オーストラリア研修を終えて 新東京病院 水野 奈津己 今回、オーストラリア研修で、私は看護観、また人生観に大きな影響を受けました。 まず、緩和ケアについてですが、今回の研修で緩和ケアのイメージがかわりました。 「緩和ケア」は、今まで看護師としてかかわったことのない分野で、「癌患者の疼痛コント ロール」というイメージを持っていました。 循環器領域における緩和ケアの位置づけはどのようなものであるか、というところから興 味を持ち、研修に参加しました。 多くのプログラムに参加し、緩和ケアとは心身がうけるあらゆる苦痛の軽減、除去である と感じました。 身体の痛みのコントロールは勿論、不安、悲しみ、怒り等、精神の安定。身体の痛みは疾 患事態を原因とするだけでなく、患者様本人を取り巻く全てのものが影響を与えるものだ と実感しました。 バンクシアのスタッフは緩和ケアのプロフェッショナルであり、患者様の苦痛を多方面か ら緩和する。 また、終末期に限定されるものでなく、苦しみはあらゆる段階に主観的に存在するもので あるということ。 いくつか、研修の中で挙げて頂いた症例の中で私が最も衝撃を受けたのは、HIV 患者様の お話でした。 最後まで本人の意思を尊重し、心身の安定を図り、最後を迎えるサポートを行う、本当に プロの仕事だと思いました。 病院で、病気だから仕方ないと、苦痛や不安の中で時を過ごすのに比べて、本当に自分ら しく、安らかに時間を過ごせると思いました。 実際に在宅ケアに同行させていただくと、患者様はとても穏やかで、「すべてうまくいって るよ」とおっしゃっている方もいました。 患者様と看護師の関係性もとても強い信頼関係で繋がっているのが解りました。 「死にゆく準備はできていますか?」 訪問時に看護師が患者様に聞きました。とても印象的な会話でした。 緩和ケアをし、死について共に考え、本人の望む環境を整える、信頼関係を築くことで本 当に穏やかに時間を過ごせていると感じました。 私は今まで 10 年間急性期の現場でしか働いたことがなかったため、ゆっくり患者様の苦痛 や不安によりそうことをしてこなかったような気がします。 今回の緩和ケアの研修を通じ今までの看護を見つめなおし、今後の看護について考える良 いきっかけとなりました。 今回の研修で、ホスピスで働く日本人看護師の方にお会いできたのも、私の中で大きなこ とでした。 研修に参加した最も大きな理由は、看護師としての自分の今後を考えることでした。 私は、海外で看護師として仕事をしてみたいと思っていました。 実際、海外で働く方のお話を聞いて海外で働きたい気持ちが大きくなりました。オースト ラリアの看護師の現状やシステムを聞いて、より興味が湧きました。 オーストラリアのシステムは日本と違い、専門性が高まり、今よりやりがいを感じられる のではないかと思いました。 メルボルンでの一週間は想像以上に自分の中で違和感を感じることもなく、このような場 所なら、留まって仕事に就くことも可能なのではないかと思いました。 今回の研修で看護についての視野が広がり、多くのことを考えるきっかけができました。 また、研修で出会ったすべての方々と話をすることで、いろんな考えに触れることができ ました。 一週間は本当にあっという間で全ての時間が貴重で充実し、楽しかったです。 たくさんの刺激を受けました。 看護師としても、一個人としても、この一週間は貴重でかけがえのないものになりました。 最後に、JECCS の若林さん、木下さん、ジュリー、ティム、バンクシアスタッフのみなさ んをはじめ今回の研修をサポートしてくださった皆様、各施設の皆様、患者様、共にかけ がえのない時間を過ごした仲間に感謝いたします。 ありがとうございました。
© Copyright 2024 ExpyDoc