「セラミックスインテグレーション技術による新機能材料創製に関する研究」

研究課題名
「セラミックスインテグレーション技術による新機能材料創製に関する研究」
平成16年度研究計画
(研究期間:第 II 期 平成16∼17年度)
大項目名:圧電素子におけるセラミックスインテグレーション技術の応用
研
究
項
目
中項目名:
担当項目名: 圧電素子のための評価技術の開発とナノ構造材料の作成
担当機関・研究室名・研究者名
法政大学工学部 守吉佑介
物質・材料研究機構 物質研究所 石垣隆正
1. 研究目的
炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化ケイ素に代表される圧電性セラミックスと炭素の複合系焼結体や圧電性セラミックスを内包し
たナノチューブを製造し、異種層間の粒界に着目して、その粒界構造を透過電子顕微鏡や分析電子顕微鏡で調べ、構造と組成
の関係を明らかにする。この構造の基本になる炭素―セラミックス(アルミナ、酸化ケイ素など)間の粒界構造に着目して、
その構造を透過電子顕微鏡および分析電子顕微鏡で調べる。
また、反応性高周波熱プラズマを利用した炭素系粉末処理により、電気化学デバイスに利用する炭素系粉末を高機能化する。
粉末表面の形状、化学組成、結晶性に大きく依存するリチウムイオン二次電池負極材、電気二重層キャパシタ電極材に用いる
炭素系材料の特性を、熱プラズマ処理による粉末表面改質プロセスを利用して向上させる。
炭素―セラミックス間の粒界構造の観察と炭素そのものの性質の研究を通じて、炭素−セラミックス系粒界の性質を総合的
に理解する。得られるノウハウは、表面弾性フィルター用基板の開発、炭素―セラミックス系耐火物など高温用耐スポーリン
グ性材料の開発などに資する情報を提供するだけでなく、炭素被覆材料などの被覆材と炭素の粒界構造の理解にも基本的ノウ
ハウを提供する。また、リチウムイオン二次電池負極材、電気二重層キャパシタ電極材の高機能化に資する手掛かりをも提供
すると期待される。
2. 研究方法
炭化ケイ素などのセラミックス系焼結体の結晶―アモルファス間の粒界構造の解明、炭素ナノチューブの合成と評価、熱プ
ラズマ処理のリチウムイオン二次電池負極材用炭素の微細構造と性能評価などを研究し、表面弾性波フィルターや高機能性材
料の開発に資するデータの蓄積、二次電池用負極材の開発など期待する。
すなわち、種々の条件下で焼結体を製造し、その薄膜を調製して、粒界構造を透過電子顕微鏡や分析電子顕微鏡で調べ、粒
界の構造と組成の関係を明らかにする。得られた結果をセラミックス内包の炭素のナノチューブのプラズマ合成に発展させる。
また、種々の条件下で熱プラズマ処理したリチウムイオン二次電池負極材用炭素の微細構造を透過電子顕微鏡などで調べ、充
放電特性と熱プラズマ処理条件の関係を明らかにする。
3. これまでの研究成果
1)ダイヤモンドの液相焼結
ダイヤモンドーチタン・銅・スズ系の液相焼結を行い、その緻密な焼結体の製造と透過電子顕微鏡観察用薄膜の調製に成功し
ている。透過電子顕微鏡観察では、ダイヤモンドと金属の界面に炭化チタンがエピタキシャルに成長し、ダイヤモンドと金属の
結合の仲立ちをしていること明らかにした。また、ダイヤモンドと炭化チタンは炭素―チタンの間で結合によることを示した。
2)B-C-N系ナノチューブの合成
前述と同様の手法で出発原料を作成し,それを直流アーク強制蒸発によってB-C-N系ナノチューブを行っている。その結果、BC-N系均一相のナノチューブではなく、炭素ナノチューブまたは炭素を内包したBNナノチューブが生成することを、分析電
子顕微鏡と透過電子顕微鏡で明らかにしている。また、ニツケル、コバルトなどを内包したBN系ナノチューブの合成実験を行
い、それを 1)と同様の手法で評価している.これらの方法により、BN系のナノバルーンなど興味ある構造のナノマテリアル
を合成している。
3)反応性高周波熱プラズマを利用した炭素系粉末処理に関する予備実験から、リチウムイオン二次電池負極材用の充放電効
率の高い炭素粉末を調製し、電気化学デバイスに利用する炭素系粉末を高機能化の可能性に展望を開いた。
4. 本年度の目標
最近の軽薄短小化の波の中で、材料の粒界の果す役割はますます大きくなっている。多くの場合、粒界には結晶ー結晶間の
粒界よりも結晶ーアモルファス間の粒界の方が圧倒的に多い。このことから当該年度においては、炭化ケイ素、アルミナ、酸
化ケイ素などのセラミックスの粒界に代表される結晶―炭素アモルファス間の粒界に着目して、その構造と組成の関係を中心
に調べる。また、セラミックス内包の炭素ナノチューブの合成、表面弾性波フィルターの機能材料の開発などもあわせ行う。
また、反応性高周波熱プラズマを利用した炭素系粉末処理により、電気化学デバイスに利用する炭素系粉末を高機能化する。
すなわち、粉末表面の形状、化学組成、結晶性に大きく依存するリチウムイオン二次電池負極材、電気二重層キャパシタ電極
材に用いる炭素系材料の特性を、熱プラズマ処理による粉末表面改質プロセスを利用して向上させる。
5. 本年度の研究計画
これまでの研究成果を伝承発展的に活用し、炭素−セラミックス系材料の焼結体を作製し、その薄膜の作成技術の開発、薄
膜の透過電子顕微鏡観察と粒界組成の局所分析を行い、炭素―セラミックスの粒界の組成と構造を調べる。
また、圧電性セラミックスを内包したナノチューブの作成についても鋭意研究し、所望のナノチューブが得られた場合には、
ナノチューブと内包セラミックスの界面の組成と構造を調べる。
さらに、種々の条件下で熱プラズマ処理したリチウムイオン二次電池負極材用炭素の微細構造を透過電子顕微鏡などで調べ、
充放電特性と熱プラズマ処理条件の関係を明らかにする。
以下、次のような研究計画のもとに研究を実施する。
(炭素−セラミックスの粒界構造の評価)
シリカ、アルミナ、ジルコニア、黒鉛などとアモルファス炭素の混合物をフェノール樹脂と混合し成形体とし、それをボック
ス炉中で還元雰囲気、1000℃で所定時間焼結する(1000℃の焼結条件は工業的に利用されているアルミナーグラファイト系耐
火物と製造条件を合わせるためである。得られた焼結体の薄膜調製法を開発し、透過電子顕微鏡観察および局所分析を行って、
炭素−セラミックスの粒界構造と組成を検討する。
本研究のポイントは薄膜の調製である。焼結体は機械的に非常に柔らかい炭素と相対的に非常に硬いセラミックス粒子から
なる。それらのエッチング速度が著しく異なる上、機械的に極めて弱いので、電子顕微鏡観察と分析に利用しうる薄膜の調製
がこの研究の鍵になる。これは次のように行う。焼結体をダイヤモンドソーで薄板する。この薄板とアロゴンのイオン銃の間
に厚さ20μ程度のダイヤモンドシートを置く。シートとイオンビームの方向は平行である。このような配置によって、イオン
ビームの当たらない影が薄板の上にでき、そこがエッチングされずに残り、薄膜となる。それを透過電子顕微鏡・分析電子顕
微鏡で調べる。
(セラミックス内包ナノチューブの合成)
これまでにB-C-N系ナノチューブの合成とそのニッケル内包ナノチューブの合成には成功している。しかし、圧電性セラミ
ックスを内包させることには成功していない。現在、酸化亜鉛や酸化ケイ素などを内包させるべく、プラズマ法及び加熱法に
よって鋭意研究しているので、内包ナノチューブが合成できしだい圧電性セラミックスとナノチューブの界面の組成と構造を
調べる予定である。
(炭素粉の熱プラズマ処理と特性評価)
リチウムイオン二次電池負極材用炭素の高機能化を期待して、炭素粒子を種々のプラズマガスのもとで高周波熱プラズマ処理
し、微細構造−充放電特性―熱プラズマ処理条件の関係を明らかにする。
6. その他
特になし。