現 頻 度 は 低
高 いimmunocompromised
hostに おけ る併 発 感 染 に対
率である こ とが予 想 され る。 しか しなが ら今 回 の 研 究 か
す るIPMとSBT/CPZの
有用 性 が 示 唆 され た 。
ら,当 施設 の喀痰 由来 株 に お い て も63%と
文
い う高 い比
率 で β-lactamase産 生株 が 見 られ,し か もそ の頻 度 は グ
1)
ラム陽性菌 の方 が高 い こ とが 新 し く知 られ た 。 グ ラ ム陽
PBP2'の
出現,お
tomyces
示すMRSAの
NEU
3)
において も顕 著 に観 察 され て い る15∼18)。
こ の よ うな傾 向
A
J
N:
29:
CPZが
関 して も,PCaseに
ENGLISH
本来 有 す る強 い抗 菌 力 を 回 復 させ 得 た,と
3
害 剤 を 配合 ・結
FU
D,
A-
1978
D,
COLE
READING
M,
ROLINSON
J.
Antibio-
C
N,
THORNSBEERY
C:
in
gonor-
Neisseria
clavulanate.
14:
RETSEMA
BARTH
W
E:
A,
1978
GIRARD
CP-45,
899,
extends
the
beta-lactams:
of
by
14:
LELIEVRE
three
a
V,
In-
Antimicrob.
794•`796,
J
that
of
A
E,
a betaantibac-
initial
bac-
Antimicrob.
414•`419,
PEDUZZI
1978
J:
Inhibition
R-factor-mediated ƒÀ-lacta-
new ƒÀ-lactam
Biochemica
K
inhibi-
characterization.
R,
HA-
C,
activity.
Chemother.
LABIA
899).
7)
J
inhibitor
mases
考え
られ る。 この よ うに,す でに 実 用 化 され た も の の耐 性 化
R,
spectrum
351•`357,
が進行 してい る薬 剤 を,β-lactamase阻
sodium
E,
kinetics
対
650•`655,
p-lactamase
A
Agents
配合 す る こ と に よ り
a novel
1976
BAKER
teriological
6)
acid,
Antimicrob.
Chemother.
terial
身 が強 い 抗 菌 力 を有 す る
不 安定 性 を,SBTを
M,
by
lactamase
す るCPZの
J
of
は,LMOXやCZONと
と同時 に,強 い β-lactamase阻 害 作用 を も有 す るた め と
1977
Clavulanic
BUTTERWORTH
HOOD
668-669,
MILLER
LYNCH
おいて見
P:
antibacterial
Agents
比較 して も極 め て安 定 した 抗
StrepAgents
Naturally-occuring ƒÀ-lactamase
だに抗菌 力が 不充 分 であ るが,こ れ 以外 の菌 種 に対 して
考え られた 。 一方,SBT/CPZに
G,
with
rhoeae
5)
852•`857,
K
14:
D,
hibition
剤である こ とが知 られ た 。 個 々の菌 種 で 見 る と,X.ma-
られ る優れ た成 績 は,IPM自
FU
a beta-
from
of ƒÀ-lactamases.
NSCOMB
tics
4)
acid:
Antimicrob.
Chemother.
tors
な抗菌力 を保 って い る薬 剤 は,IPMとSBT/CPZの2
菌力を示 していた 。 今 回 の検 討 か ら,IPMに
C,
BROWN
G
抗生物質 に偏 重 した 薬 剤 の 使 用傾 向 に反 省 を要 しよ う。
tophiliaに 対 して は こ の2剤 は 他 の 薬剤 と 同
l 様 にい ま
Clavulanic
beta-lactam
11:
H
gents
を惹起 した と考 え られ る,い わ ゆ る 第三 世 代 セ フ ェ ム系
今 回の検討 か ら β-lactamase産 生 菌 に 対 して も 良好
M:
clavuligerus.
inhibitor
多 量産 生 に よ っ て 多 剤 耐 性 を
増 加 傾 向 は 当 施設 を初 め とす る東 北地 方
献
COLE
Chemother.
2)
よび そ れ に 強 く リン ク して い る と考
え られる β-lactamaseの
C,
lactamase-inhibiting
性菌におけ る この高 い比 率 は,特 に ブ ドウ球 菌 の耐 性 化
傾向に よるも ので あ る。 新 しい ペ ニ シ リ ン 結 合 蛋 白 の
READING
sulfone
et
Biophysica
C:
Synergistic
(CP-45,
Acta
611:
1980
P,
cefoperazone
NEU
H
in
combination
activity
with ƒÀ-lactama-
of
se
7:
8)
inhibitors.
J.
287•`491,
WISE
of
R,
acid
their
in
197•`206,
and
J
M,
BEDFORD
CP-45,
vitro
activity
J.
Antimicrob.
899:
in
K
差,
A:
a comparison
combination
17)
with
Chemother.
横 田
健,
尚 代:
Imipenem
検体間較差および
β-lactamase産
滝島
任: 1986,
さ れ た 黄 色 ブ ド ウ 球 菌,
丸 山 映 子,
鈴 木 映 子,
(MK-0787)
活 化 作 用,
新 井 京 子,
薬 剤 感 受 性,
1591∼1599,
加藤
の 試 験 管 内 抗 菌 力.
ベ ニ シ リ ン結 合 蛋 白 親
18)
生 能 との
相 関 。Cbemotherapy
35: 699∼708,
1987
渡辺
彰, 大 泉 耕 太 郎, 今 野
淳, 井 田 士 朗, 西
渡辺
彰,
PCase活
1988
分 離 頻 度,
青 沼 清 一,
安 定 性 。Chemotherapy
33 (S-4):
43∼53,
1985
渡辺
彰: β-ラ ク タ マ ー ゼ 阻 害 剤 と 配 合 剤 。Pro-
性 黄 色 ブ ド ウ 球 菌 に 閲 す る 研 究 (IV)。MRSA分
5 (S-2):
951∼1959,
11)
第30回
日本 化 学 療 法 学 会 総 会,
ムII, sulbactam/cefoperazone。
12)
渡辺
彰,
大 泉 耕 太 郎:
療 。Today's
今野
淳,
Therapy11:
渡辺
彰:
較 差 。Chomotherapy
19)
7∼12,
二 次 感 染 を 中 心 に 一 。 最 新 医 学42:
彰:
渡辺
彰,
therapy
大 泉 耕 太 郎:
15)
感 染 症 。 化 学 療 法 の 領 域4:
1087∼1092,
1988
渡辺
彰, 大 泉 耕 太 郎, 佐 々 木 昌 子, 青 沼 清 一,
大 沼 菊 夫,
悪 性 腫 瘍(肺
小 野 玲 子,
癌)に
併 発 した呼 吸 器
本 田 芳 宏,
今野
耐 性 黄 色 ブ ドウ 球 菌 に 関 す る 研 究 (I)。
淳:
産 生 能 の 年 次 比 較 。Chemotherapy
868, 1986
彰,
大 泉 耕 太 郎,
今野
淳,
21)
34:
井 田 士 朗,
大 泉 耕 太 郎,
馨 編),
1988
今 野
淳:
抗 菌性 薬剤 の
三 次元 チ ェ ス盤 法
併 用 効 果 の 定 量 評 価 の 試 み 。Cbemo36:
彰,
613∼616,
1988
大 泉 耕 太 郎,
今 野
淳:
抗 菌性 薬剤 の
併 用 に 関 す る 研 究 (II)。Sulbactamの
併 用 効 果 の 増 強 。Chemotherapy
1988
22)
西
125∼130
添加
に よ るcefoperazoneとamikacinのin vitro
多剤
859∼
渡辺
3剤
喀 痰 由来
黄 色 ブ ド ウ 球 菌 の 薬 剤 感 受 性 お よ び β-lactamase
37:
文 光 堂,
に よ る3剤
139∼1145,
14)
本
多剤 耐
抗生物質併用の遭 応 と組 み 合わせか
3剤 併 用 に 関 す る 研 究 (I)。
癌
1987
渡辺
渡辺
118∼123頁.
20)
1987
淳:
た 。 感 染 症 と 抗 生 物 質 の 使 い か た (島 田
肺癌 治 療 時 の感 染症 治
悪 性 腫 瘍 患 者 と 感 染-肺
今 野
離 頻 度 の 病 院 規 模 別 較 差 お よ び 診 療 科 間 ・検 体 間
1985
新薬 シ ンポ ジ ウ
東 京, 1982
北 村 置 人,
小 野 玲 子,
田 芳 宏,
in Medicine
豊,
に 粛 北 地方 で検 出
性 。 化 学 療 法 の 債 域4:
大 泉 耕 太 郎,
徳江
87年
特 にMRSAの
和 性 お よ び マ ウ ス の 脳 と 腎 ホ モ ジ ネ ー トに 対 す る
gress
16)
多 剤 耐性 黄色 ブ ドウ球 顎 に 関 す る研 究
岡 き よ,
8:
1980
β-lactamase不
13)
岡 豊 よ:
Chemother.
1989
(III)。 多 剤 耐 性 黄 色 ブ ドウ 球 薗 分 離 率 の 病 院 間 較
ANDEREWS
penicillins.
10)
Antimicrob.
1981
Clavulanic
9)
MAY
CHEMOTHERAPY
576
渡辺
彰,
大 泉 耕 太 郎,
今野
36:
淳:
732∼737,
抗 菌性 薬剤 の
3剤 併 用 に 関 す る 研 究 (III)。 β-ラ ク タ ム系 と ア ミ
ノ 配 糖 体 系 お よ び テ ト ラ サ イ ク リ ン系 薬 剤 間 の3
剤 併 用 効 果 。Chemotherapy
36:
738∼742,
1988
VOL.37
喀 痰 分 離 株 の β-lactamaseと
NO.5
CORRELATION
ANTIBIOTIC
Department
of
Cancer,
We
AKIRA
WATANABE
Internal
Medicine,
Tohoku
to
cefotiam
cefuzonam
lated
As
compared
sensitive
CZON.
effective
of
and
72
ABPC
the
other
IPM
and
other
pathogens
hand,
CEZ.
of
as
antibiotics
presumably
We
182
against
(ABPC),
of
from
less
from
infections
producing ƒÀ-lactamase.
to
positive
and
the
above
in
results
immunocompromised
that
271
of
(55.1%)
CTM,
negative
cefazolin
isolates,
171
Gram-negative
of
89
strains
iso-
produced ƒÀ-lactamase.
strains
CMZ,
strains
IPM
measured
(PIPC),
Of
inpatients
PIPC,
bromocresol
was
strains
producing
sensitive
clinical
January
(LMOX=moxalactam),
199
Forty-nine
isolated
strains, ƒÀ-lactamase
were
using
piperacillin
3%)
271
from
sensitivity
latamoxef
(61.
period
method
(SBT/CPZ).
122
Hospital
of
the
Antibiotic
cocci.
strains
the ƒÀ-lactamase
conclude
were
during
pH-disk
(CPZ),
Gram-positive
of
Some
both
SBT/CPZ.
are
sulbactam/cefoperazone
(67.0%)
the
ampicillin
and
non-producing
and
by
Kosei
disk-sensitivity
Hospital
substrate.
cefoperazone
Japan
Sendai
and
Kosei
(CMZ),
Diseases
980,
KATO
Medicine,
qualitated
as
Chest
Sendai
activity
cefazolin
activity,
strains
122
with ƒÀ-lactamase
than
of
(IPM)
for
4-1,
MIWA
Sendai
containing
for ƒÀ-lactamase
(68.1%)
to
On
to
49
or
Japan)
imipenem
outpatients
was
G
OIZUMI
Institute
Laboratory
in
SPUTUM
KOTARO
19-lactamase
patients
cefmetazole
positive
and
less
nsitive
(CTM),
were
from
penicillin
(SHOWA,
(CZON),
(63.1%)
of
and
of
activity
and
disks
CHIBA
between
sputum
The ƒÀ-lactamase
pH-indicator
sensitivity
bacteria
the
and
Seiryomachi
Department
CLINICAL
FROM
Research
University,
correlation
from
1988.
as
(CEZ),
jority
the
isolated
June
purple
by
Bacteriology,
investigated
pathogens
OF
ISOLATED
JUN-ICHI
of
ACTIVITY
SENSITIVITY
PATHOGENS
Division
577
BETWEEN ƒÀ-LACTAMASE
AND
and
感受性の相関
were
CPZ,
were
and
hosts
usually
SBT/CPZ
in
whom
generally
LMOX
very
are
the
and
semore
ma-