「 餅」 - 一般財団法人|日本健康増進財団

「餅」
餅は、現代では正月の風物詩ですが、
日 本では古くから正 月 以 外の節 句や季
節の変わり目、吉事の際にも餅をついて
食べる 習 慣があ り ました。 時 代 を さか
のぼると 古 墳 時 代の土 器に米などを 蒸
すために使 われていたと 推 測 される 器
具が見つかっており、この頃には餅の仲
間が作られていたと推測されています。
現 在では、 餅は地 方ごとにさまざま
な違いが生まれており、たとえば保存の
健やかな食生活のため、
栄養豊かな〝旬〟の食材を
ご紹介しているこのページ。
今回の題材は、
日本の正月といえばこれ、
「餅」です。
でん粉は、水分とと
も に 加 熱 する と 構 造
が崩れ、粘性が増しま
す(糊化)。この状態のでん粉をαでん
粉といい、消化もしやすくなります。α
でん粉は冷めると元の状態(βでん粉)
に戻 り ますが、 再 加 熱すれば再びαで
ん 粉にな り ます。 餅 は、 βでん 粉の 状
態で保存し、消化のよいαでん粉に変え
て食べるという賢い食物です。
もち 米は、 網 状の分 子 構 造 を もつで
ん粉(アミロペクチン)で構 成されるた
め伸びやすいのに対し、うるち米はアミ
ロペクチン以 外に鎖 状の分 子 構 造のでん
粉(アミロース)を % 程 度 含むため、
練って固めても切れやすい性質が現れま
す。また、水分を吸収しやすいもち米は、
うるち 米と 同 様に「 炊いて」 加 熱 する
と 水 分を 吸 収し過ぎ、 柔らかくなりす
ぎるため、「蒸して」加熱します。
栄養
餅のエネルギーは 100g当 た り 約
230キロカロリー。ご飯の同160キ
ロカロリーと 比べ高カロリーで消 化 もよ
いため、食べ過ぎには要注意です。米が
必 須アミノ酸 を 多 く 含 むため、 栄 養 学
的にはバランスのよい食 品ではあります
が、大豆製品と一緒に食べるとさらに良
好となります。
餅の
漢字の「餅」は、 もともと中国では
粉 を 練って固めた料 理 を 指し、ワンタ
ンや焼売、 饅頭の原型などに使われて
いました。臼と杵でついて作る
「つき餅」
は、日本以外ではあまり見かけません。
一方、 日本でも 穀 類の粉や豆 類を潰し
理や菓子で今も残っています。
て練って固めた「 練り餅 」が、 郷土料
同じ米から作るお菓子でも、 うるち
米の粉を固めて焼いた煎餅は練り餅の一
種、餅を砕いて揚げたおかき(かき餅)
目 次
旬菜百景
餅
役に立つ健康情報
知っておきたい健康情報
妊婦と薬
大人のこだわり充実ライフ 相撲
産婦人科医からのメッセージ~2
2
3
「生殖補助医療」と
子どもを
取り巻く問題
財団ニュース
はつき 餅の仲 間 と 考 えることができ、
見た目は似ていますが、 原 料の米・餅
の製法ともにかなり差があります。
財団職員が全衛連から
表彰されました!
13
14
19
ための伸し方を見ても「伸し餅」
「切り
餅」
「角餅」
「丸餅」などさまざまです。
餅の科学
餅を作る3つのカギは、でん粉・水分・
熱です。
20
~安心して健康な赤ちゃんを!
一般財団法人日本健康増進財団前代表理事
産業医科大学元学長 ・ 東京大学名誉教授
和田 攻
おさむ
「妊娠しているのを知らないで薬を飲ん
で し ま っ た 」、「 ど う し よ う 」 な ど と 心 配
な お 母 さ ん が、 正 し い 知 識 を も っ て、 安
心 し て お 子 さ ん を 出 産 さ れ る よ う、 十 分
理 解 さ れ る た め の 情 報 を ま と め ま し た。
一 般 に、 そ れ ほ ど 心 配 す る こ と は あ り ま
せ ん が、 心 配 で あ れ ば、 専 門 と す る 情 報
センターが各地にあります。ご相談され、
安心して、お子さんを出産してください。
今回の情報
まず、基本的な知識
を身につけましょう
⑴ 妊娠中に服用すると本当に危険という薬は、
それほど多くありません。
正しい科学的な調査で、人に実際奇形児が生ま
れると判断され、絶対的に禁忌とされている薬は
少なく、異常児が生まれたという報告があるもの
の、 正 し い 統 計 的 な 調 査 が な さ れ て い な い も の
が多く、直ちに大変危険というものでもありませ
ん。また、一般に、その異常の頻度も少ないもの
です。
さらに、成書に、異常児出産のリスクのある薬
と し て 示 し て い る 根 拠 の 半 数 以 上 は、「 多 く の 量
の薬を投与した動物実験で、仔に奇形などがみら
れ た 」 と い う も の で、 実 際 に 人 で み ら れ た も の で
はありません。動物実験の結果を直ちに人に結び
つけられるものでもありません。したがって、こ
れ ら の 薬 の 多 く は、「 薬 を 使 う こ と の リ ス ク が、
薬の使用の利益を上回る場合は服薬しない方がよ
い」という判断になっています(有益性服用)。
わ が 国 の 実 際 の 調 査 で、 自 然 に 流 産 と な る 率 は
%とされています。また、奇形児(出産時に発
見 さ れ る、 外 観 的 に 明 確 な 大 奇 形 ) の 率 は 3 %、
すなわち新生児1万人のうち300人とされてい
%)、 薬 剤 使 用 が 原 因 で あ る と 特 定
ます。また、その原因は、図1のように、不明が
最 も 多 く(
人でした、薬剤による実際の催奇形率は、非常に
されたのは1%、すなわち新生児1万人のうち3
55
少ないことが分かります。
3
1
13
薬(1%)
突然変異(7%)
(8%)
不明
(23%)
遺伝病
(Scharden、JL)
妊娠週数と胎児への薬の影響との関係を図2に
示します。最初に、妊娠週数の数え方を知ってお
週0日となります。
く必要があります。最終月経の開始日を0週0日
とし、分娩予定日は妊娠
① 妊娠週数と胎児への影響は、図のように最初の
妊娠4週未満(妊娠3週まで)は受精卵が十分
All
分化しておらず、
全体として死滅する(流産)か、
全く影響を残さない時期です。
「全てか無か(
週までは、器官が形成される時
)
」と呼んでいます。胎児が発育してい
or None
れば全く心配ありません。
② 妊娠4週から
週から分娩までは、奇形をおこす心配は
期と呼ばれています。
③ 妊娠
ない時期ですが、多くの薬は胎盤を通過して胎
児に移行するため、胎児の発育の抑制、胎児の
機能的発育への影響、子宮内胎児の死亡(以上
を 胎 児 毒 性 と 呼 び ま す )、 ま た は 分 娩 直 後 の 胎
児の薬の量が急に低下することによる薬離脱の
影響がみられます。
④ 授乳中は、わが国の場合薬の使用に関する添付
書に「授乳中止」と書かれていることが多いで
すが、母乳の栄養的なメリットがある栄養や免
疫力の向上、肥満の防止、認知能力の向上など
を考え、安易に授乳を中止すべきでもないとさ
れています。担当医、専門医療機関と十分相談
してください。ただし、抗がん薬、放射性薬剤
は禁忌であり、リチウム、フェノバルビタール、
ヨード製剤は乳児の母乳からの摂取量が、薬の
作用が出る量に近くなるため要注意です。
⑶ 薬 を の む 前 に、 自 分 が 妊 娠 し て い な い か、
そ の 薬 を の む 必 要 性 は 何 か、 最 後 の 月 経 は
いつからであったかを必ずチェックしてお
き ま し ょ う。 ま た、 医 師 に 受 診 の 時 は 必 ず
話しましょう。
から外性器まで順に形成され、その時期に従っ
通常、中絶の対象となりません。
そして、よく説明を聞き、納得しましょう。直
ち に 中 絶 を 考 え る こ と は、 絶 対 に や め ま し ょ う。
⑷ 妊 娠 が 分 か っ た 時、 す で に 服 用 し て し ま っ
て い た 時 は、 前 述 の よ う に、 そ れ ほ ど 心 配
せ ず、 念 の た め、 主 治 医 や 専 門 医 療 機 関 で
相談しましょう。
て、形成される器官に奇形が出現します。とく
期 で す。 器 官 は 図 の よ う に、 中 枢 神 経 系( 脳 )
16
相談医療機関は、各地の医師会や大学病院、病院
胎児毒性が問題
胎児の臓器障害、羊水量の減少、
陣痛の抑制や促進、新生児期
への薬剤の残留が問題となる。
All or Noneの法則 催奇形性が問題
薬剤の影響が
妊娠2カ月が最も問題になる
残らない時期
3、4カ月では性分化への影
響などがある。
(55%)
⑵ 妊 娠 の 時 期 で、 胎 児 へ の 薬 の 影 響 は 異 な り
ます。
環境因子
40
2週0日 8週0日
40 週0日
4週0日
妊娠月数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
◦妊娠 16 週から分娩までは奇
形の心配は無くなるが、全
体的な胎児毒性による機能
の異常となる.ただし、薬
の服用に比べ、各々の発生
率は極めて低い。
染色体異常(6%)
15
分娩
最終月経開始日=
0週0日
◦妊娠4~ 15 週は器官が形成
される時期で、とくに妊娠
4~7週は最も敏感な時期
で、その時の催奇形薬服用
に一致した形成器官の奇形
が生ずる。
奇形のある新生児は、1 万人の児のうち 300 人と
多いが、薬の影響による奇形のある新生児は1万人
の児のうち3人と極めて少数です。
に妊娠4~7週が最も敏感な時期で、絶対過敏
胎児の発生・発育の経過と奇形や全体的な胎児毒性の危険な時期との関係
図2
先天性奇形の原因
図1
◦妊娠3週までは 「全てか無
か」、すなわち、流産か異常
なし。
4
が実施していることが多く、調べてみてください。
の安全性評価(リスクの評価)を一覧表にしまし
服用の安全性をチェックするため、主な薬の現在
わが国では、薬の有害性を必ず添付書に書くこ
とを製造者に義務付けています。そこには、妊婦
関の薬剤師の方に聞いてください。
精神疾患
38.3 ± 1.9
中枢疾患
38.2 ± 1.8
血液疾患
37.8 ± 2.9
消化器疾患
38.2 ± 2.6
本態性高血圧
35.4 ± 4.2
骨・筋肉疾患
38.4 ± 1.6
肝疾患
37.7 ± 3.2
30 32 34 36 38 40 42
分娩週数
た( 表 1)。 最 近 は 患 者 さ ん 毎 に 処 方 さ れ る 薬 の
東京では、
38.2 ± 2.7
や授乳婦の服用の安全性の項があり、詳しく示さ
付属器疾患
一覧表を医療機関は患者さんに渡すことになって
38.7 ± 1.7
①国立成育医療センターの「妊娠と薬情報セン
ター」
呼吸器疾患
れています。参考にしてください。ただし、多く
37.3 ± 2.8
います。そこには妊婦への注意も書いてあります。
自己免疫疾患
は動物実験での催奇形性や胎児毒性のみが示され
36.8 ± 3.9
是非ともご自分が服薬する一覧表の薬をチェック
腎疾患
②虎ノ門病院の「妊娠と薬相談外来」
38.4 ± 2.1
ていることが多く、実際に人での発生がないもの
甲状腺疾患
してみてください。また、インターネットなどで
37.9 ± 2.5
③聖路加国際病院の「妊娠と薬相談クリニック」
などがあります。
心疾患
で、その解釈は主治医や専門の先生に聞くように
37.9 ± 2.8
薬はどんな病気で用いられているか、薬の種類と
子宮疾患
してください。
37.8 ± 2.2
薬の名前で探してください。薬の名前は一般に商
糖尿病
品名で一覧表に記載されています。しかし、種類
37.9 ± 2.5
また、世界的には、米国の食品薬品局(FDA)
の薬の安全性評価カテゴリー(表2)が用いられ
基礎疾患あり
ており、参考になります。
38.7 ± 2.1
が多く、全部記載していません。その場合、一般
対象群
名で薬を検索してください。不明の場合、医療機
横線と数字は、平均値±標準偏差(幅)を示す。
図の中の赤字は、有意の短縮(早産)を示す。
⑸ 妊婦さんが現在罹っている病気の治療も極
め て 重 要 で す。 勝 手 に 薬 を 中 止 せ ず、 主 治
医 と よ く 相 談 し て く だ さ い。 薬 の 有 効 性 が
薬のリスクより上回る時は薬を服用すると
いう利益性投与の原則も十分理解してくだ
さい。
「妊婦が病気 を
もっている場合は
早産 になりやすい」ことも
知っておく
図3は、妊婦の病気と分娩の週数を示したもの
です。一般に早産となりやすく、とくに腎臓の病
気と高血圧では、平均で2週間位、出産が早くな
ることが知られています。
妊娠中の服薬 における
主な薬の安全性
念のため、妊娠を知らずに服薬してしまった場
合や長い間医師の治療を受けていた場合に、薬の
5
妊婦が種々の病気をもつ場合、分娩週は短くなり、
早産となりやすい。とくに、腎臓の病気と高血圧
で著しい
図3
2
3
表1
妊娠中の服用で胎児にリスクのある主な薬(多くのデータのまとめ)
人でリスクが認められたもの
動物実験のみでリスクが認められたもの。または人の安全性が未確認のもの
薬の
薬の種類
(病気)
抗 がん 薬
抗 生物 質
一般名
全てリスクが大で使用禁忌
テトラサイクリン
アミノグリコシド
抗 菌 薬
抗真菌薬
抗結核薬
キノロン
トリメトプリム
ミコナゾール
フルコナゾール など
グリセオフルビン
ストレプトマイシン
エチオナミド
パラアミノサリチル酸
ガンシクロビル
バルガンラクロビル
抗ウイルス薬 デラビルジン
アマンタジン
リバビリン
リスク(胎児の異常)
商品名
ミノマイシン、アクロマイシン
カナマイシン、ゲンタシン、
ストレプトマイシン
主に動物実験
歯牙の着色、エナメル質の形成不全
聴覚神経障害による難聴あり。禁忌
クラビット、タリビット、バクシダール 動物実験、人へのリスクは低いが安全性不確立、
バクタ
先天性異常児の報告あり
イトリゾ-ル、フロリード、ジフルカン
動物実験で催奇形性
ポンシル
上述のように禁忌
ツベルミン
パス
催奇形性の報告(人)あり
イソニアジドとの併用で奇形出現率が高い
デノシン
バリキサ
レスクリプタ
シンメトリル
レベトール
催奇形性、変異原性、発がん性
催奇形性、遺伝毒性、発がん性
異所性妊娠、低出生体重
催奇形性
催奇形性で使用禁忌
インドメタシン、ジクロフェナク インダシン、ボルタレン、ランツジール、フェ 胎児の動脈管収縮、動脈管開存症
非ステロイド
アンフェナック、エモルファゾン ナゾックス、ベントイル、アルボクリノリル、 羊水過少症、胎児毒性
性鎮痛解熱薬
オキサプロシン、サリチル酸など ミリダシン、モービック、ニフラン、ポンター
(NSAIDs)
(アセトアミノフェン以外全て) ル、ブルフェン、バッファリンなど
牛頭病薬
高血 圧 薬
エルゴタミン
カフェルゴット、クリアミン、ジヒデルゴット 子宮収縮、胎盤・臍帯の血管収縮
アンジオテンシン交換酵素
カプトリル、レニベース
阻害薬(ACE 阻害薬)の全て
アンジオテンシン受容体
ニューロタン
拮抗薬(ARB)の全て
カルシウム拮抗薬(注射薬以外) アムロジン、ヘルベッサー、ワソラン
胎児腎障害:無尿、羊水過少、肝低形成四肢拘縮、
頭蓋変形
同上が推定されている
動物実験で妊娠期間、分娩時間の延長
妊娠 20 週以降は使用可
動物で催奇形性
レセルピン
アポプロン
サイアザイド
ニュートライド、フルイトラン、ベハイド 新生児の血小板減少、黄疸、徐脈の報告あり
アミオダロン
ジソピラミド
アンカロン
リスモダン、ノルベース、カフィール
催奇形性
催奇形性
ワソラン
アスペノン
タンポコール
ベプリコール
動物実験で異常あり
安全性は確立されていない
動物実験で催奇形性あり
動物実験で分娩障害、体重増加抑制
アーチスト、セレクトール
メインテート、ナディック
カリビスケン、トランデート
ローガン、アルマール
トラサコール、ミケラン
セレカル、ハイパジールなど
動物実験で発生異常、体重減少、死亡率増加など
抗不整脈薬 ベラパミル
アプリンジン
フレカイコド
ベプリジル
カルベジロール、セリプロロール
ナドロール、ビソプロロール
β遮断薬
ピンドロール、ベラタロール
(全て要注意か
使用禁止) アモステロール、アルチノロール
オクスプレノロール、カルデオロール
チリソロール、ニプラジロールなど
HMG-CoA 還元酵素阻害薬全て
抗脂質異常 フィブラート系薬
症薬
(全て要注意か プロブコール
使用禁止)
陰イオン交換樹脂
トランスポータ阻害薬
メバロチン、リポバス、ローコール
リピトール
先天性奇形の報告あり
リポクリン、ビノグラック、リピディル
ベザトール
イエスタミン、エタクレート、シンレス
タール、スイムタール、ピヨコールなど
安全性が未確認
コレバイン
オイグルコン、アマニール、グリミクロン、
ヘキストラスチノン
(基本的には
ファスティックス、グルファスト
速効性インスリン分泌促進薬
服用せず、
インスリンに ビグアナイド薬
メルビン、ジベストB
切り替える) α - グリコシダーゼ阻害薬
グリコバイ
抗糖尿病薬 スルホニル尿素薬
新生児の低血糖、巨大児.動物で奇形
動物実験で催奇形性
動物で催奇形性、乳酸アシドーシスのリスク
安全性が未確認
6
薬の
薬の種類
(病気)
抗胃潰瘍薬
一般名
プロトンポンプ阻害薬
抗コリン薬
プロスタグランディン薬
リスク(胎児の異常)
商品名
オメプラール、タイフロロン、パリエット
ブスコパン、コリオパン、パドリン
ウルダート、ウガロン、プロミド
セクレパン
リュウマトレックス、メトレート
アラバ
動物実験でリスクあり
安全性が確立されていない
禁忌
メソトレキサート
妊娠中禁忌。妊娠計画の 3 ~ 6 カ月に中止
レフルノミド
妊娠中禁忌。妊娠計画の 2 年前に中止
生物学的製剤
アクテムラ
トシリズマブ
安全性が未確認.10 週間前に中止
抗リウマチ薬 リツキシマブ
新生児の B 細胞枯渇、リンパ球減少、1 年前に中止
リツキサン
安全性が未確認、10 週間前に中止
オレンシア
アバタセプト
催奇形を疑う症例あり
メタルカプターゼ
ローペニシラミン
染色体異常児の出生、早産、低出体重児、動物で奇形
イムラン
アザチオプリン
安全性が未確認
モーバー
アクタリット
動物で高用量で仔の骨格異常
ダイドロネル、ベネット
抗骨粗鬆症薬 ビスホスホネート
(父親の服薬でダウン症の報告あり)
痛風発作薬 コルヒチン
動物で催奇形。
コルヒチン
テグレトール
カルマバゼヒン
ミノアレビアチン
トリメタジオン
デパケン、セレ二カ R
抗てんかん、 バルグロ酸
催奇形性あり
フェノバール
けいれん薬 フェノバルビタール
アレビアチン、ヒダントール
フェニトイン
マイソリン
プリミドン
ドミン
タキペキソール
抗パーキン プラミペキソール
動物実験で妊娠率低下、胎児数低下、体重低下
ビフロール
レキップ
ソン病薬 ロビニロール
動物実験で発生異常
ドプス
ドロキシドーパ
チミペロン、ハロペリドール トロペロン、セレネース
抗精神病薬 ブロムペリドール、フルフェナジン インプロメン、フルデカシン
動物実験で催奇形性
モサプラミン
クレミン
抗 不 安 薬 ヒドロキシジン
口蓋裂の発生、新生児の神経精神症状
アタラックス
抗うつ病薬 炭酸リチウム
心臓奇形
リーマス
(現在は使用禁忌) サリドマイド
(多発性骨髄症に個人輸入) サリドマイド肢症、内臓奇形
サリドマイド
睡眠薬
子宮収縮
プロスタグラン アルプロスタジルアルファデクス プロスタグランディン
ディン関連薬 エンプロスケル
カムリード
動物実験で胎児毒性
蛋白同化 ナンドロロン、メテノロン、 デカ ・ デュラミン、プリモボラン
ホルモン薬 メスタノロン
メサノロン
女児胎児の男性化
男 性 テストステロン、
テスチノン、エナルモン
ホルモン薬 メチルテストステロン
エストラジオール、エストリオール エストラダム、エストリオール
先天異常(心臓病、四肢欠損)、女児の外性器の男性化
女 性
ダナゾール(子宮内膜症)
女児の外性器の男性化
ポンソール
ホルモン薬
合成エストロゲン、ノルエチステロン プレマリン、ノアルテン
チガソン
抗乾癬症薬 エトレチナート
催奇形性
チョコラA(大量)
ビタミンA薬 ビタミンA剤
安全性が不確認
嫌 酒 薬 シアナミド、ジスルフィラム シアナマイド、ノックビン
抗 凝 固 薬 ワルファリンカリウム
ワーファリン
児の軟骨形成不全
プレタール
シロスタゾール
動物実験で胎仔死亡増加
抗血小板薬
ドルナー
ベラプロスト
安全性が未確認
抗 嘔 吐 薬 ドンペリドン
ナウゼリン
動物実験で催奇形性(骨、内臓)
抗甲状腺薬 チアマゾール(メチマゾール) メルカゾール
臍腸管奇形、後鼻腔・食道閉鎖
●禁忌とされている薬は、ぜひ主治医と相談して服用しないようにしてください。
●その他の人で異常がみられた薬は、なるべく服用しないようにしてください。ただし、利益がリスクを上回ると
判断されたときは服用することもあります。
●動物でのみ異常がみられ、人では今まで異常の報告のない薬は、病気によって不可欠の薬であり、利益がリスク
を上回ると主治医が判断したときは服用することもあります。
●最後は主治医や専門の先生のご意見を尊重して、最終的にはご本人の判断です。
●ここにあげていない薬の多くは安全と考えられますが、妊娠したときは必ず主治医と相談してください。
7
週以降であれば、カルシウム拮抗薬のアダラー
トなども使用が認められています。主治医の指
や多く、要注意で、C型肝炎の薬であるリバビ
リンは禁忌とされています。また、キノロン系
導に従ってください。
ア ミ オ ダ ロ ン( ア ン カ ロ ン )
の薬(クラビットなど、表1参照)は避けた方
抗不整脈薬
100mg/dL 以下
HbA1c
6.0%未満
がよいとされていますが、安全であるとする報
とジソピラミド(リスモダン、ノルベース、カ
平均血糖
告もあります。
フィール)以外は使用可とされています。これ
60mg/dL 以上
非 ス テ ロ イ ド 性 の 薬 は、 胎 児
深夜2時~早朝6時の間
鎮痛解熱薬
らの薬は人で催奇形性が認められているからで
120mg/dL 以下
の動脈管への影響が示され、要注意です。アセ
す(表3)。
動 物 実 験 で 異 常 が み ら れ、 全
食後2時間
トアミノフェン(カロナール)は安全とされて
β 遮 断 薬
140mg/dL 以下
います。
てについて注意して用いる(利益性服用)とさ
れています。主治医と相談してください。
100mg/dL 以下
食後1時間
通常頻用されているアンジオ
多くの薬で人で催奇形が示さ
食前
高 血 圧 薬
抗脂質異常薬
95mg/dL 以下
テンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受
空腹時
容体拮抗薬やカルシウム拮抗薬は使用しない方
れており、安全性の確認がされていない薬も多
自己血糖測定中における血糖コントロール目標
がよいとされ(表1)、アルドメットとアプレ
メキシレチン
C
なし
小
フレカイニド
C
なし
小
プロパフェノン
C
なし
小
プロプラノロール
C
なし
小
ソタロール
B
なし
小
アミオダロン
D
あり?
大
ベラパミル
C
なし
中
ジルチアゼム
C
不明
中
ジゴキシン
C
なし
小
アデノシン
C
なし
小
妊婦の糖尿病には妊娠して初
く、主治医と相談してください(表1)。
(Page、RL.1995)
ゾリンが第一選択薬と認定され、この両薬に変
小
抗糖尿病薬
なし
更する方がよいとされています。また、妊娠
B
主な治療薬の妊娠中と
授乳時の服用の
胎児や新生児 への
リスクの判断 の現状
基 本 的 に、 胎 児 に は 有 害 で す。
多くの関連学会などから、各々の病気群のリス
クの評価が行われ、公表されています。
抗 が ん 薬
また、妊娠とがんは相互に影響するもので、原
ペニシリン系、セフェム系(ケ
則、使用は禁止されます(禁忌)
。
抗感染症薬
フレックス、フロモックスなど)
、マクロライ
ド 系( ク ラ リ シ ド、 エ リ ス ロ マ イ シ ン な ど )、
リンコマイシン系、バンコマイシン系の抗生物
コントロール目標
採血時間
※利益性服用:病気を治すために服用した方が、
リスクを上回ると判断された時の服用
質は通常安全とされています。テトラサイクリ
リドカイン
FDA
判 断
カテゴリー
安全
A
ほぼ安全
B
人でのリスクは不明であるが
C
利益性服用※可
人でのリスクの可能性があるが
D
緊急時には利益性※を容認
X
禁忌
ンとアミノグリコシドはリスクがあります(表
妊婦の糖管理は通常より厳しい
表4
(ACOG.2005)
⑸
⑹
⑺
小
⑻
小
なし
その他
なし
C
人の調査と報告例、動物実験および治療の
有益性から総合的に判断。現在は、表では
なく、記述式になっているが、この表は判
断に用いられやすい。
1参照)
。抗ウイルス薬はリスクのある薬がや
FDA のカテゴリーは表2を参照されたい
20
C
ジソピラミド
3
プロカインアミド
2
小
1C
なし
1B
C
1A
FDA
胎児への
催奇形性
カテゴリー
危険性
薬 剤
抗不整脈薬
の分類
キニジン
4
⑶
⑷
不整脈の薬と妊娠中の服薬の安全性
表3
米国食品薬品局(FDA)の
薬の安全性判断カテゴリー
表2
4
⑴
⑵
8
表5
胃炎や消化性潰瘍の薬と妊娠中の服薬の安全性
あり
あり
あり
あり
あり
有益性服用
有益性服用
有益性服用
有益性服用
C
あり
あり
あり
あり
抗コリン薬
臭化ブチルスコポラミン(ブスコバン)
臭化チメピジウム(セスデン)
臭化ブトリピウム(コリオパン)
臭化プリフィニウム(パドリン)
選択的抗ムスカリン薬
硫酸アトロピン(硫酸アトロピン)
なし
なし
なし
なし
制酸薬
マーロックス
ヒドロタルサイド(ナシッド)
防御因子増強薬
B
なし
なし
なし
なし
なし
なし
あり
あり
あり
あり
あり
なし
なし
抗ガストリン薬
セクレチン(セクレバン)
ウロガストロン(ウガロン)
プログルミド(プロミド)
有益性服用
有益性服用
禁忌
なし
なし
なし
プロスタグランジン製剤
ミソプロストール(サイトテック)
オルノプロスチル(アロカ、ロノック)
エンプロスチル(カムリード)
禁忌
禁忌
禁忌
X
なし
なし
なし
制吐薬、消化管運動調整薬
ドンペリドン(ナウゼリン)
メトクロプラミド(プリンペラン)
マイレン酸トリメプチン(セレキノン)
禁忌
有益性服用
有益性服用
B
あり
あり
あり
(佐藤、香月、2003)
9
のがあり、十分注意する必要があります(表1、
なし
なし
なし
有益性服用
有益性服用
有益性服用
有益性服用
有益性服用
有益性服用
有益性服用
有益性服用
禁忌
禁忌
表5)。
スクラルファート(アルサルミン)
アセグルタミドアルミニウム(グルマール)
アルジオキサ(アランタ、イサロン)
塩酸セトラキサート(ノイエル)
テプレノン(セルベックス)
アズレン L- グルタミン(マーズレン S)
レバミピド(ムコスタ)
プラウノトール(ケルナック)
エカベトナトリウム(ガストローム)
ポラプレジンク(プロマック)
マイレン酸イルソグラジン(ガスロン N)
ゲファルナート(ゲファニール)
塩酸ベネキサートベータデクス(ウルグート)
通 常 の 防 御 因 子 増 強 薬( ア ル
あり
薬
有益性服用
ベラトンナアルカロイド
⑼
の
あり
あり
胃
有益性服用
有益性服用
サルミンなど)や攻撃因子抑制薬は特に問題な
塩酸ピレンゼピン(ガストロゼピン)
臭化チキジウム(チアトン)
く用いられていますが抗潰瘍薬の中にはゲファ
B
B
B
B
ニールやウルグート、プロスタグランディン製
ニザチジン(アシノン)
シメチジン(タガメット)
ファモチジン(ガスター)
塩酸ラニチジン(ザンタック)
塩酸ロキサチジンアセタート(アルタット)
スリン療法に切り替える方がよいとされていま
有益性服用
有益性服用
有益性服用
有益性服用
有益性服用
H2 受容体拮抗薬
す( 表 1)。 ま た、 糖 の 管 理 も 通 常 よ り 厳 し く
あり
あり
あり
めて軽い糖代謝異常を示す妊娠糖尿病と、以前
C
B
からある通常の糖尿病(糖尿病合併妊娠)があ
オメプラゾール(オメプラール)
ランソプラゾール(タケプロン)
ラベプラゾールナトリウム(パリエット)
剤および鎮吐薬のナウゼリンは禁忌とされるも
有益性服用
有益性服用
有益性服用
プロトンポンプ阻害薬
指導されています(表4)。
授乳注意
りますが、妊婦の糖異常は胎児への影響が極め
FDA カテゴリー
て多く、基本的には通常頻用されている経口糖
添付文書
尿病薬はリスクもあり、全て注射薬であるイン
有益性服用:有益性が安全性を上回ると判断した時に服用可。FDA カテゴリーは表2を参照されたい。
対症療法薬
B
C
C
妊娠初期
妊娠 30 週以降.動脈管早期閉鎖リスク上昇
妊娠初期の使用が口唇口蓋裂の増加に関連.
副腎不全のリスクを高める
B
先天性奇形のリスクを増加させない
葉酸製剤と併用
必要最少量の継続使用可能
抗リウマチ薬
C
C
D
X
C
リツキシマブ(リツキサン)
C
(Hazes、JM.2011)
図4
抗てんかん薬服用と先天性奇形の発生頻度
抗てんかん薬全体
デバケン Ⓡ
アレビアチン Ⓡ
その他は抗てんかん薬を服
用している女性の奇形児の
発生頻度です。ほとんどの
抗てんかん薬でリスクの増
加がみられます。
テグレトール Ⓡ
フェノバール Ⓡ
ラミクタール Ⓡ
8.6 ~ 16.7
3.4 ~ 10.5
4.7 ~ 6.5
2.0 ~ 5.2
2.1 ~ 2.9
0 4 8 12 16
%
先天奇形の発生頻度
主な薬の妊娠中服用の安全性
服用なし:てんかんの女性
の奇形児の発生
頻度
7.9
⑿
結 核 の 薬
0.8 ~ 5.0
図4)。
服用なし
を表7にまとめてあります。中心薬として用い
1.6 ~ 2.2
られるイソニアジド(イスコチン)、リファン
一般集団:主として正常な
女性の奇形児の
発生頻度
一般集団
ピシン、エタンブトール(エブトール)は、通
てんかんの妊婦での発生率
は、正常妊婦(一般集団)
に比べ、2 ~ 3 倍奇形児が
多いが、抗てんかん薬服用
でさらに高くなります。
一般に人で催奇
トシリズマブ(アクテムラ)
抗 TNF 抗体は妊娠初期には胎児移行性なし
参照可能な人間の妊娠データがない
妊娠計画の 10 週間前に中止
参照可能な人間の妊娠データがない
妊娠計画の 10 週間前に中止
新生児の可逆性B細胞枯渇、リンパ球減少
半減期が長く、妊娠計画の 1 年前に中止
抗てんかん・抗けいれん薬
B
C
⑾
が重要です。
TNF 阻害薬
アバタセプト(オレンシア)
形性が認められており、注意が必要であり、本
生物学的製剤
人に対する薬の効果が、他の薬がなくて強く求
X
HCQ は使用可能
妊娠中寛解維持のために継続可能
妊娠中禁忌
妊娠計画の 3 ~ 6 カ月前に中止
妊娠中禁忌
妊娠計画の 2 年前に中止または血漿よりコレ
スチラミンで除去して 2 週間以上
められている時に利益性服用となります(表1、
サラズスルファピリジン
(アザルフィジン)
シクロスポリン / タクロリムス
(プログラフ)
抗マラリア薬
アザチオプリン(イムラン)
メトトレキサート
(リウマトレックス)
レフルノミド(アラバ)
表6に主な薬のリスクをまと
非ステロイド性鎮痛解熱薬
(表1参照)
ステロイド薬
⑽
抗リウマチ薬
具体的な対策
めました。メトトレキサート(リウマトレック
FDA
カテゴリー
薬
ス、メトレート)とレフルノミド(アラバ)は
FDA のリスクカテゴリーの内容は表2を参照されたい。
禁忌です(表1参照)
。また、生体作用の強い
関節リウマチの薬と妊娠中のリスク
薬もあり、注意が必要で、主治医と相談、指導
表6
(Jeha、L.E.2001)
10
表7
結核の治療薬の妊娠中服用の安全性
◦ FDA カテゴリーの内容は表2を参照されたい。
◦イソニアジド、リファンピシン、エタンブトールは妊婦に安全に用いられると考えられており、結核による人工中絶の理
由にならない。
薬 剤 名
胎盤移行性
(一般名(略号)、商品名一例)
胎児毒性
(臍帯/母体比)
イソニアジド (INH)
イスコチン錠 100mg、原末、
注 100mg/2ml/A
リファンピシン (RFP)
リファンピシンカプセル 150mg
母乳移行性
FDA
(乳児用量に対する比率%) カテゴリー
あり
(0.73)
中枢神経系の異常
あり
(6.4 ~ 25)
C
あり
(0.12 ~ 0.33)
出血
あり
(0.57 ~ 7.3)
C
不明
B
あり
(0.75 ~ 1.5)
C
あり
(2.8 ~ 6.9)
C
リファブチン (RFB)
ミコブティンカプセル 150mg
不明
ピラジナミド (PZA)
ピラマイド末
不明
黄疸
エタンブトール (EB)
エブトール錠 125、250mg
あり
(0.75)
ストレプトマイシン (SM)
硫酸ストレプトマイシン筋注 1g/V
あり
(< 0.5)
耳毒性、鵞口瘡、下痢
あり
(0.95 ~ 22.5)
×
エチオナミド (TH)
ツベルミン錠 100mg
不明
発達異常、催奇形性
不明
C
エンビオマイシン (EVM)
ツベラクチン筋注 1g/V
不明
不明
不明
サイクロセリン (CS)
サイクロセリンカプセル 250mg
不明
あり
(11 ~ 28)
C
パラアミノサリチル酸 (PAS)
ニッパスカルシウム錠 0.25g、顆粒
不明
下痢
あり
(0.05 ~ 0.95)
C
あり
(0.66)
骨成長障害
あり
C
レボフロキシン (LVFX)
クラビット錠100、250、500mg、顆粒
(菅野、吉澤 2013)
表8
肝臓の治療薬の安全性
◦ FDA カテゴリーは表2を参照されたい。
肝障害の原因
常安全に用いられています。ストレプトマイシ
表 8 に ま と め て あ り ま す。 C
ンは母子ともに聴神経の障害があり、禁忌とさ
れています。
⒀
肝 臓 の 薬
型肝炎の経口薬であるリバビリン(レベトール)
は人で催奇形性が証明され、禁忌となっていま
す。その他の多くの薬は完全に安全であるとさ
11
れず、注意して使用するか、利益性服用となり
(三浦ら 2013)
ます。
5.原発性胆汁性肝硬変
6.薬剤性肝炎
7.胆道系疾患
プレドニゾロン(B)
アザチオプリン(D)
ウルソデオキシコール酸(B)
表 1 を 十 分、 ご 覧 に な っ て く
HEV
その他のウイルス
2.非アルコール性脂肪肝
3.アルコール性肝炎
4.自己免疫性肝炎
⒁
その他の薬
HCV
インターフェロン(C)
ラミブジン(C)
アデホビル(C)
エンテカビル(C)
リバビリン(X)
テラプレビル(B)
ださい。
1.ウイルス性肝炎
HAV
HBV
治療薬(FDA カテゴリー)
表9
妊娠中に感染すると胎児に影響のある感染症
有益性投与
BCG、日本脳炎、ポリオ、DPT/DT、B 型肝炎、肺炎球菌、
b 型インフルエンザ菌、A 型肝炎、狂犬病、黄熱病、コレラ
推 奨 せ ず
ヒトパピローマウイルス
禁
生ワクチン、
(風疹※※、麻疹、おたふくかぜ、水痘)
忌
授乳婦への接種
有益性投与
推
奨
ワクチンの種類
おたふくかぜ、BCG、日本脳炎、ポリオ、DPT/DT、B 型肝炎、
インフルエンザ、肺炎球菌、b 型インフルエンザ菌、
ヒトパピローマウイルス、A 型肝炎、狂犬病、黄熱病、コレラ
風疹、麻疹、水痘(感受性のある女性に対して)
表 12
妊娠中および授乳中の女性におけるインフルエンザの対処
~ワクチン治療薬は特に問題なく、母子へのメリットは大きい
妊娠中
1 インフルエンザ流行の季節では妊娠週数に係わらずワクチン接種を希望
授乳期
1
2
3
4
する妊婦は接種を受けることが望ましい。
2 妊婦が感染した場合には、抗ウイルス薬の投与は利益が不利益を上回る。
3 インフルエンザ患者と濃厚接触後妊婦・授乳婦人への抗インフルエンザウ
イルス薬の予防投与は、利益が不利益を上回る。
生ワクチンの接種(風疹、麻疹、水痘、流行性耳下腺炎など)は可能である。
インフルエンザワクチンの接種も可能である。
抗インフルエンザ薬の投与は可能であり、授乳を止めるべきではない。
インフルエンザ患者に濃厚接触した場合、抗インフルエンザ薬の投与は
可能である。
11
以上、妊娠・授乳と薬の服用とワクチン接
種について、現在の医学的な考えをなるべく
服用中の薬の商品名でまとめました。
ご心配なことが生じた場合、ご本人やご家
族の方々が一緒に調べ、また主治医や専門医
療機関でご相談され、安心してお子様をご出
産ください。重要なことはできる限りの情報
をもとに、ご自分で判断されることです。
※ インフルエンザワクチンの母体や胎児の危険性は極めて低く、なるべく接種した方がよい。
※※ 風疹ワクチン接種例からの先天性風疹症候群の発生は極めて少なく、誤って接種しても中絶
の必要はない。また、麻疹、流行性耳下腺炎、水痘の感染による先天性異常は極めてまれで
あるが、妊娠末期の妊婦の感染で新生児の感染がみられることがある。
DPT/DT:ジフテリア・百日咳 ・ 破傷風/ジフテリア・破傷風
12
妊娠中および授乳婦の予防接種のポイントを表
にまとめました。十分に理解して必要な予防接
ワクチンの種類
妊娠、授乳婦の
妊婦への接種
推
奨 インフルエンザ※
種はなるべく受けてください。とくに、インフル
(2)具体的なワクチン接種
エンザ流行の季節ではなるべくワクチン接種を受
いずれも可能である(有益性投与)
。
5
予防接種 とリスク
1 妊婦への生ワクチン接種は原則として禁忌である。
2 妊婦への不活化ワクチン接種は可能である(有益性投与)。
3 授乳婦への生ワクチン接種、不活化ワクチン接種は、
10
けてください。また、抗インフルエンザ薬の服用
(1)原則
のリスクは、インフルエンザを回避できるメリッ
妊婦、授乳婦へのワクチン接種
妊娠中に感染すると胎児に影響する感染症には
表9のものがあります。予防接種は、風疹、麻疹、
表 11
トの方が大きく、治療および予防の抗インフルエ
接種後は4週間以上(風疹および水痘ワクチンの場合は接種後8週間以上)は、
2 避妊するようにする。
3 妊娠判明後にワクチンを接種しても、妊娠中断の適応にはならない。
流行性耳下腺炎(ムンプス)
、水痘に生ワクチンが
1 各ウイルスの抗体価を測定することが望ましい
ンザ薬の服用も問題なく、メリットの方が大とさ
妊娠前に妊娠可能年齢の女性がすべきこと
ありますが、生ワクチンは妊婦には禁 忌 です。妊
ワクチンの有無
生ワクチン
生ワクチン
生ワクチン
生ワクチン
なし
なし
なし
なし
れています(表 )。
表 10
胎児への影響
先天性風疹症候群
先天異常は非常にまれ、妊娠末期の感染で新生児感染
先天異常は非常にまれ、妊娠末期の感染で新生児感染
先天異常は非常にまれ、妊娠末期の感染で新生児感染
まれに先天異常(小頭症、脳室拡大など)
産道感染で新生児ヘルペス
妊娠中期の感染で、まれに胎児水腫
まれに先天異常(小頭症、脳室拡大など)
娠前に予防接種をしておく必要があります(表 )
。
感染症
風疹
麻疹
流行性耳下腺炎
水痘
サイトメガロウイルス
単純ヘルペス
伝染性紅斑
トキソプラズマ
12
大人のこだわり充実ライフ
です。 幾 度か上 覧 相 撲を 開 催し、 勝
者 を 家 臣として召し 抱えたほか、 今
の土俵の原型を考案したのは信長と
する説もあります。
あって、力士絵は浮世絵の1ジャンル
野川・ 雷電などの人気力士の登場も
と 並ぶ庶 民の娯 楽の華で、 谷 風・ 小
ています。この時 代、 相 撲 は 歌 舞 伎
大 阪で「四季 勧 進 相 撲 」が開 催され
後、春・ 冬は江戸、夏は京都、秋は
が解 禁 されたのは1742年で、 以
日本の国技 、相撲。起源は「古事記 」や「日本書紀 」の時代にさかのぼり、
豊作を祈願する神事 としても行われたことから、伝統文化 としての性格を併せ持ちます。
その魅力
今 も 多 くの 人 が 熱 狂 する 大 相 撲。
相撲の魅力とは何でしょうか。ある人
は、 静から 動への躍 動 感といいます。
浮世絵の題材に
場 内がすっと 静まりかえる立 会から、
一瞬にして巨 漢 同 士が音を 立ててぶつ
として人気を博しました。
明 治 以 降は、それまで大 関が最 高
位 だった 番 付に横 綱が登 場し、 両 国
江戸時代。江戸初期、
国技館の開館、大日本相撲協会の発
今につながる大相撲
の仕組みができたのは
京都や大阪、
江戸では「勧進相撲」
(寺
足など、相撲は国民的な人気を博し
またある人は、多くの格闘技がポイン
社の造営費用等を捻出する興行)が
かり合う肉弾戦へ。この間は独特です。
ト制を取り入れた現代にあって、土を
盛んになり、一時は幕府が相撲禁止令
国技館、春場所(3月)は大阪府立体育会館、名古屋場所
(7月)は愛知県体育館、九州場所(11 月)は福岡国際
センターで開催します。
潔さをあげます。 相 撲は日 本 人の死
年6回の
式戦で、現在は年6回行われます。初場所(1
本場所 月)・夏場所(5月)・秋場所(9月)は両国
つける・ 土 俵 を 割ることにこ だわる
際の最終的な評決に行司は加わりません。ま
た勝負開始の合図は行司が行わず、立会で両力士が呼吸
を合わせて行う点も相撲の特徴です。現在、行司を務める
「行司家」は木村家・式守家がありますが、江戸時代ま
では吉田司家、服部家、長瀬家などもありました。
大相撲の本場所は勝敗が番付に影響する公
俗に四十八手といいますが、現在、大相撲協
ます。
取組を裁くのが行司の役目。ただし大相撲で
を 出すほどでした。 江 戸で勧 進 興 行
行 司 は土俵脇に「勝負審判」がいて、物言いの
生 観や美 学を 色 濃く残した部 分があ
の土盛の中央に 16
の 小 俵で直 径 15 尺(4.55 m)
の円を作り、東西南北は俵1つ分
の出っ張り(徳俵)を設けます。
土俵の「東西南北」は実際の方
位と異なり、正面(北)を決め
た 後、 土 俵 に 向いて左 手 を東、
右手を西、行司が控える向正面
を南と定めます。
り、そこが単なるスポーツでなく伝統
大相撲の土俵は、一
文化といわれる所以です。
決まり手 会では 82 の技と、技ではない決まり手(勇
み足など)5つを定めています。
1500年の歴史
始祖とされる宿禰と蹶
伝承に残る人の最古
の取り組みは、相撲の
速の天 覧 勝 負で、 紀 元4世 紀 後 半の
事として行 われるようにな り、 平 安
こと。 時 代とともに相 撲は宮 中の行
時代には豊作祈願と作柄を占う神事
となりました。
武 士が天 下を 握った鎌 倉 ~ 戦 国 時
代の相 撲は、 戦の鍛 錬の性 格が強く
覧相撲を催していますが、相撲好きの
13
なりました。 源 頼 朝や豊 臣 秀 吉も上
歴史的人物といえば、織田信長が第一
土 俵 辺 6.7 m の 正 方 形
いよいよこの欄を担当して 年目
の 最 終 回 を 迎 え ま す。 今 回 は、 生
殖 補 助 医 療と 子ど も を 取り 巻 く 問
題について書いてみたいと思います。
2
生殖補助医療ART
1
生殖補助医療とは Assisted Reproductive
Technology
A R T の 日 本 語 訳 で す。
A R T は、 自 然 と は 異 な る 体 外 で 卵 子
と精子を受精させてできた受精卵から
細胞分裂をしてできる胚を子宮に移植
して妊娠させる「体外受精 胚
・ 移植」や、
さ ら に 顕 微 鏡 を 使 用 し て、 1 個 の 卵 子
に1個の精子を直接注入して受精させ
る「 顕 微 授 精 」 な ど の 技 術 の こ と を い
い ま す。 不 妊 治 療 に は、 こ の ほ か 排 卵
誘発剤の使用や、「人工授精」といって
精液を子宮頸管から子宮内に注入する
こ と に よ り 妊 娠 す る 技 術 も あ り ま す が、
A R T と い う 場 合 に は、 一 般 に 体 外 受
精 胚
・ 移 植、 顕 微 授 精 の こ と を さ し て
います。
ARTによる出生児の割合について
は、 ヨ ー ロ ッ パ 諸 国 で は 2 0 0 6 年
に 1 ~ 2 %、 最 も 高 い デ ン マ ー ク で
3・3 % と な っ て い ま し た 。 日 本 で も
2006年当時は、1・8%( 人に1
人 の 割 合 ) で し た が、 そ の 後 も 徐 々 に
増加し、2012年には3・7%( 人
に1人の割合)となっています 。です
から小学校1クラスでひとりはART
による出生児ということになります。
1)
54
2)
27
4回
第
「生殖補助医療」と
子どもを取り巻く問題
笠井 靖代(かさい やすよ)
日本赤十字社医療センター
第3産婦人科部長
略 歴
1988年
1988年
1989年
1996年
1997年
2000年
2004年
東京医科歯科大学医学部医学科卒業
三井記念病院 産婦人科 研修医
東大病院 産婦人科 研修医
東京大学大学院 医学系研究科修了
米国 タフツ大学
New England Medical Center Research Fellow
日本赤十字社医療センター 産婦人科 常勤医
産婦人科副部長
2013年
第3産婦人科部長
専門領域
周産期学、臨床遺伝学、更年期医学
14
非配偶者間
体外受精
受精卵
女 性 の 高 学 歴 化、 就 労 率 の 増 加 や 晩
婚化などのライフスタイルの変化のな
か で、 よ う や く 妊 娠 を 考 え た 時 に は 自
然 に 授 か る こ と が か な わ ず に、 不 妊 治
療 を 受 け て い る 代 後 半、 代 の 女 性
は 少 な く あ り ま せ ん。 そ し て、 そ の 需
要 を 背 景 に、 生 殖 医 療 の 技 術 も 進 歩 を
と げ て い ま す。 た だ し、 こ れ ま で に は
考えてもみなかったさまざまな技術を
前 に し て、 生 命 の 誕 生 を ど の よ う に 迎
え る の か、 私 た ち 一 人 ひ と り が 考 え
るべきさまざまな問題がそこには横た
わっています。
体外受精
AID
1
夫や妻の第三者から精子または卵子
の 提 供 を 受 け、 体 外 受 精 を お こ な う こ
と で す。 卵 子 提 供 に よ る 体 外 受 精 は、
第三者から提供された卵子と夫の精子
を体外受精させて、妻の子宮に移植し、
妊娠させることです(図 )。
日 本 産 科 婦 人 科 学 会 は、 第 三 者 か ら
の 提 供 卵 子・ 提 供 精 子 に よ る 体 外 受 精
を 原 則 認 め て い ま せ ん。 一 方、 厚 労 省
の 専 門 部 会 で は 2 0 0 3 年、 非 配 偶 者
間体外受精を容認する報告書を出して
い ま す。 そ こ で 遵 守 さ れ る べ き 基 本 的
な考え方は、「生まれてくる子の福祉を
卵子
精子
優先する」「人を専ら生殖の手段として
扱ってはならない」「安全性に十分配慮
す る 」「 優 生 思 想 を 排 除 す る 」「 商 業 主
義を排除する」「人間の尊厳を守る」な
ど で す。 そ し て、 卵 子・ 精 子 提 供 者 に
つ い て は「 匿 名 の 第 三 者 」 に 限 る と し
ています。
法 整 備 が 整 わ な い 状 況 の な か で、 米
国や韓国などの海外で卵子提供を受け
る 女 性 が 増 え て き て い ま す。 し か し、
一 方 で、 特 に 高 年 齢 の 女 性 が 卵 子 提 供
で 妊 娠 で き た と し て も、 そ の 後 妊 娠 中
の合併症などで母体が命の危険にさら
さ れ る、 希 望 通 り の 子 ど も を 授 か れ な
い、 母 児 の 治 療 の た め に 高 額 の 医 療 費
が発生するなどの問題が起こっている
の も 事 実 で す。 現 在、 非 配 偶 者 間 体 外
受精を認める形で法整備が進められて
い ま す が、 後 に 述 べ ま す よ う に 十 分 に
子どもの立場を配慮した形で整備する
ことが是非とも必要であると思います。
代理出産
子 を 持 ち た い 女 性 が、 別 の 女 性 に 妊
娠 分
・ 娩 を 依 頼 し、 生 ま れ た 子 ど も を
引 き 取 る こ と。 夫 の 精 子 を 第 三 者 で あ
る 女 性 の 子 宮 に 注 入( 人 工 授 精 ) す る
場 合 と、 夫 婦 の 受 精 卵 を 第 三 者 の 女 性
の 子 宮 に 移 植 す る 場 合( 図 2) が あ り
ま す。 前 者 の 代 理 母 を サ ロ ゲ ー ト マ
ザ ー、 後 者 を ホ ス ト マ ザ ー と い い ま す
(図3)。
4
日 本 産 科 婦 人 科 学 会 は、 代 理 出 産 の
実 施 を 認 め て い ま せ ん。 生 ま れ て く る
15
卵子ドナー
夫
妻
30
40
非配偶者間の人工授精を示していま
す。 夫 以 外 の 第 三 者 か ら 精 子 の 提 供 を
受 け て 行 う 人 工 授 精 で す。 日 本 で は
1 9 4 8 年 に 初 め て 実 施 さ れ、 現 在 で
は年間1000〜1500組の夫婦が
A I D を 受 け て お り、 約 1 5 0 人 前 後
の子が誕生しているとされています 。
現 在、 精 子 提 供 者( ド ナ ー) は、 匿 名
が 原 則 で、 子 の 側 か ら ド ナ ー を 知 る 機
会はありません。しかし、最近になり、
AIDで生まれた当事者である男性が、
AIDの事実を知ってからの苦しみと、
出自を知る権利についての問題を実名
で 問 い か け て い ま す。 さ ま ざ ま な 遺 伝
子 診 断 が 可 能 と な っ た 現 在、 親 の 側 が
AIDについて隠したいと思っていて
も隠し続けることは困難な時代となっ
ているのです。
3)
3
図1
2
図2
表 1 ヨーロッパにおける配偶子提供をともなう生殖医療の規制状況
(2009 年)
ベルギー、クロアチア、アイルランド、
たい当事者の子どもがどのような気持
ち を 抱 く こ と に な る の で し ょ う か。 そ
ういった環境にいる子どもの心のケア
について私たち社会全体が本気で担う
覚 悟 が あ る の で し ょ う か。 十 分 に 考 え
ておく必要があるだろうと思います。
そ れ で は 次 に、 子 ど も を 取 り 巻 く 状
況についても考えてみたいと思います。
○
×
○
×
日本
×
×
×
○
ハンガリー、イスラエル、ポルトガル、
○
「生殖医療と家族のかたち」平凡社新書 石原 理
児童虐待
ウクライナ
スロベニア、スペイン
×
○
×
○
フィンランド、オランダ、スウェーデン、英国
×
○
×
×
オーストリア、ドイツ、ノルウェー、スイス
×
×
×
×
イタリア、トルコ
ESHRE のデータから作成。ラトビア、リトアニア、ルーマニアは不明部分が
あるため除外した
子の福祉や代理出産する女性の身体的
危 険 性・ 精 神 的 負 担、 複 雑 化 す る 家 族
関 係、 そ し て 社 会 全 体 が ま だ 代 理 出 産
を許容していないなどの理由からです。
た だ し、 中 長 期 的 に は 何 ら か の 指 針 が
必要となってくるでしょう(表1)。
図3 代理出産
児童虐待に関する報道が毎日のよう
に あ り ま す。 児 童 虐 待 は、 保 護 者 で あ
チェコ、デンマーク、フランス、ギリシャ、
○
出産
出自 を知る権利
体外受精
ち で す。 し か し、 も う 一 方 の 物 言 え ぬ
子どもの立場に立った視点も必要であ
る と 思 い ま す。 産 み の 親、 育 て の 親、
遺伝子上の親がそれぞれ異なるという
家 族 の 形 態 は と て も 複 雑 で す。 し か も
匿 名 で の 提 供 と い う こ と で あ れ ば、 子
ど も 本 人 だ け で は な く 産 み の 親、 育 て
の親自身も遺伝子上の親を知らないと
い う こ と に な り ま す。 子 ど も に と っ て
は、 両 親 が 離 婚 し た、 あ る い は 死 別 し
たなどによる別れとは質的に全く違う
状 況 で あ り、 ま た 子 ど も に 関 係 す る 人
すべてがその子どもの遺伝子上の親を
知 ら な い と い う こ と に な り ま す。 い っ
匿名 非匿名 匿名 非匿名
妻の卵子
夫の精子
5
生 殖 補 助 医 療 の 議 論 は、 と も す る と
子どもがほしいと願う夫婦の立場に
立 っ て、 い か に そ の 希 望 を か な え る こ
とが可能かという視点から議論されが
受精卵
6
×
ブルガリア
○
ポーランド、セルビア、スロバキア、ロシア、
○
○
○
○
国 名
卵子提供
精子提供
女性
女性
受精卵を第
三者の子宮
に移植
出産
人工受精
体外受精
夫の精子
妻
夫
妻
夫
ホストマザー
サロゲートマザー
夫
精子
妻
卵子
代理母
16
50,000
80,000
70,000
11,631
平成 25 年国民生活基礎調査 厚労省
は ・3%であり、年々増加しています。
国 際 比 較 を 表 3 に 示 し ま す が、 子 ど も
の 貧 困 率 は、 O E C D カ 国 中 位 で
すが、大人が一人の「子どもがいる世帯」
で は、 日 本 は ・ 8 % で 位、 ち な み
に ワ ー ス ト 1 位 は 韓 国 と な り ま す。 子
どもの相対的貧困が問題なのはなぜか。
その社会 文
・ 化のなかで普通の子ども
たちが容易にアクセスできる物や機会
に、 容 易 に は ア ク セ ス で き な い と し た
らその子どもは将来において大きな不
利益を受けることになります。
国は貧困対策として、子どもの将来が
生まれ育った環境によって左右されるこ
とのないよう、また、貧困が
世代を超え
て連鎖することのないよう、必要な環境
整備と教育の機会均等を図り、全ての子
どもたちが
夢と希望を持って成長してい
ける社会の実現を目指すとしています。
14.9
25
可処分所得
15.7
16.1
15.7
15 14.6
16.3
1
る親または親にかわる養育者によって
加 え ら れ た 行 為 で、 身 体 的 虐 待、 性 的
虐 待、 ネ グ レ ク ト、 心 理 的 虐 待 の 4 つ
に 分 類 さ れ ま す( 表 2)。 厚 労 省 の 報
告 で は、 児 童 相 談 所 へ の 相 談 対 応 件 数
( 平 成 年 度 ) は、 児 童 虐 待 防 止 法 施
行 前( 平 成 年 度 ) の 5・7 倍 に 増 加
( 6 6、7 0 1 件 ) し、 残 念 な こ と に 虐
待死も年間100名前後と高い水準で
推移しています(図4)。
し か し、 児 童 虐 待 の 原 因 は、 特 殊 な
性格 気
・ 質のとんでもない一部の親た
ちが起こしている問題なのでしょうか。
希望を持って心身ともに健康に育児を
行える環境にない親たちが起こしてい
る 例 も 多 く、 困 難 を か か え な が ら 育 児
をせざるを得ない私たちの社会そのも
のの問題とみることもできると思いま
す。 そ し て そ れ は、 近 年 指 摘 さ れ て い
る格差社会と無縁ではないはずです。
相対的貧困率
子どもの貧困率
33
15.7
平成 9 年 平成 12 年 平成 15 年 平成 18 年 平成 21 年 平成 24 年
子どもの貧困・
相対的貧困
平成 9 年 平成 12 年 平成 15 年 平成 18 年 平成 21 年 平成 24 年
0 12
13.7
13 13.4
14.2
14.5
14
34
13.7
13 13.4
14.9
16.0
17
%
x
相対的貧困率
子どもの貧困率
0 12
15.3
50
14.2
14.5
14
50
16
11
15 14.6
24
図5 日本における相対的貧困率
16
⑥
2416.1
15.7
15.3
16.3
16.0
17
%
い わ ゆ る 貧 困 と は、 食 べ る 物 や 着 る
物、住む場所に不自由していることで、
世 界 中 に は、 こ の 絶 対 的 貧 困 に 苦 し め
られている人たちがたくさんいること
も 事 実 で す。 し か し 日 本 で も、 相 対 的
貧困が問題となっています。
収入から直接税 社
・ 会保険料を除い
た手取りの世帯所得を世帯人数で調整
し、 そ の 中 央 値 の % の ラ イ ン を 下 回
る収入しか得ていない人の割合を相対
的 貧 困 率 と い い ま す。 図 5 に 示 す よ う
に、 平 成 年 に お け る 子 ど も の 貧 困 率
17
H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24
0
1,961 2,722
1,101 1,171 1,372 1,611
4,102 5,352
6,932
10,000
17,725
20,000
40,639
37,323
33,408 34,472
16
心理的虐待
言葉による脅し、無視、兄弟
間での差別的扱い、子どもの
目の前で家族に対して暴力を
ふるう(ドメスティック・バイ
オレンス:DV)など
30,000
7
ネグレクト
家に閉じ込める、食事を与え
ない、ひどく不潔にする、自
動車の中に放置する、重い病
気になっても病院に連れて行
かない など
26,569
23,274 23,738
性的虐待
子どもへの性的行為、性的行
為を見せる、性器を触る又は
触らせる、ポルノグラフィの被
写体にする など
59,919
56,384
60,000
44,211
42,664
身体的虐待
66,701
殴る、蹴る、投げ 落とす、激
しく揺さぶる、やけどを負わ
せる、溺れさせる、首を絞める、
縄などにより一室に拘束する
など
40,000
表 2 児童虐待の定義
図4 児童相談所への相談対応件数の年次推移
厚生労働省
表 3 子どもの貧困率
8
の中に以下の一節があります。
「 い ち ば ん 悲 し い と き は、 気 持 ち が わ
かってもらえないとき。
い ち ば ん う れ し い と き は、 気 持 ち が
通じあえたとき。
い ろ ん な 気 持 ち が あ る あ な た。 そ の
ままのあなたでいいんだよ。
いろんな気持ちを大切にしてぐんぐ
ん大きくしあわせになる。」
6)森田ゆり「気持ちの本」童話館出版 2003 年
森田さんは、「虐待は連鎖しない」と
繰 り 返 し 述 べ て い ま す。 虐 待 を 受 け た
経 験 が あ っ て も、 自 分 を 受 け 入 れ て 傷
を癒してくれる人に巡り会えた人はう
まくいくのだと。
5)阿部彩 「子どもの貧困 日本の不平等を考える」
岩波新書 2008 年
終わりに
4)笠井靖代 高年初産婦と分娩リスク、その背景
産婦人科治療 p340—p346 2011 年
ることを3カ月に一度行ってきました
が、 い よ い よ め で た く 最 終 回 を 迎 え る
ことができました。書くことを通して、
私自身もさまざまなことを改めて考え
直 す よ い 機 会 と な り ま し た。 こ こ ま で
おつきあいいただいた皆様には本当に
感 謝 し て お り ま す。 あ り が と う ご ざ い
ま し た。 ま た、 好 き な テ ー マ で 自 由 に
書 か せ て い た だ き ま し た こ と を、 専 務
理事の鈴木賢二様に厚く御礼申し上げ
ます。
最 後 に な り ま す が、 す べ て の 子 ど も
た ち が 目 を 輝 か せ て、 希 望 を 持 っ て 生
きていける社会であれと願っています。
そ し て そ の た め に は、 女 性 が 心 身 と も
に 元 気 で あ る こ と が 必 要 で す。 女 性 に
と っ て は 子 宮 頸 が ん、 乳 が ん な ど の 健
診 を 定 期 的 に 受 け、 自 分 の 健 康 状 態 に
関 心 を 持 ち、 健 康 に 仕 事 や 育 児 な ど を
行っていくことがとても重要であるこ
とを改めて強調して私の担当を終わり
とさせていただきます。
3)吉村泰典 生殖医療の果たす役割と可能性
日本経済新聞 平成 24 年 10 月 23
第 19 位
第 20 位
第 21 位
第 22 位
第 23 位
第 24 位
第 25 位
第 26 位
第 27 位
第 28 位
第 29 位
第 30 位
第 31 位
第 32 位
第 33 位
第 34 位
しかし国の政策だけに任せてすむ問
題 で は な さ そ う で す。 児 童 虐 待 や 子 ど
もの貧困の問題を他人の問題と考えず
に、 私 た ち ひ と り ひ と り が、 次 の 世 代
の子どもたちを社会の一員として育て
ていく責任を担っていると自覚するこ
と が 必 要 な の で は な い で し ょ う か。 子
どもたちが希望格差を感じる社会で
あってはならないと思います。
2)日本産科婦人科学会ARTデータ集 2012 年
http://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/data.htm
順位
3.7
3.9
5.1
7.1
8.2
8.2
9.0
9.1
9.4
9.4
9.4
9.8
9.8
9.9
10.2
11.0
11.4
12.1
子どもたちの
ために
今 夜 の 勤 務 中 に、 ま た 元 気 な 赤 ち ゃ
ん が 何 人 か 誕 生 し ま し た。 お 母 さ ん も
お父さんも喜びいっぱいの笑顔で生ま
れたばかりの赤ちゃんをながめていま
す。 私 は、 産 婦 人 科 医 と し て 生 命 の 誕
生 に 立 ち 会 う 仕 事 を 通 し て、 多 く の こ
と を 学 ば せ て い た だ き、 ま た た く さ ん
の 喜 び を 得 る こ と が で き ま し た。 そ し
て、 考 え さ せ ら れ る 経 験 も 数 多 く あ り
ま し た。 思 い が け ず に、 産 婦 人 科 医 と
して皆さんにその一部をお伝えできる
貴重な機会をいただくことができまし
た。 毎 回 何 を 書 こ う か と 思 い 悩 み な が
ら、 締 め 切 り 間 際 に な る と な ぜ か 一 気
に テ ー マ が わ き あ が り、 あ ふ れ る よ う
に 文 章 が わ い て き て、 一 気 に 書 き 上 げ
1)石原理 「生殖医療と家族のかたち」 平凡社新書
2010 年
12.4
12.8
ニュージーランド 13.3
13.6
ポーランド
14.0
カナダ
15.1
オーストラリア
15.7
日本
16.2
ポルトガル
17.7
ギリシャ
17.8
イタリア
20.5
スペイン
21.2
アメリカ
23.9
チリ
24.5
メキシコ
27.5
トルコ
28.5
イスラエル
OECD 平均
13.3
割合
2010 年 厚生労働省・文部科学省データ
子どもの虐待防止や家庭内暴力防止
などにとりくむ専門家である森田ゆり
さ ん の 子 ど も 向 け の 本「 気 持 ち の 本 」
参考文献など
割合
国 名
国 名
デンマーク
フィンランド
ノルウェー
アイスランド
オーストリア
スウェーデン
チェコ
ドイツ
スロベニア
ハンガリー
韓国
イギリス
スイス
オランダ
アイルランド
フランス
ルクセンブルク
スロヴァキア
エストニア
ベルギー
順位
第 1 位
第 2 位
第 3 位
第 4 位
第 5 位
第 6 位
第 7 位
第 8 位
第 9 位
第 9 位
第 9 位
第 12 位
第 12 位
第 14 位
第 15 位
第 16 位
第 17 位
第 18 位
18
財団職員が
公益社団法人全国労働
衛生団体連合会(全衛連)から
表彰されました!
写真向かって右が法常氏、左が田嶋氏
当財団の2名の職員が、多くの条件をクリアし、
長年にわたる労働衛生関係業務への精励と顕著な功績が認められ、他の範となる者として、
公益社団法人全国労働衛生団体連合会(全衛連)より、平成 26 年 11 月 19 日に表彰されました。
奨励賞 法常 一孝氏
功績賞 田嶋 政男氏
当財団の常勤職員であり、労働衛生関係の業務に
当財団の常勤職員として、労働衛生関係の業務に 20 年
ます。
医療面での責任者として、健診および人間ドック事業の充実、
10 年以上従事し、中堅職員として職務に専念してい
長い間、後輩に対する技術面での指導担当者とし
て、的確で丁寧な指導を行ってきたことが高い評価を
得ています。また、円満で公正な人柄が多くの検査要
員に慕われ、参加する日本超音波学会で得た最新の
知識や技術を伝えるなど自主的に仲間との勉強会を開
催することにより、検査技師全員の資質向上に貢献す
るなど、今後ともその活躍に期待し得る者として表彰
されました。
以上従事し、その業績が顕著で他の範となる者、とくに、
さらなる質の向上に貢献してきただけでなく、健診現場の責
任者としても常に検査技術の向上に献身的な指導をおこなっ
てきたことが高く評価されました。
田嶋氏は、2 級臨床病理学士(血液)
、超音波検査士(消
化器)、総合健診指導士などを取得するなど自らも努力し、
常に学術的、技術的に上を目指す姿勢は後に続く者の模範
となっています。さらに、日本乳腺甲状腺超音波学会精度
管理委員や日本総合健診医学会施設認定実査委員として、
対外的にも活躍しています。
奨励賞、功績賞受賞に値する常勤職員、長年の経験と最新の知識、技術の研鑽に日々邁進している検査要
員は、他にも多くおりますが、今回は奨励賞一人、功績賞一人の受賞となりました。
こうして、当財団は確かな健診を行い、確かな検査結果を提供し、皆様の保健行動に少しでも役立つように
努めております。
当財団の健康診断・人間ドックに関するお問い合わせは下記へご連絡ください
(一財)日本健康増進財団 ☎
03-5420-8011 メール [email protected]
いきいき健康だより(第 25 号)
一般財団法人 日本健康増進財団
⃝発 行 人
⃝編集委員
⃝住
所
⃝T E L
⃝F A X
⃝E - M a i l
三木一正
鈴木賢二/森崎伊久磨/森 誠
森山博美/枡田喜文/阿部 悟
岡本庸子
〒 150-0013
東京都渋谷区恵比寿一丁目 24 番 4 号
恵比寿ハートビル
03-5420-8011(代表)
03-5420-8039
[email protected]
※本誌の全部もしくは一部の無断転載や複製を禁じます。
19
• 編集協力 株式会社法研
編集後記
新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申
し上げます。
今年は乙未年(きのとひつじ)
。乙未年の方は穏やかで人情に
厚く、争いを嫌い、調和を好む、節度をわきまえているという特
徴を持つといわれます。
今年も干支に染まって、皆様が健やかで穏やかな一年でありま
すように、この機関誌が少しでもお役に立つことを願い、新年号
をお贈りしたいと存じます。
読者の皆様におかれましては、掲載して欲しい健康に関わる
テーマなどございましたら、当財団へのメール、FAX 等にてお寄
せいただければ幸いです。 (S)