防府市水安全計画

防府市水安全計画
平成 28 年 3 月
防府市上下水道局
目次
1.はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2.水安全計画とは・・・・・・・・・・・・・・・・・2
3.水安全計画の策定手順・・・・・・・・・・・・・・3
4.防府市水安全計画の概要・・・・・・・・・・・・・4
(1)水道システムの把握・・・・・・・・・・・・・4
(2)危害分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
(3)管理措置の設定・・・・・・・・・・・・・・・15
(4)対応方法の設定・・・・・・・・・・・・・・・16
(5)文書と記録の管理・・・・・・・・・・・・・・16
5.水安全計画の検証・・・・・・・・・・・・・・・・17
6.レビュー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
1.はじめに
防府市上下水道局では、水源である佐波川水系の伏流水と地下水を取水し、市内に点在する
水源地で塩素消毒した水道水をお客様に供給しています。この際、主要な水質項目は、水源地
や増圧ポンプ所等に設置した連続計器で 24 時間監視して水質、水量の安定供給に努めていま
す。また、毎年公表する水質検査計画に基づき、原水 9 か所・浄水 5 か所だけでなく、末端の
給水栓の 17 か所においても、水質基準に適合しているかどうかを判断するための定期的な水
質検査を実施すると同時に、12 か所の末端給水栓では色、濁り、消毒の残留効果も毎日検査を
実施して、水道水の安全確保に努めてきました。
しかしながら、全国的には耐塩素性病原生物(クリプトスポリジウム等)の水源流域への流
入や水道施設内での消毒副生成物(トリハロメタンや臭素酸等)の増加、水道水源上流での水
質汚染事故や不法投棄、
(利根川水系ホルムアルデヒド生成)など、水道システム全般において、
水質に悪影響を及ぼす可能性のある危害要因が多く報告されています。また、水道施設の老朽
化や維持管理の問題、新たな知見による有害物質等による水質管理の問題、次世代を担う職員
への技術や知識の継承の問題など、様々な課題が顕著化してきております。
さらには、社会情勢の変化に伴い、水道水質の安全性に関するお客様の要求は、年々厳しく
なってきており、水質管理の一層の強化が求められています。
このような状況のなか、水道水の安全性をより一層高め、お客様に今後とも安心してお飲み
いただけるおいしい水を安定して供給するために、防府市水安全計画を策定しました。
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2.水安全計画とは
水安全計画(Water Safety Plans)は、世界保健機構(WHO)が平成 16 年に発行した『飲料水水
質ガイドライン(第 3 版)』において提唱した新しい水質管理手法です。この計画は食品衛生
管理手法である HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の考え方を取り入れた
もので、原料の入荷から製品の出荷までのあらゆる工程において危害要因を明確にするという
危害分析を行うとともに、それを排除するための重要管理点を重点的かつ継続的に監視するこ
とで衛生管理を行うものです。
水道分野においても、水源から蛇口までのあらゆる過程において、水道水の水質に悪影響を
及ぼす可能性のある全ての危害要因を分析し、これに対応する方法を予め定めておくリスクマ
ネジメント手法を取り入れたシステムを用いることにより、危害が発生した場合に迅速な対応
が可能となり、水質への影響を未然に防止して、水道水の安全性をより確実なものにすること
ができます。
防府市上下水道局では、これまでの水質管理に加え、水安全計画を継続的に運用することに
より、水源から蛇口に至る水道システムの維持管理水準の向上を図り、安全でおいしい水の供
給を確実にする体制整備の充実を目指します。
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3.水安全計画の策定手順
水道に係る各種情報を整理するために、水道システム
の概要を整理し、システムのフローチャートや水源流域
図などを作成します。
まず、水道システムに存在する危害原因事象の抽出を
行います。危害とは水質汚染の恐れがある物質や施設、
自然災害に伴う施設の破損、水処理や給水の停止や中断
となりうる設備の故障などで、次にこのような危害がど
の程度水道システムに影響を及ぼすかというリスクレベ
ル(5 段階)を設定します。
抽出した危害原因事象に対して現状の管理措置と監視
方法を整理し、評価を行い、必要に応じて新たな管理措
置、監視方法、管理基準を設定します。
管理措置とは、予防保全策や適正な処理で、監視方法
とは、現場確認や計器による連続分析で、管理基準とは、
数値設定や異常の有無です。
管理基準を逸脱した場合や予測できない事故などによ
る緊急事態に備えた対応策を予め設定します。
設定した内容は、運転管理マニュアルに反映します。
水安全計画に基づいて作成する各文書や記録などの管
理方法を定めます。
策定した計画の妥当性を確認するとともに、水道シス
テムが計画どおり運用され、安全な水が安定的に供給さ
れたかなどについて検証することを定めます。
策定した計画が常に安全な水を安定的に供給していく
上で十分なものになっているかを確認するとともに、必
要に応じた改訂を行います。
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4.防府市水安全計画の概要
(1)水道システムの把握
防府市は、一級河川佐波川の豊富で良質な伏流水と地下水を水源とし、市内 5 か所の
水源地の浅井戸から取水して塩素消毒を行ったうえでお客様に供給しています。
① 行政区域
山口県のほぼ中央部、周防灘に面して位置しています。
昭和 11 年(1936 年)防府町、中関町、牟礼村、華城村が合併して防府市となりました。
昭和 14 年(1939 年)西浦町、昭和 26 年(1951 年)右田村、昭和 29 年(1954 年)富海村、
昭和 30 年(1955 年)大道村、小野村が防府市と合併しています。
② 水道事業
計画給水人口・・・・・・116,670 人(第四期拡張事業第 5 次変更)
計画一日最大給水量・・・48,500 m3
普及率・・・・・・・・・93.2%(平成 27 年 3 月末、専用水道含む)
職員総数・・・・・・・・78 人(平成 27 年 3 月末、下水道含む)
その他(平成 26 年度)
・・給水人口
108,696 人
46,780 戸
給水件数
13,095,153 m3
年間配水量計
一日最大配水量
40,579 m3
一日平均配水量
35,877m3
配水管延長
599,772m(平成 27 年 3 月末)
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③ 水道施設
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水源系統図とそれぞれのフローチャートを示します。
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(2)危害分析
①危害抽出
水道システムに存在する危害を浄水系統毎に分析し、抽出しました。
危害抽出結果
発生箇所
水源流域
取水
浄水処理
給水栓
危害原因事象
関連水質項目
車両事故
油、臭気
降雨
濁度
河川工事
濁度
生活雑排水
大腸菌、陰イオン界面活性剤
畜舎排水
硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素
不法投棄
油、農薬類
井戸老朽化
濁度、臭気
テロ
シアン類
設備老朽化
濁度、臭気
薬品劣化
残留塩素、塩素酸、臭素酸
薬品注入不足
残留塩素
テロ
シアン類
滞留時間大
残留塩素、総トリハロメタン、臭気
水温高
残留塩素、総トリハロメタン
残留塩素不足
一般細菌
蛇口への異物付着
一般細菌
鉄錆剥離
鉄
クロスコネクション
残留塩素、従属栄養細菌
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②リスクレベルの設定
危害原因の発生頻度は、水質検査結果の水質基準等に対する割合が高くなる事象や過
去の発生事例等を参考にし、分類しました。また、危害原因の影響程度は、関連水質項
目の水質基準値等を参考にし、分類しました。
発生頻度の分類
分類
内容
頻度
E
頻繁に起こる
毎月
D
起こりやすい
1 回/数カ月
C
やや起こる
1 回/1~3 年
B
起こりにくい
1 回/3~10 年
A
滅多に起こらない
1 回/10 年以上
影響程度の分類
分類
内容
説明
a
ほとんど考慮を要さない
利用上の支障はない。
b
考慮を要す
利用上の支障があり、多くの人が不満を感じるが、ほとんどの人は別の飲料水を求めるまでには至らない。
c
やや重大
利用上の支障があり、別の飲料水を求める。
d
重大
健康上の影響が現れる恐れがある。
e
甚大
致命的な影響が現れる恐れがある。
健康に関する項目
a
危害時想定濃度≦基準値等の 10%
b
基準値等の 10%<危害時想定濃度≦基準値等
c
基準値等<危害時想定濃度(大腸菌、シアン等、水銀等、残留塩素を除く)
d
基準値等<危害時想定濃度(大腸菌、シアン等、水銀等、危害原因事象発生時に残留塩素が 0.1mg/L 未満のとき)
e
基準値等≪危害時想定濃度(危害原因事象発生時に残留塩素が不検出のとき)
水道水が有すべき性状に関する項目
a
危害時想定濃度≦基準値等
b
基準値等<危害時想定濃度(苦情の出にくい項目)
c
基準値等<危害時想定濃度(苦情の出やすい項目)
d
基準値等≪危害時想定濃度
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次に、抽出した危害がどの程度水道システムに影響を及ぼすか、発生頻度と影響程度
から 5 段階に分類しました。
リスクレベル設定マトリックス
危害原因事象の影響程度
影響程度
取るに足らない
考慮を要する
やや重大
重大
甚大
a
b
c
d
e
発生頻度
危
害
原
因
事
象
の
発
生
頻
度
頻繁に起こる
毎月
E
1
4
4
5
5
起こりやすい
1 回/数カ月
D
1
3
4
5
5
やや起こる
1 回/1~3 年
C
1
1
3
4
5
起こりにくい
1 回/3~10 年
B
1
1
2
3
5
滅多に起こらない
1 回/10 年以上
A
1
1
1
2
5
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(3)管理措置の設定
抽出した危害に対する現状の管理措置を浄水系統毎に確認し、監視方法を整理しました。
管理措置の内容
分類
管理措置
情報収集・確認
施設・設備の予防保全(調査・点検・補修等)
予防
侵入者検知装置・監視カメラの設置
施錠の確認
水質検査の確認
給水装置に対する情報提供・指導
取水・送水・配水・給水の制限・停止
処理
薬品の適正注入
管路の定期及び臨時のドレン作業
監視方法
リスクレベル
発生箇所
危害原因事象
関連水質項目
監視方法
取水
テロ
シアン類
現地確認、水質検査
浄水処理
テロ
シアン類
現地確認、水質検査
浄水処理
薬品注入不足
残留塩素
残留塩素計
降雨
濁度
濁度計、水質検査
不法投棄
油、農薬類
情報提供、水質検査
浄水処理
薬品劣化
残留塩素、塩素酸、臭素酸
残留塩素計、水質検査
水源流域
畜舎排水
硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素
情報提供、水質検査
浄水処理
設備老朽化
濁度、臭気
濁度計、水質検査
給水栓
クロスコネクション
残留塩素、従属栄養細菌
現地確認、水質検査
車両事故
油、臭気
現地確認、水質検査
河川工事
濁度
濁度計、水質検査
生活雑排水
大腸菌、陰イオン界面活性剤
現地確認、水質検査
井戸老朽化
濁度、臭気
濁度計、水質検査
滞留時間大
残留塩素、総トリハロメタン、臭気
残留塩素計、水質検査
水温高
残留塩素、総トリハロメタン
残留塩素計、水質検査
残留塩素不足
一般細菌
現地確認、水質検査
蛇口への異物付着
一般細菌
情報提供、水質検査
鉄錆剥離
鉄
情報提供、水質検査
5
4
水源流域
3
2
水源流域
取水
1
給水栓
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リスクレベル別の管理措置
リスクレベル
管理措置
1
通常の管理を継続する。
2
通常の管理を継続し、効果的な管理方法について検討する。
3
薬品の適正注入の確認やドレン作業などの管理を強化し、施設整備等の恒久的な対策を検討する。
4
薬品の適正注入の確認やドレン作業などの管理を強化し、施設整備等の恒久的な対策を実施する。
5
原則として取水停止、送水停止の対応をとる(健康影響のある水質項目については直ちに実施する)。
また、水質項目毎に管理基準を定め、適切な監視と管理措置を行います。
(4)対応方法の設定
管理基準を逸脱した場合や予測できない事故による緊急事態に備えた対応方法を設定
しました。
管理基準と逸脱時の対応
監視項目
監視地点
残留塩素 給水栓
管理基準
逸脱時の対応
0.2mg/L 以上
次亜塩素酸ナトリウムの注入調整など
濁度
水源地出口
0.05 度以下
濁度計の確認しドレン作業など
臭気
水源地出口
異常のないこと
原因を調査しドレン作業など
(5)文書と記録の管理
運転・監視の状況については所定の様式に記録を行い、運用時に管理基準を超過した
場合はその状況を記録し、保管・整理します。
水安全計画に関連する文書一覧
文書の種別
水安全計画
運転管理に関する文書
様式類
緊急時対応に関する文書
文書名
防府市上下水道局水安全計画
運転管理マニュアル
運転管理日誌・日報・月報
水質一件綴
水質汚染事故対策要綱
災害対策マニュアル
水安全計画に関連する記録一覧
記録の種別
運転管理の記録
事故発生時の報告記録
水安全計画に関する記録
文書名
運転管理日報
水質検査結果
水質事故報告書
実施状況の検証・見直しの記録
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5.水安全計画の検証
管理基準や監視方法などの計画に基づき、適切な対応ができているかどうかを確認し、実際
に発生した危害で実施した管理対応措置と水安全計画の管理対応措置とで内容の検証を定期的
に行います。
実施状況の検証のためのチェックシート
内容
チェックポイント
確認事項
(コメント)
毎日の残留塩素等の記録
① 水質検査結果は水質
・水質基準等との関係
基準値等を満たしてい
・管理基準の満足度
たか
水質検査成績書
適・否
・水質基準等との関係
② 管理措置は定められ
た通りに実施したか
③ 監視は定められた通り
に実施したか
④ 管理基準逸脱時等に
定められた通りに対応
をとったか
⑤ ④によりリスクは軽減
したか
日報、月報、巡回日誌
・記録内容の確認
日報、月報、巡回日誌
・日々の監視状況
適・否
適・否
水質事故報告書
・逸脱時の状況、対応方法の的確さ
適・否
水質事故報告書
水質検査成績書
適・否
・水質基準等との関係
日報、月報、巡回日誌
⑥ 水安全計画に従って
記録が作成されたか
・取水、配水、水位、電気関係、薬品使用量等の記録
水質検査成績書
適・否
・浄水及び給水栓水残留塩素の記録
異常時、事故時の報告書の記載方法
⑦ その他
水安全計画の周知
適・否
・記録内容の確認
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6.レビュー
水安全計画が常に安全な水を供給していく上で十分なものになっているかを確認し、水安全
計画の管理対応措置よりもより有効な対応措置がある場合は、内容を精査し必要に応じて見直
しを行います。
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