応用編 - インターナショナルサービスシステムズ

看護師初任者教育
(感染コントロール応用編)
草津市野村一丁目23−10
㈲インターナショナル サービス システムズ
TEL:077-564-5740 FAX:077-564-5730
E-Mail:[email protected]
実技
スタンダードプリコーション
【ロールプレイ】スタンダードプリコーション前回の復習(30分)
①嘔吐、②血液、③糞便
がリネンに付着した場合の対処の仕方をチーム毎に討議し、
実際の処置をして頂きます。その後に、結果発表して頂きます。
※ 米国医療機関認定合同委員会(JCAHO=日本の機能評価機構)審査での設問の一例
スタンダードプリコーション(標準的感染予防策)の復習と講評(10分/40分)
>>血液・体液の取扱に関して・・・
①プロテクターの装着(素手では絶対触らない。)
②血液・体液を除去するためには、血液・体液を出来る限り吸着剤等で除去し、
次亜塩素酸ナトリウム希釈液0.1%(1,000ppm)を噴霧する。
嘔吐等の吐瀉物に関しては、飛散・乾燥飛散を防ぐため、新聞紙等で覆い
次亜塩素酸ナトリウム希釈液を充分に噴霧後、除去する。
その後床面等に次亜塩素酸ナトリウム希釈液を噴霧し、暫く置いてから水拭きする。
③血液・体液・嘔吐・吐瀉物等を取り除いた吸着剤等(ティッシュペーパー・ペーパータオル・おむつ等)は、
感染性廃棄物専用袋に入れ廃棄する。使用したプロテクターも同様に身体等に
付着しないように廃棄する。
④水拭きしたモップヘッド等は、ディスポの場合は、プロテクター等同様に廃棄する。
リユースの場合は、感染性リネン同様に処置する。
環境整備の重要性
環境整備の重要性(5分/45分)
病院は、患者の治療と療養の場であり、保菌者が集まるところである為、
常に清潔を保たないと院内感染が発生する可能性がある。
①清・汚の観念の徹底
②健康管理(保菌者と成らないこと。)入浴と洗髪の重要性を認識しておく。
③衛生慣行の励行
とりわけ、救命救急部署の場合は、細心の注意が必要。
感染被害者や加害者にならないことです。結核感染が多発しています。
注意して下さい。
院内感染防止の基準・規則
院内感染防止の基準・規則(15分/60分)
米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention=疾病対策予防センター)が多くの基準・
規則等を勧告しています。万が一判らないことがあったなら、インターネット検索して下さい。
環境・隔離等病名毎にも基準・規則を発しています。
その複合的作用によって院内感染防止をしていると考えられます。
但し、日本の状況と違う場合は、創意工夫して下さい。
【環境に関する院内感染防止】
・Guideline for Handwashing and Hospital Environmental Control,1985
・Guideline for Environmental Infection Control in Health-Care Facilities,2003
「環境整備に関して、消毒剤による殺滅よりも、洗剤/抗菌剤配合洗剤による除去」を勧告しています。
消毒剤に関しては、必要な箇所に必要な量だけ使用することだと考えています。
>>CDCの発する基準・規則に関しては・・・
州の規則
職業安全衛生管理局(OSHA)
疾病対策予防センター(CDC)
医療機関認定合同委員会(JCAHO)
専門機関のガイドラインまたは勧告
米国病院会(AHA)
米国公衆衛生協会(APHA)
米国微生物学会(ASM)
感染管理・疫学専門家協会(APIC)
手術室看護協会(AORN)
米国医療疫学会(SHEA)
で科学的裏付けを持って勧告しています。
日本では、国立感染症研究所・感染症情報センターからの情報も大切です。
欧米の環境整備の手順(セブンステップ)
看護師の行う環境整備について(20分/90分)
環境整備は、委託清掃会社・看護補助者・看護師の業務分担により、実施されます。
松下記念病院では、看護師は「患者を守る。」責任があります。
その一つに、「療養環境を守る。」事があります。
委託清掃業者・看護補助者・看護師の業務分担とそのコントロールをする能力が求められます。
欧米の環境整備の手順(セブンステップ)
①ハイダスティング(上部除塵)
②ワイピング(床頭台・什器・備品等の清拭)
③ゴミ箱の処理
④水回りの清掃
⑤ダスティング(乾式除塵)
⑥ダンプクリーニング(湿式清掃)一方拭き、
1室1モップ、又は、1モップ2バケツの手法
⑦点検・検証
以上が、環境整備で実施する清掃手順です。
目的は、環境表面の環境異物を除去することにあ
ります。
又、環境整備業者が実施することによって、環境
整備に関する看護師・看護補助者の業務を軽減さ
せることと、医療に特化して頂く目的もあります。
但し、突発的に発生した環境整備や環境整備業
者が居ない時には、対応すべきです。そのために、
基本は、知っておくべきです。
又、環境整備業者は患者に直接触れることは日
本では良くないと言われます。ベッド周り等は、看護
師・看護補助者の責任範疇になります。
環境整備の観念に徹した資機材
MRSAの多発時に、欧米でも環境整備の重要性が認識され、各種の資機材が開発さ
れました。
セブンステップを実施するためのトロリー(トロリーの展示)
清汚の観念が徹底しています。カラーコーディングされたモップや清拭布を使用すること
によって、清・汚の観念を徹底させ、間違いを防ぐ事になります。又、機材そのもの
を清潔に保つため、凹凸が無いことが求められます。
手術室用のトロリー(トロリーの展示)
モップの種類(ドイツ等では、次亜塩素酸ナトリウム等自然分解性が弱いケミカルは、多
用しないことになってきています。檜抽出液等をトイレ等で使っています。臭いが凄
いです。次亜塩素酸ナトリウムに弱いモップ・清拭布もあります。)
その他の製品(各国の使っている資機材の展示)
環境整備に必要な機材については、当該病院の環境に関する院内感染防止の方向性に
適合し、効率性・合理性を持った機材を選択する必要があります。
ADDIS社製モップヘッド
TTS社製バイオアプリケーターpro
ADDIS社製トロリーシステム
SARSの事例
SARSに関して
香港にて、中国でSARS治療に関わった医師が病原菌をホテルに持ち込み、医師が滞在
していた階と同様の空調機が繋がっていた階の顧客が感染したと言われています。
但し、マレーシア・ベトナム・シンガポールに関しては、一定の広がり以上に感染しなかったと言わ
れています。これらの国では、既に、同様の病原菌感染を経験していたため、対応
が取れたと言われています。
窓を開けて、プロテクターを装着し、消毒剤等での病室の環境整備に努めたと言われて
います。
そう言った意味で、換気の重要性と空調の問題点は、知っておく必要があります。
病院等の空調は、全て新しい空気を取り入れていることはありません。冷暖の一定の温
度を維持(エネルギー効率)するために、古い空気と一部新しい空気を取り入れて
循環させています。感染症患者を収容する場合は、陰圧ですが、そうでない場合は、
単独空調が必要になります。このことは、陽圧が必要な易感染者にも言えることで
す。隔離のガイドラインを参照して下さい。
実技
ベッドメイキング
ベッドメイキングの方法(手順を確認する。)(10分/100分)
※看護学校等で履修されていると思います。その確認として、考えて下さい。
①使用済み不潔リネンは、病原菌が付着していると見なします。
②使用済み不潔リネンと、新しいリネンを接触させてはなりません。
廊下や床に使用済み不潔リネンを放り投げることは、病原菌の拡散に繋がります。又、剥ぎ
取る時に、胸やお腹で抱えることは、次の作業等に伝播することが考えられます。
海外のベッドメイクは、パッド等もメイクします。不潔リネンの交換時に、拭き上げることが原
則です。破れや穴あき等を点検し、必要に応じ、専用の消毒剤で対応することになっています。
作業内容:
ベッドメイクの際、中心線(折り目)に従い、ベッドメイクしますが、剥がす時は、頭の位置から剥ぎ
取り、滑らせて足の位置まで持っていき、新しいメイクの時と同様に折りたたんでいって下さい。
出来る限り飛散を防ぐことです。
新しいリネンで、ベッドメイクした後、出来れば乾式モップで
清掃すると良いと考えられます。(一方拭きとスポットクリーニング)
【簡単な実技】
用紙をリネンの様に折る。中心線に従い、ベッドメイクするが、剥ぎ取る時は、
頭の位置から滑らせて足の位置にめくり、ベッドメイクの際の折りたたみ方で剥がす。
病室の環境
患者の荷物(5分/105分)
床に荷物を置かないことが大切です。
欧米では、ロッカー等に入る範囲と制限されています。
退室時除菌清掃は、環境表面を除菌清掃します。
落下粉塵の問題もありますが、環境整備が出来なければ、院内感染の問題に繋がると考えられます。
最小限であり、環境整備のための移動が可能な範囲と考えるべきでしょう。
花の持ち込み(10分/115分)
松下記念病院は、花の持ち込みは制限されています。花の持ち込みは、花粉・アレルギー等の問題が
あります。鉢植えの土壌にも様々な雑菌が棲んでいます。免疫応答性のある患者の区域では制限する
必要がありません。但し、直接患者のケアに関わって居ないスタッフに世話をさせる必要があります。
看護師がやむを得ず触る時は、手袋をし、その後、手洗いが求められています。このときも、花等の抱
き込むことやユニフォームに接触させないことが重要です。
欧州では、確実に管理することを原則として、花による安らぎを優先させる病院もあります。
同様に、ドイツ・北欧を中心に、ポリッシュ(ワックス)に関して、
使用しない病院が増えています。アレルギー問題、塗布費用の問題等により、
粉塵を舞い上がらさないオイリング剤による研磨をしてきています。
カビの発生と対策
カビの発生に注意すること。(20分/145分)
真菌に関しては、病原菌同様に一定の温度、一定の栄養素、一定の水分で繁殖します。
風呂場でのカビの発生に関しては、これらの全ての要素が含まれる繁殖に必要・充分な
条件が整っていると考えられます。
対 策
①一定の温度を疎外する。
最終的風呂の使用後に、窓を開ける・風呂場の表面に水を掛ける。
②一定の栄養素を疎外する。
身体の汚れに関しては、アルカリ洗剤が効果的です。又、角質等に関しては、
酸性洗剤が効果的です。2回洗いして栄養素たる角質を取り除く事が大切です。
③一定の水分を疎外する。
清掃後に、スクイジー等での水切りと清拭をし、換気をする事が大切です。
また、風呂場以外に、環境表面の清拭
事例と対処
NICUの中で、10年以上同じ位置にあったロッカーの環境表面除菌清拭を行ったと
ころ、阪神大震災の影響なのか、ロッカー裏側全体が黴びていました。
胞子が飛ぶ恐れがあるため、必要以外の備品・什器を室外に出し、
掃除機による吸引後に、界面活性剤+次亜塩素酸ナトリウム希釈液
を塗り、新聞紙で覆いその上に同様のケミカルで噴霧し、
1時間程度放置浸積させてから再度、同様のケミカルで洗浄後
水拭きをしました。その後乾燥しました。その後に、2日後・1週間後に
確認をしましたが、カビは出ていませんでした。
勿論のこと、カビ処理後に、全ての環境表面を除菌清掃し、室外においておいた
什器・備品も除菌清拭し、元の機能に復元しました。
事例として掲載しましたが、環境整備を徹底させる事が重要です。洗剤/抗菌剤
配合洗剤で、清拭することによって、カビの繁殖を抑える必要があります。
松下記念病院では、冷蔵庫、空調の吹き出し口の清掃は、こまめにして下さい。
環境整備=清掃を確実に行うと、院内感染防止に繋がると共に衛生害虫の発生
も食い止められます 。
感染症患者の病室清掃と一般病室の清掃の違い
感染症患者の病室清掃と一般病室の清掃の違い(15分/160分)
【一般病室の清掃】
一般的清掃の場合は、清水による湿式清掃
①資機材の準備と一般的プロテクターの装着
②セブンステップによる清掃
③患者が居る場合は、高所除塵はしない。(毎日する必要は無い。)
④床ダスティグとダンプクリーニングを一緒に施工
1・・・ダンプクリーニングの注意点は、後ろ作業で四隅を清拭後に、
奥から一方拭きをし、入り口へ戻る。
2・・・使用したモップヘッド及び清拭布は、赤バケツに捨てる。
⑤新しいモップヘッドを青バケツから持ち出して次の部屋へ移動する。
感染症患者の病室清掃と一般病室の清掃の違い
実技
洗剤と解説
感染症患者の病室清掃と一般病室の清掃の違い(15分/160分)
【感染症患者病室の清掃】
感染症病室の場合は、抗菌剤配合洗剤希釈液を使用。
資機材の準備は、全て黄色の使用。感染症によるプロテクターの装着。
黄色
①入り口をモップで清拭し、清拭したところに、使用する資機材を置く。
②床面のダンプクリーニングを前作業で、自らの通路を確保しながら
清拭する。
③ダンプクリーニング以外の他のステップを実施。感染症患者の場合
は、患者が在室されているため、ハイダスティングはしない。
④清掃作業完了後、モップヘッド・清拭布・プロテクターは、剥ぎ取り感
染性廃棄物もしくは、感染性洗濯物の袋に入れて清拭布で使用
器材と靴を拭き上げて室外に出る。・・・ディスポダストクロス等のディスポ
製品の使用も可能。
バイオアプリケーターpro
ディスポダストクロス
感染症患者の病室清掃と一般病室の清掃の違い
*清・汚の観念から清掃順路を考える。
ナースステーション・易感染者病室・一般病室・感染症病室・トイレ等への順路に要注意
*抗菌剤配合洗剤の使用の場合は、感染症患者病室・病棟に感染症が蔓延する可能性が
ある場合・蔓延した場合、及び、新型インフルエンザ(豚Aインフルエンザ)等蔓延が予想される場合
は、当該病棟・全館で抗菌剤配合洗剤の使用とする。
注意:1室1モップの場合。
1モップ2バケツの場合は、抗菌剤配合洗剤の必要性。(英・米)
*患者退室後除菌清掃もステップは同じとなる。この場合は、抗菌剤配合洗剤使用となる。
感染症患者退室後除菌清掃は、上部除塵を行う。抗菌剤配合洗剤の清拭で充分であるが、
病名により「感染管理」認定看護師と協議も必要。
*ドイツでは、トロリーの移動中に落下菌からモップヘッドを守るため、バケツに蓋をつけたり、枚数
を制限している場合があります。
環境整備における手指衛生
環境整備において手指衛生が必要な場面とは?(10分/170分)
基本的に、環境衛生作業に置いては、プラスチック手袋、マスク等を装着します。
作業完了後に手洗いの励行は言うまでもありません。
感染症患者病室に関しては、必要に応じたマスク、プラスチックエプロンを装着し、
室内で脱ぎすてて出ます。
一作業完了後には、手洗いが必要です。(プラスチック手袋ピンホール等のリスク回避のため)