The Murata Science Foundation 非線形フィルタリングを用いた動電型スピーカの非線形歪み補正法 Nonlinear Distortion Reduction for Electrodynamic Loudspeaker Using Nonlinear Filtering H26海自05 派遣先 第22回 欧州信号処理会議(EUSIPCO 2014) (ポルトガル・リスボン) 期 間 平成26年9月1日~平成26年9月5日(5日間) 申請者 関西大学大学院理工学研究科 博士課程後期課程3年 岩 居 健 太 けられ、合計512件の発表が行われた。以下に 海外における研究活動状況 発表内容を報告する。 研究目的 動電型スピーカシステムは電気信号を音響 動電型スピーカシステムは電気信号を音響 信号に変換する際に非線形歪みを生じる。こ 信号に変換する過程で非線形歪みを発生する。 の非線形歪みは音質劣化につながるため、近 非線形歪みは音質劣化の原因となるため、本 年非線形ディジタルフィルタによる低減手法が 研究ではこれを非線形ディジタルフィルタであ 研究されている。非線形ディジタルフィルタと るMirrorフィルタにより低減することを目的と して、Volterraフィルタを用いた手法が代表的 する。本稿では、自己インダクタンスの非線形 である。VolterraフィルタはVolterra級数展開に 性を考慮していない非線形2次IIRフィルタによ おける係数をディジタルフィルタの係数として る実現法および自己インダクタンスの非線形性 扱うフィルタであり、動電型スピーカシステム を考慮している非線形3次IIRフィルタの非線 のような弱い非線形性を有するシステムの非線 形歪み補正効果を比較する。 形性のモデル化に用いられる。また、Volterra フィルタによる非線形性のモデル化において 海外における研究活動報告 は、歪みの種類によらずすべての歪みをモデル 貴財団の海外派遣援助により、平成26年9月 化することが可能である。しかし、Volterraフィ 1日から5日までポルトガルのリスボンで開催さ ルタはフィルタ係数と入力信号との畳み込み れた国際学会"22nd European Signal Processing の際に莫大な演算量を必要とするため、Digital Conference(EUSIPCO2014)"に参加し、"Non- signal processor(DSP)などに代表される演算 linear Distortion Reduction for Electrodynamic 処理装置への実装時に問題となり、またリアル Loudspeaker Using Nonlinear Filtering"の題目 タイム処理も困難となる。 で口頭発表を行った。European Signal Process- それに対し、本研究の対象であるMirrorフィ ing Conferenceはヨーロッパを中心に世界各国 ルタは動電型スピーカシステムの非線形運動 より信号処理技術者・研究者が集う学会であ 方程式よりフィルタ構造を決定し、非線形2次 り、31の口頭発表セッション、17のスペシャ IIRフィルタにより実現することができる。非 ルセッション、20件のポスターセッションが設 線形運動方程式を基礎としているためモデルと ─ 391 ─ Annual Report No.29 2015 して扱う歪みの種類は限定されるが、再帰構 cessing for Loudspeakers and Headphones 2 造を有しているため演算量はVolterraフィルタ (Special Session)''で行い、音響信号処理に携 に比べ非常に少ない。しかし、非線形2次IIR わる方々に研究成果を披露することができた。 フィルタは中高域において非線形歪み補正効 また、本セッションの直前に''Digital Audio 果が劣化する。この理由として、非線形 2次 Processing for Loudspeakers and Headphones 1 IIRフィルタでは力係数、スティフネスの非線 (Special Session)''があり、本研究の基礎を築 形性は考慮しているが自己インダクタンスの非 いたW. Klippel氏の発表があり、最新の動向を 線形性を考慮していないことが挙げられる。そ うかがうことができ、今後の課題がより明確に こで、我々は非線形2次IIRフィルタに自己イ なった。さらに、他にも音響信号処理に関す ンダクタンスの非線形性を加えた非線形3次IIR る発表が多数あり、非線形歪み補正だけでな フィルタを提案した。これらのフィルタの非線 く、ブラインド音源分離など多くの分野につい 形歪み低減効果の比較において、今まではパ て、学ぶことができた。そして、同年代の研究 ラメータ推定法により推定された物理パラメー 者、学生との交流を通じて、今後の研究活動 タを用いていた。しかし、それらの比較におい へのモチベーションも向上した。最後に、この てパラメータ推定法の性能を無視することがで ような貴重な経験、機会を与えて下さり、貴 きず、フィルタ性能のみを評価できなかった。 財団には心より御礼申し上げます. 我々は、2013年に物理パラメータの測定器を この派遣の研究成果等を発表した 使わせてもらう機会があった。本発表では、そ の際に測定した物理パラメータを用いて、従 来法である非線形2次IIRフィルタと提案法で ある非線形3次IIRフィルタの非線形歪み低減 効果の比較について発表した。 本発表は、セッション''Digital Audio Pro- 著書、論文、報告書の書名・講演題目 K. Iwai and Y. Kajikawa,“Nonlinear Distortion Reduction for Electrodynamic Loudspeaker Using Nonlinear Filtering,”in proceedings of 22nd European Signal Processing Conference(EUSIPCO2014), Lisbon, Portugal, Sep. 2014. ─ 392 ─
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